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簡易レビュー企画2:『ジャッカー電撃隊』

 全話視聴済みの作品を、簡便に一つずつまとめてみようという、手探り気味の企画です。

核に電気に重力磁力

◆『ジャッカー電撃隊 (1977年4月2日~1977年12月24日) 全35話

演出〔竹本弘一:16本 奥中惇夫:8本 山田稔:5本 平山公夫:4本 田口勝彦:2本〕
脚本〔上原正三:26本 押川国秋:4本 新井光:2本(※連名1本) 曽田博久:1本 平山公夫:1本 長坂秀佳:1本 高久進:1本(※連名)〕

 国際的な犯罪結社クライムに立ち向かう為、人の体を捨てて生み出された4人のサイボーグ戦士、ジャッカー(J・A・K・Q)、ジャッカー電撃隊
 「そして私は、ジョーカー」
 第1話から迸る長官ポジションの狂気にあてられ、人の弱さを冷たく固いメカの中に押し込めた4人のサイボーグヒーローが凶悪な犯罪ロボットに立ち向かい、洒落っ気と男くささの入り交じった演出に彩られながら、凄絶な戦いの中でえぐみのある人の死が描かれるハードボイルドな犯罪ドラマ×変身ヒーロー。
 敢えて瞬間変身を廃し、輸送機の中のカプセルに入る事でサイボーグ戦士となる設定も渋かったのですが……あまりにも地味すぎる展開が続いて受けが悪かったのか中途で頓挫すると、明確なギャグシーンの増加・女性隊員のレギュラー化・子供ゲストのノルマ化・喋り出すハムスター、と立て続けに路線修正が放り込まれた末、第23話よりニューヒーロー・ビッグワンが登場。
 登場初回(劇中での登場前)からのOP乗っ取りを敢行すると、当時ヒーロー役者としてノリにノリまくっていた宮内洋が好き放題に暴れ回り、クライムにとっての宿敵もジャッカーからスライドする驚天動地の主役強奪により、東映ヒーロー史における“大幅テコ入れの代表的作品”として名を残す事に。
 正気を疑う派手な衣装・無謬の最強存在・「変装」によりどこにでも出現できる万能性、とジャッカーとは別の意味で人を越えているビッグワン/番場壮吉の存在は、幾つかのエピソードではデウス・エクス・マキナそのものとしても機能し、テコ入れキャラとしてはこの上ない衝撃となりましたが、それは必然的に、ジャッカー電撃隊に終演をもたらす存在ともなって、番組後半の起爆剤はそのまま、作品そのものを宇宙の始原に還すビッグバンと表裏一体なのでありました。
 路線変更の荒波に揉まれて宇宙の渦に沈没した感の強い作品ですが、特筆したいのは、コメディ色の強い導入で登場したユーモラスな怪人は果たして善か悪か? を焦点に据え、騙されているのは、ジャッカーか? ジョーカーか? はたまた視聴者か? と作風の変遷そのものを利用したトリックが冴えた、第21話「バラ色の野球時代!! クライムの強打者」。
 作品初期の要素と中盤の要素を巧みに織り交ぜる事で視聴者の読みを絶妙に狂わせ、最終的には前半と中盤の『ジャッカー電撃隊』を融合させた一つの到達点といえる内容に辿り着き、紆余曲折あった今作ならではの面白さが生まれた怪作にして快作となりました。
 メタ構造を取りこんだエピソードとしては、東映ヒーロー史に視点を広げても、傑作の一つと言えるかな、と。
 また、〔仲間集め・ヒーローの基本的背景・チーム結成・デビュー戦〕のくだりをテンポ良く1エピソードにまとめた点では第1話の完成度が非常に高く、(80年代以降の戦隊は尺の短縮から同様の作劇が難しかった事情はありますが)私見では仲間集めパターンの導入でこれに匹敵する出来となると『鳥人戦隊ジェットマン』を待つ事に。
 その『ジェットマン』にしても初回で5人揃えるのは諦めた上での構成ですし、今作第1話は一つのフォーマットとして非常に鮮やかでありました(個人的に『ジェットマン』第1話は、今作第1話を一つの指針にしていたのでは? と思っていたりします)。
 辻褄の合わなすぎるエピソードなども多く作品としてお薦めはしにくいですが、上原正三の筆が閃く切れ味に、70年代ヒーローらしい狂気に満ちあふれた一作。

一番好きなエピソード:
 ●第21話「バラ色の野球時代!! クライムの強打者」 (監督:竹本弘一 脚本:上原正三

印象深いポイント:
 ●なにはなくとも「サイボーグにならんか?」。
 ●良くも悪くもビッグワン。
 ●鯨井長官/ジョーカーの気の触れ方。
 ●そんなジョーカーとダイヤジャック/東竜の間に通い合う、謎のアウトロー魂。
 ●クライム大幹部アイアンクローをパワフルに演じる石橋雅史
 ●前半の必殺技ジャッカーコバックの格好良さ。

口に出して読みたい名台詞:
 ●「サイボーグにならんか?」
 ●「いよいよピンチの時は……相手の目を狙うのよ」
 ●「はははは、デビルアクマだぁ」
 ●「いや、悪い奴こそ、いいふりしてみせるもんなんだ」「そう、クライムは悪いに決まってるんだ」
 ●「隠れスパイ心得その1!」