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出会わなければヒーローじゃない

『ひろがるスカイ! プリキュア』感想・第14話

◆第14話「スカイランドへ! 憧れのあの人との再会」◆
(脚本:金月龍之介 絵コンテ:佐藤照雄 演出:飛田剛 作画監督:宮谷里沙/酒井夏海/上田由希子)
 「もうすぐ戻ると連絡があってから既に5分、まだかー! プリンセスはまだなのかー!」
 赤ん坊をテロリストにさらわれている間に、初めてのあんよイベントが終了している両親はかなり悲惨だと思うところではありますが、スカイランドへ到着したソラたちから無事にプリンセスを受け取った国王夫妻は、国家秘密保持法に基づき、ソラたちを牢屋に閉じ込め……る事はなく丁寧な謝意を示し、君主として真っ当なところを見せてくれて大変ホッとしました(笑)
 プリンセス・エルの帰還がお披露目されると、王宮の庭からはみ出さんばかりの群衆から満場の喝采があがり、王家、国民からの支持は得ている模様です。
 その後、プリンセス・エルを狙うテロリストの背後組織、アンダーグ帝国について報告したソラ達は、プリキュアとして対テロの最前線に立ちたいと申し出る。
 「相手がどんなに強くても、正しい事を最後までやりぬく! それがヒーローです!」
 「ヒーローか――」
 そこに姿を見せた美貌の騎士は、辺境での任務で王都を離れていた世界最強の剣士、スカイランドの誇る“蒼の護衛隊”リーダー、シャララ隊長。
 そしてその人こそが、10年前、幼いソラを救い「あばよ涙。よろしく勇気だ」を教えてその進む道を決定づけた、憧れのヒーローなのであった。
 思いの外早く登場したソラ憧れの人、声がいきなり本田貴子さんだったらどうしようかと一週間怯えていたのですが、斎賀みつきさんでした!
 ツバサはエルの子守役として側に仕える事を許され、ソラは特例として護衛隊の見習い隊員となり、さっそく絡んでくる、とても面倒くさそうな赤毛の先輩。
 コネ入社が気に入らない先輩に難癖つけられると一対一の模擬戦で実力を見せる運びとなり、カレン先輩も言っていました。
 「いよいよピンチの時は……相手の目を狙うのよ」
 右手に輝く電撃ハンドを操るベリー先輩はソラに匹敵する体術の冴えを見せ、イメージシーンの護衛隊がレーザーブレード構えていましたし、どうやらスカイジュエルを活用した兵器テクノロジーが存在している模様。
 ましろの叫びに気を取られたソラは正面から電撃を食らってしまい、痺れた体にトドメが迫る――。
 「蒼の護衛隊は最強のチームだ! 弱い奴に、居場所は無い!」
 前回のカバトンを思わせる発言は、ヒーローの陥る暴力性への危うさを示唆しているのでしょうが、勝ちに逸って振りが大きくなった先輩の攻撃をプリキュア神拳で見切ったソラは、背後に回って寸止めの正拳で勝負あり。
 「弱いとか、強いとか、大事なのは正しい事をしたいって気持ち。そうですよね。あなたは間違っています」
 敗者を正論で見下ろしたソラは改めて制服に身を包み、実はそもそも蒼の護衛隊に入りたくて、これといったコネもないまま田舎を出てきたのだが、偶然に偶然が重なってその念願がかなった事をましろに説明。
 お祖母様が思わせぶりに語っていたように、出会いは偶然ではなく、無限に広がっていく物語を始める為の運命なのだと、ソラとましろは改めて友人として固く誓いの握手をかわし……どうも今作、ツバサが定期的に蚊帳の外になるのは設計通りで、基本的にはソラ×ましろの“ふたりのプリキュア”を中心とした構造を意図しているのだろうか、という気がしてきました。
 シリーズ20周年としてのセルフオマージュと原点回帰、男性プリキュアを誕生させる為の方便……など色々な要素も絡み合っているのでしょうが、
 (ふたりの)「出会いから、物語は無限に広がっていく」
 というのは恐らく、作品と視聴者の関係も含めて、シリーズ歴代を視野に入れた言葉なのであろうな、と。
 ソラはスカイランドでの新たな生活の一歩を踏み出し始め、退勤の挨拶に向かった隊長室で、腕に大きな怪我をしながらも人並み外れた努力を続けて護衛隊の一員となったベリー先輩の事情を聞き、筋肉で懲らしめ、正論でぶった切った事を反省。
 「正しいことを最後までやり抜く、それがヒーロー。ソラ、君の言う通りだ。でも、だからこそ、正しいとはなんなのか、ヒーローは考え続けなければいけない」
 「考え続ける……」
 「ベリィベリーにはベリィベリーの正しさがある。みんなそうだ。難しいな。ヒーローというものは」
 だいぶメタ寄りではありますが、“ヒーローになる”事よりも、“ヒーローであり続ける”事の方が難しいのかもしれない、と先達が若者を諭し、このスカート丈をいつまで維持するべきなのか、シャララ隊長にもきっと、人知れない悩みがあるのです。
 「私行ってきます! ベリィベリーさんに謝ってきます!」
 胸のエンジンに灯が付いたソラは隊長の制止も聞かずに光の速さでダッシュしていくが、体育座りしていたベリー先輩の前に一足先に現れたのは、パンクファッションに身を包んだ如何にもナルシスト系な長髪の優男。
 「苦しかったよね、寂しかったよね。もう頑張らなくていいんだよ。君を傷つけるこんな世界、僕が壊してあげるから」
 謎の男はアンダークエネルギーを放ち、甘い言葉をささやきかける新幹部は人間を取りこむ系? かと思ったら、ベリーそっちのけで電撃ハンドがランボーグ化し、今、スカイランドの治安が世紀末!
 「弱い者には手を出さない。そう決めてるんだ。だってほら、僕って優しいからわかっちゃうんだよね。弱い者の悲しみ、怒り……なんかそういうの」
 駆けつけたソラ達を冷たい瞳で見下ろす男は、テロリストの新たな行動隊長・バッタモンダーを名乗り…………て、凄い名前。
 ちなみに、「偽物」(元来は、正規ルート以外で仕入れられた格安品の意らしい)の意味を持つ「バッタもん」における「バッタ」はどこから来て何を指すのだろうかと思ったら諸説あってハッキリしないようですが、今作においてはソラとの対比で“偽物の強さ/本物の強さ”をより掘り下げていくキャラになるのでありましょうか。
 3人並んだプリキュアと電撃ハンドボーグの戦いとなり、新幹部1回目という事でか、今作としては角度をつけた画で迫力を出してくるのですが、別に人間の失意から強いマイナスのエネルギーを引き出したりするわけでもなく(所縁のアイテムを素体にしているので、そういう設定なのかもしれませんが)、単になんとなくダークエナジーが強いみたいな感じなので、幹部完全交替形式にした割には、新幹部登場のインパクトやそこからの面白みには欠ける見せ方。
 キャラだけは特徴づけたけれど、それに周辺ギミックが連動しているわけではない、とでもいいましょうか。
 戦闘に巻き込まれたベリー先輩を守ったスカイは模擬戦での発言を謝罪すると、鍛え上げた筋肉でランボーグを投げ飛ばし、
 「な、なんてパワーだ」
 と、厭味と余裕たっぷりの新幹部がいきなり慌てて、う、うーん……今回ぐらいは、虚勢を保っても良かったような。
 間髪入れずに、スカイランドにもやってくるプリキュアUFOによりあっさりアブダクションされた電撃ハンドボーグは消し飛び、ここにプリキュアスカイランド凱旋試合を勝利で飾るのだった。
 「っざけんなよ! …………ふっ。おめでとう。お互いいい戦いだったよね。また会おう。バッタモンモン」
 下品な叫びで本性を垣間見せたバッタは取り繕うと撤収し……前任者と同じ形式ではあるのですが、帰還呪文が、凄く、間抜けです(笑)
 ソラとベリー先輩は和解し、「正しいとはなんなのか、ヒーローは考え続けなければいけない」と憧れの人の言葉を深く胸に刻みながら、ソラの新生活が幕を開けて、つづく。
 スカイランドへの帰還、新たなる敵登場の新展開となりましたが、ソラの新規採用にしろ先輩との衝突にしろ憧れの上官の導きにしろ、よく言えば几帳面に、悪く言えば淡々と、ありきたりのイベントを順々に並べていっただけで、目を引くところに欠ける内容。
 定跡は定跡で構わないのですが、そこでキャラクターとの化学反応があるわけでもなく、非情に淡泊な出来になってしまいました。
 特に異世界観光旅行に来た筈のましろは、これといって異世界への驚きを示さずにランチしたり買い出しを差し入れしているだけで、登場シーンの一切になんの面白さもなく、ほぼ、なんのためについてきたのかレベル。
 一つの節目で握手させたかった、といえば握手させたかったに尽きるのでしょうが、そこを除くと今作の短所が強く出た、ただ状況を進めるイベントを型どおりにこなしていくだけのダラダラとしたエピソードに。
 ……これは、今作第1話がかなりぎゅっと詰まった内容だった為に、そのぐらいの情報の密度を期待してしまう意識とのギャップが余計に遅く見せているというのはあるとは思いますが、立ち上がりに見せてくれたテンポの良さがその後のエピソードにほとんど反映されず、このリズムで行きます、と示したのだと思って待ち構えていたら、全然違うリズムでボールが飛んでくる感触。
 一つのカットにどれだけの意味を乗せるのか、10秒のシーンでどれだけの芝居をさせるのか、みたいな話なのですが、今作第1話における情報の詰め方が期待を膨らませる出来だっただけに、物足りなさが募ります。
 今回を見る限りでは、ソラ憧れの人は割と真っ当な人物のようですが(ソラが飛び出した後の呟きが「ニヤリ」じゃなかったので(笑))……こうなると、生死不明になって後々、仮面を付けて敵に回る洗脳パターンでしょうか。絶好のタイミングで辺境の任務で都を離れていたのが怪しいといえば怪しいですが、どちらかといえば内部にスパイが居て、次回の混乱の中、副隊長あたりに刺されて炎と瓦礫の下に消えそう。
 次回――アンダーグ帝国の復讐の時は来た! 今こそお見せしよう、黒い大怪球、フォーグラーーー!!
 「まさか……フォーグラ王子が、生きている?!」
 「スカイランドが……スカイランドの灯が消えていく……」
 (※書き手は、巨大な球体状の敵を見ると興奮する病気にかかっています)