20年ぶりの『龍騎』メモ・第45話
(※サブタイトルは本編中に存在しない為、筆者が勝手につけています。あしからずご了承下さい)
◆第45話「消滅」◆ (監督:長石多可男 脚本:小林靖子)
- 佐野の消息不明が報道され、「奴の自業自得だ。おまえも二度と顔も見たくないとか……言ってたんじゃないのか」「それと死んでもいいってとのは、違うだろ」となるのがなんとなく、私の感じる小林脚本の真司っぽさ(を、最終章となって井上脚本から切り替わる冒頭にハッキリと入れてきた感)。
- この、ある種健全な「割り切れなさ」こそ、城戸真司という主人公の最大の特徴であり、今作と昭和的ヒーローとの大きな相違点といえますが、その「割り切れない」をヒーローフィクションの中で延々と描いてきた点に関しては、個人的にはちょっとネガティブ。
- 昭和は昭和で「割り切りすぎ」な面はありますし、2002年の《平成ライダー》として“時代の要請”の部分もあったのかとは思うのですが、年間のテーマ設定としては重苦しくなりすぎたかなーと。
- とはいえ、“それを描いた事”そのものは大きな意味はあったと思い、逆にこの後、「“中身が人間だとわかっているライダー(及びそれに準ずる存在)”になんの葛藤もなく必殺技を叩き込む」問題については、せめて前後編使って主人公の心情を掘り下げてほしい……と(感想でしばしば触れますが)思うようにはなるのでした。
- 今こうやって久々に『龍騎』を見てみると、シリーズとしては散々『龍騎』でやったしな……というのが作り手サイドにあったのかもしれませんが、メインテーマではない部分として“どんな主人公なのか”を示す為にも、一定の必要を持った通過儀礼ではないかな、と(そういった点を気にしそうにない主人公や物語の設定ならそれはそれで良いのですが)。
- 「わかんねぇ。もっと頭良くなりたいよ」と頭をかきむしる真司だが、神崎や香川、北岡が示すように、頭が良ければ正しい計算・正しい答により綺麗に割り切れるとは限らない事は描かれており……そんな世界で、優衣の身を襲う消失現象。
- 優衣は鏡の中に幼い自らの姿を目にし、「43……42……41……もう40日ないのね、この星が消えてなくなるまで」……じゃなかった、「消えちゃうよ……二十回目のお誕生日が来たら、消えちゃうよ」。
- 本質は鏡の中(死の世界)の住人である事が示唆されてきた優衣に、消滅のタイムリミットが告げられるのですが、今見ると凄く、<炎の黙示録>が始まりそうで困ります。
- 「俺とパソコンが一台ありゃ、いつだってどこだって、そこがOREジャーナルだ」……会社を差し押さえられた編集長、言っている事は格好いいが、花鶏の店内で勝手に荷物を広げ始め、大迷惑。
- パトカーに追われる浅倉を拾った東條は、レベルアップの成果を試そうと戦いを持ちかけるが、逆に「インペラーにトドメを刺したの俺」と指摘され、大混乱。
- 北岡を観察する珍しいクリスマスの飾りもとい島田と浅野。
- 消滅症状の治まった優衣は、幼い自分が幼い兄と共にモンスターの絵を描き続けていた記憶を語り、ミラーワールドと優衣の関係に、物語の焦点が絞られていく事に。
- 「奴の目的が、優衣を消さない事だとすれば……話は合う」から流れ出す挿入歌のイントロがドラマチックで大変格好良く、神崎士郎もまた、己の望みの為にライダーバトルを続けていたのであろう真実に辿り着いた蓮と真司はミラーワールドに突入。
- ナイトサバイブは風、龍騎サバイブは火、が属性として与えられていますが、主要ライダーを考えると、土がゾルダで、水が王蛇の割り振りだったりの構想もあったりはしたのでしょうか。メタ的には商品展開の都合であり、物語的には神崎士郎の気の向くままですが、龍騎とナイトだけがサバイブ持ちなのは、やはりバランスの悪さは引っかかるところ。
- 「香川先生なら教えてくれるんだろうけど、もう倒しちゃったし。佐野くんを倒したのは、僕でなきゃいけない筈なんだ。僕が、英雄になる為には」「なんかさ……おまえとか浅倉見てると、この戦いに勝ち残った奴は最強かもしれないけど……最悪って気がするよ」……モンスターを狩っていたゾルダに襲いかかるタイガ、いい加減、背後から不意打ちを防がれる。
- 「優衣……心配するな。おまえは絶対に消えない。その為だけに俺は存在してきた」……優衣を救った神崎士郎がその症状を押さえ込む一方、ミラーワールドではシロアリモンスターの大群が不気味な蠢動を続けるのであった……。
- 生理的嫌悪感を醸し出そうとする系の動きと鳴き声のシロアリモンスター、頭部の半透明感あるパーツも、ちょっとグロい。