東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
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好調『イナズマン』

イナズマン』感想・第5-6話

◆第5話「大空中戦! かみつくライジンゴー!!」◆ (監督:山田稔 脚本:高久進
 「カゼバンバラ、新人類帝国を作り上げる計画は、遅々として進まん!」
 冒頭から帝王バンバが力強く宣言し、第5話にして明らかになる、「新人類帝国」は努力目標だったという衝撃の真実。
 つまり、「帝王バンバ」も自称であり、なんなら、ちょっと粋がってつけてしまったハンドルネーム、ぐらいの扱いであった事に、見ているこちらが動揺を抑えきれません。
 新人類帝王に俺はなる! な人だった帝王(仮)バンバは、新人類帝国(仮)建設の障害となる邪魔者を消せ、と風バンバラを送りだし、見た目は“木のお化け”なのですが、「風」という形象化しにくいモチーフを表現するにあたり、「木のうろを風が通り抜ける音が不気味な声に聞こえる」的なスリラーの定番から、間接的に“恐怖としての風”を表現している、としたら面白い発想。
 「あのダンプをまず血祭りにあげてやる。これが、イナズマンに対する挑戦だ」
 打倒イナズマンを目的とする風バンバラは山道を行くダンプカーに目を付け……な・ぜ・だ(笑)
 言っている事は小さいが吹き起こす風はけっこう大規模で、宙に舞い上がる大型トラックであったが、雷神号でパトロール中だったイナズマンがそれを見つけて、ネットでキャッチ。
 「おのれイナズマン! 味な事をしやがる。必ずおまえを倒してやる……!」
 全くあずかり知らぬところで一方的な因縁が発生し、首領の無茶振りによる出撃に始まって、風バンバラ、ちょっと面白い奴になっていきます。
 五郎によって病院に運ばれたトラック運転手の青年だが、この理不尽な襲撃によりダンプのローンと修理代で首が回らなくなってしまい、弟と悲嘆にくれているところを通りすがる、松葉杖を突く中年紳士。
 「君も、雷神号の被害を受けたのかね」
 悪いのは、あの奇天烈なデザインの車とけったいなコスチュームの男だ! と怪しげな紳士はダンプ兄弟に虚言を吹き込み、前回にしろ今回にしろ、恐らく作り手の意図には無いのですが、あのコスチュームだしな……と不信感を抱く事への説得力が増して困ります(笑)
 「渡五郎は自分で事故を起こしておきながら嘘をついてるんだ!」
 風バンバラの化けた紳士の奸策により、全てはあの奇妙な車の性能を試そうとする(説得力が高い……!)辻斬り行為なのだ、と信じ込んでしまったダンプ青年は渡五郎への復讐心をたぎらせ、ちょっと、上原大先生ぽい路線(笑)
 しっとりめに描かれる兄弟のやり取りなど、この辺り、刑事ドラマでも筆を振るう高久先生の味が出ている部分かもですが。
 スーパーカーマニアの辻斬り扱いを受けているとは露知らぬ五郎は(そう考えると、同盟コスチュームも、レーサーのコスプレに見えなくも……ない?)、丸目が怪我をしたとの連絡を受けて、病院へ。
 「おまえともあろうもんが、リヤカーぐらい引っ張れないで、頭に怪我をするとはどうかしてるぞ」
 「いや、違うとじゃ。不意に突風が起こったんじゃ」
 番長物とスポ根物を足して2で割った感じの男臭い友情ですが、この二人の関係性は結構好き。
 主役の脇を固めるポジションにおいしいキャラが居ると嬉しい身としては、丸目が、がさつで間が抜けているが気骨のある好漢として描かれているのは今作全体をスッキリ見られるポイントの一つなので、この先、丸目について派手な路線変更が無いと良いなと思うところです。
 丸目の証言を得た五郎は、続発する謎の突風事故と繋げて本格的な調査を始めるが、打倒雷神号をもくろむダンプカーの復讐者がその前に立ちはだかり、松葉杖の紳士がダンプの影に隠れる → ダンプが発進する → ダンプを見送る風バンバラの姿が現れる、の繋がりが大変綺麗(カットも割らず編集の繋ぎも無さそうなので、役者さんは下にしゃがんでいる……?)。
 雷神号は山の一本道でTOYOTAのダンプに正面から突っ込まれ……負けた!
 復讐心を煽られてとはいえ、真っ正面から憎き相手を轢き潰しに行くダンプ青年も70年代スピリットに溢れすぎですが、雷神号にぶつかった瞬間、超能力バリアとかが発動してダンプの方が吹っ飛んでいく事にならずにホッとしました。
 そして、崖下に転落した雷神号はごく平然と立ち直って空を飛んでいき、青年が新人類帝国に処刑されそうになると、今度は紳士の眼前を帝国兵が左右から交差して通り過ぎると風バンバラの正体を現す(今回は編集で繋いでいる)、人間体 → 怪人の見せ方が、凝った演出。
 イナズマンに救出された青年は病院に運び込まれるが、その譫言から弟にも復讐心が伝染し、
 「ごかいもはっかいもあるか!」
 って凄く久々に聞いたな……!
 なんか普通に駐車してあるぞ……と雷神号にガソリンを撒こう、じゃなかった拾った石を叩きつけようとした少年は人質として風バンバラにさらわれ、渡五郎はメット・オン。
 帝国兵の奇襲を受けると生身の立ち回りから剛力招来し、腹筋で帝国兵の攻撃を受け止めるプレイや、背後から首を絞め上げられるプレイにより、
 ナレーション「サナギマンは、イナズマンに成長する時を待つ。ただひたすら、待ち続けるのだ」
 が、
 「サナギマンがイナズマンになる前に、葬り去れ!」
 と脅威を正確に把握した新人類戦闘機部隊が攻撃を開始し、サナギマンにより地面に叩きつけられた帝国兵の至近距離で爆発が巻き起こってドキドキします。
 かなりド派手な爆発が立て続けに炸裂し、
 もっと爆撃をーーー!!
 とMゲージを頂点まで高めたサナギマンが超力招来し、今回は、ここまでだいぶざっくりだったサナギマンからイナズマンへの「成長」にスポットを当てる趣向。
 ……まあその割には、冒頭からイナズマンで登場したり、崖から転落した雷神号の座席にいきなり乗っていたり、「雷神号」メイン回と噛み合っていなかったりするのですが(笑)
 そして、これまで謎だった「成長」とは何かの具体的内容については相変わらず触れられないまま「時間の問題」みたいな処理にされ、がまんのすがたから変態を果たしたイナズマンは雷神号を召喚。
 TOYOTAから支援を受けているらしい風バンバラは、少年を運転席にくくりつけ、荷台に大量の火薬を積み込んだダンプを強風で走らせるこだわりの作戦でイナズマンを罠にはめようとするが、ダンプに飛び移ったイナズマンは少年を救出すると空を飛んであっさり離脱に成功し、残念ながら、危機感はゼロであった。
 再び戦闘機が繰り出されると、戦闘機部隊vs雷神号の空中戦が展開し、火を噴く雷神バルカン、 かみつくライジンゴー!!
 新人類戦闘機部隊を壊滅に追いやり、少年に雷神号の活躍を見せつけたイナズマンは風バンバラとの一騎打ちに臨むと竜巻攻撃を受けて崖を転がり……何事も表現が派手めの今作ですが、風の勢いが、かなり凄い。
 しばらく強風を浴びていたイナズマンは、竜巻の弱点見たり、と敢えて相手の得意技を叩き返すと、真空波を浴びて宙を舞う風バンバラにトドメの一撃を叩き込み、新人類チェストでごわす。
 あらぬ疑いをかけた渡五郎への謝罪として、俺を殴ってくれ! と言い出した少年を優しく抱き上げたところに退院した青年らが駆けつけて、大団円。
 ……まあ、ダンプの問題は解決していないのですが(笑)
 キャプテン・サラーが、「この薬を飲んで三日間経過観察するだけの誰にでも出来る簡単なお仕事」を、優先的に斡旋してくれるかもしれません。

◆第6話「怪奇ユキバンバラ! 新人類手術!!」◆ (監督:山田稔 脚本:伊上勝
 「殺してやる……呪い殺してやる。……死ね!」
 白い着物の女がわら人形に釘を打ち付ける直球の丑の刻参りからスタートし、寝室でもがき苦しむ男が遂には絶命。
 「私の予言を信じない人間は、一人残らず殺してやる! 死ね!」
 わら人形による呪殺シーンが克明に描かれる凄い導入の後、同盟の少年たちと奇妙な予言館を訪れた丸目は、雑な態度で予言者の女から恨みを買い、呪殺の対象とされてしまう。
 不穏な釘の音をキャッチした五郎はと帝国兵と遭遇し、
 「豪作に呪いをかけて殺そうとするのは貴様たちか!」
 多分、ただの偶然かつ、濡れ衣(笑)
 五郎が足止めを食っている間、予言者の女・氷山雪江は自称帝王バンバのスカウトを受けており、結果的に呪いの儀式が中断されて帝王バンバが丸目の命を救う事となり、ヒロイン力の拡大が密かに進行していきます。
 監督自ら出馬してのスカウトを断った雪江を強引に拉致したバンバの目的は、様々なミュータント人間のパーツを集めて新たなミュータンロボを造り出すこと!
 新人類帝国における怪人ポジションは、ミュータントを素体に更なる改造強化を施した存在である事が明らかになり、実際にそういう配慮があったのかはわかりませんが、〔悪のミュータント=醜悪な姿の怪人〕は、寓意を越えて差別的要素を含みかねなかったので、「改造」という要素を挟み込んだのは良かったと思います。
 「どれを見ても、素晴らしい悪の肉体。完全なる、悪の肉体を動かすのは、氷のような心。おまえの心だ」
 ホルマリン浸けにされた人体のパーツや、赤血球めいたイメージの液体がおどろおどろしく映し出され、ファントム軍団科学者の諸君による手術によって、雪江は拒絶むなしく、醜悪なミュータンロボへと改造されてしまう。
 「バーラバラバラバンバ~。目覚めよ、新人類帝国のミュータンロボ・ユキバンバラ。おまえの超能力を見せるのだ」
 「全ての命を、氷の中に閉じ込めてヤル」
 合成怪人という事でか機械的な喋りの雪バンバラは、岩壁のような体に雪女風味の仮面が貼り付き、雪男のような毛むくじゃらの四肢が生えている、面白いデザイン。仮面の位置が、体の中心線からずれているのも、いびつな存在である事を示して秀逸です。
 「ゆけぇ! 悪の塊、ユキバンバラぁ! 地上の、無能なる人間どもを殺し尽くせぇ」
 「ハイ帝王バンバ。新人類帝国に栄光ヲ」
 Aパート丸々使って怪人誕生の経緯が描かれ、いよいよ出撃した雪バンバラは、無能なる人間どもを殺し尽くす為に、地道に通り魔的な犯行を開始。
 人間の姿で乗り込んだタクシーの運転手を氷浸けにし、徹底して怪談調の雪バンバラは、たまたま通りすがった渡五郎を襲うと、戦闘開始で剛力招来。帝国兵がクローから伸ばすロープ攻撃を受け、階段落ちしたサナギマンは、氷の息吹を受けて超力招来!
 「ユキバンバラ! 今日こそ決着を付けてやる!」
 ……初対面、では。
 逃走した雪バンバラを雷神号で追跡する内に極寒のフィールドに誘い込まれたイナズマンは、絶対零度の雪嵐により本人より先に雷神号が機能を停止すると、冷たく暗い氷の海へと落下していき……イナズマン、初の敗北……?!
 渡五郎は意識不明で病院に運ばれ、丸目と少年同盟が護衛に付くが、病院に入り込んだ雪江の冷気により次々と意識を失うと、全員凍死の危機の中で、眠り続ける五郎へと迫る殺意。
 「眠れ……二度と目覚めぬ、永遠の眠り……新人類帝国の敵、渡五郎……最後の、息の根を止めてやる」
 雪江が手にした氷柱が眠れる五郎を貫く寸前、パッと跳ね起きるのは案の定ですが、その瞬間に主題歌のイントロが流れだし、布団を払うとコスチューム姿の渡五郎! が最高に格好いいので、やはりつくづく、こういうの好きだな、と(笑)
 「待っていたぞユキバンバラ。俺の超能力でもおまえの隠れ家はわからなかった! 一芝居打っておびき出したんだ!」
 ……どうやら、一戦丸々(?)カットされたのか、
 〔初戦 → 怪人逃走 → 追跡失敗 → なんか占いパワーで千里眼無効 → 今日こそ決着を付けてやる! → 追跡中に墜落を装う → 一芝居打っておびき出したんだ!〕
 が本来の流れだったようで、多分、ミュータント強化薬の副作用で、五郎が錯乱している、わけでは、ありません。
 まあ、それ以上に、囮作戦に平気で丸目と少年同盟を巻き込んでいるところが衝撃なのですが!
 奇襲に失敗して逃げる新人類を追おうとした五郎は、意識朦朧とした丸目に妨害されて失敗してしまうが、その丸目が雪江が予言館の女だと思い出してすぐにフォローが入るのは、丸目の扱いの良いところ。
 「生き残るのは新人類だけだ!」
 「新人類の野望は砕いてみせる!」
 五郎は雪江の潜む予言館を強襲し、雪嵐を浴びると剛力招来。1本、2本、そして3本……もっと氷柱をーーー! と手を掲げながら雪バンバラの造り出した雪崩に飲み込まれ……
 勝利を確信したユキバンバラ
 雪崩の中に沈んでいくサナギマン
 着々と溜まっていくベルトのゲージ
 と、新人類破滅へのカウントダウンが刻まれていき、高笑いと共に雪バンバラが背を向けたその時――
 「超力・招来!!」
 変態を果たして雪崩の中より飛び出したイナズマン、虫属性ゆえか冷気にはちょっとだけ弱そうだったが、チェスト! の一声で氷を内側から粉砕すると、逆転稲妻返しを浴びた雪バンバラはドロドロに溶け去り崩れ落ちるのであった。
 渡五郎の全く知らぬところとはいえ、「怪人に改造された女性の悲劇性」には全く焦点が当たらないまま片付けられるのですが、呪殺のシーンから物語が始まるように、バンバの指摘した雪江の「氷のような心」は、まさしく「悪」そのものであり、見た目は美しい女性だが、その本質は「醜怪な悪鬼」として、ユキバンバラの姿は雪江の悲劇を示すのではなく、雪江の本性、怪物性の具現化に過ぎないといった方が主題ではありましょうか。
 前回に続き、
 ナレーション「新人類はどこにでもいる。次は、どんな恐ろしい事件が起きるのであろうか」
 と市井に潜む帝国兵の姿が描かれてつづき、次回は幼稚園が狙われる前振り……かと思ったら、予告を見る限りは、そういうわけでも無さそう(笑)
 エピソードとしては一戦丸々カット? による会話の矛盾などはありましたが、今作ここまで6話、二段階変身の意味づけ・新人類の能力を中心とした派手な特撮の見応え・ヒーローによる快感をどこで見せるかの設計、と、『仮面ライダー』が始まって3年、「変身ヒーロー物」の作劇の蓄積が存分に活かされており、“3年目の一つの到達点”を感じる出来。
 8ヶ月ほど前にスタートしている同期の『V3』と比較するとまた色々と見えてくるものもありそうなので、いずれ機会があれば『V3』もしっかりと見てみたいところ。
 また、以前に『電撃戦隊チェンジマン』を見た際に好演出連発で認識を変える事になった山田監督が、前回今回と随所に工夫のある見せ方で面白く、今後も参加するなら、演出が楽しみです。