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笑顔でなければヒーローじゃない

『ひろがるスカイ! プリキュア』感想・第4話

◆第4話「わたしもヒーローガール! キュアプリズム登場!!」◆
(脚本:金月龍之介 絵コンテ:小川考治 演出:飛田剛 作画監督:増田誠治)
 「ランニングして体を鍛えたら、 ミサイルぐらい片手で受け止められるように もうちょっと、ソラちゃんの役に立てるかなーって……でも、千里の道も一歩からだからね~」
 目の前で片手ミサイル返し(もはや一種の神秘体験)を見せられたましろはソラの早朝ジョギングに付き合い、目指すは、自然石割りです!
 チェストー!
 「私も、毎朝ランニングを続けたら、ソラちゃんみたいに強くなれるかな?」
 ましろの言葉に、首を横に振るソラ、だが……
 「……だよね~」
 「いいえ、そうではなくて。……ましろさんは、今のましろさんのままでいいんです」
 冒頭からヒーロースキル《天然たらし》を発動し、この子は野に放つと危険な生命体の気がしてなりませんが、リアル4月ぐらいからは学校に通って無差別にモテまくるようになるのか(戸籍? そんなものはお金さえあればなんとかなるのです)、或いは、ヒーローたるもの、無職であるべしを貫くのか。
 ――そして、ハマーがやってきた。
 最強の保育士を目指し、別の街からソラシド福祉保育専門学校に入学予定の、ましろの幼なじみ・聖あげは(18歳)が虹ヶ丘家を訪れ、「運命がまた、動き出したようね」と適当に思わせぶりな言葉を挟むトゥルーヒーローお祖母様。
 「なりたいものの為に頑張ってる、偉いよね。ねえ、エルちゃんは大人になったら、何になりたいの?」
 国民の税金の上に胡座をかいて、面白おかしく暮らすクイーンになる予定です。
 そこからましろが、なりたいものが特にない自分に気づくくだりはギャグっぽく見せない方が好みでありましたが、クラスメイトの事を思い浮かべるのは今後の学校生活への布石かとは思われ、そうこうしている内に昭和の罠に引っかかったソラが、懲りないめげない諦めないカバトンさんに魔法のペンを奪われてしまう。
 「ぬーはっは! プリキュアになれないおまえなんか、怖くないのね~ん」
 だが、
 スーツ無しじゃ駄目なら、スーツを着る資格はない。
 そう、アイアンマン先輩も言っていた! と回し蹴りを決めるも毒キノコボーグの触手に捕らえられたソラからエルを任されたましろは、あげはと共に学校の中に逃げ込み、その後を追う小型キノコボーグ……ちょっと可愛い(笑)
 ましろとあげはは屋上まで逃げ、赤ん坊を抱えながらロープを使って扉を閉じるあげはがやたら手慣れているのですが、ゾンビと遭遇してショッピングモールに立てこもった経験でもあるのでしょうか。
 ……この人の目指す「最強の保育士」って、保育園がテロリストに占拠されても私が居れば大丈夫! ベトコン仕込みのブービートラップで奴らの動きを封じ、暗闇に乗じて一人ずつ無力化した上で、最後はハマーに積み込んだロケットランチャーが火を噴きます! みたいなヤツなのでは。
 「行かなきゃ……ソラちゃんを助けなくちゃ……」
 「そんなのわかってる! でも、どうすれば!」
 「……それでも……それでも行かなくちゃだよ!」
 ソラを助けたいと想うましろの心に反応して魔法のペンが出現し、現在のところ今作におけるプリキュアの位置づけは、エルとの関連性を匂わされる以外は全くの謎ですが、長期目標としての「エルをスカイランドに連れ帰る」と、その過程において「エルを狙うテロリストへのカウンターとしてヒーローが機能している」ので、詳細の説明が無くても問題なく(ストレスが少なく)進行しており、敵サイドもカバトンさんの単独犯が続いて背後関係が不明な事でバランスが取られているのは、考えられた序盤の設計。
 「おいおいおいおい……」
 カバトンは魔法のペンの発現に狼狽し、この辺り、カバトンさんのリアクションが大変良い感じ。
 「ど、どうしてあんな脇役が?!」
 「……これ、私が……? 私が、プリキュアに?!」
 「やめろ! 脇役なんかがプリキュアになれるもんか! おまえになんの力がある! 自分だって、わかってるんだろぉ?!」
 カバトンは、ペンに手を伸ばそうとするも躊躇を隠せないましろの心の隙間を的確に突くと、第1話のリフレインとして精神攻撃にも達者なところを見せ、背後には扉をガンガン叩く小型キノコが迫っているのが、サスペンスとして上手いアクセントに。
 「早く、プリキュアにならなきゃだよ。……でも、私なんかが……」
 ここまでをソラとの関係性に特化していた分、ましろを、主体性の弱い女の子として描くのは(カバトンからの「脇役」発言でブーストしても)やや無理が出た印象ですが、“信じる自分”を持てずにいたましろの背中を押したのは、幼なじみのあげは。
 「あの日、私はましろんに教わったよ。優しいっていうのは、強いってことなんだって。「私なんか」……そんなこと言うな! そんなこと誰にも言わせるな! ましろんには優しさっていう、誰にも負けない、力があるんだよ!」
 強いやつほど笑顔は優しい。
 そう、シャリバン先輩も言っていた。
 他者の尊厳を踏みにじろうとする存在が“悪”と置かれ、そんな時、立ち向かっていく力が自分の中にもある事を気づかされたましろは、魔法のペンをその手に掴む――。
 「ヒーローの出番だよ」
 そしてプリキュアは、その背に広がる翼を与え――
 「ふわり広がる優しい光、キュアプリズム!」
 「なぁ……キュア……プリズムだとぉ?!」
 メインテーマをBGMに、燦々と光に照らされてキュアプリズムが立ち、新ヒーロー誕生に対するカバトンさん一連のリアクションが今回は大変良い感じでした(笑)
 「……かっこよ!」
 「エールー!」
 そして、基本ふりふりドレスになる事に対して、第三者の反応で格好良さを示したのも、良かった点。
 小型キノコの踵落としをかわしたプリズムは、お約束的に勢いがつきすぎるが、あげはとエルに危機が迫ると、壁を蹴った反動を加えて、はじめての飛び蹴り。
 吹き飛んだ小型キノコに巻き込まれたカバトンがソラのペンを取り落としたのを見るや、ソラの視線に応えて、はじめての光弾。
 そして、ちょっと拘束が緩めば、自力で脱出して、アクロバットなジャンプを決める女、ソラ・ハレワタール。
 「ヒーローの出番です!」
 ここでソラが格好良く決めるのも、バランスとして良い目配りになりました。
 「キュアスカイの邪魔は、させないよ!」
 プリズムは小型キノコに光弾を叩き込むと掌底で吹き飛ばし、これが、暴力…………!
 時に拳を、時には花を。優しさこそパワー。
 そう、コスモス先輩も言っていた(気がする)。
 プリズムが握った拳で小型キノコに立ち向かう背後では、キュアスカイが無言のままつかつかと大型キノコに歩み寄っており、怖い! 怖いよこの子!
 画面左から右へ小刻みにジャブを叩き込むプリズムと、画面右から左へ、徒歩そして加速していくスカイのシンクロも鮮やかに決まり、プリキュア拳法スカイチェストを叩き込まれた大型キノコは消滅。
 残った小型キノコがプリズム波動拳で抹殺されるとカバトンは撤収し、大型キノコと小型キノコに分ける事で、スカイの見せ場をキープしつつ、ヒーロー初体験のプリズムの勝利にも説得力を与えたのは、良いバランス。
 屋上へとスムーズに追い詰めるギミックから、背後に迫る脅威でましろにプレッシャーを与え、プリズムデビュー戦の相手として散る、と小型キノコの使い方が通して非常に秀逸でした。
 戦い終わると変身の解けたましろがその場にへたり込むのも丁寧で、駆け寄るソラ。
 「ご、ごめんなさい! 私が未熟なせいで! 私なんか、放っておいてくれれば……!」
 「……駄目だよ。……「私なんか」なんて言っちゃ駄目。ソラちゃんは私の、大事な友達なんだから。ね?」
 「…………ハイ!」
 攻略していた筈が攻略されていたのかもしれない、と二人目のプリキュアが誕生し、バネのたわみとしてましろを「明確な目的意識が生まれておらず、優しいが大人しい女の子」に落とし込んだのはやや強引な印象になりましたが、ヒーローの意味づけとカバトンさんのリアクションで上手く盛り上がった新ヒーロー誕生回とはなり、一人で全てをこなしている関係でどんどん面白くなっていくカバトンさんは、果たして生きて2クール目に辿り着く事ができるのか?!