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オージャロードは開かれた

『王様戦隊キングオージャー』感想・第1話

◆第1話「我は王なり」◆ (監督:上堀内佳寿也 脚本:高野水登
 ナレーション「その昔、5人の英雄と、守護神キングオージャーが、バグナラクを打ち倒し、人類を救った。英雄は王となり、5体のシュゴッドと共に国が生まれ、長きに渡る平和が訪れた。だが、誰が言ったかもわからない、こんな予言がある。
 『2000年の眠りを経て、バグナラクは地の底から甦る』!
 ――そして今、地球は予言の年を迎える……とさ」
 王・王・王! のタイトルに対して意外と軽い声質のナレーションで始まった新戦隊……個人的にには、もう一つ乗れず。
 冒頭から思い切ったフルCGにより、異質な世界とそこに暮らす人々の姿を大きな画で描き、試みは面白かったと思うのですが、個人的にはどうしても、登場人物が背景からずっと浮いているのが気になって、物語への没入感を削がれてしまいました。
 これは恐らく私の視聴技術的なものの問題で、こういった絵作りを違和感なく受け止める経験値が私の中に足りていないのが大きいのかなとは思うのですが……良い悪いでも好き嫌いでもなく、所持スキルの問題として慣れが必要そうかな、と。
 二千年前の英雄伝説、5体の巨大な守護昆虫、それによって生まれた5つの国――特徴づけられた各国の描写と合わせてゲームぽさのある基本設定で、災厄の予言に対抗する五王国同盟の結成に向け、5つの国と5人の王の姿が順々に描かれ、
 「我々のやるべき事は一つ……ただ不動を貫くだけだ」
 天秤モチーフの城をバックにした、紫の人が格好いい。
 赤の王の主導の下、予言の年に守護神キングオージャーを復活させようとする5王国だが、肝心の同盟締結は、トンボの総長の反対で決裂し、根回しが足りていない!
 だがその直後に謎の巨人軍団が城下町を襲撃し、災厄の到来としては迫力のある絵なのですが、あまりにも『進撃の巨人』すぎるのでは……。
 東映ヒーロー作品が、流行り(った)物の絵や要素を持ち込むのは今に始まった事ではないですが、この後ロボットの操縦システムは如何にも『パシフィック・リム』風味ですし……合う合わないは別として、今でのシリーズに無かった画を見せる! という気概は詰まった第1話の中で、割と肝心なところで、露骨に著名作品を連想させる画を入れてしまったのはとても残念。
 「悲劇にも予言は的中した。だが我らはこの日の為に備えてきた。戦士たちに、シュゴッドの守護があらんことを!」
 守護×ゴッド(神)で「シュゴッド」とか、ネーミングセンスは嫌いじゃない方面なのですが(笑)
 黄紫黒の王は、王鎧武装により、それぞれ仮面の昆虫戦士に変身し、襲い来る敵軍団と戦闘開始。
 だが何故か赤の王は悠揚として玉座から動かず、そこへ乗り込んだ下町育ち風の主人公は、赤い王様の真意が、キングオージャーの主導権を握り、予言の災厄を他国侵略の口実に利用して、恒久平和の名の下に絶対的な力で地球を征服する事にあると知る。
 「……民を守るのが……王じゃないんですか……?」
 「民は道具――私が国だ」
 「ふざけるなぁぁ!!」
 赤の王に掴みかかった主人公は、ガウンとついでに宝剣を強奪。
 見せ方と芝居が如何にも含むところのありそうだった赤の王は、5王国のリーダー格どころか、自らの野望達成の為なら他者の犠牲を意にも介さず、民の事など一切考えていない人物と明らかにされ、王様はなにより民の事を考える存在である筈、と信じていた主人公の対比になるのですが……この場面を劇的にする為にはもう少し、赤の王を誠実で善良に見える人物として描いておいて欲しかったところ。
 展開のわかりやすさを意識した取捨選択や、他の王を印象づける為の尺の配分などもあったとは思うのですが、国民や主人公から篤く信頼を得た人物、としての赤の王を描いておいた方が衝撃度は上がったと思いますし、結局腹に一物あったとなると、青以外の3人の株がいきなり落ちてしまうので(この点は後でフォローが入りそうですが)、他国の王がまんまと転がされても仕方のない人物、として納得できる印象付けをしてほしかった部分です。
 序盤の障害物だからこそ、乗り越えるべき壁は高めに設定しておいた方が主人公らの言行に引っ張り込む効果も出たと思いますし、庶民をいじめる木っ葉役人、とかも間接的に格を下げて余計だった感。
 「王に剣を向ける意味がわかっているのか? おまえは今、世界の敵になったのだ!」
 宝剣を失いつつも王権を振りかざす赤の王の言葉に、深く息を吸い込んだ主人公は、口の端を持ち上げ、牙を剥く――。
 「…………望むところだ。貴様の語る正義など、くだらんつまらん気に食くわん! 子供達を犠牲にする事が正義なら、俺は! 正義をぶっ潰す悪になってやる! 恐怖しろ! そしておののけ! 一切の情け容赦なく、一木一草ことごとく、貴様を討ち滅ぼす者の名は! ギラ! 邪悪の王となる男! 俺様が! 世界を支配する!」
 子供たちとのごっこ遊びを、主人公の演じる「仮面」に転換する仕掛けで一ひねりを入れてきたのは面白かったですが、個人的にあまりこういう、おまえのそれが「正義」なら、俺のこれは「悪」でいい、みたいな論理展開は琴線に触れず、今後も「敢えて悪を標榜する主人公が格好いい」路線で進むのなら、不安材料。
 反体制側からピカレスクロマンを貫くならそれはそれですが、残りの主要メンバーはがっつり体制側(王様)ですし……まあ今後、みんな揃って側近に裏切られて失脚とかするなら、ちょっとワクワクしますが(笑)
 赤の王の正義を否定したギラは王たる器と認められ、石化していたゴッドクワガタが復活。
 「ああ……俺様も気に入った!」
 クワガタの元へと転送されたギラは宝剣を操り……トリガー、多い。
 なんか色々はじいて王鎧武装し、赤い戦士に変身するとゴッドクワガタの内部へと乗り込み、王様養成ギブスもとい王様トレースシステムを装着。
 いきなり一人でキングオージャー合体を発動すると、シュゴッドたちが結集して空中で巨大ロボへと変形合体し……あれ? トンボの中の人は? と思ったら、外に居ました(強制排出された?)。
 可哀想すぎる総長を置き去りにキングオージャーは巨大な剣を構え、作品タイトル=巨大ロボの名前、はシリーズ初でしょうか。今のところ「キングオージャー」がチーム名を現すのかどうか不明ですが、仮にチーム名もキングオージャーなら、チーム名=巨大ロボ名も初の気はしますが、何かとややこしくなりそうではあります。
 「貴様らのような雑魚ごときぃ! ひねり潰してくれるわぁ!」
 王城を背景にポーズを取るのが格好良く決まったキングオージャーは、オーラコンバーターを輝かせると、ハイパーオージャ斬りで巨大な敵を一刀両断。
 第1話としては、〔メンバーの変身と乱戦での個人バトル・赤の戦士の覚醒・巨大ロボ一暴れ〕までの要素を入れ、ギラ@邪悪の王に俺はなるバージョンの語彙は子供たちとのごっこ遊びで身につけたものという事なのでしょうが、台詞回しとしては割と演技力を要求されるので、あまり無理に決め台詞に取り入れずに、もう少しハードル下げても良かったのではないかな……とは(逆に、ちょっと無理している感を出す意図もあるかもですが)。
 後、黄紫黒その他の部隊があらかた片付けたという事だったのかもですが、物凄い大軍が攻めてきたぞ! と描いたのに、キングオージャーは最後に一体倒しただけなのは物足りなかったところで、ついでに敵軍の一角ぐらい範囲攻撃で消滅させても良かったのでは感。
 ナレーション「これは、王たちの物語。……そして、いつか、王になる男の物語である」
 宝剣を強奪し、指名手配犯となったギラの運命や如何に、で、つづく。
 最初に一通りの顔見せの後、各国で一人ずつ王様を攻略していく流れになりそうで、バタバタせずにキャラを掘り下げていきそうなのは好材料。その中で、今回はギラの思い入れ先行だった「王」について、「それぞれの王の形」を見せてほしいところですが、次回なんだか凄く、2人乗りで王様トレースシステムをシンクロさせるんだ! みたいな話になりそうな予感がします(笑)
 第1話としては画のインパクト重視の作りだったので、物語に関してはまだなんともかんともですが、それだけに、近年の大ヒット作品の印象的な題材――街を囲む巨大な壁を、巨大な人型存在が破壊する――を連想させる画を転換点に用いたのは残念だったところ。
 勿論、何をしても“似て見える”事そのものはあるのですが、だからこそ意識的に避けて欲しかった部分ではあり、あの壁はあまりに露骨にすぎたなと。
 設定上は予言対策とかだったのかもしれませんが……長きに渡る平和な世界としては存在自体が割と不自然でしたし、この辺り、冒頭ナレーションと王様会議以外では「バグナラク復活の予言」について全く触れられないので、“あの世界一般における予言に対するリアリティ”がさっぱり不明なのも、複合的な問題の要因かなと(各王様の真剣味もわからないところから、真面目に変身して戦闘するのも、劇的な繋がりは弱くなった部分)。
 ……そう考えると、第1話からいきなり、私と大森P作品の相性の悪い部分(劇中で示してほしい情報のズレ)が炸裂している節もありますが、画のインパクト最重視としても、その画をより劇的にする為には、ディテールの描写がもうちょっとずつ欲しかった第1話でありました。
 《スーパー戦隊》シリーズは第2話で大きく印象が好転する事もままあるので、次回――パソコン王国で強敵と書いてダチと呼ぶ! に期待。