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この子も風ン中 弾け飛ぶ

人造人間キカイダー』感想・第33-34話

◆第33話「凶悪キメンガニレッド呪いの掟」◆ (監督:永野靖忠 脚本:多村映美)
 キメンガニレッドの操る破壊音波によって夜の街で男女が爆死し、どアップから入ったギルをあおりの角度で撮ると、斜め下のカメラに向けてギルがVサイン(ハサミの見立て)を突き出す、これまでにないタッチの見せ方。
 「地球侵略も……そのハサミ一つで充分だ」
 10万人を殺せると豪語する破壊音波のテスト成功にご満悦のギルは邪魔者キカイダーの始末を命じるが、キメンガニのアジトでは、第19話で登場したカブトガニエンジの復刻版が暴れ回っており、ダークロボットとダークロボットがそれなりの会話をかわす、今作これまでなかった怪人ドラマ。
 「俺はおまえを消したくない。愚か者とはいえ、兄貴だ」
 カブトガニエンジの構造を元に改良を加えられ、モデルチェンジしたその強さは5倍! と自称するキメンガニはカブトガニの動きを封じると牢屋に念入りに拘束し、設計のベースにするのになぜ復刻までする必要があったのか疑問は募りますが、カブトガニは通風口からあっさり逃亡(笑)
 キカイダーに復讐の念を燃やすカブトガニエンジはひとまず近所の工事現場で無差別殺人を行い、そこには偶然にも、さまよえる光明寺が働いていた。半平情報で工事現場に向かっていたミツ子一行がカブトガニの襲撃を受け、助けに入ったジローだが悪魔の笛の音が鳴り響き、笛を口にあてながらカメラをねめつけるギルの視線が、いつも異常に怖い。
 笛の音に苦しむジローを見たら慌てて攻撃しない事を学習していたカブトガニは、遠間から破壊光線を放つが、結局はカブトガニバブルにより耳を塞いでしまった事でチェンジされ、必要なのは、判・断・力……!
 所詮は再生怪人よ、とキカイダーに痛めつけられ、投げ飛ばされたカブトガニは、キカイダー憎しの執念でなおも立ち上がると最後の花火を打ち上げようとするが、気絶から目を覚ましたミツ子さんが突然カブトガニをかばい……???
 初見の脚本家により、再生怪人の執念(と今回怪人との衝突)にスポットを当てていくのは割と面白いアプローチだったのですが、このままだとダークに始末されるからとダークロボットに情けをかけるミツ子の姿は、今までの物語に影も形も無い要素すぎて、目測を誤ったアプローチがフェアウェイの遙か彼方に消えていく、完全なOB。
 「窮屈だけど少しの辛抱よ。お父様が帰ってらしたら、すぐにこの体を治療して元通りに」
 キカイダーを説得したミツ子は、激しい損傷を抱えたカブトガニエンジを光明寺のロボット管理室へと運び込み、いつ帰ってくるのか全くアテの無い光明寺を引き合いに出し、鉄格子の檻に放り込んで拘束具をはめるのを、専門用語では監禁といいます。
 ――そうよ、あなたはこれから私の理想のアンドロイド、第二のジローに生まれ変わるのよと悪魔のメスがカブトガニエンジの頭脳回路を切り刻む寸前、アンドロイドマンによる救出部隊が突入してくるとミツ子はさらわれ、半平は今日も、殺す価値も無い存在としてジョージ真壁ばりの放置を受ける。
 工事現場付近に落ちていたヘルメットを発見したジローはミツ子がさらわれた事を知り、アンドロイドマン部隊の後を追っていたマサルはダークのアジトに近づくと囮として泳がされ、カブトガニとミツ子は、雑に一緒の牢屋に放り込まれていた(笑)
 「殺す前に、おまえの探していた親父に会わせてやる」
 既に囚われの身となっていた光明寺は、ボウケン学校の入学試験に落ちた某レッドのように体育座りしながらぼんやりと壁を見つめていてミツ子の声は届かず、いよいよミツ子が処刑されようとしたその時、突然ミツ子をかばったカブトガニがキメンガニの攻撃を受けて消し飛び、その間に牢屋を抜け出したミツ子を助けに響くギターの音色。
 キカイダー襲来の混乱により、牢屋の扉が壊されるや光明寺は脇目も振らずに逃走し、無駄な体力を使わずにじっと温存から、ここぞという瞬間に爆発させる姿に、逃走のプロフェッショナルとニンジャの魂を見ます。
 ミツ子とマサルは合流に成功して光明寺の後を追い、キカイダーには恐怖の破壊音波が迫り木っ葉微塵の危機に陥るが、たまたま車で走ってきた半平の助けにより、破壊音波を強化しすぎたキメンガニは自爆。
 全身にダメージを追ったキメンガニレッドは、待ち受けていたキカイダーに余裕たっぷりでトドメを刺され、ダークロボットに慈悲など無用!!
 再生怪人と対比する事によりキメンガニレッドの強敵感を出すのは上手く行ったのですが、ミツ子さんの突飛な行動から致命的な歯車のズレが発生。
 これがせめてジローだったら、ダークロボットに「心」を見ようとしてもある程度は納得できたのですが、ミツ子さんのダークロボットへの態度はどちらかというと「殺せ殺せ殺せ……! 殺すのだぁ!」の印象ですし、そこまでしておきながらカブトガニエンジの掘り下げはどこかに消し飛んで雑に片付けられ、予告でちょっぴり期待させた光明寺問題はいつも通りにさしたる進展もなく、狂った時計の針が戻る事のないまま終わってしまい、残念でした。

◆第34話「子連れ怪物ブラックハリモグラ」◆ (監督:永野靖忠 脚本:島田真之)
 営業成績の悪化により、なにかと懐具合の苦しいダークは横浜の金保管所を襲撃するが、何故かその情報を事前に掴んで警察に持ち込んでいた女が一人。
 続けて原子力研究を爆破しようとするダークだが、今度は女の情報を信じた警察隊が急行してきた事で、実働部隊のアンドロイドマンが包囲を受けてしまう。
 「まずい。アンドロイドマンの口を封じるのだ。自爆スイッチを入れろ!」
 ギルは遠隔操作でアンドロイドマンを自爆させ、ここからわかるプロフェッサー・ギルのアンドロイドマン観は、
 警官隊に包囲されると負ける・警察に尋問されると口を割る
 の2点。
 期末テストに出るところなので、よく覚えておいて下さい。
 ギルの指令を受けた情報部はあっという間に女の素性を突き止め、女の正体は、ダークに所属していたが既に裏切り者として処刑されたモモヤマ博士の妻カズコと判明する(福利厚生には自信の無い組織、ダーク!)。
 生前の博士が、ダーク犯罪計画書を妻に流出させていたに違いない、と判断したギルは、刺客として親子ロボット・ブラックハリモグラを放ち……劇画『子連れ狼』(原作:小池一夫/作画:小島剛夕)が1970年にスタート、若山富三郎主演の映画シリーズが1972~74年、萬屋錦之介主演のTVシリーズは1973年4月スタートなので、流行りに正面から乗りにいった感じでしょうか。
 夫の敵討ちとしてダークの秘密を暴こうとするカズコ夫人の経営するバーでは光明寺バーテンダーとして働いており、身の危険を避ける為に育児院に預けた娘に届けてほしい、と夫人に託された雛人形が何か恐ろしい事件を起こしそうな気がする、と勝手に梱包を開き始める光明寺が、とっても光明寺
 男雛の中に隠されていたマイクロフィルム光明寺の手に回収される一方、カズコはブラックハリモグラの襲撃を受け、もはやお馴染みの増岡弘さんが甲高い声で殺人針を飛ばして警官を殺害する光景を、雛人形を届け終えた光明寺が物陰から見ていた。
 「恐ろしい事だ……だが私には何も出来ない」
 記憶を失い、あくまで無力な一般人のスタンスを貫く光明寺、自然といえば自然ではありますが、善玉サイドのメインキャラとしては、あまりにも、我が身大事に正直すぎて咀嚼に困ります(笑)
 なにしろほんの数分前には他人の荷物を勝手に開けてマイクロフィルムを懐に収めたばかりなので、急に正気に戻られると、見ているこちらのチューニングが間に合いません。
 光明寺に見捨てられたカズコの危機にジローが駆けつけ、チェンジすると戦闘開始。
 ダブルチョップを受けたハリモグラが穴を掘って逃走し、パンダの人形を抱えた子ハリモグラの修理を受けると、橋幸夫による「子連れ狼」(劇画『子連れ狼』イメージソングとして1971年に発表され、後に劇場版とTV版でも使用)が流れだし、しとしとぴっちゃんしとぴっちゃん、流行りに乗るどころかまさかのタイアップ(笑)
 一方、割と有能なダーク情報局がカズコの娘・マユミの存在をかぎつけると、ギルは娘が預けられている育児院に少女に変身した子ハリモグラを送り込み、ジローらもまた、マユミを守ろうと育児院に潜入。
 雛人形の情報を得るハリネズミだが、既にマイクロフィルム光明寺によって持ち去られており、ここまで穏便に事を進めていたダーク、光明寺が余計な事をしたばかりに、娘を人質に取る強硬手段を発動。
 ところが、マユミをさらおうとした父ハリモグラは、マユミに情が移った子ハリモグラの妨害を受けてしまい、逃げ出す二人の少女。
 裏切り者として子ハリモグラにアンドロイドマンの槍が迫った時、親ハリモグラが必死に命乞いをすると命をかけてキカイダーを倒すと宣言し、矛先を収める情を見せたアンドロイドマンたちは……この後、キカイダーによって壊滅します。
 「ダークに生まれし者は、ダークに帰るのだ……ダークに帰れ……」
 笛の音に苦しむジロウを前に勝利を確信したハリモグラは、大量の土砂を噴出した生き埋め攻撃により例の如くジローにチェンジの機会を与えてしまうと、父の危機に正体を現した子ハリモグラと共に逃走。
 だがその背後に、迫り来るドリルマシーン!
 突然、サイドマシーンの助手席からドリルがにゅいーんと突き出して地中を掘り進んでいくのですが、ドリルのデザインが大変ごつくて、迸る殺意。
 必死に逃げるハリネズミ父子を助けようと駆けつけたアンドロイドマン部隊は鬼畜キカイダーの前に敢えなく壊滅し、残るはブラックハリモグラ父子のみ。
 ドリルマシーン発動前、「あの子を助けたいんだね」とマユミの頼みを快く聞いていたキカイダー、どうやって着地させるのかと思っていたら、父ハリモグラはよく回る大車輪投げからさっくりデンジエンドされ、崖を垂直落下しながら大爆発。
 「あ! 父ちゃーん!」
 それを見た子ハリモグラは崖に近づいた拍子に足を滑らせると誤って転落していき、残されたパンダのぬいぐるみにカメラが寄ると、画面外で大爆発。
 「……しまった、せめて子供だけでも助けてやりたかった」
 70年代の厳しさが容赦無く炸裂し、ぬいぐるみを拾い上げたキカイダーは、残念だ、遺憾だ、そんなつもりじゃなかった、と後悔の念を述べるのですが、そもそもマユミの頼みを爽やかに請け負った割には、なんの算段も見せないまま父ハリネズミを躊躇なく爆殺しており、顔の似た某後輩の、
 「しまった……。秘密を守る為に自爆してしまったんだ」
 を思い起こさせる誠意の薄さ。
 ここで都合良く、子供型とはいえダークロボットを救済するのは相当な無理が出たでしょうから爆死エンドそのものは頷ける成り行きなのですが、ヒーローが「子供の頼み」を聞いたにも拘わらず、なんの手も打たないまま見殺し同然の展開には、さすがに唖然。
 ブラックハリモグラ父子は冷たく固い土の下で骨となり、キカイダーの征く冥府魔道をただ風が吹き抜ける。
 光明寺は持ち逃げしたマイクロフィルムを焼却し……い、いや、せめて、官憲に……!!
 次回――いつもと違うBGMの予告で烏の大群に襲われる光明寺博士! と思ったらナレーション一切抜き(サブタイトル紹介も無し)で、ハカイダーのテーマソング(好き)がかかる気合いの入った変則演出で、キカイダーを破壊せよ!