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ライフルは打撃……武器?

イナズマンF』感想・第4話

◆第4話「謎の飛行船? 宇宙へ!!」◆ (監督:田口勝彦 脚本:平山公夫)
 東京郊外の金保管所を、顔ストッキングで襲撃するな。
 下準備の慎重さはともかく戦闘能力は高かったのか、警備員を皆殺しにして大量の金塊を運び出している最中のギャングたちをドリルデスパーが襲い、左肩の上に前方へ突き出す形でドリルが出ている、ドリルモチーフとしては面白いデザイン。
 「死ね、国際強盗団」
 そ、そうか、国際強盗団なのか……。
 「ドリル殺人光線!」
 一声叫ぶとドリルそっちのけで胸のDマークから放たれた光線を浴びたストッキング男が顔面血まみれで床に倒れ、デスパー軍団は金塊を強奪。だが、外で待機していた強盗団のメンバーがその後を追うと、強盗の上前をはねようとはふてぇ野郎だ! と車で渾身の体当たりを決め、治安が大変<レスキューポリス>。
 デスパー軍団と国際強盗団が金塊を巡って争っているところに駆けつけた荒井が、俺たちの武器は勇気だ! とライフルを棍棒代わりに殴りかかるも殺人光線の餌食になりかけたところで、登場イナズマン
 デスパーと中年同盟が争っている間にまんまと金塊を奪って逃げ出したギャングを、デスパー軍団のトラックを奪った荒井が追う錯綜した展開で、殺人光線はイナズマンには、絶望するほどノーダメージでした。
 金塊強奪に成功したかと思いきや、市井の犯罪組織に横槍を入れられて助手席から地面に転がり落ち、金塊はまんまと強奪し返され、おまけに必殺の光線がイナズマンに無効という散々な目に遭ったドリルデスパーは逃走し、荒井もまた、手榴弾連打に阻まれてギャングの追跡に失敗してしまう。
 ドリルデスパーのあまりの醜態にプルプルするガイゼルを腕スパーが取りなし、総統の足下に跪いて雪辱を誓うドリルブラザー。
 前回の水爆のツケにより、デスパー軍団は早くも資金不足……ではなく、新開発の爆弾の原材料として金そのものを必要としており、大量の黄金を用いて完成するゴールド爆弾により、日本全土の壊滅をもくろんでいた。
 その為に必要な金塊を失った事に怒り心頭のガイゼル総統だったが、なんとここで、ギャング団の金塊の隠し場所が、デスパー地下アジトの真上の建物(監視カメラ付き)、というミラクルが発生。
 興奮のあまり立ち上がったガイゼル総統はマントを脱ぐと邪魔者の抹殺を指令し、話を引っかき回してしぶとく生き延び、荒井の口から国際指名手配犯として曰くありげに名前まで出てきたにも拘わらず、国際ギャング、画面切り替わるとドリルによって瞬殺(笑)
 首尾良く黄金を回収するドリルデスパーだが、隠し場所となっていた教会に何故か神父に紛争した荒井が姿を見せ、大切なのは、TPOに応じたロールプレイです。
 瀕死の強盗から聞き出した情報を基に金塊の隠し場所に辿り着く荒井だったが、突然のホラー演出で黒衣に顔面白塗りにした死の花嫁軍団が現れ、舞台設定からゴシックホラーかと思いきや、出てきた鬼女×3は完全に和風ホラーの文脈で、得体の知れない混合物が物凄い消化の悪さ(笑)
 催眠爆弾を食らった荒井は教会のシスターや幼稚園児たちと共に囚われ、その前で不気味な笑い声をたてる死の花嫁。
 「大丈夫だ。イナズマンが必ず助けに来る」
 「イナズマンか。今に面白い事になる。おほほほほ」
 死の花嫁が立ち去ると、代わりに入ってきたのは偽シスター。
 「ふふふふ、まんまと騙されたな荒井。ここにあるのは、おまえをおびき寄せる為の金だ」
 チェース!」
 蓋を開けたらイナズマンが飛び出してきて、うん、面白い事になりました(笑)
 ……面白い事にはなったのですが、殺戮シーンを前面に押し出したバイオレンスなギャングアクションで始まり、謀略スパイ物テイストからホラーへの急カーブを挟んで、飛び出るイナズマン、と演出が闇鍋。
 死の花嫁トリオはデスパー兵に、偽シスターはドリルデスパーの正体を現すと、囚われの幼稚園児からイナズマンへの歓声があがって露骨な声援テコ入れが行われるが、今日もフォローにかけずり回る腕スパー参謀により、人質たちは気球で空へ……!
 イナズマンが雷神号に乗り込むと戦闘機軍団が出撃し、存在を放置されていたドリルデスパーによる突然の殺人光線で気嚢に穴が開けられるも、イナズマンはなんとか気球と人質を救出。だがその間に、地下アジトに運び込まれた金塊を鋳つぶしてゴールド爆弾が急ピッチで完成に近づいていく。
 「ディ! イナズマンが子供たちを助けました」
 「なに?!」
 爆弾製造の陣頭指揮を執る腕スパーの元に律儀に報告が届けられ、前回今回と、「渡五郎が現れました」「荒井が現れました」と、妙に淡々と細かい報告が入る路線(笑)
 「……第二の手は考えてある」
 人質を無事に着地させるイナズマンであったが、突如現れた死の花嫁が漆黒の十字架をイナズマンめがけて投げつけ、取り留めと統一感の無さに困惑している内に、十字架トラップにより地中に引きずり込まれてしまうイナズマン
 「「「ディ!」」」
 「子供たちを……子供たちを頼む!」
 体を張って全力でアピールするイナズマンが、閉じ込められた地下室でぺったんこの危機に陥る一方、いよいよゴールド爆弾が完成し、総統と一緒にイナズマン煎餅作戦の生中継を見ていた腕スパーは、やむなく仕事へ。
 日本を壊滅させるミサイル発射まであと5分――今サナギマンだったら、最高の快感を味わえた筈なのに……! と壁に挟まれながら歯がみするイナズマンはおもむろにゼーバーを取り出すと、逆転チェストにより迫り来る壁を初期状態に巻き戻し、直後、ゼーバーテレポーテーションでミサイル発射室へと入り込み、好き放題すぎる ボスキャラ ヒーローだった。
 そして腕スパー参謀の移動距離を考えると、通路の突き当たり奥ぐらいの部屋に、ガイゼル総統が居るのでは(笑)
 「おのれぇ」
 咄嗟に腕スパーがミサイルを発射するとイナズマンはミサイルへと飛びつき、ミサイルと共に、空へ。
 「日本壊滅作戦……イナズマンの死を祝して――」
 「「「「ディ……!」」」」
 もはやミサイル爆破阻止はかなわず、イナズマンも日本もろもとゴールド爆弾で木っ葉微塵よ……! と通路の突き当たり奥ぐらいの部屋で偶然の成り行きに祝杯を掲げる総統以下だが、「ディ! ミサイルが方向を変えました!」と空気を読まない報告が入り、特になんの苦労もなく、イナズマンが誘導装置を破壊する事で制御を失ったミサイルは虚空で虚しく爆発し……あれ……宇宙は……?!
 「イナズマン、よくも邪魔をしたな。おまえを倒す!」
 「デスパーを倒すまで、イナズマンは死なない!」
 挿入歌をバックにイナズマンとドリル軍団の戦いとなり、前回今回と戦闘員との戦いでは、手槍を奪って振り回し、互いに間を取った睨み合いからじっくりと刺す、時代劇寄りの立ち回り。
 デスパー怪人とのアクションは一転してプロレステイストとなり、戦闘員相手には積極的に獲物を手にしての殺陣・怪人とは打撃主体の派手な格闘・前作におけるトンデモ超能力はゼーバーを介して使用、とイナズマンアクションを色分けする試みは見て取れます。
 ぐりぐりドリルを刺されたイナズマンは体勢を立て直すとパンチのラッシュを叩き込み、弱った怪人のドリルをわざわざ叩き折ってその尊厳を徹底的に破壊すると、わざわざ高い所に跳び上がっからのイナズマンフラッシュでトドメを刺し……う、宇宙は……?
 あと、飛行船は……?
 …………あまりにも気になったので、前回の次回予告を確認してみたのですが、
 (人質を乗せて)離陸する気球の映像に合わせて――
 ナレーション「飛行船に向かって、ウデスパーのミサイル砲が、ドリルデスパーの殺人光線が、次々と狙い撃つ。危ない、飛行船が危ない! 襲い来るデスパー戦闘機を蹴散らして、ゆけ、我らの雷神号!」
 との事で、どういう都合だったのか、気球=飛行船、と称するも、「謎」はどこにもなく、「宇宙」は予告にも本編にも欠片もなく(ミサイルに掴まったまま宇宙に飛んでいくものとばかり思ったのですが……)、とんだサブタイトル詐欺……というか、内容の混沌具合からいっても、脚本段階と撮影段階で話が大きく変わったりしたパターンでしょうか(笑)
 田口勝彦監督というと個人的には『超人バロム・1』での大車輪(全35話中26話を担当)が印象深いのですが、とにかく最初から最後までその場その場のインパクト優先で演出の道筋が行方不明になってしまい、突然ざっくり退場するギャング、後半ドリルデスパーの存在が消えて腕スパーが作戦を主導するなど、脚本も演出も散らかり放題で謎の多いエピソードとなりました。
 助けた園児たちに見送られて手を振り返すイナズマンは次なる戦いを見つめ……
 ナレーション「自由の戦士イナズマン、君は、輝ける正義の星だ」
 とナレーションさんがかつてなくイナズマンを持ち上げて締め、急遽激しい子供の味方アピールをねじ込むようにオーダーされて海路を見失った、と受け止めると納得はいきます(そういえばサナギマンも出てこず)。
 そして、祝杯をあげようとしている真っ最中にゴールド爆弾を台無しにされ……あれ、帝王バンバ、もしかしてとんでもない化け物と戦っていた……? と手をプルプル震わせたガイゼル総統は、最後まで戦い抜く事が出来るのか?!