東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
旧ダイアリー保管用→ 〔ものかきの倉庫〕
特撮作品の感想は、順次こちらにHTML形式でまとめています→ 〔特撮感想まとめ部屋〕 (※移転しました)
HP→〔ものかきの荒野〕   Twitter→〔Twitter/gms02〕

急遽『ひろがるスカイ!プリキュア』感想

 コメント欄でお薦めいただき公式配信で見たのですが、これはなかなか、突き刺さってくる出来。
 今週いっぱいまで、第1話がプリキュア公式youtube、第2話がTV朝日系列の見逃し配信(TV朝日HPからわかりやすくリンクあり)で視聴可能という事なので、1週遅れの私が言うのもなんですが、未見の方はひとまず、第1話のアバンタイトルからOPまでは見ていただければと……!

『ひろがるスカイ!プリキュア』感想・第1話

◆第1話「わたしがヒーローガール?! キュアスカイ参上!!」◆
(脚本:金月龍之介 演出:小川考治 作画監督:片山敬介)

 広がる浮遊島の情景を前に、巨大なリュックサックを背負った人影がすっくと立ったところで、
 「――命がけの冒険に、今日も旅立つ者がいる……」 (※『轟轟戦隊ボウケンジャー』OP)
 と脳内でナレーションが始まったのは日本で私だけでないと思いたい。
 「怖くないんか?」
 「これぐらいの事を怖がっていたら、ヒーローは務まりません」
 「ヒーロー?」
 「はい! 私――」
 巨大な喋る鳥の背に乗ってスカイランドのお城へ向かう冒険少女、というファンタジーな入りで異世界の情景が描かれ、そこでは幼いプリンセスの誕生日が祝われていたが、突然のテロが発生。
 「え、えらいこっちゃ!」
 「……すみません。スピードを上げてください」
 騒動の方を見据える青髪少女の声と喋り方が、やたら格好いい(笑)
 「はぁぁ?! まさかクチバシ突っ込む気かい?!」
 「見て見ぬ振りは出来ません」
 「……あーもう! わいは適当なところで引き上げさせてもらいまっせぇ!?」
 関西弁タクシー鳥も非常にいい味出しており、ここだけのキャラにするには惜しい! と思わせる軽妙なやり取りもポイント高く……。


「――ヒーローの出番です!」


 アイコン(巨大リュック)やセオリー(悪党追跡に乗ってくれるタクシー)を巧みに取り込みつつ、主人公を印象づける以外は、台詞に頼りすぎずに映像で必要な情報を提示し、最後に出てくる大丈夫だろうかこの子感も含めて、鮮やかな掴みからOPへ。
 キャラ紹介的シーンにおける青い子がジャージで鍛錬(たぶん日課)な事と、既に「倒れたら立ち上がり 前よりも強くなれ」が示されているのは好感度が上がり、そこに、「ヒーローガール」と「ひろがる世界(スカイ)」を掛けてくるのは、なるほど上手い。
 また、
 「絶望を越えて わたしたちは強くなる 涙を拭いて」
 の部分が、桃が青の方を引っ張ってたり橙に引っ張られる金が笑顔を浮かべる映像が素晴らしく、映像と歌詞の重ねによる「わたしたち」の明示に、山川啓介イズムの《プリキュア》的継承と発展が“らしさ”として見えるのも大変良くて、やたらめったらツボに突き刺さり、最近『イナズマン』見ていても思ったのですが、現行『ドンブラ』『ギーツ』は、(それはそれでシリーズとしての事情や別種の面白さはあるものの)あまりにも、こういうの足りていなかったのでは、と私の中の何かのゲージが満たされていく気持ちです(笑)
 また、立ち上がった後に、バトルシーンのみならず、メイクしてみたりドライブに行ったりと「広がる世界」が様々な形で描かれているのも好印象で、シリーズにおける伝統の蓄積もあってでしょうが、秀逸なOP。
 プリンセス(生後1、2歳?)をさらったブタの怪人・カバトンは、ダチョウ騎士団を振り切って城下町でも暴走を繰り返すが、その後をパルクールアクションで追った青の子が先回りすると、道の真ん中に仁王立ちで立ちふさがり、入ってる、入ってるな――!
 「おまえ! 誰なのねん!」
 「私はソラ! ソラ・ハレワタールです!」
 奇襲の馬跳びでプリンセスを取り返すソラであったが、天国行きのおなら攻撃を受けて再びプリンセスはテロリストの手に。カバトンは謎のゲートを作り出すと中に飛び込んでいき、ここでノータイムで後を追うのではなく僅かな躊躇を見せる事により、目的しか見えない突撃暴走娘ではなく、その「葛藤と選択」が示されたのも、良かったところ。
 「ヒーローは、泣いている子供を、絶対に見捨てない!」
 ソラはAパートで既に3回目の「ヒーロー」宣言を繰り出し、OP映像の逆光シルエットなどからも、幼少期に、2000の技を持つ冒険家とか、BANG BANGうるさい正義の味方とか、あばよ涙よろしく勇気な刑事とかに類する人の強い影響を受けた事が推測されますが、果たしてそれが、全肯定される信念として描かれていくのか、危うさを孕んだ借り物の言葉として描かれていくのか、題材としてはメタ視点との案配の難しさなどもありますが、先の気になる要素です。
 「ま……まさかここまで追ってくるとは。さては、おまえもこの子の力が欲しいのねん?」
 「力?」
 誘拐犯のミスから今度こそプリンセスを奪還するも異空間で手帳を落としてしまったソラは、それに気づかないままゲートの出口をくぐり抜けると……いきなり、空の上。
 カバトンの「ウェルカムトゥヘブン」はこの伏線だったのか……と地上に向けてソラが真っ逆さまに転落していた頃、道行く人々がスマホを手にし、街を自動車が行き交う、いわゆる“我々の世界”では、祖母から微妙な買い物を頼まれた桃髪の少女(ここでメモにある「干したカエル」と困惑したリアクションで、少女と祖母のキャラクター性を示すのも情報の圧縮として上手い)がソラの手帳を拾い、直後に続けて落ちてきたソラは謎の赤ん坊パワーで着地に成功。
 私は新人類帝国のミュータントでも赤ん坊をさらった不審者でもありません、と懸命に事情を説明するソラだったが、周囲の光景にパニックに陥ったところで、二人の少女は互いに「これは夢である」と納得して話を先に進めようとして、順応性高い。
 桃髪の少女の名は、虹ヶ丘ましろ。ソラがたどりついた街は、ソラシド市。
 そのまま和やかに現実逃避を続けようとする二人だが、カバトンがゲートから落ちてくると、工事現場のショベルカーをロボ怪人・ランボーグ化してしまい、否応なく現実を突きつけられる事に。
 「相手がどんなに強くても、正しい事を最後までやり抜く。それが、ヒーロー!」
 巨大な怪物を前に手を震わせながらも、胸の手帳に手を当て、自らに言い聞かせるようにして進み出たソラは、ましろとプリンセスを逃がす為の時間稼ぎを行うも蹴散らされ、ショベルボーグに道を塞がれるましろ……あれ、なんか、さらっとヤバいものを託されてる?!
 ここでましろにもカバトンに赤ん坊を渡さない意志が示され、とにかくこの第1話、長めの変身バンクを抱えるシリーズの立ち上がりとして、「第1話で必要な情報は何か」を見定め、「ではその情報をどうやったら不足なく描けるのか?」の計算がしっかり行き届いて工夫されているのが、単純によく出来ています。
 白眉だったゲート突入のシーンから、ソラとましろのやり取りの中でも巧く情報を圧縮し、他にも例えばましろが手帳を拾った直後にソラが落ちてくるならば、ソラが転移を終えて落下時に手帳を落としても大筋は変わらないながら、先にゲート内部で「プリンセスを助けようとした時」に落とす事で手帳の存在感を出すと共に、“ヒーロー”の「精神」と「行動」が交換されて、クライマックスへのスムーズな導線になっているなど、巧い。
 ましろとプリンセスの危機に、傷ついた体を引きずりながらショベルボーグに立ち向かおうとするソラだが地面に倒れ、その際にカバトンの足下に転がった大事な手帳の中身は、ヒーローの心得とイラストがページを埋める、「私のヒーロー手帳」。
 これまでソラが口にしてきたのは手帳に記した内容だったと明らかになり、個人的には、自覚的かつ自発的にヒーローの心得を記してそうなりたいと思っているよりも、本人にも無自覚で分離不可能な心奥でぐっちゃぐちゃに混ざり合ったその精神を当然の事だと思っているみたいな方が好みでありますが、なんにせよ何かしらの“きっかけ”は存在していたと思われるので、それがどう描かれていくのは興味を引かれる部分。
 「力の無い奴は! ガタガタ震えて! メソメソ泣いてればいいのねん!」
 カバトンは無残に手帳を引き裂いて嘲笑い、なんとか立ち上がろうとするソラは、ページをむしり取られた手帳の外側だけをぺしっとぶつけられると再び片膝をついてしまうが、プリンセスの泣き出しそうな声を耳にすると、口の端を持ち上げる。
 「大丈夫……パパとママのところに……おうちにかえろう」
 ただ精神力で立ち上がるのではなく、絶望の象徴(手帳の残骸)を叩きつけられた時に一度は片膝をついた後(ここが素晴らしい)で、それでも、守りたいものの存在を、立ち上がる理由を見つけた時に笑顔を浮かべてみせるのが非常に丁寧な流れ。
 そう、「形」は失われてしまったかもしれないが、「魂」はその胸に宿っている。
 何故なら彼女はそれを、ただ「口にしてきた」だけではなく「行動で示してきた」のだから……その笑顔を浮かべ続けられる限り――さあ、ここからがヒーローの時間だ。
 ボロボロになりながらも体を起こすソラの姿にカバトンが思わずひるんで後ずさり、前に出たショベルボーグの一撃が繰り出されたその時、ソラの内部からスパークレンス風のギミックを持ったペン状の物体が出現。
 続けてプリンセスの「プリキュアーーー!!」の叫びがメダルのようなものを生み出し、まさかの身内による背後からの光線攻撃、という事はなくソラはそれを華麗に回転キャッチ。
 「ヒーローの出番です!!」
 プリキュアスパークレンスはどうやらマイクがモチーフのようで、OP映像の第一印象は、《FE》シリーズの王子キャラだったのですが、ステージ風の変身背景などからも、割と直球でプリキュアそのものがアイドルモチーフの模様。
 「きらめきホップ! さわやかステップ! はればれジャンプ!」
 王家のパワーを浴びて若干はっちゃけ気味になったソラは、あれこれ飾りがついて、最後に大きくマントを広げ、
 「無限に広がる青い空! キュアスカイ!」
 ……ソラさん的には、このフリフリ衣装は、ヒーローとしてアリなのか、ちょっと気になります(笑)
 謎の変身を果たしたキュアスカイは、驚異的なジャンプ力を見せると、ヒーローの証明とは、笑顔とステゴロ! と、ショベルボーグと真っ正面から激突。
 「おいでなさい!」
 真っ正面からのショベルペンチを片手で軽々と受け止めると、強烈な掌底の一撃ではじき飛ばし、トドメは加速をつけたヒーローパンチで消し飛ばす、圧倒的パワーファイターぶりでデビュー戦を飾り、そう、アイドルは拳が命。
 「ねえソラちゃん、あなたって……ヒーローなの?」
 「……うーん……私にもわかりません」
 カバトンが撤収すると変身が解除され、何が一番ヤバいかといえば、その赤ん坊がヤバそう、でつづく。
 何事もタイミングとバランスでありますが、丁度このところ足りていなかった栄養素をガツンと投入されたのに加えて、丁寧かつテンポの良い作りで、存分に楽しめた第1話でした。
 たいがいのアニメで、(この1.3倍~1.5倍ぐらい速くていいな……)と思う私(※富野作品が気持ちよさの基準)が、話のテンポにほとんど物足りなさを感じなかった作りは、大変好感触。
 あまりにも「ヒーロー」テーマがストレートなので、このままぐいぐいツボに突き刺さってくるか、あれちょっと違う……? となるかは期待も不安もありますが、追いかけていきたいと思います(※たまたま最近『スマイル』の視聴を再開したところだったので、並行して見ていければな気持ち)。
 主人公ソラも、落ち着いた声質かつ、決して無謀な自信家ではなく、躊躇や葛藤はありながらも、それでも自分の理想とする“ヒーロー”であろうとする精神性の持ち主、として描かれているのは好感を持て、それにましろが気づいていく細やかさもよかったところ。
 変身バンクやOP映像を見るに、これからテンション高く舞い上がる事もありそうですが、その辺りをどう見せるかも楽しみなところです。
 ……それにしても、ブタ怪人の「カバトン」という名前は、頻繁に「矢場とん」(そういうトンカツ屋がある)に聞こえて、危険。
 次回――ヒーローの証明、それは、お姫様だっこ。