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いよいよの時

イナズマンF』感想・第14話

◆第14話「大空中戦!! 合体ウデスパー戦略部隊」◆ (監督:前川洋之 脚本:上原正三
 岩よりも硬く弾丸より強く戦闘員も一ひねり!
 今度こそ綺麗に焼き上がった合体腕スパーの性能テストからスタートし、クローに貫かれた戦闘員の腹部が大写しになるゴア表現。
 「合体ウデスパーの力、ほんの一部をご覧頂きました」
 「怪力だけではイナズマンを倒す事はできんぞ、合体ウデスパー」
 「怪力だけとはなんだ無礼な! 第一貴様ごときにとやく言われる筋合いは、無いわい!」
 幹部交代の布石か、前回からガイゼルの側近顔して並んでいるサデスパー市長が厭味を飛ばすのですが、今回の合体プロジェクトをせっついていたのは、そこで歯を剥いて笑っている総統閣下です!
 その頃、人里離れた山村において破傷風で高熱に苦しむ弟の為に血清が欲しいと呼びかけるアマチュア無線を傍受した荒井は、さっそくインターポールのコネクションを用いて関係機関に連絡を付けるが、同じく無線を傍受したデスパーにより、血清を村へ運ぼうとした自衛隊のセスナ機が撃墜されてしまう。
 合体腕スパーは、危機を知ったイナズマンが出馬するまで、村に近づく者を皆殺しにしてやると予算度外視の嫌がらせを宣言し、失われようとする幼い命の前に黙っていられなかった五郎が、無線に向けて
 「イナズマンが血清を届けよう」
 と約束するのは、久々に格好いい渡五郎。
 デスパー軍団の妨害を警戒し、イナズマンと荒井は空と陸の二手に分かれて血清を運び、雷神号に迫るミサイルそして戦闘機。雷神号は合体腕スパーの乗った戦闘機を体当たりで撃墜し、ここでこのまま真っ直ぐ村に向かっていれば、この後のトラブルはほとんど存在しなかった可能性が高いのですが、墜落ダメージで弱ったところを木っ葉微塵にしてやろうと魔が差したのか、合体腕スパーの後を追って地上に降りたイナズマンは、血清抱えたまま放った飛び蹴りを跳ね返されて、逆に窮地に陥ってしまう。
 ……よくよく確認すると、雷神号の方も後部から黒煙を噴いているのでダメージを負って不時着したというニュアンスだったのかもですが、その後の展開に繋がる重要な箇所(合体腕スパーの事も持ち上げるチャンス)なのに特に台詞による強調も無い為に、イナズマンの行動がだいぶ不可解に見える事に。
 腕スパーコンボを受けたイナズマンは荒井のショットガンにより窮地を脱するが、特になんの言及もされないものの血清を所持してもいない荒井は荒井で、血清の運搬に失敗した模様です。
 改めてジープに乗って血清を届けようとする五郎と荒井はデスパー兵士の妨害を受けてジープを失い、血清の到着を待つ少年の姿を随時挟みながら、小さな命を救う為に約束を守ろうと粉骨砕身する五郎の姿を主題としていくのですが、その状況に乗っかって横槍を入れる合体腕スパーがまるっきりケチな小悪党になってしまい、どうしてこんな組み合わせにしてしまったのか。
 合体腕スパーとの決戦をするならば、デスパー軍団の大々的な破壊作戦に敢然と立ち向かうイナズマンの構図で見たかったところですが、“血清運搬の障害物”扱いなのは、つくづく残念。
 デスパー兵士のバイクを奪った五郎は、デスパー軍団によって占拠されている山岳地帯をバイクで走り抜けていき、けっこう迫力のあるオフロードのバイクスタントが、今回の見せ場。
 とうとう村の前まで辿り着く五郎だがしつこい腕スパーの邪魔が入って、剛力招来から即超力招来!
 そのまま戦いに入る……かと思うと、血清を待つ少年サイドにカメラが移動するのも、サスペンスを煽るよりもテンポを阻害して、決戦のテンションが上がってくれません。
 合体した事により経費の感覚を失った合体腕スパーは、血清を届けようとしたら村ごとミサイルで焼き尽くす、まで言い出し、戦いを決断したイナズマンは、掟破りの雷神号を召喚。雷神号から降り注ぐミサイルにびくともしない合体腕スパーであったが、それはイナズマンの罠であり、目をかばう仕草から弱点を見抜かれた合体腕スパーに炸裂する、全てはこの時の為の伏線だったのだ目つぶしーーー!!
 イナズマンの二本の指が合体腕スパーの左目を抉りチェストすると、怒りに我を失い隙を見せた合体腕スパーの眉間に、ゼーバーの尖った部分が突き刺さる!
 苦しみ呻く合体腕スパーは、フライング落雷の術を受けて木っ葉微塵に吹き飛び、血清運搬と少年サイドの描写で頻繁に分断される戦い・合体腕スパーの存在がイナズマンの眼中にない・デスパー周囲のリアクションが無いので合体腕スパーが正気を欠いていると掘り下げられるわけでもない、と因縁の敵幹部との決着の筈なのに物語の焦点がそこに全く合っていない残念極まる作りで、さすがに、腕スパーはきちっと倒してほしかったのですが……。
 イナズマンは村を狙うミサイル基地を雷神号で完膚なきまでに叩きつぶすが、血清は間に合わずに少年は死亡。だが、ゼーバーイナズマンエネルギーにより冥界に向かったイナズマンは少年の魂を死の淵から引っ張り上げて蘇生に成功し、ヒーローが間に合わなかった姿をショッキングに描くが、直後に実質奇跡が起こってやっぱり助かりました、となり、率直にこのくだり、丸ごといらなかったのでは……?
 シリアスなハード路線とショッキングな映像にこだわっていたかと思えば、思い出したかのように“子供のヒーロー”である事を強調し、雷神号の活躍に尺を割く一方、再生・合体・分離・合体と引っ張り続けてきたウデスパーは物凄く中途半端なスポットから雑に退場処分を下され、起こすだけ起こしてみせた悲劇は即座に奇跡でひっくり返りと、今作の腰の据わらないところが象徴されたような内容でした。
 『イナズマンF』、迷走以前に、走ろうとしている道路が見えないのが困ります。
 次回――ドリルデスパー復活で、つまり、今度こそ宇宙へ?!