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猟奇的な忍者

忍者戦隊カクレンジャー』感想・第7話

◆第7話「こいつぁデカい」◆ (監督:渡辺勝也 脚本:荒川稔久
 なんだか前作ノリのサブタイトルで、『ジェットマン』から4年連続となる、荒川さんが登板。
 冒頭、講釈師を現実空間に引きずり込んでカクレンメンバーの訓練シーンが描かれるが、セイカイは不在。
 「やっぱ人生食べて寝て、可愛い女の子と、デートするに限るよなぁ」
 「こらーーー!」
 サボりを鶴姫に見とがめられたセイカイは、忍法・お預けの術で食べ物を隠されてしまい、妖力解放の原因となったサスケ&サイゾウ、過去の因縁を把握している鶴姫&ジライヤに比べると、兄弟揃って命を救われた恩こそあれ、基本“善意の協力者”なので、あまり悪印象にならないポジションでありますが、鶴姫様、
 「忍法・紙鉄砲!」
 で、容赦なくお仕置き。
 ナパームの洗礼を浴びるセイカイであったが反省は足りず、チーズバーガーの匂いにさそわれてバーガーショップに向かったところで、妖怪ガキツキ(人間体)と遭遇。
 なぜ、女装+テリー・ボガードコスプレイヤーみたいなのかはさておき、餓鬼の膨らんだ腹を、そこに口が、としたのは面白いアイデアで、妖怪に変化すると、頭部が巨大な口に(今回のキー要素を考えると、唇-歯-唇、の構造が、ハンバーガーを模している意図、或いは、デザインを見てハンバーガーの話になった可能性もありそうでしょうか)。
 「妖怪なら霞でも食って、大人しくしてろってんだ!」
 「封印の扉が開くまで、貧乏してた分食べ尽くしてやるから覚悟しろ!」
 単身立ち向かう黄は忍法チャーシュー巻きからおいしくいただかれそうになるが仲間が駆けつけ、カクレンジャー見参!
 開始5分でいきなりシャークドライバーを叩き込んで轢き殺そうとするも失敗し、登場2回目にして一般妖怪に回避される必殺技は、シリーズ歴代必殺技でも屈指の不名誉かと思われますが、小型化して必殺技を回避した餓鬼は、セイカイの胃の中に入り込んでしまう。
 これにより異常な食欲を発揮するセイカイは、体内の餓鬼の忍術により、更に胃の容積を増やす為に、レストランの屋根を突き破って巨大化(笑)
 なにぶん脚本が荒川さんので、ストレートに巨大フジ隊員やりたかったのでは疑惑が漂いますが、ぽっちゃり体型になった巨大セイカイがビル街をのしのし歩く姿は、なかなか、インパクトのある映像。
 サスケは忍法スケスケ望遠鏡を取り出すと、セイカイの体内……の前にまずは横の鶴姫をチェックし、凄く、最低でした。
 気を取り直してセイカイの胃の中に妖怪を発見すると、巨大な凧で近づいた鶴姫がコショウを振りかけて妖怪を追い出そうとし、『仮面の忍者赤影』のパロディかと思われる巨大凧×白い忍者は多分、『赤影』好きらしい渡辺監督の趣味。
 コショウ作戦が失敗に終わった一同は、巨大セイカイを鎖で縛り上げると忍法で巨大化したローストチキンを見せつけ……今度は明らかに『シュシュトリアン』ネタで立て続けにパロディが放り込まれますが、コメディとしてはここまでの『カクレン』では一番、統一感もテンポも良い出来。
 巨大ローストチキンの匂いで餓鬼を引きずり出そう作戦も、セイカイが鎖を引きちぎってしった事で失敗に終わり、予告からセイカイ回かと思ったら、Wメインだった鶴姫様は、おかんむり。
 「あーうるさいわねもう! あんたが根性無いから、こうやってまた、みんなで考えてんじゃないのよ!」
 叱責を受けたセイカイは、鶴姫に対し、鶴姫がごちそうになってくれれば絶対我慢できると宣言して、身内から「気は確かか」まで言われと、
 「俺…………鶴姫が好きだから!」
 と爆弾発言が飛び出し、大変、荒川脚本です。
 なお荒川さんは前作『ダイレンジャー』第5話でもいきなり、大五さん(緑)からリン(桃)に向けて「笑ってくれよリン、俺、おまえにいつも、笑っていてほしいんだ」と放り込んできましたが、後に藤井先生が別のロマンスを投入した為に、大五さんの天然台詞として流されているので、いつもの発作ぐらいに受け止めておきたいと思います。
 思わずネコ丸で逃げ出した鶴姫は、セイカイがプレゼントしてくれた野の花を見つめ、セイカイはセイカイで必死に逆立ちして妖怪を吐き出そうと苦闘を続ける姿で、冒頭でサボりを見とがめられたセイカイの
 「どんどん食べて大きくなって、敵をどかーんとやっつけて、鶴姫に喜んでもらおうと!」
 がただの言い訳ばかりではなかった事が示され、セイカイの芯にある「真剣」さが視聴者に示されると共に、それを受け止める鶴姫の姿に白い野花が添えられるのが、脚本×演出の絶妙な化合。
 そして翌朝……いい匂いを嗅ぎつけた巨大セイカイが目にしたのは、白い花に囲まれて座る忍者装束の鶴姫。
 「鶴姫!」
 「……もう一度だけ、信じてあげる」
 鶴姫は忍法で鶴姫バーガーとなり(この猟奇的な忍法は、いったいどういう需要で生まれたのか……)、「俺は軟弱だけど、ここ一番には強いんだぁ!」と、あまり説得力は無いが男を見せたセイカイが耐え抜くと、飛び出した餓鬼を隠れていた男衆がキャッチ&リリース。
 白と黄が、くの字斬りと三角形斬りで成敗すると巨大化した餓鬼は、合体から30秒でカウンター気味にばっさり入った火炎将軍剣により灰燼と化し、前作に続き巨大戦は秒殺風味。
 「仲直りの印に今度デートしよ」
 「やーだよ」
 鶴姫はセイカイの誘いをにっこり笑ってばっさり袈裟懸けにし、女性キャラを可愛く描く事に情熱を燃やす実に荒川さんらしい回でしたが、キャラクターの魅力重視の荒川さんの筆により、油断するとサイゾウと被りそうなセイカイの差別化が進む効果も生まれ、ここまでの『カクレン』では一番楽しめました。
 安定のテクニック。
 次回――猫vs猫?