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年末キカイダー

人造人間キカイダー』感想・第37話

◆第37話「ジローの弟 強敵ハカイダー!」◆ (監督:畠山豊彦 脚本:長坂秀佳
 前回までのあらすじ紹介シーンにおいて、笛を構えるギルの左右に並ぶ○▲○顔の秘書ロボットの全身が映り……迸る、圧倒的可愛い。
 プロフェッサー・ギル、これを両サイドに従えて椅子にふんぞりかえっているのかと思うとシリアス感ゼロなのですが、年に何人か、思わず吹き出して処刑場送りになっていそう。
 だが多分、光明寺だけは、このセンスをわかってくれた……! わかってくれたのだ……!!
 そんなギルの情念が宿ったのか、いつにない効果を発揮した悪魔の笛の響きに屈し、これはミツ子さんの分! これはマサルくんの分! と内なる暴力衝動に任せて光明寺に制裁を加えている内に、良心回路との衝突により機能停止してしまったジロー。
 ヒトデ部隊がその腕を力づくで引きはがす一幕を挟み、高笑いするヒトデは、転がるジローを足蹴にすると、余計な事すんなよ! とギルに念を押された命令に従い、光明寺の身柄だけを確保してジローは放置。
 前回登場した女記者からの情報で警察と共に現場へ向かったミツ子たちは、うんともすんとも言わずに地面に転がるジローを発見するが、女記者の証言によりジローが光明寺誘拐(殺害)の重要参考人とされてしまった事から、ジローを連れて逃走し……今回通して、ジローを巡る警察とのトラブルは、面白く感じられず。
 放映当時は「生みの親の殺害容疑をかけられた上に、留置所にぶちこまれてしまうヒーロー」のみで充分なインパクトが生じ、ミツ子さん側に感情移入しつつ、話のわからない警察め! とやきもきできたのかもですが……そもそも、人間と区別のつかない高性能な人造人間に関するリアクションがまちまちな今作、「人造人間ジローの存在を認めた上で官憲がどう対応するのか」に絞られていればまだスッキリしたのですが、「明らかに非人間的な動作停止をしているのに、警察がジローを人間だと思ったまましばらく話が進む」のが、最初のボタンの掛け違いに。
 また、担当刑事について半端にコミカルな芝居を挟むので、真っ当な対応をしているのか、頭が固いのか、へっぽことして描きたいのかがハッキリせず……「人造人間に対する世間の認知」を統一して設定するような劇中世界ではないのですが、その為にジローの身柄を巡る国家権力とのトラブルを描くにあたっての「基準」が無いので、警察側の対応が「ズレているのかズレていないのかさえわからない」状況が延々と続いてしまったのは辛かったところ。
 根本的なところでは、「悪魔の笛でいつ暴走するかわからない人造人間」とか、まともに考えれば反社会的存在でしかなく、しかしそうやって“共同体のルールの外側”に居るからこそジローは「漂泊の英雄」となり得る上で、ジローが抱え持つ「他者を傷つける悪鬼の一面」とはすなわち、“我々人間そのものではないか”というのが今作の妙味であるので、「国家権力から“鬼”認定を受けるジロー」(いってみればスタートライン)というのが状況設定としてあまり面白くならなかったなと。
 ……という話はまあ、多分に2022年からの視点ゆえでありますが。
 光明寺を車に乗せて逃走中、飛び出してきた少女を前に咄嗟にブレーキを踏んだアンドロイドマン運転手は後部座席からヒトデムラサキに怒られ(笑)、検問所から追いかけてきた白バイ警官二人は、「毛布の下は手術用の機械」と言われているのに雑に棒で叩いてみるぽんこつぶりを見せると、目撃者の少女について「おばけ? ビックリして頭でもおかしくなったのかな?」で済ませ、そのまま連れ去られてしまう少女。
 逃走中にミツ子から修理を受けて動けるようになったジローは、精神的ショックから良心回路に不具合が発生した事で声を出せなくなってしまうが、少女がダークに追われているのに気付くと指笛でサイドカーを召喚して駆けつけ、
 「チェンジ! スイッチオン! 1・2・3!」
 …………あ、あれ?
 「キカイダー、パトカーが来た。勝負は預けておくぅ……!」
 そしてヒトデは、警察から逃亡(笑)
 少女を助けるも警察に囲まれたジローは投降しようとするが、再び悪魔の笛が響き渡ると、遂に少女の首を絞めてしまい、ミツ子の呼びかけに正気を取り戻すも、今度こそ、完全に、逮捕。
 女記者は騒ぎを大きくしただけで以後登場しないし、少女は首を絞められて以降はフェードアウトするし、次回に改めて拾われる可能性はありますが、今回単位でいうと、どうにも横糸がノイズかつ消化不良。
 「面白い、これはますます面白い!」
 謎カメラでジローの置かれた状況を確認したギルの台詞回しがちょっと面白く、周到に用意されていた光明寺の偽死体と、ようやく人造人間ではないと確認された事により、牢屋に放り込まれたジローには、分解の危機が迫る!
 一方、ヒトデのアジトに運び込まれた光明寺は、薬によって朦朧としながら自らの手で悪魔回路の最終調整を行わされるのが、とてもダークで光明寺
 そして遂に、手術台に横たわる光明寺にダーク医療スタッフによる術式が施されて悪魔回路サイボーグ手術が完了!
 「出ろ…………出てこいハカイダー!!」
 鬼気迫るギルの絶叫に合わせ、棺の中から立ち上がったのは、漆黒のボディに稲妻の走る悪魔の戦士!
 「悪の戦士、ダークの誇る改造人間、ハカイダー! おまえの敵ははこの世の中にたった一人、キカイダーあるのみだ! ゆけ……ゆけハカイダー。その体内に組み込まれた、悪魔回路を存分に使え! どこまでもキカイダーを追い詰めろ。そして……そして、そして殺せぇぇぇ!」
 ラストの「そして」三連発がギルらしい言い回しで、テーマソングによる次回予告ジャックから3話をかけて、遂に登場ハカイダー!!
 だが、この世にたった一人の宿命の敵は現在、解体30秒前だ!!
 果たして、ジローはこの窮地を脱する事ができるのか? そして、ハカイダーのレゾンデートルは守られるのか?!
 ……あ、後、しれっと生き残ったヒトデムラサキの始末はどうなる?!