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定めと人情秤にかけりゃ

忍者戦隊カクレンジャー』感想・第22話

◆第22話「笑って頂きます」◆ (監督:東條昭平 脚本:曽田博久)
 惚れっぽい担当のセイカイが、買い出しの帰り、ソーラーカーの研究開発を行っている女性・麻衣子と知り合って熱烈にアピールする一方、街の至るところで笑いガスが噴出して大パニックが発生し、それをばらまいていたのは、妖怪エンラエンラ。
 ガス状ボディの妖怪はカクレンジャーの通常攻撃が全く効かず、空気中にガスを充満させてから自分で火炎放射する掟破りのコンボ技でカクレンジャーを蹴散らすと、講釈師空間に入り込んで笑い転げる講釈師の代わりに、車の排気ガスから誕生した妖怪であると自己解説。
 東映名物:忘れた頃の環境汚染ネタにより、地球のガン細胞たる人間が作り出した淀みより生まれた妖怪が何より憎むのは、そう、クリーンエネルギー!
 その頃、新たな妖怪の出現に気付かぬセイカイは、麻衣子と子供たちに協力して猫丸の屋根にソーラーパネルを取り付けており……いやそもそも、何で動いてるのか、猫丸。
 「何やってんだセイカイ?!」
 「やあみんな。太陽エネルギーで走る無公害、理想の車を開発する為のお手伝いを……」
 「なに暢気なこと言ってんのよ!」
 麻衣子らに愛想笑いを向けつつ、セイカイの耳を掴みに行く鶴姫、やはり、この路線を強調するのがベストなのでは(笑) 序盤からですが、これをやってもあざとすぎもきつすぎもならないのは、良いキャストだと思います。
 サスケたちが車外で揉めていると、麻衣子と子供たちを乗せた猫丸が突如として走り出し、排気ガスを腹に収めていた煙妖怪がこれを目撃。
 「排気ガスの出ない車など作られたら、俺は生きていけないでガス。許せん!」
 いやそれそもそも、排気ガス出して走るのかな……と疑問はさておき、自らの存在意義を揺るがされて怒りに燃える煙妖怪は猫丸に取り付けられたソーラーパネルを滅茶苦茶に破戒していき、セイカイと激突。
 「ソーラーカー反対! ソーラーカー反対!」
 「……ソーラーパネルの力で走ったんじゃない! 猫丸が勝手に動いただけなんだ!」
 屋根から投げ落とされたセイカイは、麻衣子たちに喜んでもらおうとついた嘘が、優しさのつもりで取り返しの付かない事態を招いてしまった事を謝罪し、前回今回と、見ていてあれ……? というポイントが、実は……になっている作り。
 煙妖怪の痺れガスを浴びたセイカイが絶体絶命の危機に仲間たちが駆けつけてスーパー変化するも、再び掟破りの、ガス妖怪が自分で火炎放射が放たれ、一同大爆発。
 「馬鹿野郎! 俺は…………俺はなにもかも台無しにしてしまった! …………でも、この償いは必ずする」
 生身でガス爆発に巻き込まれてダメージの大きいセイカイは、夢のソーラーパネルを失った麻衣子たちに重ねて謝罪し、“軽い悪戯が深刻な事態を招く”パターンなのですが、その動機が「モテたいから」100%だとあんまりなので追加した「夢を応援したいから」との混合比率を、煙妖怪との激突に際して強引に引き上げた結果、イカイ本人の精神状態に若干の混乱が見られます。
 「俺は忍者戦士……たとえはこの身はどうなろうと、戦うのが戦士の定めなのさ。君たちは、女エジソンに……ちびっこエジソン。発明の心だけは、忘れないでくれ」
 モテたいあまりに嘘をついた結果、妖怪に目を付けられて大損害を与えてしまったでは俺が人間として終わってしまう! → いや違う、俺は麻衣子さん達が夢を諦めない為に希望を見せてあげたかったのだ! → 夢と希望を守る為、自らの身を削ってでも戦うのが戦士! → そう、俺は忍者戦士! → 戦士には愛や恋とか許されないィッぃ*ェ@ィィ!!
 と、自己弁護から流れるように理論武装をキめたセイカは、雰囲気に流されて子供達の前で背中にすがりつく麻衣子をふりほどくと、上着を肩に引っかけて気取った仕草で煙妖怪との戦いへと歩み去り、流れ出す演歌調のメロディに何事? と思ったのですが、この後の歌詞を聞くに、どうやら「唐獅子牡丹」の模様。
 ……いや、わかったところで、「唐獅子牡丹」何事? なのですが、東映のヤクザ映画<昭和残侠伝>シリーズの主題歌との事で、後半にいきなり濃厚なパロディ(時事ネタ)が弾丸クロスで放り込まれるのも前回と同じ作りといえば作りですが、前回に比べて飛躍が物凄く、なぜ昭和のヤクザ映画なのか、なぜカズダンスならぬ健ロールなのか、世は、第○次高倉健ブームとかだったのでしょうか?!
 「……ちょっと、格好つけすぎたかな」
 恐らく、数日前にジライヤと一緒にローカル局のロードショーで見たとかなのでしょうが、高倉健ロールプレイの麻酔効果が切れたセイカイがコミカルに痛がる事で普段のトーンに戻り、やや不可解なサブタイトル「笑って頂きます」も、<昭和残侠伝>シリーズにおける高倉健の決め台詞「死んでもらいます」からだったのかも。
 既に妖怪と戦っている仲間の元に駆けつけ、高い所でスーパー変化したセイカイはそのまま格好良く成敗……は出来ずに、5人揃っても打撃無効のガス状ボディに手も足も出ないカクレンジャー
 だが、去り際のセイカイの言葉に自分たちの出来る事を考えた麻衣子と子供達が煙対策をひらめキングすると、私たちの武器は知恵と勇気だ! とスーパー掃除機で煙妖怪の後頭部を打撃……じゃなかった、スーパー掃除機を黄に渡し、それで煙妖怪を吸い込んでしまう事で逆転勝利。
 巨大化によって力業で妖怪が掃除機から脱出すると、カクレンジャーは忍者合体を発動して掃除機の次は無敵将軍の吸い込みで、ハイ瞬殺しゅんさ……火炎将軍剣、無効?!
 必殺の大技を空振りしたカクレンジャーはガス攻撃を受け、不敗を誇った無敵将軍の術が解けてしまう驚愕の展開。そこに麻衣子たちが今度は冷凍ガス噴射装置を持ち込み、凍り付いた妖怪に対してファイターを繰り出すと、巨大カクレンジャーボールが炸裂してトドメとなり、衝撃衝撃衝撃が釣瓶打ちの巨大戦となりました(笑)
 セイカイの行動原理の比率が強引にねじ曲げられたり、そこから脈絡のないように見えるパロディに飛躍したり(リアルタイムではもしかしすると、ピンと来る時事があったのかもですが)、筋としては無茶が目立ちましたが、80年代戦隊の主要テーゼであった「科学」が環境問題をベースに持ち込まれ、それを象徴とした“一人一人の世界をより良くしようとする心”がヒーローを助ける、のは曽田先生らしい話運びに感じました。
 キーワードとしての「発明」を用いて、〔ヒーロー/一般市民〕の関係を、〔戦う(守る)者/未来を作っていく者〕として示す――なんの為にセイカイが戦おうとしているのか示す――アイデアそのものは面白かったのですが、あまりにも『カクレンジャー』としての積み重ねが無いので異世界転生レベルの無理が出たのが、残念。
 人類社会への実害・物理攻撃無効の難敵・酷たらしい最期、と三拍子揃ったエンラエンラは、強敵妖怪としてなかなか良い悪役でした。
 次回――そういえば忘れていたパワーアップ展開で、物語は大きく動き出す?!