東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
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年末恒例企画(結局長い)

2022年を振り返る:特撮編

 今年も、〔東映特撮YouTubeOfficial〕を中心に色々踊らされた日々でありました。
 年末恒例、今年も各部門に分けてランキング形式で振り返ってみたいと思います。対象エピソードは、昨日の更新分まで。対象作品は、“それなりの話数を見た上で、今年、最終回を見た作品&劇場版&現在見ている作品”という事で、以下の通り。
〔『ウルトラマンコスモス』『機界戦隊ゼンカイジャー』『恐竜戦隊ジュウレンジャー』『仮面ライダーエグゼイド』『TAROMAN』
 『人造人間キカイダー』『仮面ライダー龍騎』『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』『仮面ライダーギーツ』
 『機界戦隊ゼンカイジャー THE MOVIE』『魔進戦隊キラメイジャー THE MOVIE』『ルパンレンジャーvsパトレンジャーvsキュウレンジャー』『劇場版 騎士竜戦隊リュウソウジャーvsルパンレンジャーvsパトレンジャー』〕
 ※『仮面ライダー龍騎』は再見の関係で、極力、ランキングから外す形になっています。
 性質上、上記作品のラストにまで触れている場合がありますので、ご了承下さい。
 昨年のランキングはこちら→〔2021年を振り返る:特撮編/ものかきの繰り言〕
 まずは、今年の大きなトピックから……

☆印象の強かった監督&脚本家部門☆
1位 井上敏樹 (『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』)
2位 藤井亮 (『TAROMAN』)
3位 杉村升 (『恐竜戦隊ジュウレンジャー』)

 第1位は、およそ30年ぶりとなった《スーパー戦隊》メインライターで、予想を遙かに超える切れ味を見せつけてくれている真っ最中の井上敏樹! 正直、脚本家としての全盛期は過ぎたと思っていたのですが、今作における出来は、望外にして脱帽。情報の制限と人物の錯綜により生まれる悲喜劇を奇術のように繋げて裏返す、これぞ井上敏樹を見せてくれているのは、単純に嬉しい。年末に入って、やや小手先のエピソードが続く形になったのは気にかかりますが、年明けの再加速と、最終盤で、おお、と唸らされてくれる事を切に期待しています。
 第2位は、今年最大のダークホースだった岡本太郎式特撮活劇『TAROMAN』の構成・脚本を務めた、藤井亮。岡本太郎×巨大特撮による出鱈目なヒーローの創出と、それを無かったのだがあったのかもしれない昭和特撮史の1ページとしてねじ込むべらぼうな奇手にして巧妙な手腕には参らされました。youtubeで公式公開されているバージョンには後半のトークコーナーが入っていないとの事ですが、「作品」としてはそのパートを含めての完成度、と評価しています。素晴らしく大まじめな大嘘でありました。
 第3位は、杉村升。率直なところ、メインライターとしては全く信用していなかったのですが、《スーパー戦隊》初参加となった『ジュウレンジャー』では企画段階から豊富なアイデアを投入していったとの事で、前半2クールの大半を執筆。序盤は戦隊作劇への慣れの不足からか、もたつきも見られましたが、中盤以降は徐々に安定を見せると、終盤は劇中要素の取捨選択の見極めが素晴らしく、きっちり風呂敷を畳んでみせたのは、お見事でした。……逆に今作を見ると、どうして『ソルブレイン』や『ダイレンジャー』はあんな事に……? と思うのですが、「続編かつ長丁場&今作立ち上げと同時進行」とか「これまでとガラッと違うシリーズ構成を求められた」とか、90年代前半、割と番組企画の荒波に翻弄された方ではあったのでしょうか。
 今年は脚本方面に偏りましたが、見ている作品の幅が狭いと、演出で、おお! と唸らされる機会も減って脳も鈍くなってくるので、来年はもう少し、アンテナを広げたいと思うところであります。
 個人単位ではありませんが、ひとつ作品を挙げておくと恐竜戦隊ジュウレンジャーは、児童層の視聴者を強く意識しての「楽しい」「怖い」をどう示していくのか、にこだわり抜いて1年間、番組のスタイルとして確立させたのは非常に良かったと思います。
 続いては、大合ッ体! 大合ッ体!

☆メカ部門☆
1位 オニタイジン (『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』)
2位 不完全な良心回路 (『人造人間キカイダー』)
3位 デザイアドライバー (『仮面ライダーギーツ』)
次点  獣奏剣(『恐竜戦隊ジュウレンジャー』)

 第1位は、オニタイジン。純粋にデザインの格好良さに加え、床几に腰掛け軍配を手にした巨大ロボという登場シーンのインパクトは実に鮮やかでした。また、《スーパー戦隊》のセオリー破りを積極的に盛り込んでいる『ドンブラザーズ』において、シリーズの中で“チーム団結の象徴”の意味合いも持つ合体ロボをどう表現するのかにあたり、ドン・モモタロウがお供に並んでいくのではなく、お供を手足として使う巨大合体、をねじり出したのは、会心。立ち回りの格好良さも光りました。
 「文字通り、俺の手足となったな!」
 第2位は、『キカイダー』という作品、そしてヒーローを象徴する、不完全な良心回路。東映ヒーロー史上屈指の著名アイデアとして大雑把に存在は知っていましたが、いざ実作を見てみると、ジローが「他者から与えられた完全なる倫理と正義感」ではなく、不完全であるが故にそれを補い正しくあろうとするところに己の自由意志とアイデンティティの存在を感じており、仮に良心回路が完全になったら、その時自分は別の何かになってしまうのでないか、と考えているのが面白いところ。
 また、作劇として対を成す「ギルの悪魔の笛」の存在により、不完全な良心回路が引き起こす苦悶とはすなわち内心の悪魔との戦い=人間の心の在り方そのものである事が補強され、ヒーローの苦闘を通じて、人間の持つ二面性をあぶりだす寓意性は、シンプルながら秀逸でした。
 非常に色々なテーマを見る事ができる装置であるのですが、そのシンプルな切り口ゆえに、劇中以上に受け手の中で広がっていく部分が大きいのが、後年の作品にも影響の感じられる理由の一つであるかもしれません。
 (苦しめ……苦しむがいいジロー。貴様はなまじ、人間の心を持ったばかりに、苦しまなければならん。ダークの人造人間に戻れ。ダークで生まれたものは、ダークに帰るのだ!)
 第3位は、近年では割と珍しく、一目惚れしたライダーベルト・デザイアドライバー。極力シンプルなデザインのベース部分に、左右のバックルを取り付ける事でベルトとして完成する、というのが凄く好みで、斜めの切れ込みも含めて、マグナム×ブーストの組み合わせがお気に入り。まあどうしてもバックル部分で遊びの要素を入れなくてはならない為に、その後は結局いつものゴテゴテ路線になっているのは残念ですが、強化ギミックの見せ方としても割とスマートで、結構気に入っています。
 「おめでとうございます。今日からあなたは仮面ライダーです」
 次点として、最初から全て計画通りだよ大獣神……でお馴染み、ドラゴンシーザー召喚アイテム・獣奏剣。二枚目が横笛吹いたら格好いいに決まってるよね?! を真っ正面からぶつけてきたアイデアが秀逸でした。厳密にはメカというよりマジックアイテムですが、『ジュウレンジャー』のファンタジーRPG路線の装備品としても一番はまったアイテムであり、シリーズ史に名を刻む追加戦士ブライ、そして妙に可愛げのあったドラゴンシーザー分の加点も含めて。
 「ここから出れば、俺の命はどんどん減っていく。しかし……行くしか無い!」
 続きましては自分のさだめにたてをつけ。

☆助演部門☆
1位 山口一郎(サカナクション (『TAROMAN』)
2位 恐竜のタマゴ (『恐竜戦隊ジュウレンジャー』)
3位 服部半平 (『人造人間キカイダー』)
次点  おやつ券(『機界戦隊ゼンカイジャー』)

 第1位は、タローマンマニアとして著名な山口一郎(サカナクション)さん。……ドラマパートとは別の出演なので、1位にするのに若干の躊躇はあったのですが、『TAROMAN』という虚構の欠かせざるピースとして、今作の完成度を爆発的に引き上げたのは間違いなく山口一郎さんであり、70年代初頭に放映されていたという態の特撮ヒーローパロディを、実際に見ていて今も熱心なファンとして語る実在芸能人、を登場させる事により虚実の境目に亀裂を広げる、素晴らしい芝居と絶妙な立ち位置でした。
 『TAROMAN』(メタ)は、岡本太郎の子供にして特撮ヒーロー番組の子供でもあるわけですが、その『TAROMAN』(内)のファンとして登場するのが、岡本太郎の子供でありタローマンの子供であると明言するプロ創作者、というのが実に上手い仕掛けにして、個人的なツボにも突き刺さるところでありました。今作におけるメタ的な仕掛けって脚本家の會川昇さんが好むやり方に近いと思うわけなのです(笑)
 音楽活動の方は全く知らなくて申し訳ない気持ちにもちょっとなったりするのですが、お見事でした!
 「50年の時を経て、光を浴びたタローマンとも、またお別れの時間がやってまいりました」
 第2位は、一巡り目のキャラ回ローテを吹っ飛ばしてまで割り込んでおきながら、前後編の争奪戦の末に海に流れる消化不良を引き起こし、ブライ編で久々に出てきたと思えば実質ただの人質扱い、と凄まじいばかりの持てあましぶりでどうなる事かと思っていたら、終盤に「ブライの命」と対比される置き場所を発見すると、最終的には子供たちの「夢」「希望」の象徴となり、作中テーゼの接着剤となるミラクルを見せた、恐竜のタマゴ。ミラクルでした。
 「実を言うとね、恐竜は滅びちゃいないんだ」
 第3位は、『キカイダー』のコメディリリーフ、服部半平。キャラとして半平が好きか? と言われると微妙なところではあり、目撃者の始末には徹底してこだわるダークが半平だけは放置を繰り返すなど、笑劇時空を展開する事による歪みも多いのですが、ジローにしろ光明寺一家にしろ、頻繁に“人の心”が抜け落ちるので、半平は『キカイダー』における、貴重な“人の心”要員でもあるのだなと(笑)
 で、その“人の心”が、「小市民的な善良さ」以上に、異性に弱く金に汚くその場その場で調子のいい事を言うが時に平気で他者からの信頼を裏切る(だけどたまには友情に応えてみせたりする)「人間の弱さ」を主体として描かれている――正攻法の滑稽劇の要素といえましょうか――のは、『キカイダー』の面白いところであり、受け手が時に己自身をそこに写す「道化者」を半平が演じている事により、物語と視聴者を繋げる役割を果たしているという点で、物語に不可欠なピースになっているな、と。
 そう見ると半平が何故ダークに見過ごされるかというと、ある意味では半平は、この世の住人ではなく、舞台における悪魔的存在と近似した登場人物、といえるのかもしれません。唐突かつ意味不明な上に登場人物の誰からも指摘を受けないコスプレの謎もこれで解けた気がしますが、時代性も含めて、そのシンプルな取り込み方が、東映ヒーロー史におけるコメディリリーフの成功例として名を残す要因となった一つではあるのかな、と(勿論、それをやりきっている植田峻さんの存在も大きい)。
 「うまく逃げてくれよ……しばしの我慢だ。必ず、必ずお助け申すぞ! ミスター・ジローが」
 次点として、カラフルのおやつ券(邪悪)。おやつけーん!(邪悪) ステイシーの握りしめる小道具として大変いい味を出し、折に触れ人の心とは何かについて考えさせてくれる存在感でした。
 「いつでも来てね!」
 今年は少しトリッキーな結果となりましたが、個人的には割と重視している部門であり、私好みの脇キャラがあまり居ない1年ではあったなと。
 続いて、電流火花が奔る今年最大の激戦区。

☆ヒロイン部門☆
1位 光明寺博士 (『人造人間キカイダー』)
2位 雉野みほ (『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』)
3位 光明寺ミツ子 (『人造人間キカイダー』)
次点  サワグチ女史(『ウルトラマンコスモス』)

 第1位は、
 悪の秘密結社に追われている・記憶喪失でなんだか弱々しい(後にむしろふてぶてしい)・大切な指輪を探偵への依頼料代わりとする・特殊な力(技術)を持つ・土壇場では幸運と知勇を発揮する・組織から裏切り者を生み出す・人からも人外からも好かれやすい体質・割とトラブルメーカー・ヒーローの行動原理の多くを占める
 と圧倒的ヒロイン力を見せつけた、さまよえる光明寺。脳内投票では、みほちゃんと熾烈なデットヒートを繰り広げていたのですが、最終的にヒロイン技能を列挙してみたところ、あ、これ駄目だ……ほぼ、パーフェクトヒロインだ、と栄冠の座を勝ち取りました。
 「恐ろしい事だ……だが私には何も出来ない」
 第2位は、土壇場で光明寺博士の猛追に屈した『ドンブラ』幻想のヒロイン、雉野みほ。当初は、戦士メンバー周辺の日常キャラをきっちりキャスティングしてくるの割と珍しいな……ぐらいの印象だったのですが、夏美と瓜二つ? ロン毛を成敗? と回を追うごとに存在感を増していき、雉野を支える癒やしの妻であり、犬塚の追う永遠の恋人であり、獣人と戦う鶴の戦士であり、可愛いも綺麗も格好いいも全部持っていく一人三役を魅力的に演じている役者さんも好キャスト。物語のメインストリームに関わるミステリを背負い、その行動で視聴者をやきもきさせる役割、としては前年のステイシーに近い立場といえ、それだけに畳み方を問われるキャラクターでありますが、どんな結末を見せてくれるのか、楽しみです。
 光明寺に必要なのは、多分みほちゃん。
 「できるできるできるできるできる……」
 第3位は、実の父に作中の全ヒロイン力をかっさらわれて後方置き去りままかと思いきや、中盤から思わぬ健闘を見せて盛り返してきた光明寺ミツ子。
 おしゃれワンピース姿でハンドバッグを小脇に抱え、小学生の弟をともなってダークの勢力下に向かう・何故か修理作業前にジローの両手両足を念入りに拘束する・何年放置されているのかわからない布団を前に、平然と今夜はここで休もうと言い出す・ジローの腕の損傷を修理する為、後で謝るからと少年のラジオを勝手に分解する・ダークロボットを監禁
 と父とは全く別の方向にエネルギーを燃やす戦慄のダークの女ぶりを見せつけ、諦める事なく果敢に戦いを挑んでいく姿勢は素晴らしいと思います。
 「ボートを岸に向けて! ジローめがけて突っ込むの!」
 次点として、ヒウラキャップの元カノ・サワグチ女史。登場回の視聴は去年なのですが、最終2話の視聴が今年となった『コスモス』から印象深かったキャラ、という事で。感想本文にも書きましたが、登場すると、ヒウラキャップの普段は出せない面を引き出せるキャラ、として面白かったです。女優さんも好演で、『コスモス』全体の中でも割と好きなキャラ。
 (大学時代と同じ、やっぱりヒウラちゃんは落第点でした)
 続いて、今年は小規模経営が多かった。

☆悪の組織部門☆
1位 バンドーラ一味 (『恐竜戦隊ジュウレンジャー』)
2位 ダーク (『人造人間キカイダー』)
3位 脳人 (『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』)
次点 獣人 (『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』)

 第1位は、バンドーラ様と愉快なお供たち。ほぼほぼバンドーラ様の個人事業なので組織感は低く、戦闘可能なグリフォーザー&ラミィはともかくとして、ブックバックとトットパットは賑やかし&太鼓持ちにしかならずに終盤は存在感激減、などはありましたが、バンドーラ様の魅力という最大の武器を押し出し、年間に渡って「子供を標的とした幸福から悪夢への転落」路線を貫いたのは、秀逸でした。本人たちは終始楽しそうで、皆でテーマソングを合唱し始めても、悪としての格は保たれていたのは、白眉。
 また、バンドーラ一味を「悪夢」の象徴として位置づける事により、作品全体において悪夢的描写へのこだわりが貫かれ、一つの“色”が明確になったのは、とても良かったと思います。
 前作に引き続き、デザインに野口竜を起用したドーラモンスターの中では、敵サイドの強化回にどうしてこのデザイン……? と思ったドーラフランケがまさかの二段階変身を見せるのは、インパクトがありました。後、善とか悪とかにあまり関係なく、職人として好きなものを作りたいだけな感じのプリプリカンの存在は、面白かったです。
 「ドドララ ドドララ バンドーラ」
 第2位は、世界にKAWAIIを羽ばたかせる為に活動する秘密結社ダーク! 今年の視聴作品は、組織だった活動をしている如何にもな悪の組織がほとんど出てこなかった中、貴重な正攻法の悪の組織として、めでたくランクイン。
 光明寺に逃げられ、キカイダーに連戦連敗している間に、作戦の規模がせせこましくなってきたり、首領の心が折れかけてきたりなどありましたが、来年、逆襲の一手は炸裂するのか?!
 「ダークに生まれし者は……ダークに帰れ……! ダークに帰るのだ……!」
 第3位は、組織だった面白さは特に無いのですが、ソノーズのキャラ立ちと、井上敏樹らしい“化け”方が作品の魅力の一つとなっている、脳人(の戦士)。ライバルポジのソノイ、女性幹部的なソノニ、がそれなりに目立つのはセオリーとして、ソノザがマンガを通してはるかと繋がったのは、実に井上敏樹な良いツイストでありました。年明けに、もう一跳ね、二跳ね、期待したいところです。
 「なぜ汚物のような欲望にまみれる。心を浄めろ。命を落とさぬ内に」
 次点として、これまた組織とは言いがたいのですが、『ドンブラザーズ』の物語の背後で不気味な低音を響かせ続け、先行きに興味関心を抱かせるフックとして効果的に機能した獣人。手づかみでチャーシューを貪り食う衝撃の登場から、要所で引っかき回す役としてスパイスを加え続けた狭山ネコの好演ポイントも含めて。
 「ネコは気ままに遊ぶ。ツルは物語を紡ぐ。そしてペンギンは……」
 『ドンブラ』勢は、来年どうまとめてくるかで最終的な評価が大きく変わりそうですが、何かとアレな雰囲気漂うドン家の最終的な立ち位置を含めて、面白い着地を期待したいです。
 組織の次は、風邪よりしつこい悪役たち。

☆悪役部門☆
1位 バンドーラ (『恐竜戦隊ジュウレンジャー』)
2位 ソノイ (『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』)
3位 未来を見た (『TAROMAN』)
次点 ブルーバッファロー (『人造人間キカイダー』)

 第1位は、組織部門と堂々二冠達成の大魔女バンドーラ様! 『ジュウレンジャー』をほぼ知らない私でも、歴代屈指の人気キャラというのは知っていましたが、首領としての風格と台詞回しや表情による愛嬌が絶妙に同居し、やっている事は割と極悪ながら憎みきれない悪役として見事なバランスで完成されており、成る程納得。
 とにかく演じた曽我町子さんが素晴らしかったですが、規格外の魔力の持ち主であると同時に、頭脳派で謀略の徒でもあり、あの手この手で一年通してジュウレンジャーを苦しめ続ける事で、悪として格が落ちなかったのも見事でした。特に、策士としてのバンドーラ様の有能ぶりは瞠目に値し、余計な口出しをして部下の作戦を台無しにする事なく、むしろ自らの作戦でヒーローを追い詰めていく首領キャラ、としては東映ヒーロー史において空前絶後の存在であるかもしれません。
 存在感としては、悪の山地哲山、とでもいいましょうか(笑)
 そしてそんなバンドーラ様の総合的な魅力により、最低限のテコ入れで悪役サイドの在り方を一年通して堅持できた事が『ジュウレンジャー』という作品の太い柱となり、非常に作品貢献度の高い悪役でした。
 「私は子供が大嫌いなのよ!」
 第2位は、脳人の戦士・ソノイ。第1話冒頭から井上敏樹トップギアで登場すると、美形ライバルポジションとして期待に応える活躍を見せ、好感度がぐんぐん上昇。敵味方ではありながら、同じステージに居る者ゆえにタロウと“わかり合ってしまう”が宿命的に戦わざるを得ない、という関係性も前半の物語を非常に盛り上げてくれました。そこでキーとなるのが「おでん」なのもにくい。
 シリーズとしては、前年にステイシーが大旋風を巻き起こした後なので顔出し美形ライバルポジションはなかなか難しいのではないか、とも思っていたのですが、見事にその不安を払拭し、独自の味を出してくれたのも大変良かったところ。
 敗北そして復活からのモデルチェンジでも期待に応えた上で、元の人格に戻ってくれて心底ホッとしましたが、そこでソノシの一件を挟んでから馴れ合い&じゃれ合い方向へと加速が進んでしまったのは少々不安点で、もう一度、前半の緊張感を取り戻していただきたいところ。非常に良いキャラだけに、情念の芯は、(最終的な変化があるとしても)大事に描き切ってほしいです。
 「でも……世の中にはきっと、美しい嘘もある」
 第3位は、奇獣・未来を見た。岡本太郎作品をモデルにしている、という点でインパクトの強い奇獣の中でも、しれっと円谷作品の怪獣(宇宙人)図鑑に混ぜても気付かれないのではないか、というデザインが秀逸。また、人々に未来を見せてその気力を失わせる、という真っ当に侵略宇宙人らしい行動もポイントが高かったです。
 「未来ヲ見タイカ?」
 次点として、ダークロボット・ブルーバッファロー。ダークの怪人としては、もっと面白かったり、デザインが秀逸な怪人は他にも居るのですが、私にダークロボット(可愛い)を初めて認識させた存在として、ダークロボット(可愛い)を代表してのランクイン。
 「奴だ! 光明寺の人造人間だ! 探せ……! 探せぇ!」
 昨年、圧倒的な強さを見せたステイシーは、個人としての着地点に不満は無いものの、作品全体の印象が足を引っ張ってランク外となりましたが、まあ、助演部門で次点に入ったおやつ券が、ステイシーと一心同体です!
 後、ソルティバグスター辺りはちょっと好きだったのですが、バグスター勢は改造前提の怪人着ぐるみをレベルアップによる再登場として物語に落とし込む工夫や、意外と濃いめのキャラ付け、持っているテーマ性などは面白かっただけに、話の都合でパラドがフラフラしがちな事もあって、一般バグスターをどう着地させるのか、まで手が回りきらなかったのが惜しまれます。
 続けて、偏愛という点では不作だったものの、インパクトは爆発だった伝説の戦士たち。

☆ヒーロー部門☆
1位 ゴウシ/マンモスレンジャー (『恐竜戦隊ジュウレンジャー』)
2位 桃井タロウ/ドン・モモタロウ (『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』)
3位 タローマン (『TAROMAN』)
4位 猿原真一/サルブラザー (『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』)
5位 鏡飛彩/仮面ライダーブレイブ (『仮面ライダーエグゼイド』)

 第1位は、古代恐竜人類の生き残り唯一の知謀60台、知恵の戦士・ゴウシ!
 今年は正直、個人的なツボに突き刺さってくるキャラが少なく、その中で贔屓ポイントが高かったキャラ……となると一番はゴウシかな、という消去法の面もありますが、素手でイノシシを仕留めそうなごつい見た目ながらも恐竜人類の中では冷静な判断力を持ち、調べ物が得意なサブリーダー、というのが好みでした。また、質的に個人回に恵まれたのは大きく、特に終盤の第44話「女剣士!日本一」は出来が良くてゴウシ贔屓としては嬉しかったエピソード。
 「この一撃で貴様を倒す! この白さの、輝きにかけて!」
 第2位は、桃から生まれた超戦士・桃井タロウ。
 タロウに対する愛着や思い入れがあるのか、といわれるとあまり無いのですが……ちょっとバランスを間違えると凄く嫌なヤツになってしまうところに、絶妙に愛嬌を与えて好感度の持てるキャラにして、お供たちも見る側も、いつの間にやらタロウはこれでいいんだ、と受け入れてしまう技術点は、作品通してお見事。特に、諸刃の剣になりそうだった正直者ムーヴを折に触れ“面白さ”に転換してみせたのは、実に鮮やかでありました。一番好きなタロウは、OPダンスで、指を立ててオンリーワンをアピールしている時のタロウ。
 「点をつければ……25点だっ」
 第3位は、今年最大のインパクト枠、タローマン。
 ……タローマンも、タローマン自身に特別な愛着や思い入れは無いのですが、70年代巨大特撮ヒーローをパロディする事により、岡本太郎の思想の言ってしまえば“いいとこどり”の抽出を寓意表現として成立させ、その上でそれをタローマン自身の行動はべらぼうで出鱈目である事で毒と薬のバランスが取れる、というのが非常によく出来た造形であり、またそれがヒーロー作品の原型を浮かび上がらせるのも、パロディヒーローとして優れたところでした。
 そういう点で、ヒーロー作品のパロディではあるが、ヒーロー作品を茶化すのではなく、その構造を真摯に活用しているのが、タローマンのいいところでありましょうか。一番好きなタローマンは、日曜画家を狂気に陥らせるタローマン。
 『芸術は、爆発だ』
 第4位は、コーヒー代を俳句で支払おうとする、令和に甦った書生崩れの高等遊民、猿原真一。
 本編中盤以降はどうも、持ち前のキャラが濃すぎて脇に回されがちですが、「己のしっかりとした価値観を持ち、必要以上に他人に干渉しないが、かといって世間や人間が嫌いな世捨て人ではなく、むしろちょっとした人助けに躊躇がない人物」というのが、達観しきれずにちょっと俗っぽいところも含めて、ドンブラザーズそのものを体現している感があり、特に序盤における猿原とはるかのちょっとした善行は、今作を気持ちよく見られる良いガイドラインになってくれました。
 猿原は多分、「世界(人生)を愛している」という位置づけで、それ故に完成されすぎている為にスポットが当たりにくい面があるのでしょうが、年明け、はるかともども再びフィーチャーされそうなので、もうワンジャンプも、ちょっぴり期待したいです。
 (人は私を「教授」と呼ぶ。ただのあだ名だ。私は今まで一度も働いたことはない。敢えて言えば、「生きる」ことが仕事だ。)
 第5位は、『エグゼイド』勢から滑り込みで、鏡飛彩。
 鏡先生に関しては、特に間違った事は言っていない気がするのにいきなり研修医に喧嘩をふっかけられて罵声を浴び、そんな永夢先生の正当性を担保する為にキャラクターとして背負っている情念を無視されて手術中に敵前逃亡の烙印を押しつけられる……といった特に序盤における“ストーリーの犠牲者”の面に対する、同情票がやや入っておりますが、今季の顔が好み枠でもあり(笑)
 魔王アーマー戦のパルクールアクションは格好良かったですし、終盤の小姫絡みのドラマも割と良く、最終的にはあれこれフォローが入って良かったです。
 「俺に切れないものはない」
 作品部門の前に、今年の特別枠として、ドンブラコドンブラコ。

☆音楽部門☆
1位 「Don't Boo!ドンブラザーズ」 (『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』)
2位 「爆発だッ! タローマン」 (『TAROMAN』)
3位 「Dolla! ~魔女バンドーラのテーマ~」 (『恐竜戦隊ジュウレンジャー』)

 第1位は、『ドンブラザーズ』EDテーマ「Don't Boo!ドンブラザーズ」。当初から、劇中ラストに流して、テンポの良い曲調で本編と予告をシームレスに繋げる使い方が気に入っていたのですが、東映公式で公開されたTVサイズのMVでしっかりと聞いたところ、作品コンセプトを鮮やかにまとめたその内容に、私の中でカチッと歯車が入る感触がありまして、以後、『ドンブラザーズ』という作品と不可分なテーマ曲として、大のお気に入りとなっています(OPはOPで勢いあって好きですが)。ラストにこれが流れるとだいたい許せる病気も発症しており、今年の特別賞的存在。
 第2位は、『TAROMAN』主題歌「爆発だッ! タローマン」。70年代特撮パロディの映像に乗せた、やたらパワフルな歌詞に度肝を抜かれ、忘れがたい一曲となりました。インパクトのある歌詞と覚えやすいメロディはパロディのセオリーですが、その歌詞に岡本太郎のことばを用いる事で、強烈なメッセージ性を出すと共に妙にいい歌になり、主題歌としての完成度が高まったのは実に秀逸。また、『タローマンヒストリア』によるフルバージョンの見せ方は、脱帽でした。
 第3位は、『ジュウレンジャー』挿入歌「Dolla! ~魔女バンドーラのテーマ~」。バンドーラ一味のテーマ曲として、劇中でこれを唄い始めた時は、やられた! と思いました(笑) まさか、最終回まで侵食してくるとは、恐るべし、バンドーラ様パワー。
 近年の東映ヒーローは、戦隊にしろライダーにしろ、劇中にボーカル曲をあまり使用しない路線ですが、そんな中で、毎回ではないが、「EDテーマ」に位置づけた楽曲を締めに用いて次回予告へのブリッジに使う『ドンブラ』の手法は、なかなか面白い工夫でありました。
 後、今年見た作品だと『エグゼイド』が作品と主題歌の関係についての模索が窺えましたが、本編の尺が欲しいばかりに、特になんでもない回でもOP削るを繰り返すと、結局、トータルでの劇的な効果が減衰してしまうので、やりすぎるとあまりよろしくはないな、と思うところ。
 主題歌+クレジットをラストシーンに重ねる形式そのものは、いわゆる一般ドラマでは珍しくないですが、児童向け作品としては、情報量をある程度までで分割する、などフォーマットに用いにくい事情はありそうでしょうか。
 今季『ドンブラ』は、OPのダンスがみんな楽しそう、が割と掴みの好感度アップに繋がっていたりするのですが、白倉Pが2年続いた後、来季の新戦隊で作品と主題歌の関係をどう置くのか、はちょっと気になる部分です。
 それでは、最後に作品部門で今この瞬間に開き切れ!

☆作品部門☆
1位 『TAROMAN』
2位 『恐竜戦隊ジュウレンジャー
3位 『ルパンレンジャーvsパトレンジャーvsキュウレンジャー

 第1位は、少々飛び道具になりますが、今年ぶっちぎりの完成度だった、岡本太郎式特撮活劇『TAROMAN』。
 ある種、劇中劇的な作品なのですが、70年代巨大特撮パロディとしての純粋な出来の良さ(それらしい感)に加え、「『TAROMAN』というフィクションのフィルターを通す事で岡本太郎を寓意化している」その構造そのものが、「特撮ヒーロー作品の在り方(機能性)」そのものを示している、というヒーローフィクションの機能性についての自覚的な眼差しが、パロディ作品として非常に秀逸でした。
 『タローマンヒストリア』も含めて、架空史ものとして非常にツボに突き刺さる作りで、大変、楽しませていただきました。
 爆発だ! 爆発だ! 爆発だ! 芸術だ!
 「なんだこれは? そう、それは芸術の巨人・タローマンである」
 第2位は、“6人目の戦士”を本格的に取りこんだ事で《スーパー戦隊》史にその名を刻んだ『恐竜戦隊ジュウレンジャー』。
 エピソードのアベレージが高いとは言いがたいですし、個人的なツボに刺さったわけでもないのですが、年間通して「子供」「悪夢」にこだわった作品コンセプトを貫き、1年間の物語で何を描くのか? について散漫になる事なく取捨選択をしっかりとしてまとめあげた点は、高く評価。
 最終盤に提示された「来年も、再来年も、その次の年も、誕生パーティ、やりたいから!」は、ジュウレンジャーの戦う理由の本質として非常に好きで、着地姿勢の美しい作品でありました。
 「「「「「ダイノ・バックラー!!」」」」」
 第3位は、総勢19人+1のVSもの『ルパンレンジャーvsパトレンジャーvsキュウレンジャー』。
 ホシ・ミナトを投げっぱなしにしたのを筆頭に、唐突に紛れ込んでくるさわおとか悪役サイドの薄さとか問題点もあるのですが、テンポの良さと小刻みなユーモアが面白く、キャラクターの魅力を前面に押し出した作りが気持ちよく楽しめました。……『ルパパト』に関しては! 正直! 今でもちょっともやもやするものはあるのですが!  今年は『リュウソウvs』も見た事で一つの区切りがついた……ようなつかないような……でも、10年後まで引っ張った物語とかは見たくないのが正直なところなのであります(笑)
 「「「快盗チェンジ!!」」」 「「「「「警察チェンジ!!」」」」 『セイ・ザ・チェンジ!!』
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 今年は、完結まで見た作品があまり多くなかった事もあり、個人的には大人しめのランキングとなりましたが、やはり一番痛かったのは、昨年の主力作品だった『ゼンカイジャー』が、「年明け失速そのまま沈没」のパターンにはまってしまい、去年の年末企画で触れた「現行『ゼンカイ』は見れば面白い一方で、何かがもう一つ足りないというか、突き刺さりきらないところがあって……」がそのままマイナスの方に出てしまった事。
 感想本文にも書いたように、最終回そのものはそこまで悪いものでは無かったのですが……終盤、個別の掘り下げがほぼ消滅するキカイノイドメンバー・前半に蒔かれたテーマ的な種の収穫放棄・あまりにも茶番と化してしまったトジテンド最終決戦・唐突に湧いて出てくる“魂の継承”要素・致命傷だった“神様”の面白くなさ……と、一年間トータルの物語の結実としては不満が多く、作品全体の印象が悪くなってしまいました。
 特に、終盤多くのキャラが“神様”の踏み台扱いになってしまい、キカイノイド勢にしろゾックスにしろ、ポテンシャルを発揮しきれずにキャラとしてのもうワンジャンプが出来ず仕舞いに終わったのは本当に残念。
 そういったマイナスも含めて、今年の視聴作品に目立った要素を一文字で示すと、「神」でありましょうか。
 “神様”(『機界戦隊ゼンカイジャー』)……大獣神(『恐竜戦隊ジュウレンジャー』)……檀黎斗(『仮面ライダーエグゼイド』)……また、神崎士郎(『仮面ライダー龍騎』)も“ライダーバトルの神”といえますし(今頃気付きましたが、名字に「神」が入っていた)、ヒーローが神輿に乗って現れる『ドンブラザーズ』は、神霊的性質を持つ英雄と、その神格の二面性について自覚的と思われる作品。
 『ドンブラ』は来年、話のまとめに入るところで、更に上位の神概念的存在が出てくる可能性もあるかなーとは思っていますが、とにかく上手い事まとまって、ドーンとハッピーエンドを迎えてほしいと願ってやみません。
 そういえば、既に発表された新戦隊のモチーフは「王様」であり、王様といえば古来、“神”であったり“神の代行者”であり、神と接続した物語が続く……のやらどうやら。
 まあ基本、神様とか、あまり直接出すものではない、と思うところではありますが(笑)
 結局『トリガー』をリタイアしてしまったり、『デッカー』は見ていなかったりと、また離れ気味になっていますが、そろそろ現行《ウルトラ》にも舞い戻ってみたくはあり……後、今年は全くといっていいほど映画を見られなかったので(特撮ジャンル以外も)、来年はもうちょっと、映画を見たい、と思っております。
 ランキングそのものを振り返ると、今年は『TAROMAN』『ドンブラ』『ジュウレン』の3強その他、といった形になりましたが、『ドンブラ』が割と人の心を持った作品なので、去年よりは総合的に人の心があった気がします(光明寺父娘から目を逸らしながら)。
 今年はとにかく『ドンブラ』感想のカロリー消費が高く、他の作品に手が回らない・『ドンブラ』視聴も遅れがち・情報量を追うだけで手一杯、となってしまいましたが、年末ギリギリにようやく追いつき、気候が落ち着いてペースも掴めてきたので、年末年始は溜まってしまった『ギーツ』を追いかけつつ、来年はあれこれ体制を整え直しながら、構成分析なり総括なりまとめ作業なり劇場版の視聴なりといった宿題をこなしていければと思います。
 何故かタロウ(タロー)の当たり年だった2022年、来年も、皆様に良き特撮ヒーロー作品との縁があらん事を祈念しつつ、以上、今年の振り返り企画、長々とお付き合いありがとうございました!
 「ここのおでんは……32点だ!」