東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
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あらいのきりふだ

イナズマンF』感想・第6話

◆第6話「ガイゼルの大要塞」◆ (監督:山田稔 脚本:曽田博久)
 「人間どもめ、邪魔なものを作りおって」
 今、デスパー軍団の大前線基地建設計画は、地上のニュータウン開発計画によって、頓挫しようとしていた!
 ……これはこれで、『キカイダー』のマンモス団地占拠作戦みたいに、時事・世相ネタといえましょうか。
 「やれぃ!」
 ガイゼル総統の号令一下、突然弾け飛ぶニュータウン
 エキストラを大量動員し、逃げ惑う人々、次々と崩れ落ちるマンションが描かれ、ニュータウンから非難しようとする人々の前に現れる腕スパー参謀。
 「よぉく聞け! この街はたった今、デスパー軍団が占拠した。ここは新人類の前線基地になる。おまえたち邪魔者は死んでもらう」
 神も仏もいないまま、デスパー兵士の銃が火を噴くと人々は次々と倒れていき、群衆の一人である赤い服の女が目立って描かれる中、凄惨な大量虐殺が執拗に描かれてデスパーのターンが全力疾走。
 変事を知った荒井と五郎は雷神号で急行すると、デスパー軍団のバリケードを破って占領地帯へと突入するが、そこには両手の刃を打ち鳴らすナイフデスパーが待ち受けており、ナイフの握りの部分が頭部になっているのが面白くて、ちょっと『キン肉マン』寄りのデザイン。
 街へ先行しようとした荒井の背に、ナイフデスパーの放った猛毒投げナイフが突き刺さり、荒井の容態を気にしながら戦う五郎は、剛力招来。
 大胸筋で投げナイフを受け止めて超力招来すると、比較的スッキリしたデザインのナイフデスパーと激しい格闘戦が続き、ナイフデスパーの蹴り技は今回の見所の一つ。荒井救出の為に宙を舞って離脱したイナズマンは、ナイフデスパーを振り切ると、もはや廃墟と化し、見渡す限り無人の街に辿り着く。
 「誰もいない……ニュータウンの人はどうしたんだ」
 「人間を見つけ次第、殺してしまえ!」
 「「「ディ!」」」
 デスパー軍団による大規模な破壊と殺戮が徹底的に念押しされ、五郎がひとまず荒井との合流を急いでいた一方、デスパー兵士の追跡を逃れ続ける赤い服の女は、迷い込んだデスパーの地下工場で謎の円盤兵器を目にするが、ガイゼル総統とばったりご対面。
 「見たな」
 が怖すぎます(笑)
 デスパー兵士から逃げる女は、無事だった荒井に助けられ、女を守りながら1分あまりで5人の兵士を始末する荒井、強いぞ荒井!
 格闘戦でなんとなく戦闘員を殴り倒す一般人レギュラーは珍しくはないですが、荒井の場合、ライフル銃で正面から撃ち殺すので、殺伐感を引き上げます。
 荒井と女は五郎との合流にも成功し、ちっとも毒の効いている様子の無い荒井に五郎がしつこく問いかけるも邪険にされて、思わぬ伏線の気配……?
 「無駄な抵抗はやめろイナズマン! 飛んで火に入る夏の虫が袋の鼠になったな。三人一緒とは好都合だ。仲良く死んで貰うぞ」
 そこを腕スパーとナイフデスパーに囲まれると、今頃パニックになって飛び出した女をかばった荒井がマシンガンの銃弾を浴び、五郎は剛力招来。
 再びナイフデスパーとの格闘戦となり、久々にちょっと筋肉をアピールしたサナギマンは連続回し蹴りによってゲージを溜めると超力招来し、本日2回目の自由の戦士・イナズマン
 すると何故か腕スパーは、次の作戦に移ると宣言して即座に総員撤収し、至近距離から撃たれた筈の荒井は、どういうわけか平然としていた。
 「……今まで黙っていてすまなかった」
 荒井がおもむろにシャツをめくると、そこには、銃弾を軽々と弾き返すアイガー北壁のように鍛え抜かれた腹筋が!
 ……ではなく、比喩表現抜きの鋼のボディが姿を見せる。
 「私はサイボーグなんだ」
 「……荒井さん!」
 「私も君と同じように、人類の正義の為に戦うのだ」
 毒も効かず銃弾も効かず、単独でデスパー占領地域に乗り込む事も辞さない荒井の正体は、機械化された改造人間であったと明かされ、前作の焼き直しめいた定番エピソードだった第5話から一転、デスパー軍団の苛烈な虐殺の光景に始まり荒井の爆弾発言が飛び出す、フルアクセルからのヘアピンカーブに感情の整理が追いつかないのですが、つまりこれは、インターポール時代の鯨井大助による、プロトタイプジャッカーという事でありましょうか。
 「君は、ガンマン魂を内蔵したスペードテンだ。そして、デスパーを倒すのだ」
 泣くな嘆くな苦しみは敵の墓標と土の下、と中年同盟はがっちりと固い握手をかわし、その背景になっている女性のポジションが、最近見たばかりの『仮面ライダーV3』とやたら重なります(笑)
 二人の姿が何か性癖に突き刺さったのか、急に落ち着きを取り戻し笑顔さえ浮かべた女性は地下工場への案内を買って出るが、闇の中ではガイゼル総統が不気味な笑みを浮かべ、ナイフデスパーの乗った巨大円盤兵器が一足先に地下工場から発進。
 「今度こそイナズマンを、やっつけてやるぅ!」
 ……これまでの例からすると、それは完全に、駄目なパターンなのでは。
 「ゴー! ライジンゴー!」
 イナズマンが雷神号を召喚すると挿入歌をバックに空中戦となり、空中で横倒しになると巨大な丸鋸と化す円盤兵器!
 これは、今作ここまであまり無かった方向性(ロボットアニメ的な印象)で、面白かったです(笑)
 必殺の体当たりにも耐えた円盤ノコギリに背後から激突される雷神号であったが、反転からの噛みつきを食らわせると円盤は火を噴きながら失速し……なんと、出撃したまま開きっぱなしだったハッチの穴にジャックポット
 見事に地下工場へと墜落した円盤兵器の爆発は更なる爆発の連鎖を生んでデスパー前線基地を紅蓮の炎に染め上げていき、あれだけの大殺戮の末に陽の目を見た前線基地が、たった1話も保たずに消し飛んでいく光景に腕スパーならずとも目が虚ろになっていきますが、イナズマンを相手に巨大空中兵器を繰り出してはいけない、は、そろそろ学習してほしい鉄則です!
 また、現場に無理な納期を求めた事が、発進ハッチの閉め忘れないし開閉機構の故障を生んだのではないかと推測され、デスパー軍団にも働き方改革が必要なのかもしれません。
 円盤兵器は前線基地と共に無残な鉄くずと化していくが、バンバラ怪人と違って緊急脱出には定評のあるデスパー怪人と、イナズマンが最後にもう一当たり。
 連続の飛び蹴りを浴びて地面に大の字で転がり、死んだふり作戦から逆襲に転じたナイフデスパーは善戦を見せるが、鳩尾への連続チェストで膝を付いたところに、イナズマン渾身のコマンド入力から抉り込むように突き刺さる、目潰しチェストーーー!!
 絶叫をあげるナイフデスパーの脳天に、続けざまにチョップが叩き込まれると、空中に跳び上がったイナズマンに雷鳴のエフェクトが重なって放たれる突然の新必殺技・念力パンチが炸裂し、デスパー軍団チェストでごわす。
 やはり、謎の飛び道具よりは打撃だな、と思いました。
 ナレーション「イナズマン、ゆけ、人類の平和の為に。デスパー軍団との、熾烈な戦いの道を」
 荒井が自らの秘密を告白した事で中年同盟の結束はまた一つ固くなり、荒野を進む五郎と荒井の姿にナレーションが重ねられて、つづく。
 荒井突然のサイボーグ宣言は本当に突然で、この感想を書いている現在、未だに消化しきれていないのですが、今回前半の虐殺シーンに見られるようにデスパー軍団との戦いの激化が想定れているならば、コメディ空間の発生や敵サイドの手落ちに頼る無理が少なくなるように、荒井の“簡単には死なない”設定が機能するのを期待したいです。
 前作における一応の支援組織・少年同盟が、人類の中から誕生した超能力者――ミュータント――といういわば、“人類の科学技術を越えた存在”だったのに対して、新たな相棒である荒井が“人類の科学技術によって強化された存在”であるのは対比として面白いとはいえ、コメディを捨てたサイドキック・荒井が、これまで以上に、作品の新たな路線の、象徴性を強めてはいる感。
 ……もっとも、この先に更なる路線変更が待ち受けており、荒井が毎回毎回新しいコスプレで登場する、面白ロールプレイおじさんになる可能性はゼロでは無い、ゼロでは無いのです。
 エピソードとしては、刺激の強い虐殺シーンありきの印象は強く、特に、周囲の死体に紛れて身を隠し、戦闘員の不意を突いて逃走をするただ者では無いぶりを見せていたゲストヒロイン・赤い服の女が、急にパニックを起こしたり、かと思えば急に立ち直ったりと、話の都合で動くばかりのキャラになってしまったの残念。
 とはいえ、五郎と荒井に情報を伝えるだけ伝えて死亡されても後味は悪かったのでそれよりはマシだった気はしますし、今回示した諸々のスタイルが、一発限りの打ち上げ花火に終わるのか、それとも今後の物語に反映されていくのか……で、だいぶ印象が変わりそう。ここから半端に逆走すると傷が深くなりそうですが、次回――頑張れ僕らのウデスパー上司!