東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
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妖怪アウトレイジ

忍者戦隊カクレンジャー』感想・第13-14話

◆第13話「ブッとばせ不幸」◆ (監督:東條昭平 脚本:曽田博久)
 「金は天下の回りもんでーす、今日も天下の回りもんでーす!」
 胸にスロットマシンを付けたブリキのロボット、のような妖怪が夜の街を走りながらコインを投げて回っていると、先週と今週の間に読んだマンガの影響でも受けたのか、妙に格好良くそれを止めに入るサスケ。
 「――真夜中のジョギングは安眠妨害。やめてもらおうか」
 ポーズも台詞もやたら気取っているのですが、武装頭脳軍ボルトへの転職でも考えているのでしょうか。
 「そうはいかないの。おいら健康の為に走ってるわけじゃねぇ。おいらは不幸の配達人ナンダ」
 コインをプレゼントされた家には不幸が襲いかかる、と宣言する妖怪カネダマに立ち向かうサスケだが、増援に現れたユガミ博士のぶっ放したバズーカにより吹っ飛ばされ、何故かここだけレスキューポリス
 ユガミ博士とカネダマの協力により生み出された不幸のコインの力が発動すると、人生に疲れたとケーキ屋の店長は倒れ、青年は婚約者に逃げられ、女性の愛する娘は失踪し……そこに怪しげな霊媒師が姿を見せるとコインを取り除いて不幸を解消する自作自演の霊能詐欺から、礼金として身ぐるみ剥がそうと大騒ぎする珍妙なドタバタ劇が繰り広げられ、ここが視聴者を面白がらせようとするボリュームゾーンになっているのが、『カクレン』のなかなかピントが合わせづらいところ。
 そんな中、あくまで霊媒師に頼るのを良しとしないケーキ屋の奥さんにサスケ達は協力を申し出、生活感のある不幸を乗り越えていこうとする家族の愛情、自分も働くと言い出す小学生の子供、と彩りになるドラマ性が妙に古いのですが、曽田先生の手癖……?
 今回、『地球戦隊ファイブマン』最終話以来の《スーパー戦隊》シリーズ復帰となった曽田先生、東映ヒーロー作品としては前年の『特捜ロボ ジャンパーソン』で復帰していたのですが、そちらも参加1本目の第8話「見た英雄(ニューヒーロー)の顔!!」(監督:石田秀範)は、悪戯少年とアウトローの束の間の交流・手負いの犯罪者をリンチしようと追い回す一般市民、とやたら古めかしいドラマ性だったので、とりあえず試しに一本、となるとやや古めのテイストに寄りがちなのでしょうか。
 出張ケーキ店に使ったネコ丸にまでコインを張り付けられるなどあったものの、霊媒師=妖怪カネダマと正体を看破し、赤が満月斬りで一刀両断。
 巨大化した妖怪に対して獣将ファイターを送り込むと袋叩きにし、遠隔操縦で指示を出すだけで、こんなにも卑劣に見えるとは(笑)
 巨大カネダマは、獣将組体操からのコンビネーションアタックにより消し飛んで不幸のコインは消滅。ケーキ屋の店主は目を覚まして事態は解決し、これといって見所のあるエピソードではありませんでしたが、『ジャンパーソン』(93年)・『カーレンジャー』(96年)と、前後の作品では比較的自由なサブライターの立場から怪作を繰り出している曽田先生だけに、今後のカンフル剤になってくれるのを期待したいところです。

◆第14話「俺は貴公子だ!!」◆ (監督:東條昭平 脚本:杉村升
 激しい腹痛を訴えるセイカイを病院に連れて行くと出てきた、明らかに胡散臭い医者の正体は、街中に病原菌をばらまく妖怪ケウケゲン(南洋系の仮面を装飾品として身につけたオランウータンぽい解釈)。
 Aパートで早くも巨大化したケウケゲンにファイター袋叩きの術を仕掛けるカクレンジャーだったが、突如響いた笑い声と共に虚空に大サタン様……じゃなかった、アーミーヘルメットを被った骸骨の顔が現れると目から怪光線を放ってケウケゲンの身柄を回収していき、空間転移したケウケゲンが目にしたのは、鳴り響くギターに合わせて踊り狂う、妖怪ライブの乱痴気騒ぎ。
 「この地球は妖怪のものよ。人間をやっつけろー! 妖怪の天敵カクレンジャーを、やっつけろー!」
 集団の中心に居るのは、エレキギターをかき鳴らして絶叫する黒衣のメタルロッカーで、基本、ミスマッチの面白さを意図しているのかとは思うのですが、突然放り込まれてくるパンクファッションの絶叫ミュージシャンに、こちらの心のチューニングが全く追いつきません。
 謎のロッカー・貴公子ジュニアを演じる遠藤憲一さんは、奇遇にも上記した『ジャンパーソン』第8話でゲスト悪役を演じており、その時も少々おかま喋りだったり。
 「どうしたのケウケゲンちゃん? 駄目じゃなーい。一緒に! 踊らなきゃ!」
 だがそこは遠藤憲一なので素はヤクザなようで、東映伝統の打撃武器である水色のギターでケウケゲンを繰り返し殴打すると、地下室へとご案内。そこではユガミ博士が打倒カクレンジャーの為の研究室を与えられており、ケジメとしてカクレンジャーのタマとってこいや、と送り出された鉄砲玉もといケウケゲンは、いきなり巨大化での再登場。
 「恐怖と憎しみが、この世でいちばーん! とことん人間を苦しめて、私たちの、奴隷にするのよー!」
 今までになく強権的で好戦的な悪の妖怪が出現し、暴れ回る強化ケウケゲンに対してファイターを繰り出すカクレンジャーだったが、強化ケウケゲンの左腕に装着された妖怪ガンが火を噴き、獣将ファイターへの対抗策が、現代兵器を取り付けるという身も蓋もなさ過ぎて油かすも搾り取れず、気合いで勝てるなら改造手術なんていらないんですよ!
 そっちが火力なら、こっちは数の暴力だ! と、腹痛で寝込んでいるセイカイを除く赤白青黒が巨大化するが、それを待ち構えていた博士のトラップが発動し、一同火あぶりに。
 哀れ猿獣将が串刺し寸前、遅刻してきたセイカイが参戦すると形勢逆転し、ピンチを乗り越えた理由が「一人病欠していたから」で、病欠の理由は「劇の外で処理された食べ過ぎ(仮)」で、物語として「仲間の為にその苦しみを乗り越えようとする要素とか特になんの焦点も当たらない」ので虚無感だけが漂います。
 火あぶりを脱した間隙を突き、カクレンジャーが巨大獣獣からファイターに一体化すると、魂が入ってパワーアップしたファイターは拘束を破壊。強化ケウケゲンに次々とプロレス技を叩き込むとトドメはコンビネーションアタックでファイヤーし、とにかく獣将ファイターの存在をアピールしたいのは伝わってくるのですが、“ファイターとカクレンジャー(巨大獣将)が別々に行動できる”事こそがファイターの特色なのに、それをアピールしきる前に“ファイターとカクレンジャーが一体化する”と特色を消し去ってくるので、色々ちぐはぐ。
 加えて、カクレンジャー最大の戦力はファイターではないのですが、敵がファイターにこだわり、それを受けてカクレンジャー最大の危機のように煽り、無敵将軍を温存したまま終わる、というのも販促の都合があまりに剥き出しになってしまいました。
 “5人揃っていないので無敵将軍になれない”とか“ファイターの自律行動能力を活用する”とか、使えそうな要素が無かったわけではないと思うので、工夫を放棄したようなエピソードになってしまったのがとにかく残念で、杉村さんが、深刻にガス欠。
 妖怪ライブ館では、今度はピアノを奏でるジュニアがアーミードクロの正体を見せ、下忍に引きずられていくユガミ博士、これでお役御免だと、最大の見せ場は前回のバズーカという事になるのですが、果たしてもうワンチャンスはあるのか。
 幹部ポジションらしき妖怪が登場して妖怪退治の旅路に暗雲が立ちこめる中、次回――それは『シャリバン』なのか、『サンバルカン』なのか。