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サナギのままではヒーローじゃない

『ひろがるスカイ! プリキュア』感想・第18話

◆第18話「アゲアゲ!最強の保育士キュアバタフライ!!」◆
(脚本:加藤還一 演出:土田豊 作画監督:上野ケン)
 アバンタイトルから釣り竿ボーグとの戦いになり、避難誘導からのプリキュア忍法火の鳥で久々にいいところを見せるキュアウイング。
 今回も惨敗を喫し、もはや靴の裏に挟まった小石ぐらいの扱いになっているバッタは、エルを抱えて戦況を見守っていた夏服あげはに言いがかりを付ける味のしなくなったガムみたいなちんぴらぶりを見せ、もはやどこに行こうとしているのか。
 「まあ、確かに私は、外野なんだけどね」
 ぼそっと呟くあげはを、スカイやプリズムが大切な仲間だと持ち上るのですが、メタ的にはずっと“プリキュアになるのが前提の人”だった為に、サポートメンバーも含めてチーム! 的な面白さは1ミリも生まれず、やはり第4のプリキュアの扱いは設計ミスだったのでは、と思うところ。
 あげはが実習を始めた保育園ではプリキュアの存在が世間的に認知されつつある事が示され、とにかく周辺世界の描写が少ない作品だったので、これは良かったです。
 ……しかしまあ、シリーズ視聴数が少ないのでセオリーはわかりませんが、児童層における“世界”の単位としての基盤となる「家族」-「友人」-「学校」の内、「家族」と「学校」をほとんど排除しているのは、割と変則的なのではないかと改めて。
 レギュラーキャスト節約の為に、家族と物理的な距離を設定する事は珍しくないとは思いますし、既に独り立ちを始めようとしているあげははともかくとして、ましろ両親が海外、ソラとツバサは作劇的な断絶のある別世界の人間、この3人の同居により「家族」要素が一つにまとめられる事でレギュラーメンバーの「家族」の扱いが限りなく縮小された上で、ましろの肉親である保護者ポジションのヨヨは、家族というよりもジョーカーにしてメンターとしての役割が大きく、そんな「家族」の、拡張/代替機関となりうる「学校」もほぼ描写が存在しない(ツバサとあげはは所属も違う)為に、「友人/仲間」のウェイトが左右のバランスを欠く形で肥大しているのかなと。
 別の見方としては、今作における“「世界」の中心”はプリンセス・エルなので、
 〔父:ソラ、母:ましろ、兄:ツバサ、妹:エル、親戚のおばさん:あげは〕
 の「家族」が、そこに形成されている、とはいえるのですが、否応なく外の世界と接続しているあげはのプリキュア覚醒が、作品のトーンに少し変化をもたらしてはくれないものか、とは思うところです。
 保育実習中にあげはが口を滑らせた事により、プリキュア一同は園児たちからファンレターを貰って喜ぶが、ウイングに助けられて強い憧れを抱いた少年が、悪いものを「やっつける」事こそが「最強」の証明、と安易に暴力を振るう問題が発生。
 “正義の振るう暴力”の問題について、保育園を舞台にどう切り込んでいくのかはちょっと期待したのですが、あげはの奮戦を描いて「大切な人たちを守る為に使う力が最強なんだ」で少年が納得して片付けられたのはどうも、ややこしい問題を本気で掘り下げる気が最初からなくて、今作なりの積み重ねを特に必要としない定跡でお茶を濁した感じが出ていたのは残念。
 定跡が悪いわけでは勿論ないのですが、そこに作品の積み重ねが活きてこそ真に跳ねるのが定跡ですし、「ヒーローガール」を掲げる作品としては、ソラを引っ張り込みつつ前後編で丁寧に扱っても良かったような命題であり、何をもって今作を『ひろがるスカイ! プリキュア』とするのか、の部分がここに来てだいぶ弱くなっている気がします(現状、今作の軸が何かといえば「子育て」でありますが、そこで「ヒーロー」×「子育て」を結合した“面白さ”を巧く出せていないなと)。
 バッタの嫌がらせにより保育園をじょうろボーグが襲撃すると、あげはの実習を物陰から見ていたソラ達は、プリキュア変身。
 優位に戦いを進めていたプリキュアだったが、臣下どもの戦いを優雅にご観覧あそばせていたプリンセスが狙撃の標的にされ、カバーリングした3人がまとめて閉じ込められる大ピンチ。
 しかし、真夏のホラー映画適性が高いあげはが園児を守って走ると、機転を利かせてじょうろボーグを生身でひっくり返し、守る為に発揮される最強の精神を見せつける。
 「私は外野なんかじゃない!
 「う……外野じゃなければ、なんだというんだよ」
 「保育士!」
 「は?」
 「そして最強の保育士も、最強のヒーローも、目指すところは一緒。それは大切な人たちを守ること!」
 バッタに向けて仁王立ちしたあげはから魔法のペンが生じると、促されるままにエルがアゲアゲプリンセスパワーを注入し、劇中で言ってくれないけどヒーローの出番です!
 「最強の保育士の力、見せてあげる!」
 あげははホップステップジャンプし、“女児の憧れ”としての化粧モチーフを、18歳新成人で行うとアイシャドウが濃くなって誕生、
 「サナギを破り、蝶が舞う。トランの殻を破った時、このトランザが――天に輝く!」
 ……すみません、どうしても、我慢できませんでした。
 ……改めて気を取り直しまして、
 「アゲてひろがるワンダホー! キュアバタフライ!」
 とにかくアゲアゲを合い言葉に全ての疑問を封殺していくつもりらしいバタフライは、投げキッスバタフライ爆弾からじょうろボーグの動きを封じると、急降下バタフライプレスで叩き潰し、必殺技は、やはり重力でした。
 バッタは次回は病院の待合室に居そうな顔で逃げ出し、プリキュアになったので、とあげはが引っ越してきて、つづく。
 今回良かったのは、バッタがたくさん「会話」をしてくれた事と、要所でさすがにあげはの作画が良かった事で、髪型でスイッチを切り替えるのは、シンプルに好きな演出。
 一方、当初からOPに登場しながら約4ヶ月引っ張った割には、特にストーリー上の盛り上がりのない流れで、特に盛り上がりのない敵を相手に新プリキュア登場、となった構成には首を大変ひねりますが、次回――新型UFO登場?!