『牙狼<GARO> -炎の刻印-』簡易感想4
●第9話「師弟-NEW HOPE-」
「無理でも……やるしかないんだ」
見所は、焚き火で夕食の支度も出来る王子。
喀血描写の入ったラファエロのスパルタ教育により、王子アルフォンソは柱ぐらい斬れる戦闘技術と、元ダークの女ばりの野宿スキルとメンタリティを身につけており、自らに迫る死期を感じるラファエロは、修行の総仕上げとして、番犬所に紹介された強大なホラーの討伐を命じる。
「駄目だ……この程度のホラーが相手では。……力が必要だ。もっと強い敵……」
一方、暗黒騎士に敗北を喫したレオンは、レベルだ! レベルが足りてねぇ! と即物的な武者修行の旅に出るとホラー狩りを繰り返し、思いあまって初めて訪れた番犬所で、レアエネミーを紹介してもらう事に。
……かくして、担当窓口の手抜きというか遊び心というか興味本位の悪ふざけというかにより、運命の従兄弟は、全く同じホラーを狩りに向かい、最寄りの街でそれと知らぬままの出会いに至る。
「大丈夫か?! 明日から。この先ずっと俺がついていくわけにはいかないぞ」
ケチな強請に引っかかりそうになっていたり、色宿に連れ込まれそうになったりしたアルフォンソを見るに見かねて助けたレオンは、何か波長があったのか、ヘルマン不在で脳にアルファ波が出ているのか、やたら穏やかな笑顔で握手をかわし、ラファエロとアルフォンソの修行がだいぶ超特急になってしまったのは、そうでもしないと出しにくいので仕方なかったのでしょうが、初対面で妙に友好的な態度を見せるレオン(もめ事から助けるのはわかるとして、笑顔で握手まで求めるとオーバーランな印象)は、ちょっと端折りすぎた感。
まあレオンが普段、他人に素っ気ない態度を取るのは、クールと呼ばれたいお年頃……ではなく、無意識にヘルマンに甘えている部分はありそうですが。
深夜、宿を抜け出た二人は、互いに(なんだこいつ……)と思いながら問題のギガント級ユニークホラーに遭遇し、キマイラ……まさかの巨大移動神殿だった(事前に窓口で、名前通りの魔獣のイメージを見せておくのが布石として巧い)。
見習いの身ながら退こうとしないアルフォンソの姿に、レオンは共闘を決断。レオンがホラーの前面を引き受けている内に、上に回ったアルフォンソが核を貫いて勝負あり……と思われたが、それは第一形態でしかなく、神殿の巨大な扉が開いて内部の本体が姿を見せると、地形を変えるレベルのホラーエナジー砲が放たれて戦況を一変させ、やむなくレオンがガロへと変身。
アクロバットな空中戦で無間の闇の扉へと切り込もうとするガロだがその刃は届かずに叩き潰され、崖に叩きつけられたガロのマスクがひしゃげるような画が、ダメージ表現として秀逸。
果敢に斬りかかったアルフォンソも一蹴され、絶望に沈みかけたその時――
「――呆けている場合か!」
「は?!」
「ひとたび剣を握ったなら、死ぬまで歩みを止めるな! 己の鼓動の止まる最後の瞬間まで!」
「師匠!」
「魔戒騎士の務めを果たせ!」
朽ち果てようとする肉体に残った、最後の燠火を炎に変えたラファエロが剣を掲げ、テーマ曲に乗っての鎧召喚に合わせて、吊り橋大爆発が大変格好良く、ガイア突貫。
キマイラの扉へと切り込んだガイアは至近距離で渾身の一撃を叩き込むも、無数の牙に全身を貫かれると、その剣と鎧を、アルフォンソへと託す――。
「我がガイアの鎧、貴様に託す」
剛剣を持ち上げたアルフォンソは見事に臙脂色の鎧を纏って新たなガイアとなると、瞳に蒼い炎を灯すのがこれまた大変格好良く、追加戦士ブーストにより見事にキマイラを撃破するのであった。
「我が死と共に主を失い、彷徨う定めであった、ガイアの鎧……おまえという継ぎ手を得て、私は今幸せだ」
「私は、あなたの、剣に懸けて、誓う……必ず、この国のホラーを討ち果たし、人々を守ってみせると!」
かくして王子ガイアが誕生し、ラファエロさんは如何にも途中退場しそうだったにしても、修行の超圧縮から最終試験と師弟の別れ、アルフォンソの騎士免許取得はだいぶ駆け足となり、もう少し過程の欲しかった感はあり。
とはいえ、ラファエロ最後の変身は大変格好良かったですし(吊り橋×爆発に、「特撮」を感じてしまうのは私が馴らされすぎなのか……)、何より、規格外の移動神殿ホラーの存在が、素晴らしかったです。
また、ラファエロ-アルフォンソの師弟をもって、「継承」「次代へ繋ぐ」という、メタ的なニュアンスも含めた《牙狼》のコア要素を、前半戦の内に念押しで描いておきたかったのかな、と思うところ。
さて次回――これで、悪のメンドーサに牙を剥く正義の三銃士が揃ったぞ! ……と素直に進むには互いの因果が少々こんがらがっており、レオンに至っては修行の途中で王子様を拾って戻ってきただけみたいになっていそうですが、果たして、本当の地獄はこれからだったりするのか?
●第10話「破戒-FALLEN BLOOD-」
「魔戒騎士……魔戒法師……貴様らの血も絶やさずにおくものか……一人残らず!」
「師匠の墓標は受け継いだこの剣と共に我が内にある。この先ずっと、私は師匠の墓標を抱いて戦うだろう」
東映ヒーロー名物:勝手にお墓を立てようとするレオンを止めるアルフォンソの台詞がやたら格好良く、私の中の王子株価の上昇が留まる事を知りません。
「おまえが母君から受け継いだ剣と同じだ」
そしてアルフォンソは、ラファエロから聞いた黄金騎士の血統、レオンの抱えるものについて触れると、ホラーどもを皆殺しじゃぁ、と曇りなく意気投合した二人は剣を合わせて杯の代わりにすると、打倒メンドーサの為に共に戦う事を誓い……この時点であまり力強く盛り上がられると、不安が増大していきます(笑)
アルフォンソを伴い王都に戻ったレオンは、騎士に追われているところをまたもエマに助けられ、魔戒騎士は人を傷つけてはいけないけど、魔戒法師は人を糸で吊っていいのか。
「こういう時は相手の顔を見るのよ、坊や」
そして、色々な特撮ヒーローに、言ってあげてほしすぎる一言。
レオンとアルフォンソは海千山千のエマにいいように翻弄されながら手持ちの情報を吸い取られ、懲りないヘルマンは全裸でアルフォンソとの対面デビューを果たすと、アルフォンソが黄金騎士の血を引いていると聞いて、隠し子を作っていたのはアンナの方だったの?! と黄昏れる。
レオンは、初対面から友人には見せたくない駄目父ぶりを全力で爆走するヘルマンの姿に当たり散らし、エマは終始大人の余裕を見せ、二人の間で右往左往しつつも割と大抵の事は鷹揚に受け流して話を先に進めるアルフォンソが、一人で空気を浄化していきます。
「潰しても潰しても現れる……血族を増やす事しか脳のない、賤しい獣のごとき奴らよ」
アルフォンソ帰還の報告を受けたメンドーサの、風呂場のカビを見るよう嫌悪感の示し方に台詞回しが大変光り、かつて歪んだエリート主義に陥り、護るべき者たちを蔑ろにする人体実験の禁忌に手を染めた事から、破門されたその過去が判明。
「老師! 私の魔道具さえあれば、永遠さえ手に入るのです!」
「必要ない。人は既に子を残す事で、永遠を手に入れている」
第1話をベースにして前回をジャンプ台とする形で、原典『牙狼』を踏まえた物語の核とテーゼ――“命の継承”、そしてそれは、魔戒騎士がなんの為に戦うのかそのもの――が豪速球で放り込まれるのが物語における対立関係を明確に示して気持ちよく、全体的な台詞の切れ味の鋭さが今回の目立つ長所。
罰として堕落者の刻印を押され、子々孫々に至るまでその呪いに縛られる事になったメンドーサは、世俗の中で国王に取り入って重臣の座を得るが、やがて生まれた子に刻まれた刻印を目にすると、かつて高みと信じていた場所に決して辿り着けぬ身となった憎しみを世界そのものへと向けるに至り――「全裸」回の堀内賢雄アワーに続き、土師考也アワーともいえるメンドーサ祭。
端正な優美さを保ちつつ、悪意と憎悪を滲ませる芝居が本当に素晴らしい。
メンドーサ一味がレオン達を手ぐすね引いて待ち構える一方、ようやく血縁関係を理解したヘルマンを連れて、魔戒騎士一同はアルフォンソの知る隠し通路から城内と潜入を図り、散々レオンをからかい、もとい手伝ってきたエマの目的は他にある、と途中離脱。
今作なんとなく、2部構成的な造りになりそう……と感じてはいたのですが、実際そうなるのかはさておき、エマの離脱によりこの次の展開への導線を作っておくのが巧妙です。また、最近すっかり落ち着いていたガロの“炎の刻印”について、レオンを護るアンナの想いであるが、そこには危うい要素も含まれている……と触れておくのも大変いい仕事(まあエマに関しては、話を転がすのに便利使いしすぎているところは多少ありますが)。
「私は母上を助けるために戻ってきたのではない」
いよいよ城内潜入が間近になると、母の想いともども王族の覚悟を見せつつ、レオンの気遣いに対する例は伝えるアルフォンソーーー!(笑)
城の地下に入り込んだ3人は、無数のホラーのサナギの出迎えを受け、なんとかそれを突破したところに現れたのは――墜ちた騎士、ベルナルド。
「久しぶりだな、ロベルト」
「ああ。おまえにその名で呼ばれると、昔を思い出すねぇ。で? わけは教えてくれるんだろうな」
「……そうだな。――全ては……おまえと戦うためだ!」
満を持しての脚本:小林靖子、絵コンテ:林祐一郎による王城突入編第1章で、台詞のキレを最大限に活かし、主に全裸の騎士が緩めるところは緩めて緩急を巧くつけながら、因縁をがっつりぶつけたところで、つづく。
……というか今回のレオン、実はほぼギャグ要員でしたね!(やはり無意識に父親に甘えている感)
そしてそろそろ順番の回ってきそうなヘルマンは、死亡フラグを跳ね返す事はできるのか――?!