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サイボーグは誰がために

イナズマンF』感想・第7話

◆第7話「大決戦! ウデスパー対イナズマン!!」◆ (監督:塚田正煕 脚本:上原正三
 前回の円盤兵器ホールインワン事件を受け、いよいよガイゼル総統よりイナズマン抹殺命令を下されたウデスパー参謀は、暖めていたサイボーグ美女作戦を発動。
 人間と寸分違わぬ見た目のサイボーグ美女・ミスワンを、デスパー戦闘員に追われるカメラマンとして五郎と荒井に助けさせる、古典的なミッション:美人局を開始する。
 ショックから言葉を失っているという設定で病院に運ばれたミスワンのカメラには、デスパー軍団の基地を写したと思われるフィルムが入っており、目撃者を消す為にミスワンを病室で襲撃する看護師サイボーグの衣装やノリがなんだか、後の<ネオギルド>の戦闘ロボットを思わせます(笑)
 ミスワンをデスパーの追っ手から匿うべく五郎たちは病院から地下倉庫に移動し、「いい場所」なの、そこ……?
 「ここなら安全だ。殺し屋は来ないからね」
 とにこやかな五郎ですが、デリカシーは0点だ!!
 (……私はウデスパーの猟犬なんだ。獲物の居場所をウデスパー参謀に知らせる事が使命なのさ)
 ミスワンは密かにデスパー基地へと通信を送り、隠れ家の場所を把握した腕スパーは、問答無用の先制攻撃でミサイルをぶちこむと宣言。
 一方、眠る五郎にナイフを向けるミスワンだが五郎は当然それを待ち構えており、ミスワンがナイフを手に五郎へ近づくに際して、画面手前に寝っ転がっている荒井が銃を収めた懐に手を入れているのが、渋い演出。
 「とうとう正体を現したな! 君は病院で襲われた時、俺がかばうより早く、身をかわした。君がサイボーグである事はすぐわかったよ」
 前回の今回なので、サイボーグの存在を受け入れるのが早かった!
 つまり計画通りだから俺のデリカシーが0点なわけではない、と揉めている間にデスパーミサイルが隠れ家を直撃し、3人は辛くも脱出。
 「あの子はまたウデスパーに連絡を取るかもしれんな。自分も殺されかかったのに……可哀想なやつだ」
 「やはり知ってたんですね…………悪の為に作られたサイボーグ」
 「……サイボーグといえども人間だ。人の心を持っている筈だ」
 「憎むべきは、彼女を操っている、ウデスパーです!」
 「……サイボーグ、命令のままに動く機械か。いやぁそうじゃない」
 ミスワンの心情に焦点を当てて話を進めるには、そもそも今作における「サイボーグ」とは何か? を示してくれないと消化しにくいわけですが、思った以上に、前回判明したサイボーグ荒井と繋げて「サイボーグの心」には触れてくれたものの、結局、人間を素体に一部を機械化した存在なのか、純正機械存在なのかは、曖昧でハッキリせず(冒頭に、心臓も人工筋肉製だから、イナズマンでも気付くまい、とか発言がありますし)。
 荒井は恐らく前者だと思われますし、基本的には前者をサイボーグ、後者をロボットないしアンドロイドと称するのが一般的かとは思うのですが、作品においては割と使い方が曖昧な事があるので……後、ここでサイボーグ・ミスワンを“人間を素体に改造したが人間の心を残した存在”としてしまうと、前作のミュータンロボがまさに“人間を素体としながら悪の忠誠回路を取り付けられたサイボーグ”そのものになってしまうので、時代的にはどうせ割り切るにしても、扱いの差が外見と話の都合になってしまうのは、あまり据わりのよろしくないところ。
 二人のやり取りを耳にしたミスワンはデスパーアジトに戻ると、命令違反を腕スパーに問いただされ……チェス盤が置いてあるので多分ここ総統のマイルームなのですけど、そんな気軽に入れるの?!
 「おまえは私の猟犬だ。主人の命令に従えばよいのだ。ゆけ。……どうした? 私の猟犬らしく、渡五郎に噛みついてこい!」
 腕スパーへの反感を露わにしたミスワンはアジトを立ち去っていき、つけてなかったの忠誠回路?! 「機械の命令システム」と「人間の心」の衝突が無いと、サイボーグとしてドラマチックにならないのですが、その描写がすっぽり抜け落ちており(故に、ミスワンがどういうサイボーグなのか終始ハッキリしない)、荒井の立ち位置を掘り下げる狙いもあったのでしょうが、ゲストのサイボーグ設定は宙ぶらりん。
 デスパー側の科学者が妙に押し出しの強い見た目をしていたので、実は荒井はデスパー軍団によってサイボーグにされていた、とか因縁が繋がっていく布石なのかもですが、1エピソードとしてはなんとも消化不良な要素になってしまいました。
 「……殺して……殺して下さい!」
 「…………命を粗末にするんじゃない」
 自ら五郎に襲いかかる事で破壊を望むミスワンだが、五郎はそれを拒否。だが、二人を襲った腕スパーの銃弾により、ミスワンは致命傷を受けてしまう。
 「部下を手にかけたのか!」
 「戦えない物は生きる資格も無い! それがデスパー軍団の掟だ」
 ミスワンは、対イナズマン用に渡されていた破壊光線ペンダントを五郎に手渡し、絶命。
 「サイボーグだって命があるんだぞ!」
 「余計な事だ渡五郎! 今日は最後の勝負だ!」
 メロドラマにおけるサイボーグ要素は完全な空振りになりましたが、五郎がイナズマンになって戦いの場を移すと、それまでのカモメの鳴き声や吹きすさぶ風の音から一転、ヒロイックなBGMが流れ出すのが大変格好良くて決闘の導入として盛り上がり、やはり、ヒーロー物のBGMは、イントロが命。
 「自由の戦士、イナズマン!」
 ガトリングアームを捨てた腕スパーは格闘戦で勝負を挑むと、クローアームを装着。
 敵は出鱈目イナズマンですが。腕スパー参謀はここまでの作品貢献度が高いので一騎打ちの熱量も充分に高く、ジェットクローで首を締め上げられたイナズマンは、ゼーバーを取り出すチャンスを作れないまま苦戦。
 しかし、トドメにグレネードを選んだ事で詰めの一手を誤った腕スパーは、爆煙に紛れたイナズマンに間合いを取られてしまい、炸裂するゼーバー落雷の術で、大爆発。
 …………あ、あれ、ペンダントは?
 「ゼーバーの威力は、やはり凄い……だがこのウデスパー、たとえ死んでも、必ず甦ってくるぞぉ……!」
 《食いしばり》スキル持ちだった腕スパーはHP1で耐えると仁王立ちして幹部らしさを見せるが、イナズマンが改めて破壊光線ペンダントを掲げると、ぺかぺか光を浴びて苦しんだ末に爆発×4で木っ葉微塵に吹き飛び、爆発の中に赤い煙が混ざっている為に、とんだゴア表現になりました。
 宇宙再び?! と危惧されたペンダントは出番があって良かったですが、危うくゼーバーで勝負がついてしまうところだったので、やはり渡五郎のデリカシーは0点!
 違う、そうじゃない、俺だってデリカシーのあるところをみせてやる、とサイボーグ・ミスワンの亡骸をお姫様だっこする五郎は、デスパー兵士が腕スパーの残骸を回収しているのを目撃するが、その理由はこの時点ではまだ判然としないのだった……。
 そして――デスパーアジト。
 「ウデスパーは我がデスパー軍団の誇りだ。だからウデスパーは死なない。ウデスパーよ、おまえに復讐の時を与えよう。おまえはウデスパーアルファ、ウデスパーベータとして甦るがよい。そして戦うのだ! イナズマンを倒し我が帝国を打ち立てるまで」
 腕スパーを高く買っていたガイゼル総統は腕スパーの再生計画を実行に移し、だってほら腕スパーいないと、事務処理から現場のフォローまで、やってくれる人が居ないから!
 だが次回――なんか凄い感じになってしまった腕スパーに、大事な知力は残っているのか?!