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総長の出番です

『王様戦隊キングオージャー』感想・第2話

◆第2話「誰がための王」◆ (監督:上堀内佳寿也 脚本:高野水登
 ラクレス王、替えのマントが無かった。
 ……いやなんか、マントはマントで、王位を示すこの世で唯一の一品とかなのかもですし、“裸の王様”のニュアンスも入ってはいるのでしょうが、見た目の貫禄は、なんだかとても残念な感じに。
 「好都合だ。城まで連れて行け!」
 王国の兵士に囲まれると悪い顔で剣を向けるギラだったが、パソコン王国の総長ヤンマ・ガスト(愛読書は多分ヤングマガジン)にさらわれて、トンボに乗せられテクノロジーの国・ンコソパにご案内。
 前回に続いてエキストラ大量動員で、ンコソパの姿というかヤンマ総長のPVというかが描かれ、SF的な風景に加え、高層ビル群や謎の巨大空間など、そもそもキャラと背景に距離がある画が多かった事もあり、前回ほど、キャラと背景の浮き具合については気にならず(この点は、次回またどうなるかですが)。
 「おまえさ……ホントはワルじゃねぇだろ」
 どうやってゴッドクワガタを起動したのかをギラに問いかけるヤンマはズバッと切り込み、まあそもそも、ヤンマの前で悪を演じる理由が特にないような(笑)
 「違う! 俺様は、邪悪の王となる男……です!」
 とはいえギラからすると、ずっと信じてきたラクレスに裏切られた以上、他国の王も信用できる人物とは限らない、とは言えますし、打倒ラクレスを果たすまではこの仮面を被り続けるという決意でもあるのかキャラ作りを保持しようとするが、突然、バグナラクの軍勢がンコソパを襲撃。
 ギラとヤンマは王鎧武装し、青は今回が初変身ですが、変身後よりも変身前にポーズの差別化を図って流れで戦闘に突入し、今後どうなるかはわかりませんが、これは《スーパー戦隊》では初?のパターンでしょうか。……《平成ライダー》寄りの見せ方になっているのは、前作からの流れともいえそうです。
 青はシールド+短剣+銃の遠近両用万能武器を使用し、途中で赤がそれを奪うと王者の剣と組み合わせて、薙刀系の武器として使用。
 「さて……ここからは、話し合いといきましょうか」
 戦闘員を赤青が蹴散らすと、マグマを噴出させながら奈落王デズナラク8世と側近のカメジムが姿を見せ、『仮面ライダー(新)』第1話の名やりとり、


「話し合いは終わりだ。これからは……」
「これからは?」
「殺し合いだ!」

 を思い出したのは、私だけではないと思いたい(笑)
 ワーム系のデズナラク様は直球で気持ち悪いデザインと造形がなかなか秀逸ですが、昆虫モチーフながらカブトムシ不在の今作、2号ロボ3号ロボ要員の可能性もありますが、幼虫の要素も入っていそうなデズナラク様がカブトムシに変態する路線はちょっと期待したいところ。
 デズナラク様は、人類は皆殺しにする予定だが、その前に地球の秘宝=シュゴッドを渡せと要求し、勘ぐりすぎかもしれませんが、「地球の秘宝」という言い回しにはなにやら、「他の世界の秘宝」もありそうな雰囲気を感じます。
 体から伸びる巨大ミミズで街を蹂躙したデズナラクが、その脅威の一旦を見せつけて帰宅する一方、赤の王ラクレスはこの騒乱を利用するしたたかな立ち回りを見せ、泣いて謝ったら援軍送ってやらなくもない、と跪いて忠誠を誓う事と同時に、逆賊ギラの身柄の引き渡しを要求。
 民衆のブーイングを浴びた総長はタイマン勝負を受けて立ち、ンコソパにおける喧嘩=ハッキング対決、は面白かったです。
 ぶっちぎりのハッキング技術で身内のいざこざをねじ伏せたヤンマは、自分をラクレスに引き渡して頭を下げろと詰め寄るギラに対し、貧民街からパソコン一つでのし上がり、長年シュゴッダムの下請け扱いだったンコソパの状況を変革した事を語り、ラクレスに頭を下げる気はないと宣言。
 「俺はてっぺんが欲しかっただけだ。スカポンタヌキどもは、勝手についてきてるだけだ!」
 「……ラクレスを憎みながら、いつの間にか同じ事を民に強いている。滑稽だな」
 プライドの為に民を犠牲にするのか? とギラはヤンマをなじり、恐らく、ギラがラクレスに立ち向かう為に自ら「悪」を名乗ったのと対応する形で、いっけん「悪」に見えたヤンマが実は……とやりたかったのかとは思うのですが、ヤンマはヤンマで露骨にワルぶってるのと、なによりギラの視野が狭すぎるので、クライマックスの逆転劇が、それはそうですよね……にしかならず劇的さが大きく不足。
 「てめぇ……犯罪者が王様相手に何様だこらぁ!」
 「俺様は! ラクレスの正義を討ち滅ぼす為に、自ら悪になった」
 ギラはヤンマに、地球統一を目指すラクレスの真意を語り、「この国に居ると余計な迷惑をかけるから素直に引き渡してくれ」を「貴様に命ずる! 民を救う為、頭を下げてラクレスに詫びろ」と高圧的に口にするといった各種言い換えの類が、どうも面白く感じられません。
 そして結局、赤の国からの使者の前でヤンマは謝罪も引き渡しも拒否。民衆からは割れんばかりの絶叫があがり、それを怒りと怨嗟の声だと受け止めるギラだが、実は全て総長かっけえーーー! の喝采と感涙で、ヤンマは胸を張る。
 「よーく見な……これが俺の国、ンコソパだ」
 「はははははははは! 面白い、これがウンコソパか! はははははは!」
 「ンコソパだこらぁ! てめぇ! ぜっったいに言っちゃいけないこと言いやがったな!」
 そこに割とフットワークの軽いデズナラク様とカメジムが現れ、こちらも交渉を拒否されると巨大怪人を置いて帰宅。王鎧武装した赤と青がキングオージャーを召喚し…………これ、他国の守護神も強制招集されているのか(笑)
 クライマックスの巨大戦は、正直、夜戦+ネオンその他でキラキラしすぎて、何をやっているのか凄く掴みづらく……映像面で、新しい面白さを見せよう、という切り口は好意的に受け止めたいのですが、その方向性が今のところ、個人的な好みや見やすさからは離れているのは、残念。
 「上下の壁なく、ぶつかる事を躊躇わず、だからこそ強く繋がれる、それがンコソパという国なんだな」
 「王だの国民だの超越してんだよ。俺たちは――仲間だ」
 「…………俺様に必要なものはそれだ!」
 「あぁ?」
 「俺様は邪悪の王となる男ギラ! ラクレスを討ち滅ぼす為に、俺様の仲間になれ!」
 「……なるわけねぇだろタコメンチ!」
 いまいち噛み合わない2人が、突然飛んできた黄色カマキリにまとめて拉致されて、つづく。……まあついさっき問答無用で召喚していたので、クレームの一つや二つ入っても仕方ありません。
 ヤンマ総長とンコソパ王国の在り方を描き、視野狭窄で思い込みの激しいギラの横っ面をはたいてくれたのは良かったのですが、当のギラは「はははははははは! 面白い」とか「俺様の仲間になれ!」とかにすぐスライドするので、そこまでの言行を反省するでも謝罪するでもなし……主人公を全肯定する気はなく、まだ未熟な人物として描く気はあるのだが、かといって誤りを誤りとして突きつけるのも避ける、なんとも中途半端な描写になってしまい、やるならもう少し、腹を据えてやってほしいところ。
 今後この「悪」を演じるスタンスや、その人格的未熟さが、ラクレスとの絡みで跳ねる可能性はあると思いますが、今のところ全体的に、制作側の「面白い」と考えているであろう仕掛けが、私の中の「面白い」に触れてこず、しばらくは平熱で様子見といった気持ち。
 シリーズにおける作劇でいうと、〔世界全体レベルの危機(バグナラク)〕と〔個人の野望(ラクレス)〕が並行して進められている(「人類の敵の悪意」と、「人類同士の悪意」が同時に敵として存在する)のが意欲的なところですが、過去の大森P作品の事例で見ると、現代的な主題を組み込んだところで満足してしまい、“寓話としての機能性や物語の面白さへの意識が抜け落ちてしまう”事が度々あるので、不安要素でもあり。
 実際、第1-2話のバグナラク(デズナラク8世)、“ふらっと出てきて街を襲撃したと思ったら特に目的を達成していないのに途中で満足して帰ってしまう、話の都合丸出しの人たち”でしかなく、お陰でラストの巨大戦も「何そいつ?」みたいな感じになってしまったわけなので、早い内にバグナラク側の行動にも説得力を補強しておいてほしいな、と。
 ……これは意図的だとは思うのですが、ギラもギラで
 「ラクレスを討ち滅ぼす為」
 と言っていてデズナラクが視野に入っていないので、どこかで、その転換が行われるのかとは思うのですが。
 後はラクレスにもこんな事情が……あった事にするのか、シンプルに野心家の王にするのかが序盤の方向性を決めそうですが、個人的には、同情の余地のないギラギラした悪役、というのも見たい気はします。
 で、1クール目の終わりぐらいに一度倒されて地割れに飲み込まれた後、3クール目中頃に謎の仮面戦士が乱入してきて、「私は貴様への復讐の為に、奈落の底より甦ったのだぁ!!」と、体の半分が虫と一体化した奈落戦士バグレスとか出てくると、私の「面白い」が反応します(笑) カブトムシは、こちらでもいい。
 ……ええ私は、傲岸不遜な男が落ちぶれてゴミ捨て場に転がっている姿を見るのが大好きです。
 あ、ヤンマ総長は、割と悪くない感じでした。今回に関しては、PC技能を持たせた以外は鉄板のヤンキーキャラでしたが、予告の感じでは黄の王女様に気がある様子なので、上手く愛嬌がプラスされる事に期待。
 後、OPは普通にあるのが好きなので、次回は流れてほしい……。