東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
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立花藤兵衛は立ち止まらない

仮面ライダーV3』感想・第5-6話

◆第5話「機関銃を持ったヘビ人間!」◆ (監督:塚田正煕 脚本:鈴木生朗)
 シリーズ複数に参加、後の『ストロンガー』では、中盤のターニングポイントとなる敵組織交代劇を担当した鈴木生朗さんがサブライター一番手として登場。
 原子力に代わる新しいエネルギーの理論を完成させつつある、理論物理学の権威・村山博士を狙うデストロンの改造人間・マシンガンスネークだが、肝心の書類は博士の秘書の手元にあり、狙われる母子家庭。
 登場する度に「マシンガンスネークだ」と名前を主張するスネーク!
 何故か博士ではなく秘書に新理論をわかりやすくレクチャーさせようとするスネーク!
 改めて博士を拉致しにいくとついイラッとして噛み殺してしまうスネーク!
 秘書が拷問に耐え抜いた事から「痛めつけずに協力させる方法を考えるんだ」と首領からアドバイスを受けたにも拘わらず、「小僧! トドメだ」と、秘書息子を撃ち殺そうとするスネーク!
 どう考えてもそれ、息子を人質に取る流れだったよねスネーク?!
 最初から最後までスネークの頭が悪すぎるのですが、自前で資料を分析できず、博士から資料の清書を任されていた秘書にわかりやすい説明を求めるデストロン科学班のぽんこつぶりも大変不安を感じさせます……それとも、博士が悪筆すぎて、長年働いている秘書にしか読解できない暗号文書のようになっていたのでしょうか……。
 頭脳回路には問題があるスネーク(TVバエの臨機応変ぶりと比べると、改造前の知性が改造後にも影響するのか……?)だったが、必殺のマシンガン攻撃の威力は高く、見所は、ナイフ一本で弾丸摘出を行う立花藤兵衛。
 最初は誰にも頼ろうとしない志郎の姿に、バラード調アレンジの主題歌インストを重ねて“改造人間の孤独”を強調するのですが、敵の攻撃と志郎の悶絶描写に開きが大きく、消化しにくい流れに。
 怪人のモチーフがスネークだけに、毒入り弾丸とかの設定だったのかもですが特に言及はなく、志郎の苦悩と苦悶よりも、弾丸摘出を請け負う藤兵衛、面倒くさい女になりつつある純子の心情を汲んでさらっとそれを手伝わせる藤兵衛、花輪の一件について既に開き直って普通にスポーツ用品店を経営している藤兵衛……という、この昭和ライダーを統合する伝説級ヒロインの場慣れしすぎた狂気の方が際立ちます。
 ある種、《スーパー戦隊》長官ポジションの源流といえるのでしょうが、正気という概念にセメントマッチを挑むネジの落ちっぷり。
 ……それは『ストロンガー』の頃には、あんな事になってしまうわけです。
 前作未見の為ハッキリとは言えませんが、恐らくこの世界ではかなり信憑性のある(が一般人にはアプローチ方法がわからない)存在として、秘書の息子と、その母親探しを手伝う近所の兄貴分(やたらいい味を出していて、今回のマンオブザマッチ)の口から「仮面ライダー」の名前が出され、スネークに追われる少年たちが助けを求めると、復活したV3が高いところに登場。
 改造人間だって撃たれると痛い! とマシンガンには及び腰のV3だったがその時、脳裏に一文字隼人の録音メッセージが響く。
 「志郎! 物事の基本は、筋肉……!」
 ダブルタイフーンを全開すると、V3・26の仕込みの一つ、「鋼鉄の銃弾をも跳ね返す強化された筋肉」が発動してマシンガン攻撃をぞんざいに跳ね返し、『イナズマンF』感想で書いた与太が、『V3』で実現してしまうとは!
 鍛える者は救われる――一切衆生悉有筋肉。
 究理へのパスポートで脅威のマシンガン攻撃を打ち破ったV3の反転キックによりスネークは弾け飛び、負傷した兄貴分の少年を病院に運ぼうとするV3だったが、地中からハンマークラゲが姿を現し、今回もダブル怪人前後編形式で、つづく。

◆第6話「ハンマークラゲ出現! 放て、V3の必殺わざ!!」◆ (監督:塚田正煕 脚本:鈴木生朗)
 「村山博士が死んだ今、エネルギーの秘密を解けるのは、その女しかいない。我々に協力させるには、その子供を連れてくることだ」
 前任者の頭があまりに悪かったので、今回は丁寧に作戦指示を出すデストロン総統により、今度こそ狙われる秘書息子。
 一方、姉弟二人きりの家庭の事情が語られた兄貴分は手術により一命を取り留めるが、駆けつけたお姉さんに「デストロンの仕業だ」と説明して、冷ややかな視線を向けられる志郎たち。
 前回今回と、世間に理解を得られないヒーロー(たち)の孤独と苦闘に焦点が当てられているのですが、そもそもが、たまたまデストロンの存在を知ってしまった為に家族を皆殺しにされた風見志郎から始まっている今作、有名無実になりがちな設定とはいえデストロンの名は積極的に広めるものではないと思うのですが、
 「その為に怪我の事情を説明できず疑いの目を向けられる」
 ならまだしも、
 「積極的にデストロンの名を出した事で危ない連中だと思われる」
 ので狙いが大きく逸れてしまった感。
 加害者の疑いさえ持たれた志郎が余計な弁解をしない姿を格好良く見せようとするのも、デストロンの怪人に襲われた発言の後ではあまり機能せず、医者に説明を求めに向かったお姉さんはお姉さんで、「銃撃です」「は?」「弟さんは銃で撃たれました」と言われたらどうするのかと思われたが、既に医者に成り代わっていたハンマークラゲに脅迫を受ける事に。
 結果としては、姉が怪人の実在を認めた事と、兄貴分の麻酔が切れて目を覚ました事でデストロンの存在が共有され、秘書の子供をさらおうとするデストロンから、一同揃って逃げ回る事に。
 ヘルメット被ったまま水面に顔を突っ込まれる地味にえげつない攻撃を受けた志郎は変身するが、V3キックはクラゲに全く通用せず、デストロン怪人の強さを見せると共に、V3自身がスペックをフルに発揮できていない事を示しているのでしょうが、基本的に弱いぞV3。
 一方、戦闘員を次から次へと蹴散らしていた藤兵衛は、少年をさらった車に貼り付くと、最終的には振り落とされてしまうも発信器を取り付ける事に成功し、一般人としては経験値を稼ぎすぎていた。
 首尾良く少年をさらったクラゲは、人質として秘書の前に突きつけ、工事現場からクレーンで吊される少年の図を見ると、パロディとしての『フルメタル・パニック!』(賀東招二)の方を思い出してしまいます(笑)
 人類社会の平和の為、目の前で子供を吊り下げられてもなお首を縦に振らない秘書だが、いよいよという時にV3が駆けつけると、ハンマークラゲの鎖鉄球をかいくぐり、V3スクリューキックにより勝利を収めるのであった。
 ナレーション「厳しい社会の風に耐えて、懸命に生きる人々の上に、再び平和は甦った。だが、人類の敵デストロンは、まだ滅びてはいないのだ。戦え、風見志郎。仮面ライダーV3!」
 最後のナレーションが示すように、母子家庭や両親の居ない中でも明るく生きるゲスト少年たちにスポットを当てて、“正しい心の在処”を描こうとする意図があったようですが、それが寓意としての「人類の敵・デストロン」の作戦と連動せず――どちらかというと、学会の権威である博士の秘書として10年以上働いている割に、お母さんは正統な報酬を貰っていなかったのではと心配になるのですが――そこに改造人間の孤独とか世間の無理解とか、仮面ライダーを信じる子供たちとか、人類の正義を守る事にやたら覚悟の決まっている秘書とか、あれこ入れようとしすぎてとっちらかってしまった感。
 前後編の情報量をどう扱うかの難しさもあったのかもですが、もう少し、要素を刈り込んだ上で連動を図ってほしかった内容となりました。