全話視聴済みの作品を、簡便に一つずつまとめてみようという、手探り気味の企画です。
必ず来るぞ バロム・1
◆『超人バロム・1』 (1972年4月2日~11月26日) 全35話
演出〔田口勝彦:26本 折田至:7本 小山幹夫:2本〕
脚本〔伊上勝:14本 滝沢真理:12本 島田真之:6本 山崎久:1本 前川洋之:1本 村山庄三:1本〕
「バローム」「クロス!」
典型的な東映暗黒駄メンターに見込まれて、腕白ガキ大将と理屈っぽい優等生、馬が合わない2人が、友情の力で腕を組む時に生まれるスーパーヒーロー!
印象的な変身ポーズと、ヒーロー自体のコンセプトは面白かったと思うのですが、どだい特撮TV番組として毎回変身しなくてはいけない都合で友情はドライに数値化されて両者の価値観の衝突はおざなりにされていき、命にカウントされないとはいえ戦闘員との肉弾戦、更には人間が姿を変えられたドルゲ魔人をズババババーン! を小学生2人に背負わせていくのはあまりにも荷物が、重い……!
特に、中身小学生に怪人を爆殺させていいものか、には考慮する所があったのか、実質的な「融合人格としてのバロム・1」が変身後の主導権を握ったり、ドルゲ魔人も人間以外を素体として誕生するなど基本設定が分解再構築されていくと、その結果としてダブル小学生主人公である猛と健太郎の存在感が薄れてしまい、開始当初に打ち出した、バディ融合ヒーローの魅力を生かし切れなかったのが惜しまれる一作。
作品の出力としては怪人バトルとなりましたが、江戸川乱歩の少年探偵団シリーズのような面白さを盛り込もうとしていた節は見られ、子供冒険物として、後の《不思議コメディ》シリーズや、『覇亜怒組』などの地下水脈になっている部分もあったのかもしれません。
中盤からはホラー色が増していき、その極みといえる人体魔人シリーズの怪人デザインは強烈なインパクト。登場した20話台は、ダブル主人公と融合ヒーローの劇中での扱いが落ち着いて作品の路線が最も安定していた時期でもあり、如何にして児童層の視聴者を怖がらせるかに注力したエピソード群が作品を一つ特徴付けました。
全体としては猛&健太郎の個性と存在感の激減が響いて、“小学生2人が融合した正義の化身”というヒーロー像を使いこなせなかったのが物足りなさとなりましたが、ヒーローとして印象深かったのは、70年代初期作品としても際立つ人質の扱いの圧倒的雑さであり、結局、大宇宙規模の正義と悪の戦いから見れば、地球人類の命などちっぽけなものにすぎないのだと、物語は衝撃の結末を迎えるのでありました。
バローーーム!!
一番好きなエピソード:
●第1話「悪魔の使い 深海魚人オコゼルゲ」 (監督:田口勝彦 脚本:伊上勝)
印象深いポイント:
●自ら電話帳をめくって悪のエージェントを選抜する宇宙的悪の化身
●バロム・1の人質に対する雑すぎる扱い
●OPのスキャット
●割と図太い節があるが後に失墜する学校のマドンナ・須崎くん
●コメディリリーフにしても頭の緩さが度を超えている松五郎
●ラスボスの断末魔の叫び
口に出して読みたい名台詞:
●「コプーは正義!」「ドルゲは悪」
●「よーし、猛と付き合うなら、監禁だ」
●「もっと岩をーーー!」
いわゆる一つの特訓回ズバリの作例があるのは、ポイント高い(笑)