東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
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5人の光明寺

人造人間キカイダー』感想・第12話

◆第12話「残酷 魔女 シルバーキャット」◆ (監督:北村秀敏 脚本:島津昇弌)
 見所は、足を痛めた上司(ダークロボ)を置いて、一目散に逃げていくアンドロイドマン。
 下っ端戦闘員にだって、生き残る権利はあるのです!!
 そんな忠誠回路のクオリティが微妙に怪しい組織の首領、それもまたギリギリのスリルを味わおうとしているのかもしれない男、プロフェッサー・ギルは、ダークの資金稼ぎ……の為ではなく、人造人間の能力増大の為、日本に持ち込まれたムンガの秘宝を狙って動き出していた。
 その命令により桜ヶ丘美術館に送り込まれたシルバーキャットは、美術館長の娘を襲って姿形を奪い取り、無気味に嗤うキャット人間体(女性)の化け猫モチーフと思わせる見せ方により展開と演出は怪奇路線なのですが、シルバーキャットそのものが、ダーク怪人の典型例として目と頭が大きく、加えて手が短め(エジプト風宝石飾りのイメージなのか、肩部分が大きいデザイン)な為、どうしても漂う、可愛い。
 一方、ミツ子とマサル光明寺博士の友人であった美術館長の元を訪れており、ギルの目的の補足説明にしても、秘宝の王冠に飾られている宝石を震動体に利用する事で人造人間の力を数倍に増幅できる可能性があるので父が“実験”の為に欲しがっていた、と聞かされる館長は、どう反応すればいいのか(笑)
 ま、まあ、光明寺くんが無事だといいよね(宝石はやらんけど!)……と館長が震えている所に館長娘に化けたシルバーキャットが乗り込んでくると秘宝を奪い、ついでにミツ子とマサルの身柄もさらっていくが、それを妨げるギターの音色。
 ジローはキャットと美術館の屋根の上でぶつかり合い、ギターは大事な、打撃武器!(余談ですが、ゲーム『龍が如く7』の職業「ミュージシャン」がギターを打撃に使っており、東映だ……と思いました)
 から、ギターで殴り返されてクリティカルヒット!!
 こやつ、出来るぞ……! と、生身アクションが割と長々と続き、3番に突入するEDテーマ。
 キャットクロー@遠距離、をヒラリとかわしたジローはチェンジしようとするが、タイミングを見計らっていたギルの笛に苦しみもがき、迫る美術館爆破のタイムリミット。
 番組史上最大の惨劇……は先日の一村全滅に及ばずとして、人類の文化遺産が危機にさらされたその時、根性見せた警備員が鳴らした警報により笛の音が途切れ、ジローはスイッチオン! 
 反撃に転ずると秘宝の回収にも成功したキカイダーは、美術館の爆破を阻止すると、秘宝を美術館に返却……せずに、何故かミツ子とマサルをともなって洞窟サバイバルを開始し、ミツ子とマサルの安全を先に確保しつつ、ダークに狙われている秘宝を守りながら囮にもなる、といった意図なのかとは思われますが、キャットクローを受けた館長が死んでいる可能性もあり、これはもう完全に、強盗の一味なのでは。
 ジローの足音から、膝の不具合に気付いたミツ子は修理をする内に父との作業を思い出し、改めて良心回路を完全にする事をジローに持ちかける。
 「……いや、僕は今のままでいいんだ」
 「でも、ダークの笛に苦しむあなたを見るのは、とっても耐えられないわ」
 「いいんだ今のままで。人間なんかになりたくない」
 「だけど、あなたは人間でないのが、哀しいって、言ったじゃないの」
 「それは! ……そんな意味じゃ、無いんだ」
 今回が初参加の脚本家という事もあってか、ジローの内心は特に掘り下げられませんでしたが、ミツ子の心情としては自然な上で、1クール目の終わりに「放置されている弱点」でもある“不完全な良心回路”の意味に改めて触れたのは、良いタイミングでした。
 触れるもの皆傷つける勢いで秘宝を手にジローが走り去った頃、毎度お馴染み故障で立ち往生していた半平の車にこっそり近づいた光明寺が、奥義・車抜け!
 ……何が起きたのかよくわからなくて二回ほど確認したのですが、やはり何が起きているのかよくわからず、半平の車に潜り込んだ光明寺が、入った姿は確認されるが出て行った姿は確認されない衝撃の袋小路人体消失トリックで、物質を透過して地中に潜ったのか、はたまた車の床に擬態して一体化してしまったのか。
 現在、光明寺博士だと思われているこの人物は、もしかして作戦の為に光明寺そっくりに変身した後、記憶回路に変調を来したダーク破壊部隊・レインボーナナフシとかではないのか。
 すなわち、光明寺×コピー×ロボット=コゴロー。
 とにもかくにも、光明寺流忍法の奥義か、はたまたアンドロイドの能力か、半平の車を利用して追っ手のマーキングを外した光明寺(コゴロー)が姿を消した後、秘宝を狙うシルバーキャットがミツ子らに迫るが、そこに立ちはだかるキカイダー
 画面手前(カメラ下側)に隠したトランポリンを使っての奥方向への宙返りや、トランポリンジャンプから土壁を蹴っての三角飛びなどを見せると、そのまま宙を舞ってアンドロイドマンを薙ぎ払い、キャットと激突。
 シルバーキャットが口から吐き出す火球・キャットファイヤーを機械の拳ではたき落とすと、マウントからの連続パンチを浴びせ、必殺コンボでデンジエンド!
 ムンガの秘宝を守り抜いたジローがサイドマシーンで走り去った後、ミツ子とマサルは半平の車の中で光明寺の名前入り万年筆が落ちているのを見つけ、光明寺博士はどうやって車内から脱出したのか。その正体はダーク破壊部隊の一員なのか。ミツ子とマサルの強盗殺人容疑は晴れたのか。様々な謎を抱えながらコゴローは征く、果てしなき逃亡の道を――。
 個人的に初見の脚本家でしたが、『キカイダー』としては、水準レベルの出来。
 ただ、ゲストキャラやモブ市民がざっくり殺されたり、生き残った関係者について放り投げっぱなしで終わるのが日常茶飯事だとしても、父親(館長)も顔見知り(ミツ子ら)も登場するのに、犠牲になった館長娘について(その場でわからないにしても)なんらリアクションが無いのはあんまりで、さすがに、置いていかないでジローーーとかやっている場合ではなかったのでは、と配慮が欲しかった点。
 また、今回にしろ押川回にしろ、「光明寺博士とニアミスさせる」のが脚本上の厄介な約束事になっており、処理の出来不出来が露骨になってしまうのは、悩ましい部分となっています。