『忍者戦隊カクレンジャー』感想・第3話
◆第3話「アメリカン忍者」◆ (監督:坂本太郎 脚本:杉村升)
封印の扉を開けてしまった不始末にケジメをつけるべく、妖怪退治の旅に乗り出した鶴姫一行は、ネコ丸を移動店舗としたクレープ屋で活動資金を調達し、移動ツールと資金源を兼ね備えた合理的な設定で、クレープの原材料は、ネコ丸の内分ぴ……或いは、倒した妖怪そざ……(巻物は途中で途切れている)。
とにかく、主導する鶴姫、真面目に手伝うセイカイ、サボって寝っ転がっているサスケとサイゾウ、でまずは軽くキャラを色分け。
そんな折、タクシー及びその運転手として人間社会に潜んでいた妖怪おぼろ車が、客への怒りから本性を現し、アメリカ風タクシー+牛車、の面白いデザイン。
爆走するおぼろ車を追撃する為に、シャークブリッダー(赤)・シャークランチャー(黄)・シャークスライダー(青)、3台のバイク&サイドマシーンが、鶴姫様いわく「忍法で出したの」で出現し、凄いぞ忍法!
……まあ、後の忍者モチーフ戦隊でも見えるように、「忍者ベースの世界観で忍者が好き放題やる」よりも「非忍者ベースの世界観で、一人か二人紛れ込んだ忍者が好き放題やる」方が面白くなりがちなのが忍者モチーフの難しいところでありますが、飛び道具がデフォルトになる難しさといいましょうか(ただの万能魔法になってしまうというか)。
そう考えると敵も味方も忍者だらけだった『世界忍者戦ジライヤ』(1988)は、忍法がそこまで好き放題ではない一方で、世界忍者=奇抜な衣装の変人揃い、とする事で飛び道具を確保していたといえるわけですが、今作は今のところ、妖怪デザインがその飛び道具にあたるといえそうです。
話戻って、やや不思議な取り合わせのシャーク×陸上マシンですが、サスケ・サイゾウ・セイカイ・サル・シャーク、と出だしサ行の目立つ作品ではあり(後のドン・ムラサメの、サメ×忍者には、この辺りに由来があったりしたのでしょうか)。
スーパー変化したカクレンジャーは、マシンに乗り込みおぼろ車を追撃するが、射殺寸前、西部のガンマンルックの男がローラースケートで乱入し、そこでかかるサブタイトル。
「ふざけやがって! レッドスライサー!」
世界観としては妖怪変化でもおかしくないとはいえ、見た目ただの人間に向け、力強く投げつけられる巨大手裏剣(笑)
あわやカッパに続いて真っ二つ! の危機をひらりとかわしたガンマンはガンマンで、思い切り撃ち返してきましたが。
殺意と殺意が火花を散らしている間におぼろ車は逃走し、ガンマン男も姿を消すが、ふらりと現れた三太夫(ご先祖同様に霊体のような雰囲気もありますが、凄腕忍者というよりは仙人めいているのは、これも『西遊記』モチーフの名残でありましょうか)によると、ガンマンの正体は5人目の仲間・ジライヤ。
サスケ・サイゾウ・セイカイ……とここまで真田十勇士由来だったネーミングに、突然のジライヤが謎ですが(講談繋がりとはいえるのか……?)、ジライヤといえば1988年の《メタルヒーロー》『世界忍者戦ジライヤ』の主人公ジライヤと丸被りなのも、どうして避けなかったのか、ちょっと謎。
まあ『世界忍者戦ジライヤ』の「ジライヤ」はヒーロー名なので、山地闘破/ジライヤの関係性に対して、今作ではジライヤ/ニンジャブラックなので、逆と言えば逆ですが……なまじ『ジライヤ』好き(時々引っ張り出してくる)の為にちょっと困ります(笑)
ちなみに『ジライヤ』には、アメリカからやってきた拳銃使いの世界忍者・雷忍ワイルドが登場し……つまるところ、雷忍ワイルドの弟、という事で良いのではないか、ジライヤ。
そのジライヤは妖怪おぼろ車(人間体)と屋台でおでんをつついており、
「……いいものですね、おでんというのは。こうして偶然同じ席についても、心が和む」(byソノイ)
縁ができていた。
暖簾の下で「人間は妖怪の敵の筈だぜ」と妖怪サイドからの人間観が語られるも、「命を救う」イベントでおぼろ車の好感度を引き上げたジライヤは、顔役・小豆洗いの元に案内されるが、その目的は、小豆洗いが隠した4つの巻物。
……卑劣な敵でした。
しかし警官姿の小豆洗いは既にそれを察知しており、檻に閉じ込められたジライヤは火口に向けて真っ逆さまに転落。ロープを取り出してなんとか踏ん張っていると、上からは裏切りを知ったおぼろ車の銃撃を浴び、空に浮かんだご先祖様からは叱責を受け……る場面のBGMがコミカルなのも、今作の消化を難しくするところです(笑)
時空間の制約はだいぶ適当な今作、ご先祖パワーによりカクレ丸最後の一降りがジライヤの元へ飛来すると、合わせてドロンチェンジャーを受け取ったジライヤは、スーパー変化。
「ニンジャレッド! サスケ!」
「ニンジャホワイト 鶴姫!」
「ニンジャイエロー! セイカイ!」
「ニンジャブルー! サイゾウ!」
「ニンジャブラック! ジライヤ!」
「世に隠れて悪を斬る!」
「「「「「忍者戦隊! カクレンジャー見参!!」」」」」
そこに鶴姫らも合流すると5人揃い踏みとなるのですが、5人揃った途端に赤がセンターでキャッチコピーまで口にするのは、飛躍が大きすぎて残念だったところ。
ヒーロー未満である事を強く強調して始まっただけに、サスケがセンターに入るまでにもうワンステップ欲しかったなと(予告を見ると、次回がサスケ話になるようではありますが)。
対するおぼろ車は、人間への恨みといきなり巨大化し、市井に隠れ潜む中で傲慢な人間の犠牲者の一面も描かれていたおぼろ車ですが、それだと退治が気持ちよくならない事もあってか、中盤以降は敵意と攻撃性を前面に出す事に……まあその決定的な一押しをしたのは、そこの黒いニンジャなわけですが。
ご先祖様から巻物情報を教えられるも、格好つけようとして単独行動の末に余計な騒動を引き起こした黒は、ケジメを要求されてロープアクションで火口へと降りていくとなんとか巻物を入手。
赤以外の4人も巨大獣将の術をインスタントに修得すると、ホワイトカーク・イエロークマード・ブルーロウガン・ブラックガンマー、へと変化し、メンバー全員が、実質巨大ロボとなって巨大戦に挑む、思い切った新機軸。
……個々のデザインは主に顔が微妙なのですが、流れとしては、『ジュウレンジャー』における「伝説の武器」相当の存在でしょうか。
第1話〔メンバー3人+巨大ロボ自動攻撃〕
第2話〔メンバー4人+ロボ変化1〕
第3話〔メンバー5人+ロボ変化5〕
と、限られた尺の中で、求められる要素をどう見せていくのか、の試行錯誤と工夫が窺える立ち上がり。
居並ぶ五大獣将は、いきなり合体の術……で何をするのかと思ったら、組み体操ピラミッドによるニンジャコンビネーションによっておぼろ車を轢き潰し、5人まとめてヒーローのイニシエーションを達成。
恨み言を残しておぼろ車は雲散無償し、クレープ屋でちょっとモテるジライヤに嫉妬した男衆が、「ヘルプミー! ヘルプミー!」とジライヤの情けなかった場面を再現して和気藹々(?)で、つづく。
……これが黒い冒険者や黒い天使だったら、奇声を上げて床をのたうち回りながら三日ぐらい引きこもりかねないので、メンバーのメンタル管理には注意を払ってあげて下さい!
次回――定番(?)の、逮捕。