東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
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エピローグそしてプロローグ

仮面ライダーギーツ』感想・第1話

◆第1話「黎明F:ライダーへの招待状」◆ (監督:中澤祥次郎 脚本:高橋悠也

 「おめでとうございます。今日からあなたは仮面ライダーです」

 画面の奥から、ばばーん! と、東映のロゴが出てきそうな冬の海で始まると、古代ローマの硬貨(?)を弄ぶ青年が、謎の女から手渡された箱を受け取り、そして――……う、うーん…………物語の開幕にあたって、“日常”と“非日常”を明確に対比しようとする意図はわかるのですが、その“日常”の象徴が世知辛い就職面接で、いやそんなの別にここで見たくないな、と最初からちょっと引き気味になりました(笑)
 面接官の反応がはかばかしくなかった青年は姉に泣きついて昼食をおごってもらうが、たぬきそばに箸をつけた瞬間、謎の光が世界を“分断”すると、その内側に現れた無気味な怪人による破壊と虐殺が巻き起こり、神道神職めいた戦闘員(?)のデザインは面白い。
 見えない光の壁により姉と分断され、殺戮の巷へと放り込まれた青年は、偶然出会った資産家令嬢youtuberと共に逃げ回っているところをシロクマの被り物に助けられ……あ、素顔は普通に出していいんだ。
 「この世界はじきに終わる」
 シロクマの人とウシの人(乾巧似の風貌)は、姿を見せないもう一人と共に、なにやらポイントを競い合っている事が示され、不穏な台詞に続けて出現した天空に浮かぶ城砦からの攻撃を受けて、いかにも大雑把なデザインだったシロクマ仮面、さっくりリタイア。
 切り裂かれた日常、謎の殺人部隊、その背後で行われる仮面ライダー同士の競争、規格外の巨大な破壊者、呆気ないライダーの退場、が青年と令嬢を観客に繰り広げられ……パニック状況の人間の反応としてはリアルではあるのかもしれませんが、凡人太郎の感情の起伏が激しくて、辛い。
 これはもう、純然たる私の趣味嗜好の問題なのですが、ヒーローフィクションの中で、“普通に”情緒不安定な登場人物(非モブ)を見せられるのが、大変苦手。
 ビルから転落した実況令嬢を助けた“第三の人物”に向けて長々と語り出すのも情緒不安定感をいや増しますし、世界情勢を鑑みて敢えて強調する意図もあったのかもですが……ずっと続くと思っていた平凡だけと幸せな日常がいきなり壊れるなんて! を、全部台詞で語ってしまうのは、あまりに稚拙。
 ここまでそれを映像で見せてきているのに、全て台詞で説明し直す、みたいな事になってしまっていますし。
 「こんな世界は終わらせよう。もう一度やり直すために」
 凡人太郎がわめくのを軽く受け流した髪の艶がまぶしい男は自信満々に告げ、災厄の地獄絵図の中、天空クジラ城を背に迫り来る邪神官軍団を向こうに独り立つ俺様太郎――という、いきなり最終回めいた趣向。
 大軍団にも怯む事ない俺様太郎は指を鳴らすと、黒い素体の上半身に白いアーマーとマフラーを身につけ、銃を手にした、キツネの戦士へと変身。
 スーパーヒーロータイムの前振り映像で動いている姿を初めて見て、(ちょっとファイズっぽい……?)と思ったのですが、頭部のフォルム・目の光り方・体表の赤いライン、といった所でしょうか。個としてファイズに似ているわけではないのですが、発想に似た印象を感じるというか、動物モチーフながら記号っぽいデザインというか。
 「さあ――ここからが、ハイライトだ」
 銃撃主体のマグナムキツネ、ガントレットに銃が仕込まれているのはロマン装備で格好良く、香港ノワール風二丁拳銃的アクションでグルグル回って、ジャズ調のBGMは好み。
 そこにクジラ城が迫り来ると、ライフルモードの狙撃から、ドライバーのアタッチメントを変更して、赤いアーマーのブーストキツネへとフォームチェンジ。
 色といい変身ガジェットのギミックといいバイク仕様といい、物凄い仮面ライダーアクセル感ですが、バラバラになってバイクと合体したりしなかった分、分別はあたっと思うべきでしょうか。
 祝・『風都探偵』アニメ化!
 ブーストキツネはそのままバイクにまたがってクジラ城へと突撃。大きな口に飲み込まれたかと思われたが腕加速で内部を激走し、ガントレット部分にフォームのギミックが仕込まれているのは、面白格好いい。
 腹の中からクジラ城に大ダメージを与えたキツネは、外に飛び出してくるとドライバーの空きスロットにマグナムをセットする事で下半身に白い装甲を装着し、背後でアーマーをがっちゃんこするメカニック描写も格好良く、ライダーのギミックの見せ方は、全体的に好き方向。
 スイッチ・ガシャット・ハンコなどなど、この10年ほどのベルトデザインは、“ドライバーに取り付ける物”の異物感があまり好みでは無かったのですが――コレクションアイテムとして展開するには、その「異物感」がポイントだったのは何となくわかりますし、それを用いてどう格好良く変身するのか、などの工夫は面白かったものの――今作の、ドライバー本体そのものは簡素な作りで、左右にアタッチメントを取り付ける事によりベルトとして完成する、といった趣のデザインは割と好み。
 上半身:赤/下半身:白、となったキツネ仮面が、ドライバーの中央をくるっと回すと、それに合わせて自身の体もひっくり返って手足や装甲が摩訶不思議に入れ替わり……
 スーパーーーチェンジ!!
 どう見ても『ビーロボカブタック』な反転チェンジ……特に友情は生まれていませんが、君の勇気がこの胸に! 熱く響いていい感じ!
 紅白めでたいマグナムブーストとなったキツネ仮面は、バイクが変形した赤いキツネと共に天高く舞い上がり、ライダー忍法火の狐により天空クジラ城を撃破して、ビクトリー。
 「君は……いったい?」
 「ギーツ……仮面ライダー・ギーツ」
 キツネ仮面改めギーツのラスボス撃破について、白黒ナビゲーター娘から報告を受ける怪しい覆面の人物が、某囚人のおじいさんに見えてならないのは、私の心に歪んだバイアスがかかりすぎでありましょうか(世界そのものの真実性のあやふやさが、どこか『ドンブラ』世界に通じるものを感じていたり)。
 「これはいったいなんなんだよ」
 「……ゲームだよ」
 「ゲーム?」
 「これは世界を作り替えるゲームだ」
 つ、つまり、スターピース争奪戦……?
 鐘の音が鳴り響くと、崩壊した市街地が修復されていき……凡人太郎が目を覚ましたのは自室のベッドの上。とんでもない夢を見たような気はするがハッキリと思い出せないまま行きつけの蕎麦屋に向かうと大将は五体満足で、やはり夢だったのかと納得しようとしたその時、凡人太郎の脇に立つ、微笑を浮かべるモノトーンの女。
 「おめでとうございます。厳正なる審査の結果、あなたは選ばれました。今日からあなたは仮面ライダーです」
 仮面ライダー導入セット一式を手渡された凡人太郎こと桜井景和が中身に触れると、世界の崩壊と再生の記憶が甦り……?
 「――ようこそ。俺の世界に」
 天空クジラ城を破壊した男――浮世英寿は告げ、そしてゲームは、再び始まる。


DGPルール
 ドライバーとIDコアが届いたら、
 それは仮面ライダーへの片道切符。

 もう後戻りはできない。

 きょ、拒否権は?!
 で、つづく。
 立ち上がり、巻き込まれた第三者ポジションである凡人太郎が苦手直撃なタイプで困っていたのですが、観測者ポジションかと思いきや早くも仮面ライダーに選ばれたので、好感の持てるキャラになっていってくれると、有り難いポイント。
 参加者それぞれの望みを懸けたサバイバルバトル、という“既に確立した一ジャンル”をコアに持ってきた事により、セオリーやノウハウの蓄積は豊富な一方、凡庸な展開を繰り返す危険性も大きそうですが、序盤でその地雷網を抜ける為にも、早い内に、プレイヤー=仮面ライダー、なりの面白みがを打ち出されると良いな、と。
 高橋脚本繋がりでいえば『エグゼイド』の『仮面ライダークロニクル』の延長線上ともいえ、『エグゼイド』の際は、物語上の本題がそこには無かったにしても、劇中ゲームとしての様々な不整備から説得力の構築に失敗し、ギミックとしても使い切れないまま終わってしまったのですが、特に不特定多数の一般人→仮面ライダー=ライドプレイヤーは、大がかりに仕掛けた割には竜頭蛇尾に終わって勿体ないアイデアではあったと思うので、今作では巧く広がってほしい部分です。
 一つ大きな問題としては、私、不条理系デス(サバイバル)ゲーム物がジャンルとして苦手でありまして、そこの部分の見せ方次第では、早い内に、あ、これ(ジャンル的に)駄目だ……となってしまうかもしれません。

 追記:第1話で一番好きなキャラは、邪神官に雄々しく立ち向かっていくお嬢様のお付き二人。仕込みではなかった!!