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n周目のゲームスタート

仮面ライダーギーツ』感想・第2話

◆第2話「邂逅1:宝さがしと盗賊」◆ (監督:中澤祥次郎 脚本:高橋悠也
 映像的にはいきなり最終回、という趣向だった前回、物語としても一つのゲームの終わりであった事が明確にされ、世界を作り替えるゲームの勝者・浮世英寿(うきよ・えーす)は“俺こそ 旅人 スター”の世界でちやほやされつつも、主人公だけになにやら別の思惑ありげ。
 前回、家出系youtuberに熱中していた凡人姉は、今回はスター英寿にきゃーきゃー言っており、こういった俗っぽいキャラは出来れば今後も巧く使っていってほしいところです。
 一方、ナビゲーターのツムリから受け取ったライダーセットを試しに身につけてみた桜井凡人は天空の神殿へと転送され、そこには同じような境遇の人々が集まっていた。
 「ようこそ、デザイアグランプリへ!」
 からOPに入り、茨に囚われた英寿のイメージを中心のOP映像は……雨と廃墟とアシスタントキャラ……雨と廃墟と……ううっ……な記憶はさておき、ふんわりとしたイメージ映像中心の、主題歌の曲調も合わせて割と淡々としたOP。前作の主題歌は、後半に少しテンポが上がってわかりやすい盛り上がりどころがありましたが、今作はそういう事も無し。
 「今、私たちの世界は、ジャマトの脅威にさらされています」
 グランプリ終了ごとの記憶のリセットについて触れられ、理想の世界を報酬に仮面ライダーとしてジャマトと戦おーう! とスナック感覚で促された人々は、さしたる説明も無いまま山の中に展開したジャマーエリアへと放り込まれ、第1のミッションとして、宝探しゲームがスタート。
 開始早々、問答無用で襲撃してくるジャマト兵に対し、地球人類の武器はまず石だ!を実践する猫令嬢への好感度は上がりました(笑)
 明らかに他より有利な2周目(もしくはそれ以上)の英寿は、ジャマト兵を蹴散らして宝箱を拾うとウォータバックルを入手してさっそく変身し、〔円形のフィールド・装備品は現地調達〕は、如何にも今時のバトルロワイヤル系ゲームの要素(殴って死体漁り、は洋ゲー文脈はともかく、「宝探し」では無いと思いますが……)。
 肝心の水鉄砲の威力は微妙だったが、ギーツは閃いた。
 そう、水鉄砲は打撃武器!
 その姿をこれまた2周目(もしくはそれ以上)のウシの人が木陰から見つめる一方、桜井が第1話冒頭の面接官と再会するのは、日常と非日常の接続としてちょっと面白い展開だったのですが、直後に、難病の子供カードが切られる悲劇のバリューセット具合に大変ガックリ。
 また、一縷の望み……にしても、子供の回復を願う面接官の、デザイアグランプリに対するのめり込み具合がいきなり強すぎて少々困惑するのですが、都市伝説の流布する闇のゲームとかなわけでもなく、前情報ゼロに等しい状態から“半信半疑の人々が徐々に実感を得ていく”段階をすっ飛ばしてしまう為に、悲劇の前振りの意図も透けすぎて、どうにも強引な展開。
 この辺りは、脚本家のスタイルなのか、様々なデータの蓄積から意図的にやっているのか、商業展開の都合でスケジュールが手一杯なのかわかりませんが、“物語のテンポの速さ”への脅迫的義務感めいたものさえ見えて、本来は2話使いたい内容を1話に圧縮するけど、圧縮技術そのものが高いわけではないので、必要な心理描写がすっ飛びがちという近作《ライダー》の悪循環に早くも陥っているように思えてなりません。
 バックルを入手した桜井と面接官は、白服によりロビーに案内されると、同じくバックルを獲得したメンバーがくつろいでおり、二周目(以上)の古参プレイヤーが2人だけで盛り上がっていて、大変、感じ悪い……!
 そこに緊急ミッション発生の連絡が入ると、バックルを確保していなかった人々は一斉にリタイアとなり、残りは7人。
 ……いや、まあ、モブプレイヤーの脱落とか繰り返し描かれても面倒くさいといえば面倒くさいのですが、物凄いざっくり感に目が点。
 そして、ミッション中に死亡した仮面ライダーは世界の再生から除外される(今回の失格扱いについては不明)事が説明された後、強制的に変身させられた7人――ヒツジ・ネコ・タヌキ・ウシ・パンダ・キツネ・ペンギン――は、山賊の親玉であるジャマト怪人を倒す緊急ミッションに送り込まれ、どうなるのかと思っていた怪人ポジションが出てきた事には、ホッとしました。
 乱戦が始まるとマグナムパンダとゾンビウシの活躍が描かれ、戦いに怯えて木陰に隠れていたザ・凡人のタヌキ仮面が、恩人でもあるペンギン仮面の危機に飛び出……すのかと思ったらそんな事もなく、ペンギン仮面が大ダメージを負ってからようやく出てきて、瀕死の面接官を抱き起こす、悲劇のワゴンセールに頭がクラクラ。
 これも近作《ライダー》の悪癖ですが、1年かけて「ヒーロー」についてああだこうだとやるのが常態化していく内に、「ヒーロー未満」を描かないといけない強迫観念に取り憑かれているような節が見え、“その段階”を乗り越える事で物語や人物に深みが増す部分も確かにあるでしょうが、だからといって、国境線でストレッチするヒーロー(未満)とか、木の陰で震えて恩人を見殺しにするヒーロー(未満)とか、仮にも「変身」できるようになった後には見たくない、のが率直な心境。
 今作の場合はそこで、「既にヒーローである男」浮世英寿を配置している部分はあるのでしょうが、ヒーロー未満の段階を時間をかけて描かないといけない、という意識が強すぎて、もっと大事なものを見失っている気がしてなりません。
 ミッション中の死亡・消滅は、既にシロクマ仮面で描きましたし、ここでゲームの現実を突きつけて悲劇の上乗せをしてくるよりは、桜井にすっぱりとヒーローへの一歩を踏み出して欲しかったところ。
 退場者のペースもさる事ながら、物語の内容的には、1年かけてこの一つのゲームを描くというよりも、2周目・3周目に突入したり、別の要素が入ってきたりしそうではありますが……第2部「○○編」とか銘打って、全く別の環境にゲームの舞台が変わるというのも、割とセオリーではありましょうか(実写TVシリーズでは表現が難しいところもありますが……1クール丸々、セットの牢獄の中のみで展開! とかあったら、それはそれで凄いかも)。
 「戦わなきゃ世界を変えられない。……だとしたら、戦う以外に選択肢は無いだろ」
 「…………君は……なんのために戦ってるんですか?」
 「……恵まれない世界中の子供のために」
 そこにギーツが姿を見せて、主義主張の衝突からタヌキの変身に繋げるのかと思ったら、そこでもそんな事はないまま、明らかに胡散臭い英寿の言葉に感じ入って丸め込まれたところに山賊ジャマトが出現。
 「世界を変えたければ、戦うしかない」
 英寿はウォーターキツネとなると水鉄砲を駆使して山賊を翻弄し、その戦いに感化された桜井がブーストバックルを使おうとしたところでレンタルを要求。
 君の勇気がこの胸に!
 熱く響いていい感じ!
 友情パワーに目覚めた桜井の投擲したバックルを受け取ったギーツは、下半身をブーストするとブースト火炎蹴りと水鉄砲を組み合わせ、山賊ジャマトにラッシュ攻撃。次から次に新フォームを活躍させるというよりも、手持ちの装備を活用する、といった方向性は飲み込みやすい見せ方で、スーパーチェーーンジから、高水圧キツネパンチでビクトリー!
 「狙い通り、化かされてくれて、サンキュー」
 「……ん? 化かされたって……?」
 戦いを終えたギーツは、 「全部が全部嘘ってわけじゃない。たまに感動してうるっとしたし? 騙して悪いなーとも思ったよ」と 適当にそれらしい事を言ってブーストをいただいた事を種明かし。
 勝利の為には奸策も厭わない姿勢を示してくるのですが……退場者を描いた直後という流れが非常悪く、勢い余ってギャグに突入しないか見ていてハラハラするし、さすがにギャグにこそしなかったものの、それなりに軽妙なやり取りを意図していそうな割には、キャラの心理として抑えた反応しか示せないので笑いにもしんみりにもならない、なんとも中途半端で、誰も得をしないシーンに。
 ブーストバックルは使い切りのアイテムと前回のフォローも入って、生き残った仮面ライダーは6人。
 デザイアグランプリの開催はジャマトの出現次第とされ、勝ち残る事で退場者の蘇生は可能なのかをツムリに問う桜井。
 英寿は匿名で面接官息子の手術費用を寄付する、という形でただの唯我独尊な俺様キャラではない事を示唆して、それを囚人が見ていた。
 「仮面ライダーギーツ……君の目的はなんだ」
 覆面被ったデスゲームの管理者、は実にストレートなキャラですが、「グランプリそのもの」と「グランプリとは何か」の2本の線が、巧く呼応していってほしいところです。