東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
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ナイフよりも硬く、電ノコよりも強く

イナズマンF』感想・第15-16話

◆第15話「大洪水作戦!!」◆ (監督:山田稔 脚本:山崎久)
 肩に付いたドリルよりも、謎の殺人光線よりも、サブタイトル詐欺で宇宙に行かなかった事が印象深いドリルデスパーが強化再登場し、小山を軽く吹き飛ばすドリル破壊光線を試し撃ちすると、続けて奥沢ダムを襲撃。
 「このダムは今からデスパー軍団が占領する」
 技師達を皆殺しにしようとしている内に、冒頭からやたらと強調していた大事な回路、落ちた。
 「早く俺のパワーマシンを取り返せ! あれが無ければ大洪水作戦は不可能なのだ!」
 マシンを拾った姉弟は村の人たちに伝書鳩で助けを求め、突然の伝書鳩はこれも時事ネタ……? と軽く調べたところ、1969年には日本全国で伝書鳩の登録数が400万羽を越えるピークになっており、ブームという事ではないものの、今よりも遙かに、ポピュラーな存在ではあった模様。
 デスパー兵士に撃ち落とされた鳩を拾った五郎と荒井が、助けを求める文書を入手すると、姉弟の危機に颯爽と駆けつけるイナズマン
 今回、全体的に尺稼ぎめいた場面が多いのですが、足を銃で撃たれた姉を横にイナズマンと弟の妙に間延びした会話が続くと、必要な情報交換が終わったのを見計らって急に姉が「痛い!」と叫び出し、今度は合流した荒井と共に医者について段取りの悪い会話をかわし……荒井が手早く包帯を巻くだけに、少女の怪我について完全スルーしていたイナズマンが、“戦うしか脳の無い男”みたいな事に(笑)
 「驚いたかイナズマン! 俺は改造され、より強力になったのだ!」
 そこに現れるドリルデスパーだがしかし、肝心のパワーユニットを失っていた!
 適度に殴る蹴るするとドリルは逃げ出し、村の医者の元へと運び込んだ少女の怪我は雑に手当が施され、銃で撃たれたのに、それでいいの……?!(それた銃弾で弾けた石が当たったとかだったのかもですが……)
 そこに、崖から落ちて瀕死の技師(姉弟の父親)が運ばれてくると、これまた緊張感のないやけに間延びしたやり取りが続き……荒井、輸血、出来るの……?!
 基本設定を白紙に返す勢いから更に縁側で輸血作業を始める荒療治に目を白黒させていると、医者はサデスパーの変装であると五郎が見破り、村の消防団の青年たちもデスパー戦闘員の正体を現し、緊張感の無いやり取りと雑な医療行為の辻褄が合ったと言っていいのかどうか(笑)
 剛力招来しようとする五郎だが、運び込まれてきた技師はサデスパー催眠を受けていた本物であり、少女を人質に取られた事でパワーマシンを差しだし降伏。
 変装能力を見せたサデスパー市長は、現場に出てきて怪人のフォローに回り、初期のウデスパー参謀の仕事をそのまま引き継ぐ形となりましたが、よく見ると胴体が左右に開きそうな割れ目がついており、いわゆる「鉄の処女」がモチーフでありましょうか(それで頭にトゲか、とようやく納得)。
 大事なパワーマシンを取り戻したドリルデスパーが、磔にした五郎と少女の前でダム破壊を宣言すると、絶望の眼差しで少女は父への思いを訥々と語り……とにかく、色々と間合いが、変。
 監督はお馴染み山田稔なので、初参加の脚本の癖が強めに出た……のでしょうか(過去に見た事あるのが『超人バロム・1』第8話「毒液魔人 ナマコルゲ」だけで、なんともいえず)。
 これといってフォーカスされていないゲスト少女が、暗い眼差しで死を受け入れる姿を描かれても反応に困っている内に破壊光線が発射され、決壊してしまうダム。
 すたこらさっさとドリル部隊が撤収すると、少年と共に逃げ、物陰で様子を窺っていた荒井がひみつ道具でチェーンを切断し、自由を取り戻した五郎は剛力招来からの超力招来で、当然すかさずゼーバー逆転チェスト!
 濁流を噴き出しながら崩壊しようとしていたダムはあっさりと修復され、映像は前作第2話(水バンバラ回)の使い回しでありましょうか。なおこの回では、ゲスト少女の両親がダム湖の近くで磔にされていたのですが、微妙な被り方をしている今回は渡五郎が自らを十字架に捧げるヒロイン力マッチポンプにより、久々に出鱈目ヒーロームーヴを発揮。
 イナズマンはドリルデスパーの腹を執拗にチェストすると、奪い取ったユニットを破壊。取っ組み合いから電撃パンチ、そして落雷の術で抹殺し、今回も、宇宙には行きませんでした……!
 技師父は生存、少年の手に伝書鳩も戻って大団円となり、あくまでも「イナズマンの友達のお兄さん」を称する五郎、『F』におけるデスパー対策という事なのでしょうが、そんな設定だっけ……? と首をひねりたくなると同時に、物凄い不審者感(笑)

◆第16話「謎の女その名はデスパー秘密捜査官」◆ (監督:山田稔 脚本:平山公夫)
 旧知のインターポール捜査官ケイ・マヤから連絡を受けた荒井は、浜松・舘山寺のビューホテルへ向かい、ちょっと酔いそうになるモーターボート主観映像での追跡劇が湖で繰り広げられる、浜松観光タイアップ回。
 荒井の目の前で、マヤの乗ったボートはデスパー兵士の攻撃を受けて爆発炎上し、サングラスと通信機だけが波打ち際で発見されたところに女声コーラスが重なって妙にしっとりとした雰囲気を出してくるのですが、荒井、妻子を取り戻す為に戦っているキャラなのに、同僚女性との思い出にひたる姿を繰り返し見せられても、率直に困惑。
 特に言及なく復活しているノコギリデスパーが五郎を襲撃する一方、デスパーに囚われていたマヤはサデスパー市長の洗脳を受けており、ちゃんとボディの取っ手を掴んで、蓋が開いた!
 中身はトゲだらけという事はなく、赤い胴体に穴が幾つか開いている(後々、ここからトゲが飛び出すのか?)というものでしたが、割とボディ表面の装飾が凝っているサデスパー、蓋を開くギミックまでしっかり実装されていて、大変良い造形。
 洗脳されたマヤがデスパーの逆スパイとして荒井と五郎に接触すると、荒井をフラワーパークに連れ出す観光展開から投げナイフが荒井に迫り…………凄く根本的なところで、荒井は、投げナイフ程度で、殺せるのでしょうか。
 切りつけどころというか刺しどころ次第かもしれませんが、過去に近距離から銃弾を浴びたり、デスパー怪人のナイフ攻撃を受けて無事だった為に、サスペンスが全く生じていません。
 「私はインターポールなんかじゃない。今の名は、デスパー秘密捜査官」
 洗脳マヤが正体を明かし、戦闘員とノコギリデスパーに囲まれた荒井に電動丸鋸が迫るが、そこにイナズマンが登場。混戦の中で投げノコギリを受ける荒井だが……全然、大丈夫だった(笑)
 この後、洗脳された元同僚の解放に焦点が当たるのかと思いきや、息子を人質に取られ、デスパーの為に殺人超音波兵器を開発させられていたクジョウ博士が土壇場で、息子を失ってでも恐ろしい兵器を葬り去る70年代らしい覚悟を見せると、洗脳マヤ問題からはピントが完全に外れ、ほぼほぼ、女優さんに各種衣装を着せたかった、だけみたいな扱いに(1エピソードで4種類の衣装を着用)。
 荒井が博士の自爆を止め、いつの間にやら黒服に加わっていた五郎が博士息子を助け、そこにノコギリデスパーが乱入して殺人兵器の争奪戦になると、五郎はロープウェーから落下。
 「渡五郎は死んだ。今度は貴様達を片付けてやる」
 「……待てぇ! 自由の戦士・イナズマン!」
 しかし荒井と博士親子がピンチになると高いところにイナズマンが現れ、変身ヒーロー物としては王道中の王道なのですが、イナズマン(F)』の特質は、いよいよ宇宙の彼方に消滅。
 これまでも雷神号の都合や前座での圧縮は行っていましたが、クライマックスでここまで堂々と「いきなりイナズマン」をしてきたのは初で、これをやれれば楽に決まるけど、敢えて出来ない設定で別のアプローチを取るのが今作としての差別化だったわけなのですが……浜名湖に沈めとばかりに放り捨てての主題歌バトルに突入。
 電撃キックと電撃パンチで痛めつけたノコギリデスパーを落雷の術で消し飛ばすと、荒井らに拳銃を向けていたマヤは催眠が解けて正気を取り戻し、観光タイアップ回らしい脈絡の無さとはいえるかもですが、荒井のサイボーグ設定が活きない・洗脳された同僚の要素も活きない・イナズマンの根幹設定も活きない、と大変雑な作りのエピソードで残念でした。