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ブースト『ギーツ』

仮面ライダーギーツ』感想・第4-5-6話

◆第4話「邂逅3:勝利条件」◆ (監督:杉原輝昭 脚本:高橋悠也
 休憩時間中とはいえ、外部に電話かけられるのか……どころか、一時帰宅も可能だったDGP。
 そして皆、パンダは縛ったまま放置なの?! いつも困り顔のギロリさんが、仕出し弁当ぐらい用意してくれるの?!
 行動制限は緩くしておいた方が何かと話が作りやすいのはわかるのですが、早くも、DGPが世間に大っぴらにならずに進行している理由付けとなっているジャマーフィールドの設定と、あれこれ力強く干渉しているような。
 そもそも、人命救助でもスコアを稼げる、としたのはいいものの、ゲームに巻き込まれた一般市民を当座のゾンビジャマトから助けてもフィールドの外に出られないのでは……? という疑問があったのですが、ウェーブとウェーブの間に休憩時間を用意してしまった事により、その間フィールドどうなっているの? 一時的に消滅しているの?? と疑問が増殖し、それが更に一時帰宅OKレベルで間が空くと、いや本当にどうなってるの??? と疑問符が巨大化。
 勢いで進めてしまえば誤魔化しも利く小さなひび割れを、話の都合で大きな亀裂に広げてしまう典型例になっています。
 更に悪い事に、一夜明けてのウェーブ3でも要救助者の存在を描いてしまい、フィールドが消滅している内に入り込んだのか、それとも一晩どこかに隠れていたのか、どちらにせよ不自然さ――或いは据わりの悪い都合の良さがあって、巻き込まれた一般市民というよりも、(今後実際にそういうものだと明らかになる可能性もありますが)運営が用意したNPC感が募ります。
 フィールドに関する説明が劇中で無い以上、ウェーブとウェーブの間(特に2と3)に、取り残された人々が他に居ないか今の内に探してきます、とでも言って行動すれば桜井の株も上がったというものなのですが、特にそんな事もなくロビーでぐちゃぐちゃ喋っていたり女の子の元に向かうばかりであり、命を賭けたゲームに疑問を呈す役割の桜井も、結局ゲーム感覚なのではないか(ミッション中以外は、助ける相手が存在しないような振る舞いになっている)、とさえ思えてしまい、一つの亀裂が他のヒビと繋がって拡大していく事に。
 〔ジャマーフィールド×人命救助×一晩のインターバル〕が、ものの見事に負の連鎖を引き起こしておりますが、少なくとも今の桜井に必要だったのは、エースと行動を被らせる事ではなく、桜井なりの信念と行動力を見せる事ではなかったかな、と。
 「命よりも大切な願いなんてあるんですか?!」
 「あるから戦ってるんでしょーが」
 引き続き気を失いそうになるほどつまらないロビーでのやり取りですが、DGP招集時点では、参加者の大半が半信半疑で冗談半分だったのではと思われる上に、命がけなのは完全に後出しだった筈なのですが、いつの間にやら強い意志を持って参加している事になっており、私の知らない所で、参加続行の意志を確認する第2.5話がWEBで公開とかされていたりしたのでしょうか。
 エースはエースで 「参加者のお陰で世界は守られている」と、まるでそこに自由意志が介在しているかのように世界貢献を持ち出し、開幕から発生している物凄いボタンの掛け違えに対して、第4話にして歴史と記憶の捏造が急ピッチで行われているのですが、ここはいったい、何週目の世界なのですか。
 ……まあ、破壊と再生を繰り返す世界において全人類はDGPの記憶を潜在的に宿しているので、招集されるとみんな願いについて真剣に信じるようになるのだ! とか、後から出てくる可能性もありそうですけれども。
 インターバル中にネオンの家の事情が語られ、エースはネオンに希望の可能性を示し、桜井はブーストバックルを提供。
 「なんで……?」
 「君が居なくなったら……男子校みたいになっちゃうから」
 …………やり直します。
 「君が居なくなったら……姉ちゃんが、悲しむから」
 男2人がネオンに甘いのはメタ的な都合丸出しで、その印象を和らげるために、エースにパイロット版でネオンに粉かけたりツムリと食事させたりしたのでしょうが、エース様にはどうしても、高き冒険者や弾丸の勇者と同じ、女好きはポーズの気配しか感じません。
 そして一夜明けてウェーブ3が始まると、復帰したネコが派手な変身を決めるのですが、これといってネコ個人の好感度やヒーロー度が積み上がっているわけではないので、個人的には特に盛り上がれず。
 ブーストネコの大暴れによりゾンビが壊滅すると、ミッション終了により状態異常(ゾンビ化)は回復し、発表されたポイント最下位は――パンダ。
 「妨害なんかせずに戦ってたら、最下位はおまえじゃなかったのに。諦めない人間には希望がある。それがデザイアグランプリだ」
 ……いや、状態異常回復ルールを教えなかったからでは??
 パンダの願いが「人類滅亡」の時点で勝たせるわけにはいかないにしても、明らかに情報操作により意図して蹴落とした当人が、おまえにも別の道があった筈だ! と全てが終わった後に説諭し始めるのは、正直もやっとします(笑)
 ここでいう「諦めない」とは、グランプリ以前、不幸な怪我から世を恨む前に他の道を見いだせたのではという事であり、デザイアグランプリで願いがかなうのは「努力の対価」発言からも、「デザイアグランプリ」=「人生」と置いてはいるのでしょうが、それならばなおの事、思春期にままありがちな挫折に対して厳しすぎるのでは。
 前回、ネコを巻き添えにしようとした時点で「一線を越えた」扱いではあるのでしょうが、ウシとの取引が無ければ縛り付けたまま一晩放置、綺麗事担当の桜井も全くその存在を気にせず、願いの内容からDGP参加時点で手遅れ扱いされたキャラに対して、最後だけ「諦めない人間には希望がある」と突きつける事で、まるで何か物語中でチャンスがあったかのように見せるのは不誠実ですし、対比に置かれる「世を恨まずに諦めなかった者」が、家出ごっこお嬢様なのも、アンバランス(児童誘拐って幾らでも深読みできてしまうのですが、それをさせる話作りそのものへの疑問も含めて)。
 願いに関しては、そこまでのリアリティを持たずにした行為が取り返しのつかない結果になってしまう、というのはデスゲーム的なるものの“面白み”の一つではあるのでしょうが、ではヒーローフィクションの“面白み”とは何かといえば、そういった不条理な害意を、はね除ける/打ち砕く/叩きつぶす、事にあるわけで、むしろ、パンダみたいなキャラを一度のつまづきから「変化」させてこそのヒーローフィクションではと思うのですが、第4話にして「ヒーロー不在」状況が辛い。
 スタッフ的には「人類滅亡の望み」と「ネコへの攻撃」を悪役判定として重く見ていたのかもですが、後者はともかく、青春真っ盛りの男子高校生なんて、前日に彼女にフられたぐらいの理由で「人類滅べ」とか書くと思うので、そんな少年に、届くかどうかは別に救いの手を伸ばそうとする素振りさえ見せずに、なんの為に桜井は居るのか? と思うところ。
 立ち上がり、DGP参加者にエピソードゲストの機能を持たせるアイデアそのものは成る程なのですが、結果として出力されたのが「難病の息子を救おうとした父親が消滅するが、手術費用は匿名の篤志家が出してくれました」「交通事故をきっかけに世を拗ねた高校生がただただ救われないまま退場」で、ヒーローフィクションとしては何が楽しいのかさっぱりわからないものになっており、どうしてそうなった。
 パンダの人は仮面ライダー失格扱いとなって脱落し、その扱いがどういったものになるのかは濁されて、つづく。

◆第5話「邂逅4:デュオ神経衰弱」◆ (監督:柴崎貴行 脚本:高橋悠也
 ゲームの合間にメンバーの私生活が挟まれるのは面白いところで、工務店に勤めるウシの人こと道長は、仕事先でばったりエースと出くわす事に。
 「もう二度とおまえには、おまえにだけは負けない」
 道長はエースに強い敵愾心を燃やし、第3-4話はやはり、若いキャストを3人ほど並べて、家庭の事情や生死について複雑な感情を表現させるのは初動としてハードルが高すぎたと思うのですが、今回は基本1-1で絡めながら、道長はだいたい喧嘩腰、ネオンはエースの横でひたすらかわいげアピール、みたいに示す要素をシンプルにする事で、芝居と画面が安定したのは、だいぶ見やすかったです。
 道長はどうやら、過去のDGPで友人を失った事から「仮面ライダー」に憎しみを抱いている事がほのめかされ、街にトランプジャマト(公式にこの名前だった……)軍団が出現すると、「私は幸せそうなアベックを見ると、我慢できないのよぉ!!」。
 カップルを引き離そうとするトランプ軍団に対し、二人一組で戦う神経衰弱ゲームが開始され、1人あぶれたので、顔出しはともかく声出しもNGで意思疎通できないカボチャとコンビを組まされるのは、どういう罰ゲームなのか。
 今回も、「俺は知っているゲームのルール」(ID適性とか訓練ルームとか)を活用する英寿と、「そのアドバンテージを活かせない道長」の対比がどうも面白く感じず、トレーニングルームで攻略法を特訓したエース-ネオン組は、トランプジャマトを一組撃破。
 他2チームが苦境に立たされる中、カボチャとペアを組まされたヒツジの人は、運営からの救済処置である、ペア交換券を手にするのであった……。

◆第6話「邂逅5:逆転のブースト」◆ (監督:柴崎貴行 脚本:高橋悠也
 「どっちが先にこのバックルを掴み取るか。ビーチフラッグス改め、ビーチブーストだ」
 なんでそれわざわざ名前付けるのーーー?!
 喧嘩腰キャラの道長さんが突然、それどちらかというと『ドンブラ』のノリでは……? みたいな事を言い出して、笑いすぎて呼吸困難に陥りました。
 ところで前回のトレーニングシーンからちょっと気になっているのですが、皆やたらベルトの位置が高い気がしてならないのは、今時の若者体型だから? あと、道長ネオンより腰細くない?!
 微妙な疑惑が発生する中、ヒツジの人が特別チケットでペア替えを敢行し、元違法カジノのディーラーの指先で選び取ったのは、ウシ。
 勝ちに行くなら英寿じゃないの……? と首をひねりますが、これにてカボチャとコンビを組む事になった桜井はトレーニングルームに赴き、何故か急に攻略法を把握しているのですが、結局、エースが教えたの……? と、細かな疑問符が編隊を組んで宙を舞います。
 前々回、パンダに対しては何もしようとしなかった桜井が、
 「他の人の幸せが、俺の幸せなんだよ」
 とか言うのは正直、気持ち悪い一方、エースは
 「どんな逆境でも自分自身に負けない奴にこそ勝利の女神は微笑む。ギリシャの哲学者プラトンだって言っていた。「自分に打ち克つことが、最も偉大な勝利である」ってな」
 と、自分自身に負けてる奴には興味無し! を宣言し、パンダへの冷淡さと、桜井とネオンには肩入れ気味の理由を補強。
 ブーストバックルをめぐる一騒動の後に再びトランプジャマト軍団が現れると、勝ち残りの為には卑劣な手段を辞さないにも程があるヒツジに嫌気が差したウシがいつの間にやらペアを交代しており、ブーストウシがタヌキと絶妙にタイミングを合わせた攻撃(召喚されたバイクが赤い牛になったのは細かく良かった)でポイントを稼ぐ事により、ヒツジが退場となるのであった。
 食わせ物が状況を引っかき回す定番の展開で一定の面白さは生じたものの、いつの間にか共有されているトランプ撃破方法とか敵の撃破後にペア交代を告げられる理不尽な仕打ちとか、カボチャは本当にお荷物のまま終了とか、締め切り間際に放り投げられた原稿を別の人が仕上げたみたいな着地。
 恨み言を残しながら消滅したヒツジの人については、不穏なBGMが流れる中で桜井の疑問に対してツムリがにこやかに「普通の世界にお戻りになりました」と言っている背後で英寿は硬い表情をしているなど妙に思わせぶりな描写になっている一方、本編後のルール説明では
 〔仮面ライダー失格者はデザイアグランプリに関する記憶を消され、元の生活に戻される。〕
 と断定され、これが本当なら、別にパンダの時に明かしても良かったのでは……?
 急遽変更・追加されたのではないか、と邪推するぐらい、第4&6話ラストの演出と、明かされた脱落者ルールがしっくり来ないのですが(まあ基本、脱落の度に人が死んだ事になるのはどうかと思うので妥当な設定だとは思いますが)、さすがにメタ部分で虚言は無いだろうと考えると、掴みのインパクトと悲劇性の強調の為に完全消滅させられたペンギンの人がますます可哀想な事に。
 先に言明してしまうとスリルを削ぐという考えだったのかもしれませんが、これならむしろ先に退場者ルールを明かして、「穏当に退場は可能」だが、「願いの為に前のめりになって引き際を誤ればデッドラインを越える事もある」とした方が、ペンギン退場にドラマ性を作り、それを桜井のガソリンにした上で残り参加者の自発的意志も示せたような。
 ウシ道長のキャラに色がついてきたのは良かったですが、あれこれボタンの掛け違いを感じるまま、次回――ラスボスの時間。