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そのあばれ、ようとうにつき

『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』感想・第29話

◆ドン29話「とむらいとムラサメ」◆ (監督:諸田敏 脚本:井上敏樹
 ソノイの亡骸はムラサメによって脳人の世界の元老院(二人……?)へと届けられ、ムラサメは報酬として「自由」を希望。
 「勿論この力は脳人の為に使います」
 「しかしムラサメよ。おまえは完成前にこの元老院から脱走した。おまえの存在は不安定なもの」
 「……後は自分で学び、完成させます」
 長らくソノーズの上部組織として名前が出るばかりだった元老院に所属する人物が登場し、聞き覚えのある声だな……と思ったら、飛田展男さんと辻親八さんで、妙に豪華。
 そして放置状態による充電期間を終えスポットライトを取り戻したムラサメは、コンピューターワールドもとい、まるで電子回路の基板のような脳人の世界(?)を見つめる。
 「あれで良かったのでしょうか、マザー」
 (ええ。よく出来ましたムラサメ)
 「でも……ボクはどこから来て、どこに行くのでしょう?」
 (ただ戦いなさい。戦いの中で、あなたは完成するでしょう)
 …………つまり、フォージャスティス?!
 内なる声と対話しながら自分探しを続ける紫色のロボ、って東映ヒーローの極北を征くジャスティスモンスターこと特捜ロボ・ジャンパーソンを彷彿とさせて仕方がないわけなのですが、一体どこまで狙っているのか、そして能登麻美子ボイスの不穏さ度合いはどこまで行ってしまうのか!
 その頃、新発売のジャンボカツサンドに挟まってタロウの元に届けられたのは……ソノイの葬儀の案内状。一応、仲間達に事情を知らせたタロウは、出席の意志を示した事で禊ぎのバスルームに瞬間転送され、スーパーフーロータ~イム。
 タロウ不在の人間界では、やたらと気ぜわしくガラの悪い会社社長が爆竜鬼に変貌し、3体目の恐竜モチーフ鬼が誕生。
 もっと早くもっと早く! へのこだわりと原典の関係性がピンと来なかったのはともかくとして、執着が恐竜鬼と被り気味なのはちょっと首をひねりましたが、デザインは間違いなく、原典最大の問題児だったスティラコサウルスです(笑)
 ……アスカさん夢で、もっと早く彫りやがれ嫁に逃げられ借金抱えたこの駄目亭主がよぉぉとか罵られたりしていましたっけ……?
 一方、アノーニ狩りを行おうとしたバスガイド獣人をムラサメが食い止めるがそこに金ドラが乱入して戦いとなり、交戦中に入れ替わった銀トラは、首筋に叩き込む寸前にその斧を止める。
 「……また感じる。おまえの悲しみを。まるでおまえは死にたがっているようだ。そんな相手とは戦えない」
 戦意を失い、背を向けたトラジロウにマザーの制止を振り切って話しかけた紫は、不意を突いてトラジロウに飛びかかったバスガイド獣人を貫き、不殺の肉体を持った獣人を、ムラサメの刃ならば傷つけられる事が判明。
 決闘前のソノイから、「私に万一の事があったら……その時はムラサメを頼れ」と告げられていたソノーズがこの光景を目撃し、どうやらムラサメは、元老院(?)が作り出した対獣人用マジックアイテムの模様。完成前に脱走した為に閉じ込められていたようですが、そこに関わってくるのがマザー、といった事になりそうでしょうか。
 「この世に生まれた時、俺はただ一人の俺だった。目の前に立つものを全て圧倒する、そんな最強の戦士になる筈だった」
 トラジロウは、借りを返すという事でかムラサメに身の上を語り、そもそもジロウの本質は、筋トレに筋トレに筋トレを重ね孤高の最強戦士となる予定のオレジロウであった、と明らかに。
 「……だが、俺の前に立ったのは……」
 覇を競い合う相手ではなく、異端の子を暖かく迎え入れてくれた子供たちと遊ぶ内に、前後に立つ者と笑い合う人格が生まれ、それこそがボクジロウ=正義のヒーローを目指す桃谷ジロウなのであった。
 人間界に棄てられ、祀る者なき荒ぶる神として成長する筈だったジロウが、人/地縁に受け入れられる事で祭の代替え行為によって和御魂に転ずる経緯になぞらえて、孤高の超人/一面においては“秩序の破壊者”が、他者との交流により社会的人格を得るに至る姿が描かれるのは、ヒーローテーゼの持ち込みにおいては時にストレート過ぎるほどにストレートな今作らしい見せ方となりましたが、同時に、おじいさんは本当にタロウに“人の心”を教えられたのだろうか? という疑問が浮上します。
 ……いやまあ、タロウがそれなりに社会に適応しつつ祟り神と化していないところを見るに、おじいさんなりに頑張ったのだろうとは思うのですが!
 タロウとジロウの現在地の違いは、宿命論的なものよりも、ほんのちょっとしたタイミングの差に過ぎないのでしょうが(現状どちらが良いとも悪いともまた言えず)、大事なのはそこから先に生まれた人と世界の繋がりであり、それを“縁”と呼ぶ、のは今作の好きな部分。
 ところで、ジロウ回想において用いられた「かごめかごめ」の「かごめ」は、魔除けの「籠目」に通じるといったような話を『帝都物語』(荒俣宏)で読んだ覚えがあるのですが、してみれば、“鬼”としてのジロウを籠目の中に封じる呪術的儀式がはからずも成立した事がボクジロウ発生の一因になったとも捉えられ、「いついつ出やる」がジロウのキャラクターそのものを示しているようにも解釈できるのは、興味深い使い方。
 そして、元来は本質であった筈のオレジロウが、“抑圧された荒ぶる情念”としての“鬼”に位置づけ内部に閉じ込められる事により、ヒトツ鬼とは結局、外部から差し込む魔では無しに、その人間の抱える本質であり、人と鬼とはその表面が出ているか裏面が出ているかでしかない、との示唆が進んだようにも思われます。
 その点では今作、物語の指向として“折り合いを付ける”を内在する一方で、主人公には裏も表もなく(故に今作世界において非人間的であり)、折り合い? なんだそれは。美味いのか? ……25点! な事が、妙味になっているのだなと(笑)
 「ボクはわからないのです。どう生きればいいのかを。生きるとはなんなのかを」
 「うーん……それは僕も同じです。だから二人の僕がいるんです、きっと。…………どう生きるかを……あ、二人で探すために」
 そして、己の存在に“折り合いを付ける”事に苦しむ二人は、一つの答を見つけ出す。
 「ボクも二人です。……そうですよね、マザー」
 (その通りですムラサメ。これからは、もっとあなたの言葉に耳を傾けるようにしましょう)
 本当に?!
 ムラサメ認識では内なる声さんの一種らしいマザーへの不審はともかく、イベントを達成して友好度の上がるジロウとムラサメだが、そこに爆竜鬼が出現。
 黄青桃も召喚されて成り行きで共闘する事になるが、ムラサメは充電切れで撤収し、狭山ネコに追われて逃げ込んだ倉庫に飛び込んできたムラサメソードを偶然にも手に取ったのは、犬塚翼。
 (戦え……戦え……戦えぇぇ)
 マザーとはまた違う野太い男の声に支配された犬塚は、サーチ&フォージャスティス! とネコ刑事に斬りかかると手傷を負わせ、ネコ刑事は逃走。すれ違いで倉庫に入ってきた鶴野みほにも襲いかかる狂犬だが、紙忍・鶴野みほは折鶴の舞いを放って姿を消し、続けて現れたのは、恐らくムラサメを追ってきたソノニとソノザ。
 「よせ、犬塚翼! おまえにそんな姿は似合わない」
 そうだもっと、
 「残念ながら、さっきちょっとしくじっちまったようだ……離れろおまえ達! 俺はもう、人間にはもどれな……ぐッ、あ、あバよ、ナつ……ぐぁぁぁぁっ!!」
 みたいな感じで頼む!!
 犬塚とソノニの因縁が引き続き構築されていくのは嬉しく、ソノザとの連携で妖刀を奪い取るソノニだったが、見事に感染して人相が悪くなると、ソノザを攻撃。
 「……俺は……いったい何をしてたんだ……」
 もつれ合いながら両者が倉庫から飛び出していくと、激しく疲弊しながらも犬塚が正気を取り戻す一方、タロウはいよいよソノイの葬儀に出席し、写真が……(笑)
 「ドン家の者よ、よく来てくれた」
 写真が……(笑)
 ソノイの巨大な顔写真パネルが強烈な存在感を発揮して北岡先生かワルズ王子かといったところですが、ソノイを討ち果たした勇者として招かれたタロウは、二人でおでんをつつけなかった心残りに思いを馳せ、糸こんにゃくをいぶかしげに見つめるソノイ、死んだ後まで、面白い(笑)
 「美味いか?」
 「……ああ、美味い。とてもね」
 しばし、いちゃいちゃ回想ならぬふんわか夢想にふけっていたタロウだが、案内状の送り方が-25点! 責任取ってこれを食え、と元老院議員にカツサンドを投げつけ、素直に食べる二人。
 「では、最後の儀式を」
 言うこと言って満足したタロウが背を向けたその時、ソノイの棺から突如とした浮かび上がったバロム仮面がタロウに斬りかかり、戦闘開始。
 人間界では、かなり凄い顔をしたソノニがスター仮面に襲いかかる内にドンブラザーズと爆竜鬼が戦う現場に飛び出し、スター仮面が上手く剣をもぎ離すとソノニは正気に戻るが、今度はサルが、侘び寂びの精神があれば人は闘争本能を克服できる筈ぅぅぅと手を伸ばし……
 「ここで一句――ワビサビを切って捨て去る修羅の剣」
 全然駄目だった。
 ……さてここで、第24話を振り返ってみましょう。


 「あなたは何もわかっていない。侘び寂びとは、人々に平和をもたらす、偉大なる思想である美学!」
 「怠け者の思想じゃないの?」

 猿原が妖刀の虜となってアバレまわっていた頃、脳人の世界ではドンモモとバロム仮面の戦いが続き、鎧の中は空洞の人形と判明。
 ここまではギャグに付き合ってくれていた元老院議員が冷たく見下ろす中(どちらかといえばコミカルに用いられていた仮面が、不気味な無表情に転じるのが上手い)、落ちた首を拾って――全く映像に違和感なくて地味に凄い――再起動したバロム仮面を切り払い、心臓部を剣で貫くドンモモだが、それを待っていたかのように鎧の中に力を吸い取られた上で、用済みとばかりに人間界へ強制送還される不覚を取る事に。
 爆竜鬼との戦闘現場に送り返されたタロウはアバターチェンジしようとするが、力を奪われた事で、ドンブラコ不発。キジがはたき落とした妖刀を、事情を知らずにこれ幸いと拾うと脳内狂戦士の声が響き渡るが……
 (戦え……戦え……戦えぇぇ)
 「はーっはっはっはっは!!」
 いつもと、一緒だった。
 「ほぅ、有り難い。力も戻った」
 妖刀の力を我が物とする事でアバターチェンジも成功し、本格登場から数えて11話、ようやくムラサメがドンモモの手に収まりましたが、ムラサメのパワーを吸収した事により、ドンモモに獣人を倒す能力が身についていたりもありそうでしょうか。
 爆竜鬼を部品一つ残さずムラサメで妖桃両断したドンモモは、しつこく呼びかけてくる剣をポイ捨てすると、呉越同舟・超絶大合体。グレートモモバスターとなって騎乗状態からの超高速ドンブラファンタジアで、巨大爆竜鬼を秒殺するのであった。
 もっと早く!はどこから来たのかピンと来なかった爆竜鬼ですが、『ドンブラ』らしい入り乱れる展開の構築にしっかり一役買ったのに加え、ムラサメ妖刀モードの装備効果が、『アバレ』の問題児ナンバー2であるところの伝説の鎧を彷彿とさせ、バロム鎧も重要な役割を果たす事を考えると、もしやそちらが本線だったのでしょうか(笑)
 地上のソノニとソノザは、ポイ捨てされてパレットに突き刺さった妖刀を発見し、恐れる様子もなく近づいたソノザがおもむろに取り出したのは……『初恋ヒーロー』ーーーーーーー?!(笑)
 「ムラサメ、おまえの力を封印する」
 コミックスから飛び出したページが刀身に貼り付くとムラサメの妖気が押さえ込まれ……まあ、『初恋ヒーロー』ならこれぐらいの効能はあっても良い気がします(笑) 本そのものに何かの力が、というよりも、ソノイの術の触媒、といったところでしょうし。
 一方、脳人の世界では、タロウの力を吸収したバロム鎧から兜が取り外されると、その中に満たされた液体(まさしくネクタルか)がソノイの棺に注ぎ込まれ……目をかっと見開いたソノイ、復活?! で、つづく。
 よほどの事がなければ復活するだろうと思われたソノイの再起動は素直に嬉しいですが、やはり目が覚めると輸血の影響により、わーっはっはっはっは! と高笑いしながらフォークリフトに乗って現れ「貴様は脳人の世界で二番目だ!」とか口笛を吹くようになってしまうのか。そうでなくとも、多少、性格が変わるとかはありそうですが、タロウエキスの注入は強化の理由付けにもなりそうで、どんな形で再登場するのか、楽しみです。
 元老院側の思惑としては、ソノイ復活の為の高エネルギーを持つ存在が儀式には必要であり、その為にわざとタロウを怒らせたのがカツサンド作戦の真意といったところでありましょうか。
 次回――妖刀ムラサメを手に対獣人共闘戦線?!
 なお、今回の導入はソノイの葬式から始まって(何故こうなったかといえば――)な事はなく、単に、なんとなくの流行りだったのでしょうかここ数話。