『イナズマンF』感想・第11話
◆第11話「美しいサイボーグ! 暁に分身す!!」◆ (監督:塚田正煕 脚本:島田真之/峰沢脩)
見所は、とうとう剛力も超力も招来せずに、空中ジャンプでイナズマンに瞬間変身してしまう渡五郎(笑)
これまでも、(主に雷神号登場の都合で)いきなりイナズマンで出てきた事はありましたが、いきなりイナズマンに変身させるのは辛うじて我慢していたのに……!
本格的にサナギマンが要らない子扱いを受けつつある死闘の日々、もはや「デイ! デイ!」と唸るだけになってしまった合体ウデスパー(公式名称)はイナズマンを追い詰めるも、無理な納期による調整不足が祟り、動力回路がオーバーヒートを起こした事から緊急リコール。
急ぎアルファとべータへの再分離手術が行われる事になるが、ガイゼル総統は自身の無茶な命令を棚に上げ、「失敗の罪は重い」と担当研究者を処刑する芸術的に駄目なマネジメントを披露し、生首が床を転がる衝撃映像。
合体腕スパーの早退により九死に一生を得た五郎は縞々シャツでうなされており、突然、かつてない方向性の衣装が登場したのですが、荒井の着替えでしょうか(笑)
デスパー軍団がファッションショーを襲撃したとの報を受けた五郎と荒井は、軍団に追われていた女性を救出。
女性が拾ったという、不審な男が落としたライターを分解すると、中からXY307と記された、デスパー軍団の緊急幹部会議を示す暗号文を入手する。
「確かデスパー3区は高尾台。07は午後の4時」
これまで愛用していたライフル銃は前回の山登りゲストヒロインに餞別として託したのか、ショットガンに装備を変更した荒井と共にデスパーの会議にカチコミをかけた五郎の前に立ちはだかるのは、右腕に強力な銃を身につけたサイレンサーデスパー。
女性型という事でか、メタルグレーが基調のデスパー怪人としては異彩を放つ真っ赤なアーマーを身につけており、どことなく巨大ロボットアニメ(今作同時期には『マジンガーZ』が放映中)を感じさせるデザインです。
この後、利き腕を徹底的に攻められたサイレンサーデスパーは逃亡するが、そもそも会議自体がイナズマンを爆殺しようとするフェイクであり、さらわれていたゲストヒロインを助けて辛うじて脱出するが、ゲストヒロインこそサイレンサーデスパーの正体であり、サブタイトル通りにいきなり分身するのであった!
「分身」はサイボーグの特殊能力は強弁にも程がありますが、前作第22話以来の島田脚本だけに、前作用に準備していたプロットが流用されていて本当は“ミュータントの特殊能力”の予定だった、と言われたらちょっと納得してしまいます。
荒井がさらわれ、女の正体を見破って腕をねじりあげた五郎は、「ガイゼルに恨みがあるから殺してほしい」と言い出した女の案内でデスパーのアジトに乗り込むが勿論罠で、ひたすらに愚直なヒーローといえばヒーローなのですが、あまりにも見え透いた状況であくまでも“女を信じる”五郎の心情には特に焦点が当たらず、裏切られた後のリアクションも怒りを表明するだけで今回ならではの要素が薄く、女サイボーグの奸計が主題なのに女サイボーグに対する五郎の反応は九分九厘いつも通りという、ちんぷんかんぷんな内容。
荒井ともども地雷原で抹殺されそうになる五郎だが、教えてやろう! サナギマンに地雷は効かない!
サナギマンにちょっと見せ場……というには、地雷踏んで煙に姿が隠れるだけなのでパッとしないのですが、デスパー軍団はもう少し、サナギマン/イナズマンの出鱈目に対する、リアクション芸を磨いた方が良いと思うのです(笑)
ガイゼル総統こだわりの新型円盤兵器が発進すると、超力招来したイナズマンは主題歌に乗せて雷神号を召喚。特殊なカモフラージュ能力で雷神号を攪乱する円盤兵器だったが、それに指示を出す肝心のサイレンサーデスパーが、遮蔽物ゼロの平原に立っていた。
イナズマンは躊躇無くサイレンサーデスパーに強襲をかけると、コントロールの乱れた円盤兵器を必殺の体当たりで粉砕し、残るサイレンサーデスパーはゼーバー落雷の術でデスパー怪人チェストでごわす。
鳴り物入りの強敵の筈だった合体腕スパーは開始数秒で腹痛を訴えると分解されて以後出番がなく(東映ヒーロー前後編メソッドといえばメソッドですが)、情報提供者が実は……の女スパイ物は第7話でやったばかりな上、騙す側も騙される側も心情になんの焦点も当たらないので、ただただ無味乾燥な「罠でした」が何度かあるだけで、その「騙し」から何も広がりが生まれない、残念なエピソードとなりました。
腕スパー兄弟は、合体した時と同じようにあっさりアルファとベータに戻って無事な顔をちらりと見せ、もうこの際、元の腕スパー参謀に戻る手術を行った方がいいのでは総統……?!