東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
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『ウィッチブレイド』ざっくり感想5

君の遺伝子が狙われている

 第17話「錯」。
 鷹山が手を回して法的にも梨穂子の母親となり、名前もまた公的に取り戻した雅音は、「梨穂子をウィッチブレイドの継承者にさせない」意識が高じるあまりに、度を超えた過保護ぶりと歪さを増すアイデンティティの依存を見せると共に、その体にもなにやら異変の前兆が……。
 一方、ナソエフの研究者・西田から手に入れたデータを元に、男性も装着可能なアルティメットブレイドの完成を宣言した和銅は、鷹山の鼻を明かして足を引っかけ、無様に地面に這いつくばったところを「鷹山。俺の名を言ってみろ」をやろうとするが、逆に足を取られて関節技に持ち込まれ、絶望的なK.O.負けを喫してしまう。
 ……鷹山局長、必要以上の屈辱を業務上のライバルに与えて、余計な恨みを買っていくスタイル。
 天羽母娘に生じていく歯車のズレと、ウィッチブレイドの背後で暗躍する各勢力の動向が入れ替わりで描かれ、最終盤へ向けてキャラクターの整理も加速していく中、色々思わせぶりに描いてきたけど、この人にこれ以上の奥は特にありません、といった感じで急に小物ムーヴを連発する瀬川は、幾らなんでもちょっと雑だったような(笑)
 重役会議で凄絶な自爆技を放つ羽目に陥った和銅は、なにやら邪悪な閃きに突き動かされ、ほら局長が必要以上に追い詰めるからーーーと、ほぼモブにしては割と画面端で出番と台詞のあった和銅秘書が多分アルティメットブレイドの装着を強制されて、深夜の街に新たな鋼鉄の魔獣が解き放たれたところで、つづく。

 第18話「転」。
 アルティメット八木……!
 理想の人物だった父親を尊敬する余りに、自分が唯一、父親から受け継げなかったもの――子孫を残す能力の欠落――は、父が愛した女すなわち母親に原因があるに違いない、と実母への身勝手にして深い憎悪を滾らせていたファーザーの目的は、自らの遺伝子を用いて生まれた“娘たち”の中から選び抜いた完全なる母胎を作り出し、その母胎から、今度こそ“完璧な自分”として生まれ直す事。
 ファーザーの思惑が明らかになると共に、西田が和銅に研究データを売り渡したのは、ファーザーの遺伝子しか使えない環境に不満をくすぶらせていた為、と理由付け。
 その和銅の関与が窺われる情報リークにより、エクスコン絡みの工作が表沙汰になると、糾弾の矢面に立たされた鷹山が辞職に追い込まれるのですが、これまでの所業が所業なので、身から出たサビ以上の感想は出てきません(笑)
 とはいえ、やけに余裕たっぷりだし、和銅秘書の後釜となった瀬川は、前回の小物ムーヴを経ている為にかえって胡散臭い(しれっと鷹山に繋がっていそう)しで……前回の雑な描写は、実は視聴者に対する有効な煙幕だった……のか……?(笑)
 まあ鷹山の場合、捲土重来の戦略があるわけでもなんでもなく、「こうなる事は最初から覚悟していた。俺はやれるだけの事はやった。後はおまえ達が、好きにするといい」とか、部下その他は完全に放り投げた上で、やりきった男ムーヴをしてくる可能性も捨てきれないので、雅音パンチか梨穂子パンチがいかつい顎に炸裂するのかもしれません。
 その鷹山にしても、和銅さんよりは小指の先ほどマシそう、ぐらいなもので、導示重工(改めて凄い名前)が滅茶苦茶やっている事に変わりはなく、軍需産業を背景に据えつつ、やむを得ない事情もあったとはいえ、主人公からして巨大企業の隠蔽工作に関わっている内にすっかり慣れきってしまった今作、白と黒で割り切れない世界の諸々に、どの辺りで落とし前をつけようとしてくるのか、は見物です。

 第19話「思」。
 局長の椅子を手に入れた和銅からの当てこすりを、そもそも普通に仕事をしているだけなので、派閥の上司に殉じて腹を切れとか言われても困りまーす、と瀬川が流していた頃、別荘に引きこもった鷹山は、思ったよりわびしい生活を送っていた。
 なんか、この人やっぱり、仕事以外完全駄目人間なのでは。
 和銅の差し金で別荘に送り込まれたアルティメット八木との戦いで、久々登場もあっさりピンチに陥るウィッチ雅音だが、絶体絶命の危機にシャイニング。第19話にして白髪の第二形態となると八木を瞬殺し、さらばアルティメット八木……今作のエネミーポジションでは、電子レンジエクスコンの次ぐらいに好きでした。
 一方、赤青ツインテールをやめて、どこか玲奈の面影の見える髪型にモデルチェンジしたまりあは、人形の呪縛を自ら解いてファーザーを暗殺し、断末魔に醜態を示す首領キャラって素晴らしい。
 まりあ、ヒステリー小娘の時代はてっきり、ラスボスの一つ手前ぐらいのところで雅音に敗北してなんか可哀想な感じに消えていくみたいな扱いだとばかり思っていたので、この出世には驚きましたが、ちょっと富野作劇っぽいといえばぽい(笑)
 それにしても再登場の編集長は、斗沢の過去を知っていて気を回せる・一児の母として雅音にアドバイスを送れる・トドメに仕事の出来る美人、と第16話で突然出てきた割には、バランスブレイカー過ぎる(笑)

 第20話「願」。
 「全てを得るための力を――この手に」
 ファーザーを抹殺したまりあはナソエフ日本支部乗っ取りを敢行し、これまで導示にしろナソエフにしろ、“未知の巨大な力”であるウィッチブレイドを手元に管理して利用したい一方で、それはあくまで目的の本体では無かったのですが、ここに来てとうとう、“力”そのものを求める存在が大きな舞台に上がってくる事に。
 アルティメット八木敗北の記録映像を目にした西田が、和銅と共に雅音捕獲作戦を進行させる一方、鷹山は雅音になるべく戦わせない、と方針を転換。
 こうなってくると、まがりなりにも鷹山が会社を離れた事で(在職時のあれやこれやが消えて無くなるわけではないとはいえ)、ダーティな巨大企業のルールで動かなくて済むようになったのに加え、梨穂子の父親である事を認めた事により、雅音がいつ消滅しても大丈夫な準備が整えられつつありますが……鷹山がずっと抱えていた死亡フラグが、雅音に移譲されたというか。
 とはいえ鷹山、あの性格だと起業は難しそうだし、どこかに雇われて頭角を現すには、前職に難がありそうだし……鷹山が上手く社会復帰する為に必要な人材は…………瀬川?
 ここまで来たらアルティメット瀬川も見たくはあるのですが、「やぁ~、会社、潰れちゃいました」とへらっと鷹山の元に雇われに来る瀬川も、それはそれで見たい(笑)
 もはやこの世界の正義は、梨穂子を安定して食べさせてあげられるかどうか、といっても過言では無いので、果たして鷹山は、定職を手にする事が出来るのか。とりあえず、来年度の住民税と固定資産税を払う事はできるのか?!
 そんな鷹山が、雅音の陰謀により、梨穂子と二人で親子デートに繰り出す事になり、そうか、財産は、普通に持っているのか。そして当然のごとくズレまくった対応をし、この人の財産は、一度全て差し押さえた方がいいのではないか。
 からの変身バレで、灰髪の魔女の姿を梨穂子に受け入れられる雅音だが、いよいよその肉体には限界が迫っているのだった。
 と、結末へ向けて主人公の退場フラグが着々と積み重なっていく今作、小林脚本といえば、念入りにキャラクターを追い詰めた上で、物語世界のルールを上手く活用(或いは劇的にブレイクスルー)して盤面をひっくり返してみせるのが一つ持ち味ですが、果たして今作ではどうなりますか。
 2クールアニメという媒体も含めて、あれこれ着地点が読み辛いのは面白みであり。