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関白招来

イナズマン』感想・第13-14話

◆第13話「傷ついたイナズマン」◆ (監督:塚田正煕 脚本:高久進
 石油コンビナート大爆発の現場から、何故か壺を抱えて逃げていた少女が放火犯扱いを受けるが、通りすがりの同盟メンバーが少女に肩入れすると工員を投げ飛ばして一緒に逃走し、まずは冷静に、警察・消防に調査してもらうべきなのではないか。
 筋としては「見るからに人相の悪いチンピラにいたいけな女の子が追いかけられているので、チンピラ=悪に違いない」というセオリーを下敷きにしているのでしょうが、追いかけてきたのは実際に大爆発事故の現場に居た工員であって、宿場町のヤクザでもなければタチの悪い借金取りでもないので、いきなりだいぶ無理が。
 とかくシティアドベンチャーやスパイ活動に向かなかった同盟コスチュームですが、こうなってくるとむしろオレンジのコスチュームだった方が、「社会の法よりミュータントの正義!」みたいな感じで説得力が出てしまったかもしれません(笑)
 少女を家まで送り届けようとする同盟の3人だが、少女は自身に関わる記憶を失っており……やはり冷静に警察・消防に調査してもらうべきなのではないか。
 掴みのインパクトとして石油コンビナートを大々的に吹き飛ばしてしまった事もあり、心優しい少年同盟、というより、事の重大さを理解していない少年同盟、に見えてしまうのが困ったところ。
 まあ同盟のアジトに行けば、脳を弄って記憶を甦らせる装置の一つや二つぐらいあるのかもしれませんが……帝国兵の尾行に気づかぬまま、秘密の出入り口である電話ボックスに向かった一行は通りすがりの五郎に制止され、メンバー以外をアジトに入れてはいけない、と規律の遵守を訴える五郎と押し問答。
 「だったら五郎さんは、この子をどうしろっていうの?!」
 「……警察に保護してもらうしかない」
 「五郎さんて、随分冷たいのね」
 しごく真っ当な事を言う五郎が責められ、新人類帝国との戦いのまっただ中において、少年少女らしい甘さを見せる同盟員と、大人のシビアさを見せる五郎の姿勢が対比されるのですが、能力や年齢はともかく、元来、五郎の方が巻き込まれた側であり、同盟員の方が戦歴が長い筈な事に加え、時に横紙破りをするのはむしろヒーローの側の役目な事もあって、どうにもちぐはぐ。
 作品全体の路線修正の影響もありそうですが、少女に対する同盟の対応の杜撰さも、それを正論で殴りつける五郎も、どちらもマイナスに働いてしまう事に。
 「火が、呼んでいる……火が、私を呼んでいるのよ」
 同盟+少女が橋の下で火をおこして休んでいると、焚き火を見つめる少女がうかされたように呟き始め、行こう、警察か病院!
 「頭が痛い……思い出そうとすると、頭が割れるように……」
 イナズマンが、電話ボックスのスイッチに気づいて隠し通路に入り込んだ帝国兵を処理している頃、渡五郎は冷酷なクズ野郎だぜ! と盛り上がった同志たちは、人情家の丸目を頼って少女を学生寮に預けるが、揃って眠っている間に壺の中から油バンバラの声が響くと放火をそそのかし、丸目豪作、焼死の危機。
 「燃えろ燃えろ~、新人類にたてつくヤツを、焼き殺せ……!」
 だがその時、丸目のヒロイン力が発動!
 丸目は危ういところで五郎に救われるが、壺に憑依する油バンバラ(ランプの魔人ならぬ壺の魔人で、一つ目にターバンを巻いたデザインが秀逸)に操られた少女は、東京中を火の海にしようと放火を繰り返す。またも追われる身となったところを同盟メンバーに助けられるが、少女の背後に帝国兵の影を見る五郎は、同盟と少女の接触を強い態度で禁止しようとする。
 「言うことを聞かない奴は、今日限り少年同盟員を辞めてもらう」
 第10話と第11話の間で激闘の末にキャプテン・サラーを裏山にでも埋めたのか、五郎は突然、感じ悪く強権を発動し、制作サイドで色々あったのかもですが、何もかもが強引にして唐突。
 “昭和の男”といえば“昭和の男”なのかもしれませんが、あまりにも言葉足らずで説明をスキップしようとした末、親友・丸目からも「お主の気持ちがわからん」と言われた五郎は、さすがにショックだったのか、少女が帝国兵の尾行を受けているらしい事、新人類帝国に利用された末に非業の死を遂げた母の二の舞にしたくない想いを明かし、母親ショックと連結して渡五郎の意識の変化を描こうとする狙いは面白いのですが、
 ・あまりにも五郎の感じが悪い
 ・そもそも少年同盟との信頼関係が微妙
 ・丸目の心理描写は基本的に極端
 と歯車が噛み合わず、突然、俺はこっちの土俵で相撲するぜ! とエア土俵で独り相撲を始めた五郎への好感度が下がるばかりに。
 ……実際のところ、〔母親ショック → シスターショック → 虐殺ショック〕に立て続けに直面した五郎の精神における大事な歯車が幾つかひしゃげてしまった可能性はあり、本人は真っ直ぐな信義の元に活動しているつもりが、周囲からは「あいつ、最近ちょっとおかしいぞ……」と思われている状況だと考えると嫌なリアリティはあるのですが。
 後、次回でよりハッキリしますが、「私心を捨てて“公(みんな)”の為にこそ戦うヒーロー」として再生したイナズマン(渡五郎)のコアにはしかし、「母親の死に対する怒り」という激しい“私”の情念が存在しており、それに基づく戦いを「母親の復讐の為」ではなく「悲劇を繰り返させない為」だとスライドした上で、あくまで“公の為に力を用いる”という変換の過程において、五郎自身さえも誤魔化そうとする、強烈な歪みが発生している節もあります。
 少年同盟に関しては、立ち上がりに存在を強調していたのがあくまで「同盟」との関係であり、一応のレギュラーである大木姉弟にしてもこれといって特徴づけられてはいなかったので、大木姉弟+女性同志1名を抽出して接近させても、これといって五郎との関係性の蓄積が感じられないのが使いどころの難しさだなと。
 丸目を説得した(&盗み聞きしていた同志たちを納得させた)五郎は、壺を抱えて逃げた少女を追い、渡五郎に目を付けられたから用済みだ、と始末されかかっていた少女を間一髪で救うのだが、トラバサミに引っかかった(笑)
 今回最大の衝撃シーンですが、新人類側からすると、ここで渡五郎が乱入してくる予定は特に無かった筈なので事前に仕掛けていた可能性は低く、つまり、普通に畑の害獣除けに引っかかったのでは……?
 身動きを封じられる五郎だが、これはむしろチャンス! と剛力招来し、片足を罠に挟まれたまま帝国兵に殴られるプレイによりゲージを貯めると、超力招来!
 油バンバラの背中に飛び蹴りを叩き込んで少女を救出し……トラバサミで、ダメージ受けてる(笑)
 壺を叩き割ったイナズマンは、瞬間移動で一時離脱。負傷しながらも少女を気遣うイナズマンと、そんなイナズマンの傷を手当てをする少女の姿で双方にフォローを入れつつサブタイトルが回収され、当然「心の傷」と「体の傷」を掛けているとは思われるのですが、獣用の罠でダメージを受けたイナズマン(生身時点での傷が反映されているにしても)、のインパクトがどうしても勝ってしまいます。
 逃げ込んだ小屋に油バンバラが火を放った事により、手頃な壺を探していた油バンバラに父親を焼き殺された少女の、トラウマから封印されていた記憶が甦り、さっきイナズマンが叩き割った壺、家宝の壺だった。
 五郎とゲスト少女を「心の傷」で連動させる仕掛けは悪くなかったのですが、心の傷を抱える渡五郎が周囲に厳しく当たる一方、ゲストへの対応は無理矢理フォローされる展開はどうにも苦しく、やっぱりイナズマンはみんなのヒーロー! と強引に雰囲気を明るく切り替えると、無事に名前を思い出した少女を新人類帝国から守る為、「ヒーローの出番です!」。
 「油バンバラ! 油はおまえの武器と同時にまた弱点だったのだ! おまえの体は油で出来ている! その油を私の力で爆発させてやる!」
 油バンバラの火炎攻撃を地割れチェストで無効化したイナズマンは、火炎地獄もあっさり逆転チェストすると、酷すぎる処刑宣告により、おまえの全身発火物! と油バンバラを葬り去るのであった。
 少女は無事に母親と再会し、都会の片隅の小さな平和を守った事に満足して去って行く五郎、その赤い毛糸のセーターはなんなんだ五郎! でつづく。
 同盟コスチュームを脱いだと思ったら、揃いも揃って絶妙にもっさりした服装なのは、ミュータントの宿命なのでありましょうか(50年前だと、そこまで違和感無かったのかもですが)。

◆第14話「怒りのライジンゴー 大空中戦!!」◆ (監督:山田稔 脚本:高久進
 見所は、違法駐車で帝国兵に撤去を受ける雷神号。
 秩父山中で撮影された未確認飛行物体の調査に向かう五郎らだが、深い霧に包まれている内に女性の悲鳴を聞きつけた五郎が単独先行。帝国兵に襲われていた女性・アリサを助けたイナズマンだが、アリサの狙いは同盟の所持する写真であり、五郎が雷神号の回収の為に席を外している間に、霧バンバラ軍団の攻撃を受けた丸目と同志たちは、写真を奪われてしまう。
 今回はアリサをかばう五郎が、皆からよってたかって否定されると言葉に詰まり、うーん……前回の今回で何故この、そのまま裏返しにしたような構成。
 アリサを探しに出た五郎は鉄の爪による攻撃を受けるが、丸目らが駆けつけると再びたちこめる霧の中にアリサは姿を消し、鼻の下を伸ばしていた五郎、気まずい。
 「余計な事を言うな。君たちは何もわかっちゃいない」
 だが皆がよってたかってアリサを非難し始めると、前回に続いて突然の、昭和の亭主関白モードを発動。
 「彼女が新人類だからどうしたというんだ。……俺の母さんも新人類だった。だが、自ら進んで新人類になったわけじゃない。無理矢理新人類にされてしまったんだ。相手が新人類だから、悪だと決めつけるのは間違いだ」
 勢いに任せて、滅茶苦茶言い出しました。
 新人類=悪ではない、という物語としての踏み込みそのものは理解できるのですが、今回だけ見ても霧バンバラや帝国兵には一片の慈悲も見せていないので、女の色香に目が眩んだと思われてもフォローのしようがありません。
 「ばってん、あのおなごはお主ば殺そうとしたんじゃ。それでも信じるっちゅうか、ぬしゃ」
 「俺は信じる」
 「俺は信じない!」
 「信じなければならないんだ。みんなも信じてやってくれ」
 切々と訴える五郎だが総スカンを受け、敵対する者の中にも心を見る事を“正しさ”として描く狙いはわかるのですが、「進んでなったかどうか=チェストの対象かどうか」を判断するのが五郎の独断でしかないので極めて共感しづらいのに加え、「いきなり新人類に対して理想論を語り出す五郎」そのものの説得力が足りていないので、典型的な逆張りした主人公こそが正しかったと強調する為に周囲と対立する作劇(前回と裏表の同一パターン)になってしまっており、前回に続いて歯車が空回り。
 刑事ドラマにおける、容疑者が無実だと信じる刑事の単独捜査が事件の真相を暴く……みたいなセオリーに近いので、もしかすると高久先生の手癖が出たのかもですが、最終的な解決手段――怪人の撃破――を基本的に主人公しか持たない変身ヒーロー物でやると、容易に“主人公の逆張りこそが正しい”に主客の転倒が起こってしまう(それこそ、周囲が「新人類を信じよう」と言い出したら、五郎が「新人類は悪だ!」と言いそうな構成になってしまっている)ので、大変良くない組み立てに。
 渡五郎と同志一同の間に不協和音が響き渡る中、霧バンバラを指揮官とした新人類帝国の東京壊滅作戦がいよいよ始動。その唯一にして最大の不安要素であるイナズマンを排除しようと、霧バンバラはアリサを囮に五郎の抹殺を図る。
 「走れー! 走れー! 地雷めがけて、渡五郎をおびき出すのだぁ!」
 ちゅどーん
 五郎は棒読みで囮を演じていたアリサと共に地雷爆発の回避に成功し、トラバサミ > 地雷
 「君は自分から好きこのんで新人類になったわけじゃあるまい」
 地雷については知らされていなかったと呆然とするアリサに向け、山小屋に運び込んで義手を見た際に新人類だと気づいていたので最初から騙されてなどいなかった、と言い出す五郎ですが、だとすると新人類の手先だとわかっていたアリサと一緒に丸目らを山小屋に置いていった事になり、丸目らが殺害されなかったの、霧バンバラの気まぐれめいた手ぬるさの結果でしかないので、危うく、山小屋は血の海だ、になるところだったわけなのですが。
 雷神号を路上駐車した丸目らが悪い、と言えなくもないですが、丸目らが雷神号を放置する原因になったのは、独断専行した五郎がいつまで経っても戻ってこず、瞬間移動も使わないで山小屋に潜り込んでいたからなので、実は最初から全て了解していたと五郎をフォローしようとする事で、かえって言行が支離滅裂に。
 前回にしろ今回にしろ、「根拠はフィーリング」な上で「周囲とまっとうに意思疎通しようとしない」ので、五郎の孤立が“身から出た錆”にしか見えず、真実を見抜く主人公補正を受け入れるのに必要な好感度が、危険水域を割ってしまう事に。
 「五郎さん…………あたしが好き?」
 そして突然、頭部にトゲ付きのメイスを投げつけてくるアリサ。
 「ハッキリ言って。好き? それとも、嫌い?」
 「…………君が好きだ」
 おい五郎。
 ここにも、〔私 → 公〕の変換過程における五郎の精神の歪みが見えるのですが、「好意を持った相手を信じたい」では私情になってしまうので、「相手が新人類だから、悪だと決めつけるのは間違いだ」と理屈を持ち出し、それを「信じなければならないんだ。みんなも信じてやってくれ」と大義に繋げる事で正当化を図らねばならず、かえって周囲にその言葉が届かないという、ジレンマに陥ってしまっています。
 これならストレートに「俺は信じたい」の方が人間として好感が持てるわけですが、地下収容施設での過ちから「私を捨て去らねばならない」と自らに強いた結果、空虚な大義名分を振り回さなければ戦う事が許されない、ある種の呪いに囚われてしまう事に(ただし五郎は、そんな自分を「信じ込む」事で精神の平衡を保っている節があり、五郎にとっての「自明の理」が五郎の世界で完結している為に、周囲との軋轢がますます広がる事に)。
 アリサから、新人類帝国が東京攻撃の為の新型爆撃機を開発していた事を教えられる五郎だが、一足遅く爆撃機は東京に向けて飛び立ち、五郎らには戦闘機部隊の攻撃が迫る。
 五郎の「剛力招来!」に合わせて爆発が画面を埋めるのは格好良く、煙が晴れるとすくっと立つサナギマン。だが、超力招来の直後にアリサは機銃掃射に倒れ、その想いを背にイナズマンは雷神号を召喚。
 戦闘機部隊を次々と撃破した雷神号だが、新型爆撃機の装甲は雷神バルカンでも貫けず、体当たりも火炎放射により妨げられてしまう。
 VS空中戦艦、といった風情の映像はなかなか面白いのですが、じゃあ生身でいいや、と運転席から飛び立ったイナズマンが肉薄すると、新型爆撃は紙のように吹き飛び、とても、イナズマンでした。
 霧バンバラ、霧、出しただけ。
 新人類帝国の東京壊滅作戦を阻止し、秩父山中に取って返した五郎だが、アリサの姿はなく、地面にただ転々と流血の後だけが残っているのは、渋い演出。
 ナレーション「アリサが死んだのか生きているのか、それは、誰にもわからない。渡五郎に残されたのは、アリサという、名前だけであった。だが、渡五郎の脳裏には、アリサの面影が、いつまでも焼き付いている。小さな、愛の思い出と共に」
 丸目らに自己正当化の念押しをした五郎は遠い空を見つめ、その頬に、アリサの鉄の爪で作られた傷がずっと残っているのは印象的なものとなり、話はぐちゃぐちゃでしたが、終盤の演出は光る一本でした。
 元より信頼度微妙の高久脚本ですが、前回今回に関しては高久先生の脚本どうこうというより、制作サイド全体の問題の節はあり、もろもろ、路線修正と次の企画へ向けた動きの影響が出た感じでしょうか。
 母との再会と死、そして捕虜収容所での事件を転機に、五郎の変化が描かれる(ないし「変化した」事にした)のは一定の説得力を持った仕掛けながら、そこから飛び出したニュー五郎が、
 ・やたら周囲への当たりが厳しい
 ・独断専行はまだともかく必要以上に理由を説明しない
 ・言うことなすこと頭ごなし
 ・凄くファジーな根拠でいきなり理想論を振りかざす
 ・だがそんな五郎こそが正しかった事に最終的にされる
 と、物凄く好きになれない主人公にクラスチェンジしてしまったのがだいぶ辛く、果たして渡五郎はここから、もう一段階の脱皮を行うことは出来るのか。次回――またも怒り狂うイナズマン