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稲妻デュアルクラッシャー

イナズマン』感想・第8話

◆第8話「恐怖砂あらし! 大空港沈没!!」◆ (監督:塚田正煕 脚本:高久進
 「バーラバラバラバラバンバ~。五十年後、この地球は人類が増えすぎ、飢え死にする者で溢れる。それまでに、どんな事をしてでも、我々優れた新人類だけが生き残るのだ。その為には、超能力を持ったミュータントを、数多く集めねばならん。スナバンバラよ、ミュータントを見つけ、片っ端からさらってくるのだ」
 前回に続き、選民思想をベースにした新人類帝国の目的が語られて、「人口爆発」「食糧問題」といった現実的な社会問題と絡める事で存在感にリアリティを付加。
 また、“負の未来予測”は、子供向けのサイエンスホラーの定番といえるので(例えば「氷河期が来るぞ!」とか)、「食糧危機」「人類に取って代わるもの」はその線上の要素ともいえるでしょうか。
 「新人類帝国に……栄光あれ」
 バンバの手からこぼれ落ちる砂が集まって人型を取った砂バンバラは別の個体として描かれ、前回ラストの「だが俺が、スナバンバラが」は、「俺=砂バンバラ」とも「俺&砂バンバラ」とも取れるといえば取れますが、飯塚さんと近い声質の(私が割と間違える)渡部猛さんがキャスティングされている辺り、バンバの分身体(力の一部)といったニュアンスもあるのかもしれません。
 ウルトラ怪獣ジャミラと、水木しげる描くところの妖怪ぬりかべを組み合わせたような見た目の砂バンバラは、羽田空港をまるごと砂の海に変えると、ジャンボジェット機を砂地獄に飲み込む大惨事を引き起こす。
 その目的は、奇々怪々な大事件に興味を持って近づいてきたミュータントを一網打尽に捕まえる事にあり、一般市民を虐殺しつつミュータントを見つけ出そうとする、実に邪悪な一石二鳥。
 目撃者の少年・磊太を消そうとした砂バンバラは少年を砂地獄へと飲み込ませ、一面砂のシーンは、お馴染み浜松の中田島砂丘でありましょうか。前回後半、急に浜松に飛んだのは、むしろ今回、砂丘で撮影したかったついで、と考えると納得がいきます。
 イナズマンイヤーで少年の悲鳴をキャッチしたイナズマンが、念動力による空間転移(いわゆるアポート能力か)で少年を救出すると、少年は自分が凄い超能力者なのではと勘違い。
 そこを帝国兵の追撃を受け、慌てた渡五郎は、稲妻拳法・竹箒チェストー!
 前年はよくギターが宙を舞っていましたが、東映ヒーローにかかれば、竹箒も立派な凶器です。
 気がついたら砂地獄を脱出していた件はともかく、少年が群がる帝国兵を自力でチェストしたと勘違いするのはだいぶ無理があるのですが、少年を逃がした五郎は剛力招来。
 「自由の戦士、イナズマン!」
 帝国兵に敢えて殴られるプレイによりゲージを高めると超力招来して新人類を追い散らすが、不自然なほど盛大にスタンド席(ロケ地は多分、どこかの競馬場)から転げ落ちた少年は、全て自分が無意識のうちに豪放磊落チェストー! で退治したのだと思い込み、何故かその誤解を解こうとしない渡五郎は、囮に使う気満々なの?
 「磊太くんは超能力者だと思っている。新人類もそう思っていたら、狙われる危険があるんだ」
 五郎の 作戦 危惧通り、砂バンバラの攻撃によって大量の砂が少年の家を襲い、新人類の脅威を示す為の派手な映像の仕掛けは、今作の光るところ。
 遂に砂地獄へ飲み込まれようとする住宅を稲妻チェーンで引っ張り上げて少年の家族を救うイナズマンであったが、いちはやく窓から逃げ出していた少年は、砂バンバラに連れ去られてしまう。
 再び砂地獄に閉じ込められ、超能力を発揮しての脱出を迫られる少年だが出来るわけがなく、帝国兵に襲われる五郎は剛力招来。砂バンバラのフィールド展開によって砂丘での戦いとなり、少年を超筋力で引っ張り上げたサナギマンは、代わりに砂地獄に囚われてしまう事になる。
 「罠にはまったなサナギマン」
 だがむしろこれこそ望むところ!
 身動き不能の砂地獄の中で帝国兵の攻撃を受けてゲージを高めたサナギマンは超力・招来! によりあっさり脱出。
 砂との同化能力を駆使する砂バンバラだが、弱点を見破られて逃げ出したところをイナズマンに背後からコンクリートを浴びせられ、生きながら墓標となり果てる、あまりにも残酷な攻撃方法から、チェストされるのであった。
 ジャンボジェットの乗員乗客を皆殺しにした悪の怪人なので因果応報としてはまだ生ぬるいともいえますが、コンクリートにより身動き一つできない石柱状に固められたところに必殺技を叩き込まれて木っ葉微塵にされるのは、なかなかえげつない死に様でありました。
 冒頭に派手な能力を見せつけながら、終わってみれば、目撃者の少年を強力なミュータントと勘違いして振り回された挙げ句に空振りに終わる無残な結末を迎えた砂バンバラ、明らかに、帝王バンバが運用方法を間違えていたのが怪人としては惜しまれます。
 両親を早くに失い、自分の居場所への不安から漠然とどこか遠くへ行きたいと願っていた少年だが――ドラマ上の掘り下げは薄いですが、超能力への誤解も、そういった願望を示す表現だったのかと思われます――、おじおばに愛されていることを再認識して(いかにもきつめな母代わりとして登場するおばが、砂地獄から助かると夫婦揃ってすぐ磊太を心配する事で、布石もしっかり)、万事丸く収まり大団円。
 五郎が少年の勘違いを訂正しないどころかむしろ助長するような行動を取っていたのは(夢を壊さない為だったとしても)やや無理が出ましたが、最終的に家族の愛を知る話としてゲスト少年の問題を落着させたのは、綺麗にまとまり良かったところ。
 しかし――
 「イナズマン、砂バンバラの仇は必ず討つ。誰が? 勿論、儂が作りあげた無敵の新人類が。次は、どんな悪辣な方法でおまえを苦しめるか、それを考えるだけで胸がワクワクするわい」
 闇の底では帝王バンバが堂に入った遠吠えタイムを行い、そう、脳内妄想なら、敗北も失敗も無いのだ!!
 …………既にだいぶ重症なのでは。
 前回ラストの発言からの、砂バンバラと帝王バンバの関係性はハッキリしないままでしたが、「仇は必ず討つ」とわざわざ宣言するところや、一人称が「儂」に変わっているところを見るに、1/5帝王バンバ、とかだったのかもしれません。
 ……ま、一人称のブレはままありますが(笑)
 ただ、首領キャラも一個の怪人だった、というのは割と好きなので、最終的に帝王バンバもまた○○バンバラだった! はちょっぴり期待したい。