東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
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完全なるラブ&ピース

人造人間キカイダー』感想・第25話

◆第25話「ダイダイカタツムリ殺しの口笛」◆ (監督:畠山豊彦 脚本:伊上勝
 昔々、とある巨大コンピューターは言いました。


 「私は誰よりも平和を愛しているのだ、佐原博士」
 「私は永遠の平和を築きたいのだ。だが、人間という生物がいるかぎり、地球に平和は訪れない」
 「地球から人間を抹殺すれば、静かな平和がやってくる」

 つまり、
 「死ね!」
 の一言と共に、キカイダーの手により小学生男子が切り立った崖の上から投げ捨てられるのは、どうせ偽装工作だろうとわかっていても結構な衝撃映像。
 マサルを葬り去ったキカイダーの魔手は続けてミツ子へと伸び、絞め殺したミツ子をこれも崖から放り捨てたキカイダーは、これが地球の平和への第一歩だ! と低く笑いながら飛び去っていき、その惨殺映像を見せつけられていたのは、彷徨える光明寺
 「ミツ子! マサル!」
 ショックで記憶を取り戻し……というか偽の記憶を植え付けられた光明寺は、ダークの作り出したアンドロイド・キカイダーを倒せるアンドロイドを完成させてほしい、とダークに抵抗する組織の代表を名乗る老人に持ちかけられて前のめりに承諾し、「いつの間にか光明寺がダークの手中に居る」肝心要の部分の壮大な雑さを、映像と作戦の衝撃でねじ伏せようとしてくる導入で、ダークが光明寺の記憶喪失を認めたの、実は初では。
 ナレーション「全てがダークの巧妙な罠とは、光明寺博士にはわからなかった。ただキカイダーを倒し、ミツ子とマサルの為にと、新アンドロイドの完成を急ぎ……」
 既に殺害シーンを見せられているので、「ミツ子とマサルの為」の内容が「ミツ子とマサルを守る為」ではなく「ミツ子とマサルの復讐の為」なところに、70年代スピリットが溢れ出ます。
 ナレーション「そして遂に、無敵の新アンドロイドが誕生した。その新アンドロイドの名は、ダイダイカタツムリ」
 ……何故、そうなった。
 サイケデリック渦巻き模様なアントマン(今ならアノーニ)顔で、背中にカタツムリらしい殻を背負っている以外は、対決アクション多めを意識してか割とシンプルな造形にまとめられた最新型アンドロイドは、自衛隊と一当たり。
 「ふふはははははは……! ダイダイカタツムリの、殺しの口笛を聞いた奴は、死あるのみだ!」
 固い殻で自衛隊の銃撃をものともせず、、粘液で動きを封じた標的を目玉からのフラッシュで消滅させ、娘と息子の仇を取る為ならば、殺人兵器を作り出す事に一切のブレーキが存在しないのが、果てなき70年代スピリッツ!
 惨劇を目撃して逃走する半平にも殺しの口笛が迫り、ジローのギターの対比となっているのはシンプルながら秀逸で、服部流忍術・笑劇時空も通用しないまま、とうとう半平の命運も尽きたかと思われたその時、響き渡る本命のギター。
 「半平です! ご無沙汰しました!」
 「ダークのアンドロイド! 久しぶりの出現だな!」
 やたらと「久しぶり」が強調されるのですが、放映リストを確認してみても特に間が空いていたという事もなく、ジローと半平に絞っても先週は爆殺寸前、先々週は偽装結婚までした仲なので、ちょっと謎。
 「ふへへへへへ、人造人間! 貴様に会うのを楽しみにしていた! 兄弟同様の貴様だからなッ」
 「……兄弟同様? それはどういう意味だ! ダークの憎むべきアンドロイドに、私の兄弟は居ない!」
 カタツムリは自ら光明寺博士の最大傑作を名乗り、動揺するジローはとにかくきりもみチェンジ。だが、カタツムリの奥の手、光明寺流・渦巻き催眠の術を受けて視覚に異常を来すと敗北を認めて一目散に逃げ出したところを、背中にカタツムリレーザーを受けて墜落してしまう。
 ジローは半平によって救出されるが、カタツムリはその催眠能力により数万人の暴徒を作り出し、「ミツ子とマサルの為」こんな世界など滅びてしまえばいい!
 横浜マリンタワー占拠によるTV電波ジャックを阻止しようとしたジローは、逆にカタツムリ催眠に囚われてしまい、カタツムリをヒロイン席に乗せてダークのアジトへとサイドマシーンを走らせる。
 引き続き欺されている光明寺の手によりキカイダーの再調整を目論むギルだが、覚醒したジローは対ダーク組織の老人に向けて殴りかかり、
 「証拠はこれだ!」
 殴って爆発したらアンドロイドマンだ!
 (キカイダー光明寺は絶対に渡しはせん)
 光明寺に執着するギルは再生ダークロボット部隊を送り込んでキカイダーを足止めするが、キカイダージャイアントスイングで雑に、ほんとーーーに雑に再生ダークロボをまとめて崖から投げ捨てて、カタツムリと三度目の激突。
 「ははははははは、生みの親の前で、兄弟が戦うのも宿命というやつかぁ!」
 この辺りは実に伊上節というか、脚本時点であった台詞なのかはわかりませんが、長坂回にはあまり無いテイスト。
 カタツムリレーザーを連続ジャンプでかわしたキカイダーは、粘液に足を取られながらもホバージャンプで強引に脱出すると、必殺コンボにより最強の敵を葬り去るのであった。
 しかし、その勝利も束の間――
 「キカイダー! まだ居るぞゥ!」
 細長い両腕を振り回し、可愛い、出てきた。
 一方、カタツムリから逃げている間に斜面を転がり落ちた光明寺はそのショックで再び全ての記憶を失ってしまい、荒野を彷徨う光明寺の姿と、特に連戦という事は無かった新たなダークロボットのシルエットが描かれる変則パターンで、サスペンスタッチのまま、つづく。
 大山鳴動してまた元の木阿弥……は、なんだかつい最近、ご子息の脚本でも抱いた覚えがありますが、ダークの手中に落ちた光明寺が対キカイダーロボットを! の掴みのインパクトから一気に話を転がす手法や、ダークの奸策に奇策を持って対抗するジロー! といった丁々発止の頭脳戦要素は伊上脚本らしかったものの、これまで散々光明寺を追ってきたのにあまりに唐突だったり、ジローの催眠術無効について一切説明が無かったり、と展開を補強する要素が弱かったのが、残念でした。