東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
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蒼くなければ生き残れない

20年ぶりの『龍騎』メモ・第23-24話

(※サブタイトルは本編中に存在しない為、筆者が勝手につけています。あしからずご了承下さい)
◆第23話「風塵」◆ (監督:石田秀範 脚本:小林靖子

  • ゾルダが砲撃する度に、ナイトがトリックベントで増殖していくのは、面白い戦闘シーン。
  • ゾルダの大砲の、でっかい鉄の塊を撃ち出している感は今見ても独特の重々しい迫力があり、《平成ライダー》史上でも出色の描写だと思います。
  • 「なんで誰も来ない……」……ナイトとゾルダが激突し、真司は手塚の過去を知り、浅倉は放置プレイを受けていた(笑)
  • 手塚の友人・雄一が、事件に巻き込まれてピアニスト生命を絶たれたところに現れたのが神崎士郎(文字通りの悪魔)。しかし雄一はライダーになる事を選ばず、結果としてフェニックスモンスターに殺害される事になったのだった。
  • 「あいつの信じた正義を無駄にしない為だ。それと……変えられなかった運命を変える為に」……そして、友人の破滅の運命が見えながら、それを変える事の出来なかった手塚は、遺されたデッキでエイのライダーに。
  • 雄一の怪我の原因こそ、ただただ衝動的な浅倉の暴力にあった事も明らかにされ、物語が折り返し地点の辺りで、神崎士郎の外道っぷりが急加速。
  • 「本当に助けに行かないんだな」「俺は自分が一番可愛いんだよ。他人の為の犠牲は美しくない!」「最低だな」「だから強いんだよ」……ナイトvsゾルダは両者リングアウトとなり、浅倉に負けじと北岡も盛り上げてきます(笑)
  • 吾郎ちゃん、解錠スキルを駆使して自力で帰宅(笑)
  • 人質作戦に失敗した浅倉、カップ焼きそばを立ち食いしているだけでもちょっと面白いの凄いな、浅倉。
  • ようやく出てきた「仮面ライダーライア」の名前は、神崎士郎から。
  • 浅倉の地元を探っていた令子は、偶然、隠れ家に辿り着いてしまい、浅倉生存の可能性に近づく事に……。
  • (やはり鍵は神崎士郎より、神崎優衣か)……先日の占い以来、何かを考える手塚は、士郎に押しつけられたニューカードを秋山へと託して花鶏を退去。その前に神崎士郎、そして浅倉威が姿を見せ、電話ボックスに映った士郎と言い争っていると(画面には一人ずつしか映らない)、会話の流れに合わせてボックスの陰からすっと浅倉が現れるのが冴えた演出。
  • 手塚はやむなく浅倉との戦いに引きずり込まれる一方、何かを目撃する優衣……?
  • (雄一、運命は……運命は…………)……ライアが王蛇に追い詰められたその時、龍騎が止めに入るが、その龍騎もまた、絶好調の王蛇に苦戦。そして放たれた毒々ライダーキックの直撃から龍騎をかばって倒れたのは、ライア。
  • 「ったく、来ない時は一人も来ない癖にな……」……そこへナイトも駆けつけ、状況は全く笑い事ではないのですが、前半の放置プレイが効いて、王蛇がぼそっと呟くのが凄く面白い台詞に。
  • 真司によってミラーワールドの外に引きずり出された瀕死の手塚は、占いの結果では本当は真司が死ぬ筈だったと明かし、微笑を浮かべる……「しかし運命は……変わる」。
  • (雄一……おまえは後悔なんかしてない。今ならわかる。おまえは俺の運命を変えてたんだ。そしてそれはもっと大きな運命を変えるかもしれない。……俺の占いが、やっと……外れる)
  • 神崎士郎が悪意に満ちた蜘蛛の糸を張り巡らせる一方で、運命を変えようとする小さな意思が繋がり、響き合い、やがて大きな波紋になってそれを打ち破る可能性を感じながら、手塚海之、絶命。
  • カニやサイは、“悪”の側に属する人物として、役柄上は「仮面ライダー」でも実質「怪人」に近い存在でしたが、ここで遂に、善玉サイドといえる「仮面ライダー」が退場し、猛威を振るう浅倉。
  • ナイトがSURVIVEカードを手にすると風が渦を巻き、固有装備のカードリーダーが盾と剣の組み合わせに形状変化。そこにカードを読ませると、青い鎧を身につけた新たな姿へとパワーアップして、つづく。

 物語も折り返し地点に来て手塚の退場とナイトの強化が重ねて描かれ、強化用のアイテムが、士郎 → 手塚 → 蓮 と移動する事で黒幕の思うがまま感を減じつつ、龍騎よりも先にナイトが強化されるのが、一ひねり。
 手塚としては真司に渡したいところもあったのでしょうが、真司の退場の運命を変えられるかわからない以上、蓮の生存可能性を上げようとするのは納得のいくところであり、これにより手塚は、「身代わりになって真司の運命を変える」だけでなく、「新たな力を与えて蓮の運命も変えている」かもしれない、と二つの運命に命を賭けた形になっているのは美しい流れ。
 やや受け身の形にはなりましたが、ここしばらく暗中模索のただ中にいて浅倉に弟子入りまでしていた蓮が、風をまとい、その靄を払って再び前へと歩き出した象徴ともなりました。
 ただナイト、キャラクター性もあってネイビーブルーが格好良かった所はあるので、如何にも玩具カラーの勇者ブルーになってしまったのは、ちょっと残念な気持ちもあり。

◆第24話「泥土」◆ (監督:長石多可男 脚本:井上敏樹

  • 王蛇を真っ向勝負で追い詰めるナイトサバイブだが、ミラーモンスターが乱入し、王蛇は逃走。
  • 「おまえ、泥を喰った事があるか?」……令子はアジトに戻ってきた浅倉と接触し、それが当たり前の日常であったが為に、誰かを“殴る”か誰かに“殴られる”かしないと精神が不安定に陥っていく浅倉の自他ともへの攻撃衝動を掘り下げ。
  • 兄の所業に思い悩む優衣は封鎖された神崎邸へ突撃し、海を描いた一枚の絵を発見。
  • 「おまえ達が責任を感じるのは勝手だ。だが忘れない方がいい。手塚は自分の意志で死を選んだんだ。そういう男だった筈だ」……手塚の死を知った蓮は、蓮なりの消化を口にするも真司には理解されずに反発を受けるが、出力方法はともかく、あれこれと真司に対する気遣いは見えてきますし、“自分が生んだ犠牲”ではなく“故人の誇り”と受け止めてやれ、というのは蓮らしい格好良さ。
  • ミラーモンスターに単身挑むナイトは、いきなりサバイブするとコウモリもその姿が変わり、突風攻撃、そしてファイナルベントにより弾丸のような形状のニューバイクに変形すると、モンスターを轢殺。
  • なんだかんだ蓮の気遣いを察した真司は、「人間を変える」事でライダーバトルへの姿勢を変えて見せる! と新たな方針に辿り着き、令子情報により、浅倉には浅倉が死んだと思い込んでいる生き別れの弟が居ると知ると、不穏な気配がするガソリンが投入されてしまう。
  • 前回の手塚の末期の言葉で、“人と人が繋がっていく意味”に触れられたのを丁度受ける形で、「人が人を変えていく」テーゼが投入。
  • そう見ると浅倉というのは、“暴力でしか他者と繋がれない存在”であり、『クウガ』のグロンギ的なるものの延長線上のキャラクターでもあるのかも。
  • 再びモンスターの気配がして龍騎とナイトはW変身するが、まともに戦闘も始めない内から時間切れで離脱を余儀なくされた上、召喚カードから契約モンスターが謎の消滅。
  • 「終わりだ。ライダーの戦いは中止する」……神崎士郎、電撃最終回宣言で、次回――打ち切り?!

 浅倉脱獄から芝浦・手塚の退場まで、ライダーバトル主体の流れに前回で一区切りがつけられて、今回は浅倉威という男の掘り下げを行いつつ、正攻法のモンスター退治に、ナイトサバイブの能力見せ。
 この辺りまで来ると、2話1セットの怪人退治構造からもだいぶ離れており、改めて初期《平成ライダー》は《メタルヒーロー》の系譜というか、一作一作ごとの手法の独立性が強い。