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忍法それは正義の証

忍者戦隊カクレンジャー』感想・第11-12話

◆第11話「ボロこそ最高!!」◆ (監督:小笠原猛 脚本:高久進
 「鏡よ鏡、世界中で一番醜い者はだーれだ?」
 ぼろきれを全身にまとい、魔法の鏡から世界中で一番醜いと言われる事を喜ぶ妖怪シロウネリだったが、突然態度を変えた鏡に服装を嘲笑われ……この数秒の間に、いったい何があったの、鏡。
 鏡の反抗に機嫌を悪くしたシロウネリが、妖術ボロボロ変化により道行く人々の服装をボロボロにして騒動を引き起こしていた頃、セイカイは街で出会った「可愛い子ちゃん」(台詞ママ)にお近づきになる為、皆の服をかすめとって女性が主催を務めるフリーマーケットで右から左に売りさばこうとしており、言い訳の余地が無い、犯罪だった(なお、ゲストヒロインの演技が、なかなか辛い)。
 姿をくらましたセイカイの仕業だと気づいたサスケたちが会場に乗り込んできて一悶着となり、見た感じカラーギャングもどきによる身内の制裁は主催女性に止められるが、通りがかりのシロウネリがボロ布操作の術を使って大混乱。
 シロウネリにさらわれた女性を追うセイカイ達だが、ジライヤの放ったカウボーイ仕込みのアメリカン捕縛術は空振りに終わり、猫丸も動きを封じられ、セイカイはボロ布団で簀巻きにされ、布操作能力が、地味に強い。
 「俺は物を大切にする奴は大嫌いだ! 古くなった衣類はさっさと捨て、ボロにすりゃあいいんだ!」
 ボロ布が好きなあまりフリーマーケットに憎悪を燃やすシロウネリは、ボロ布団でぐるぐる巻きにしたセイカイを痛めつけ、外では改めてアジトに忍び寄った仲間たちもボロ布トラップに引っかかり、これまでで最強の敵では(笑)
 だが、下忍の手裏剣を受けると毎度お馴染み抜け身の術で離脱するカクレンジャー。当惑する下忍の前に、木の葉の下から忍者ブラックが飛び出すのは、ダイナブラックオマージュでしょうか(飛び上がる時のポーズとか、こんな感じだったような)。
 「おまえをやり玉に挙げ、日本中のフリーマーケットとリサイクル店を、ぶっ潰してやる!」
 アジトの中では意外と遠大な目標を掲げるシロウネリだったが、女性を救おうと気合い全開のセイカイが忍法ボロ破りを発動し、スーパー変化。
 工場の影に五人のシルエットが並ぶのは格好いい演出となり、カクレンジャー揃い踏みから、若干プルプル気味のカクレンジャーフォーメーションで反撃すると、前回に続いてカクレンジャーボールを叩き込み、シロウネリは巨大化。
 イエロークマが立ち向かい、ジャイアントスイングからの火の輪攻撃を仕掛けると忍者合体を発動し、今回もまた、引き寄せられるように無敵将軍に突っ込んでいってしまう妖怪は、これ自体が既にカクレンジャーの術中でありましょうか。
 これまで、城と獣将と無敵将軍の関係性が微妙に謎でしたが、カクレンジャーが変身する無敵将軍は、あくまで本物の無敵将軍(城)をモチーフにした忍術であり、吸い込みからの必殺剣専用技――それ込みでの「忍法・無敵将軍」と考えると、なんだか腑に落ちます。
 ……或いは、あまりにも強大な存在と接した時に「逃げる」事すら考え及ばず、恐慌状態で目の前の恐怖に闇雲に突っ込んでいくしか出来なくなってしまうのかもしれませんが。
 シロウネリは、必殺モーションの背景に城が浮かんで演出が強化された火炎将軍剣(色々な意味で、実質的に無敵将軍が必殺バズーカ扱い)の塵となり、セイカイから主催女性への「お友達になりたい」を皆で後押しし、色よい返事が貰えると一同大喜びするが、メンバーといい感じになったゲストは男女別なく海外へ去って行く宿命なのだ。
 何故そこで感は凄くありますが、史上最も団結を見せたカクレン一同の姿は、貴重な場面でありました。
 次回――「俺たちには、正義を守る為の無限の忍法があるんだ!」
 ……薄々思っていましたが、今作の物語作法は、後の『魔法戦隊マジレンジャー』に通じるものがあるなと(笑)

◆第12話「出たァ!!新獣将」◆ (監督:小笠原猛 脚本:杉村升
 強い妖怪ベスト10で1位になるため、ユガミ博士(今回限りでは人か妖怪かハッキリしないものの、耳の先が尖っていて、なにやら狼男風のデザイン)の協力を得てカクレンジャーを倒そうとする妖怪テングが罠を仕掛け、立ち寄った街で手に手に武器を持った市民に追われる事になるカクレンジャー
 街の異常を教えてくれた少年が下忍の転がす巨大岩石に飲み込まれ、助けを求める声を聞いた5人が後を追いかけていくと待ち受けていたのは、妖怪テングと、さらった子供達の魂を核にユガミ博士の研究成果から生み出された、5体の妖怪レプリカ軍団。
 1クール目の締めに、著名妖怪率いる再生怪人軍団との対決という趣向で、巨大クローをつけたり戦車砲をつけたり、再生妖怪が体の一部をメカ化されているのが割と格好良く、ただそのままの再利用で無かったのは、良いアクセントになりました。
 「どうだ、驚いたかカクレンジャー
 「へん! やいやいテング野郎、俺たちがこんなへなちょこ妖怪レプリカに負けると思ってんのか!」
 「みんな、行くわよ!」
 カクレンジャーとレプリカ軍団の戦いが始まり、それぞれメイン回の再生妖怪とマッチアッ……かと思いきや、黄だけ、ガキダマではなく小豆洗いなのは、改造の都合などあったのかもですが、ちょっと惜しい。
 「ええい、面倒だ! こうなったら大きくなって貴様らを、踏み潰してやる!」
 強化妖怪に苦戦してカクレンジャー一同が地面に転がると、状況とあまり噛み合っていない台詞で妖気を集めたテングにより6体の巨大妖怪が出現し、カクレンジャーは巨大獣将の術でそれに対抗。
 5獣将がそれぞれ獣将用個別武器を構えると、レプリカ妖怪の内部にはさらった子供たちが存在しているのだとテングが人質の存在を明かし……首尾良くカクレンジャーを罠にはめて優位な状況を展開していたにも拘わらず、「何故か戦況をリセットする」「いきなり人質のネタを割る」と、テングの言行が支離滅裂で、尺の短さと戦っているのは伝わってきます。
 「見たか! このテング様の強さを! 儂こそ世界一の妖怪なのだ! わーはっはっはっは!」
 子供たちの苦悶の声に攻撃を躊躇った五大獣将は一斉砲撃に倒れ、変化の術も解けて生身で転がる5人に放たれる、テングの目からビーム。
 そう、筋肉を信じれば、目からビームだって出せるのです。
 「苦しいよ……助けてお兄ちゃん……」
 「ま、正夫くん……子供たちを助けないで、このままやられてたまるか! 俺たちには……俺たちには正義を守る為の、無限の忍法があるんだ!!」
 「うん!」「うん!」「うん!」「おお!」
 「みんな! カクレンジャー最大の忍法を使うんだ!」
 序盤から、半人前ヒーローとして描かれてきた――とはいっても、「戦い」に目を背けて逃げ出すような事は無かったので、“全てを「コミカル」で薄めてきた”とでもいった方が正確かもですが――サスケ達が壊滅寸前の危機からここ一番で立ち上がる理由付けを、子供達を救う為、と置いて動力にはしたものの、そこから一足飛びに最大の忍法が湧いて出てきてしまい、本来なら収めたい中身が欠落。
 ここで三太夫が出てきても白けますが、サスケが既に最大の忍法の存在も使用方法も知っており、今それを使えるようになった理由も場の勢いで処理されてしまい、その発動に至るこれといった積み上げも組み立ても存在していないので劇的な収束に至る筈がなく、肝心なところで話の腰骨が複雑骨折。
 その収束に如何にして説得力を与え、劇的な飛躍をもたらすかこそが“物語”の役目だと思うのですが、薄めなくていいところまで薄めてきた作風が、新ギミック登場と合わせて駆け足ながらもサスケ達のステップアップを描こうとしたのであろう舞台で、完全に裏目に出てしまいました。
 「「「「「カクレ流! 獣将ファイターの術!」」」」」
 5人がドロンチェンジャー付属のメダルを投げると軽装の獣将が出現し、続けて5人が巨大獣将になることで、合計10体の獣将が揃い踏み。
 「見たか! これが俺たちのカクレ流獣将ファイターの術だ!」
 ……あ、あの、サスケさん、勝ち誇っているところに大変申し訳ないのですが、確かに戦力は見た目2倍になったとはいえ、実質人質になっている子供たちの問題は何も解決していないと思うのですが(笑)
 この勢いも忍術の内なのか、カクレンジャーは人質無用のファイター軍団をレプリカ妖怪軍団にけしかけ、俊敏な動きで殴る蹴るの暴行を加えさせている内に、忍者合体。
 こ、このままでは、人質ごと殺られる……!
 と恐慌を来したテングは、人質を前に押し出す事も試さないまま闇雲に無敵将軍に突っ込んでいくとカウンターでバッサリと斬殺され、これによって妖術が解けたレプリカ軍団が消滅すると、子供たちは無事に元に戻るのであった。
 ……感想書いている(文章で再構築している)と時々、文字にして整理してみるとそこまで破綻していないのかも……と思い至る時があるのですが、今回はもしかすると、ファイターでレプリカ軍団を足止めしている間に無敵将軍で大将首を穫る! という筋書きが、映像にしたら「問答無用で子供入りレプリカ妖怪に殴りかかるファイター軍団」と「何故か率先して無敵将軍に突っ込んでほぼ自殺を遂げるテング」になってしまったのかもしれません(笑)
 ……以前から気になっていたのですが、無敵将軍、着ぐるみがアクション向きではないのでしょうか。
 それはそれとして、玩具ギミック(?)ありきのエピソードだったのかとは思うのですが、ヒーローとしてのステップアップに繋げる仕掛けが積み重ね不足で不発に終わると、
 ・無から湧いてくる状況打開策
 ・人質の安全軽視
 ・説得力の微妙すぎる逆転劇
 と数え役満で、悪い意味で70年代ヒーローぽいエピソードになり、どうにも、杉村回で苦戦が続きます。
 数の暴力もとい新たな力でテングとレプリカ妖怪軍団を撃退するカクレンジャーだったが、テングの協力者だったユガミ博士は資料を手に根城の山荘から逃走しており、またも無自覚に恨みを買って、つづく。