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世界を敵に回そう 決着を付ける為に

 あれ……? もしかして今作、『コンレボ』度が高いのでは……? と急に気付いた第9話。

仮面ライダーギーツ』感想・第9話

◆第9話「邂逅F:Wake up! モンスター」◆ (監督:中澤祥次郎 脚本:高橋悠也
 エナジー缶をジャマーフィールドの外に蹴り出して勝負あり! の筈がサボテンボスは倒れないどころかジャマーフィールドが拡大する非常事態。
 更に、もはや怪獣レベルの大きさになったサボテンボスは、エナジー缶を自らの体内に飲み込んでしまう。
 「ジャマトってのは進化する怪物だ。こっちもそれに対応するしかない」
 「その通り」
 例の如く、“俺はわかっている”調のエース発言に続き、これまでモニタールームに居た胡散臭い仮面の人物――ゲームマスターが姿を現すと緊急ミッションを宣言し、それは、缶を破壊するキーアイテムとして、人間の顔ほども大きさのあるタマゴを育てる事。
 今や3人となった仮面ライダーは、タマゴ片手にジャマトとの戦いに挑む事となり、そもそも育て方が全く説明されないのが、さすがデザイアグランプリです。
 三者三様のタマゴへのアプローチが描かれると、ギーツはタマゴに語りかけながらニンジャ分身を発動し、サボテンボスが飲み込んだ缶の位置を発見するシークレートミッションを新たに設定しているDGP運営、余裕、あるのでは……?
 インターバル中、ネオンのタマゴからプロペラバックル、道長のバックルからはドリルバックルが誕生(……?)し、余裕のエースは、セーフルームにずっと隠れていれば生き残る事はできる、と二人に忠告。
 …………というか、完全に煽りにいってるのですが、エース様ちょくちょく、捉えようにとっては“運営の犬”っぽい発言があるのは、狙ってやっているのか天然なのか。
 そこからまた一晩が経過して決戦前夜の各人の姿を描くのですが、個人的には心情掘り下げのメリットよりも、ゲームの緊張感切断のデメリットの方を大きく感じますし、事あるごとに霧吹きで水をかけすぎというか、作風があまりにも湿気過多。
 この調子でやっていると、2クール目が終わる頃には、全身ずぶ濡れで目も開けられなくなってしまうのでは。
 ギフテッド教育に失敗した感のある英寿のタマゴが孵化しないまま再びサボテンボス軍団が出現し、それに立ち向かうドリルゾンビウシと、プロペラネコ。
 セーフルームでワンダースワン(覇権ハード)でもしてな! と煽ってきた当の本人が姿を見せない事をせせら笑うウシだが、前季ラスボス戦と全く同じ戦術であり、今、君たちがやらされているのは専門用語でいうところの「露払い」ってやつだからな!
 まあウシの人に関しては、そういう小賢しいやり口を全て踏みつぶして俺が勝つ! という事なのでしょうが、その点で
 「真っ直ぐ……突き破る!」
 はらしさが出ていい台詞でした。
 ウシがドリルで突撃し、それただの鉄パイプなのでは? と危惧されたプロペラネコも展開から飛翔に成功するが、揃って巨大サボテンボスにぺしっとされたところにおっとり刀で駆けつけるブーストギーツ。
 「ゾンビってのはな……死にかけてからが本番なんだよ!」
 大ダメージを負いながらも立ち上がるゾンビウシは、サボテン針千本を受けて半死半生となるが、それでも、前に進む歩みを止めようとはしない。
 「勇気とか……無謀とか……どうでもいい! 俺は負けない! ……それだけだ」
 「…………そうだな……それだけだ!」
 勝利に向けて、ひたすら前に進み続けるウシの姿がツボに入ったらしいギースは、ウシめがけて振り下ろされた大刀の前に立つと、まさかのタマゴガード。
 その一撃により無数のヒビが入るとようやくタマゴが割れ、中から出てきたのは、バックルになろうとしてなれなかった、黄緑色のドロドロした液体であった……てな事はなく、ギョロ目が気持ち悪いモンスターバックル。
 「――ここからが、ハイライトだ」
 ギースがバックルを起動すると瞳が開閉し、バックル部分に玩具的なギミックを仕込む都合で仕方ないのでしょうが、最初に出てきた、マグナム×ブーストバックルの組み合わせがドライバーの完成形としてシンプルに格好良かったので、結局ゴテゴテ路線に行ってしまうのは、残念。
 青地に黄色い星印のあしらわれたアーマーが、ガチャコン、とギースに装着され、一瞬、ガンダ○マックスター……? と思ったのですが、後で確認してみたところ、マックスターは赤地の装甲で星印もなく、ボクシング要素以外は全然違っていた事を白状します(笑)
 「こんな世界は、一発K.O.だ」
 さすがに星印が白色は避けたキャプテンもといネオアメリカの仮面ライダー・モンスターギーツは、ちょっと『エグゼイド』っぽい効果音でパンチを放つと、べらぼうなパンチが一撃で缶を砕いてサボテンボスをギャラクティカマグナムし、ミッションクリア。
 一応、ボスを一撃で粉砕するニューアイテム入手の流れは、道長の姿に英寿が活路を見出したから、と「試練」を「突破」する構図を盛り込んではいるのですが、正直、道長のどこがそんなにエース様のツボに刺さったのか、ピンと来ず。
 本人の言葉を全面的に信じるのならば、これまで数多のプレイヤーを見てきた筈の英寿が、ここに来て、桜井、道長、(そして今後想定される)ネオンを、立て続けに「おもしれー奴」認定するにはミレニアム分の説得力が足りないという、ありがちな落とし穴に正面からはまってしまっています。
 また、タマゴの育成手段にもそこまでの差は感じなかった為(道長は明らかに雑でしたが)、結局最初の三択で運が良かった、モンスターバックルが転がり込んできたのは“主人公だから”以上の意味を与えられなかったのも、残念。
 それらに複合的に説得力を与える事でモンスターバックル誕生の瞬間に劇的な飛躍を生んでこその“物語”だと思うわけなのですが、霧吹きタイムとの取捨選択の問題を感じます。
 「……負けなければ、いつか勝てる日が来る。……いつでも相手になってやるよ」
 「……どこまでも気にくわない野郎だ、ギーツ」
 助けたのはタマゴの教育の為、とうそぶく英寿の胸ぐらを掴みながら道長は敗者として退場。
 ここの英寿の言葉そのものは良かったのですが、最後に少し良いところを見せる分もあってなのか、人一倍、勝利への執念が強い筈の道長が、ラスボス戦(しかも最低でも2周目)に来てまで運営のやることなすことにいちいち噛みつく描写がいつも以上に酷く、“理不尽を許せない真っ直ぐな男”を通り越して“粗暴で頭の悪い男”になるまで株価を下げる事により、悠揚としてあらゆるゲームを受け入れる英寿の株価を上げる露骨な対比のやり口にうんざりなのですが、もう少しスマートに出来ないものでしょうか。
 カボチャ頭の中身がちらっと顔見せ登場し、ネオンも退場し、かくして今季のデザ神が決定するが、エースの望んだ世界に、ツムリは大変不満顔。
 「世界を救えたというのに、嬉しそうじゃないな」
 「浮世英寿の願いです! こんな世界はかなえるべきじゃありません!」
 「……世界を救った功績には、相応の対価を払うべきだ」
 色々と胡散臭い運営ですが、割と生真面目に対応し、少なくとも「世界を救う」事に関しては、思っていたより真摯……?
 滅びゆく世界の摂理を覆す為には、ねじ曲げようとする摂理の反動に運営側も相応に縛られており、ゲーム形式なのはあくまで呪術構築の一貫であり決して好きでやっているわけじゃないんです! 本当に! など、運営には運営の苦労があったりするのかもしれません。
 ……と考えると、実は世界は既にジャマトによって一度滅ぼされていて、DGPを繰り返す事でその延命を行っている、なんて事もありそう(故に「世界の再構築」には“強い願い”を必要とするとか)。
 そして新たな世界が始まり……
 「浮世英寿……とくと見せて貰うぞ。おまえの目指そうとしている世界の、その先を」
 休憩室のソファに座り、仮面を外したゲームマスターの正体は勿論、何かとお疲れ気味の様子のギロリさん、でつづく。
 エースはデザ神になっては色々なパターンの世界を望み、その望みがどこまで反映され、その影響でどんな世界が生まれるのかを検証しているのではと推測していますが、次回――えーと……これは、あれか。全人類が俺の妹な世界。
 「思う存分、俺を「お兄様」と呼んでくれて構わないんだぜツムリ。何故なら俺は兄の中の兄の中の兄。すなわち、兄オブザ兄オブザ兄なのだから! ……それはそれとして何故だ?! 何故、セガサターンが覇権ハードになった世界は実現しなかったんだ?!」
 エース様の果てしなき野望はさておき、立ち上がり約二ヶ月、1クールかけずにエピソード1が完結する怒濤の構成となりましたが、前回に続いてボスキャラの脅威度が高く、それを如何に打ち破るか、という話作りになっていたのは、スッキリと見られた部分。手に持つサボテン七支刀も格好良く、とにかく非常にデザインが良かったので、今後はもう少し、怪人ポジションの押し出しが見たいところ。
 ここまでの『ギーツ』、
 〔頻繁に緊張感の途切れる〔ゲーム〕・記号的な〔キャラクターとドラマ〕・目的がズレがちで爽快感の薄い〔ヒーローアクション〕〕
 と、組み合わせた要素が互いに長所を削り合って三方一両損の印象なので、同じパターンを繰り返しても退屈になるだけのエピソード2でどんな手を打ってくるのか、それによる構造的問題の改善には、期待したい点。
 共有装備&使い回しが利く(ライダーごとに違う見せ方が出来る)事により、次から次へのフォームチェンジ過多と、それにともなう使い捨てイメージの減じる、ライダーバックルのアイデアと劇中の見せ方には好感を持っているので、新展開を前向きに楽しみにしたいと思います。