東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
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ヤマト族のサムライ

忍者戦隊カクレンジャー』感想・第9-10話

◆第9話「ドッキリ生中継」◆ (監督:坂本太郎 脚本:杉村升
 時代劇に夢中になり、お助け侍(ゲスト出演:ブライ兄さん)になりきってモップを振り回すジライヤ、そのノリに付き合うサスケの、切られ役演技が割と上手い(笑)
 一方、TVが大好きなあまりに自分もTVに映りたい、と妖怪・泥田坊が生中継に乱入し、たまたま現場に居合わせたジライヤとサイゾウはこれを撃退。レポーター(ゲスト出演:ホワイトスワン)の指示で生中継にばっちり映ったジライヤは、騒動の際に階段から落ちた男性を見舞ったところ、病室まで追いかけてきたTVクルーが大騒ぎ……と、ひたすらドタバタが続くのですが正直ちっとも面白くなく、今作ここまでの感じ、杉村さん、ドタバタ喜劇の適性が無いのでは……。
 少なくとも1990年前後の東映ヒーロー作品において、杉村脚本でコミカルなドタバタ劇のイメージはほとんど無いですし、不得意ジャンルをどうにか形にしようとしている、と考えると、今作立ち上がりの噛み合ってなさの一因として割と納得が。
 放送事故をジライヤに妨害された泥田坊は、泥んこ球を無差別に投げつけ、街を恐怖の坩堝に叩き込む事でTVの人気者になろうとすると、目からビームでビルを破壊し、もはや、泥んこ球とか、どうでもよくなっていた(笑)
 サスケらが慌てる一方、ジライヤは怪我をした男に代わってその息子と共にクイズ番組に出演しており、見せ方といいBGMといい、突飛な展開から突飛な展開へと飛躍するナンセンスな笑い、ないしは解剖台の上のミシンとこうもり傘の出会いとでもいったシュルレアリスム的な奇妙な味わいを意識しているのでしょうが、どうにも面白く感じられず。
 今作これまでの、ここで敢えてコミカルなBGMを……が面白いと感じた例しがないので、笑いのツボの問題もあるとは思いますが。
 クイズ番組(なお司会者役は、70年代作品で怪人声優の常連だった西尾徳さんで、今回は妙に過去作ゆかりのゲスト多め)で見事に全問正解するジライヤだが泥田坊が乱入し、舞台は電流金網デスマッチへと移行。
 「天に、代わりて悪を討つ。人呼んで、ジライヤ!」
 ここから先は、ケイン・コスギの生身アクション祭となり、道着 → 諸肌脱ぎ → 上半身裸+短パン、と徐々に露出をエスカレートさせていくジライヤ。
 残すは相撲あるのみとなった時、空手・剣術・ボクシングで完敗を喫した泥田坊が巨大化すると、カクレンジャーもこれに対抗。ブラックガンマー(目が点で怖い)の岩嵐で痛めつけたところから忍者合体し、本日もばっさりカウンターで、南無三。
 かくして、しょうもない動機の割に劇場型犯罪者を通り越して無差別爆破テロリストまでクラスチェンジした泥田坊は消滅するが、今度は女子プロレスにはまったジライヤが暴れ出して仲間を襲い、ドタバタ騒ぎでオチ……というか、いい歳と体格して行動が小学生男子の危ないヤツと化してしまっており、笑いに変換しにくいまま、つづく。

◆第10話「子泣き爺いぢゃ」◆ (監督:坂本太郎 脚本:高久進
 (いいなぁ、楽しい家族は……。……こんなに沢山の、人形たちが居るのに、私は寂しい……)
 アンティークショップの店長として人間界に潜伏していた妖怪子泣き爺は、家族への憧れからひらめキーング。
 「……そうだ。この人形たちに、魂を吹き込んで、私のファミリーを作ろう」
 ベビーカーと赤ん坊の組み合わせに変化した子泣き爺は、近づいてきた人間の魂を次々と奪っていき、押す者も居ないのに動くベビーカーは、妖怪の原典を踏まえつつ現代的なアレンジを加えた上で、思わず近づいてしまう事に説得力を持たせて映像的にも面白い、と秀逸なアイデア
 妖怪の仕業と察知したカクレンジャーはベビーカーを追いかけるも逃げられてしまい、その間にも病院には意識不明に陥った人々が次々と運ばれてくる。
 「え? カオリちゃんのお母さんは魂を奪われている。本当なんスか」
 「何故なのかはわからない。そうとしか判断のしようが」
 診断名:魂消失。
 現代医学の驚異により病因は判明したが、このままでは手の施しようのないまま患者たちは衰弱死してしまう。
 スーパードクターKならぬスーパーヒーローKは、子泣き爺をおびき寄せる為に偽装乳母車作戦を立案すると、誰が赤ん坊をやるかのじゃんけんで盛り上がり、負けたサスケが乳母車に収まるとよってたかっておしゃぶりやガラガラを手に囃し立て……深刻な事態の中でも明るいカクレンジャー、を面白さ及びチームカラーとして表現したかったのかもですが、個人的には、不特定多数の命がかかった状況でのおふざけぶりにどん引き。
 「私は今幸せだぁ。夢にまで見た、妖怪コナキジジィファミリーが誕生した」
 この後、人間の魂を封じた人形に囲まれて悦に入る子泣き爺ハウスの悪夢的情景などの見所もあったのですが、どうにもこうにも、今作が取ろうとする笑いとは相性が合いません。
 毎度お馴染みの適当な忍術でサスケが爆死の危機を回避すると、突然のゴレンジャーストームもどきによりカクレンジャーボールが子泣き爺に叩き込まれ……使用2回目をかわされたシャークドライバーは、もう用済みなのでしょうか?!
 巨大化した子泣き爺に対し、その回メインキャラの獣将が少し戦ってから、必殺技として無敵将軍になるパターンで、子泣き爺はばっさり南無三。
 ……とりあえず妖怪忍者は、無敵将軍を見ると走って突っ込んでいくのを、止めた方がいい。
 被害に遭った人々の魂は無事に戻り、ただの物に戻った無数の人形が転がる子泣きハウスの床に落ちていたのは、子泣きファミリーの家族写真……は子泣き爺の望みと合わせて寂寥感漂う良い見せ方だったのですが、そこに講釈師が出てくると写真を拾ってダラダラ喋って台無しにしていき、余韻を残す終わり方の方が良かった気がしてなりません。