東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
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人造人間はリンゴの樹の夢を見るか?

人造人間キカイダー』感想・第9-10話

◆第9話「断末魔! 妖鳥レッドコンドル」◆ (監督:畠山豊彦 脚本:長坂秀佳
 見所は、小学生に真っ正面から猟銃で撃たれるジロー(ダメージ0)と、サブタイトルで、既に死んでいるレッドコンドル……!
 体にブロック状の模様が刻まれ、壁画というか塑像というか、かなり記号化されたデザインのレッドコンドル、配色としてはシルバー:8のレッド:2ぐらいなのですが、遠目に見ると確かにコンドルっぽく見える……かもしれません。
 そんなレッドコンドルが、虫取り中の子供たちの前に降り立つと口から赤色のコンドル光線を吐き出して焼き払い、それを皮切りに次々と襲撃を受ける村人たち。さすがに子供たちが消し飛ぶシーンこそスキップされましたが、前回のスパイダー糸地獄に続き、小学生でも容赦無く惨殺していくダーク破壊部隊!
 レッドコンドルは、ある生物兵器の研究にベストな環境だから、と天神村の住人を皆殺しにするとアジトを構えるが、そこに光明寺博士がフラフラと辿り着き、出目がいいのか悪いのか……。
 博士の目撃情報を頼りにミツ子とマサルもこの地を訪れるが、侵入者を容赦無く抹殺しようとするコンドルの襲撃を受けて逃亡中に、響き渡るギターの音色。
 コンドル手裏剣(弱そう)を軽々と打ち破ったキカイダーに右腕をもがれたコンドルは滑って転びながら逃走し……リアルに着地失敗した気配。
 ジローもまた、光明寺博士の足跡を追って村に辿り着いたのだが、合流した3人を襲う投石どころか榴弾 ……厳密には何かはわからないのですが、明らかに爆発しているので(笑)
 逃げた少年を追ったジローは、70年代東映特撮名物といっても過言では無い猟銃を向けられ、天神村はさながら戦国!
 待機していたミツ子たちは村人と出会い、冒頭コンドルに襲われる人々の中で存在が強調されていた、やたらと目立つ赤い服を着ていた女性が再登場する事で、ミツ子たちの前に現れた村人たちが偽物である事を示すわかりやすいサインになっているのが、味のある演出。
 「どうだ? 光明寺はうんと言ったか」
 「それが、記憶喪失症のふりをしているようで」
 「強情なやつめ」
 一方、コンドルに囚われた光明寺は記憶喪失を信用してもらえずに拷問を受けており……雇用契約は口約束でいいのかダーク。
 うんといえばOK扱いなのが、ファジーなのかオカルトなのか判断に困るところですが、コンドルがミツ子とマサルを拷問の材料にしようとしたところ、席を離れている間に光明寺縄抜けして逃亡(笑)
 先日はビルの外壁をよじ登り、今回は拘束をゆるめて脱出に成功し……時代背景からすると戦時中は軍属だった可能性もギリギリありそうですが、特殊な工作関係の部隊にでも所属していたのか、或いは、光明寺流忍術16代目の子孫なのか。
 (……ビルの壁程度は易々と登り、この程度の拘束は手首の関節を外せば造作もなく抜けられる……カラクリ人形も闇に紛れて一対一なら首をひねる事は容易い……うう……私は、いったい何者なのだ……うぐぐっ……そ、そうだ……いの6号計画…………御屋形様の為に、あの書状を消すのが拙者の使命……くっ……頭が……拙者は、俺、わた、私、はワワワワタシは何者なのだダダ……)
 光明寺が失われた血の記憶に目覚めつつある頃、猟銃小学生の《説得》に失敗したジローは偽村人に接触
 ミツ子とマサルを騙って峠に誘い出されるもその様子をいぶかしむと、前を行く村人Aの後頭部におもむろにノコギリチョップ! を叩き込むウルトラ警備隊仕草により「やっぱりアンドロイドか」と喝破し……撃って溶けたら異星人だ! 撃って死んだら臆病者だ!
 アンドロイドマンを蹴散らしたジローはミツ子とマサルの救出に急ぐが、空を舞うレッドコンドルの強襲を受けて背後に組み付かれ、迫る零距離コンドル光線と響くギルの笛の音による、ダブルピンチ。
 一方、村の近くまでミツ子とマサルを送ってくるも、無償で協力して好感度を稼ぐより、報酬の無い仕事はしないプロとしての矜持にこだわり、見ようによっては紳士的だった半平が、毎度お馴染み車の故障で村を訪れるとダークのアジトに迷い込んでおり、ミツ子とマサル、そして唯一の生存者だった猟銃少年を救い出す大活躍。
 次回作のコメディリリーフの扱いがあまりに酷かったので、半平は、こんなに活躍していいのか……! と妙な感動が(笑)
 この半平たちの脱出劇とジローの危機が交互に描かれ、ジローの苦悶シーンがやたら長いのは、ハンサムな主人公を痛めつける事で一定の需要と供給を満たすという、拷問メソッドのバリエーションでありましょうか。
 「負けだ! 貴様の負けだぞぉぉっ!」」
 「笛の音を、笛の音を聞こえなくしなければ……!」
 初めて自発的に笛の音封じに言及したジローは、咄嗟にバイクをフルスロットル。
 ナレーション「ジローの土壇場の知恵が、ギルに勝った!」
 の挟み込まれるテンポが大変良かったですが、ジローはもう、防犯ブザーを持ち歩いた方がいいのではないか。
 不完全な良心回路という致命的な弱点の克服を自ら拒否する事により、毎度毎度、自分や(守ろうとしている筈の)他者の命を危険に曝しているのは見ようによっては間が抜けているともいえるのですが、しかし、ジロー本人が感じているように、良心回路を完全にしてしまえばその時恐らく、ジローは“別の存在になってしまう”のであり、ある意味では、自己や他者の命よりも“自分が自分である事”を優先しているのが、1972年にしてジローのヒーロー像の面白いところで、(多分漫画版の力もあるのでしょうが)今作が後世の東映ヒーローに深い爪痕を刻み込んでいる要因の一つでありましょうか。
 そこには勿論、“別の存在となったジロー”は、正義の為に戦う存在であり続けるのか? という疑義も含まれるわけですが、それはまた裏を返せば、人は“無謬の存在”を信じる事ができるのか? もし信じるならば、もはやそれは“神”と呼ぶしかないのではないか? という問題を孕んでおり、ダークに生まれた「原罪」を抱えるジローが、“神”ではなく“己自身”たらんとするその姿は、ある種、信仰の苦悩の物語めいてさえいるように感じます。
 そうしてみると、次作『01』主人公であるイチロー兄さんは、ああなるべくしてああなったのが改めて感じられて面白いところですが、話は戻って、チェンジ! スイッチオン! 1・2・3!
 変身したキカイダーはコンドル光線をかわすとダブルチョップを叩き込み、大車輪投げ。捨て身のコンドルブーメラン(翼を飛ばす)も弾き飛ばすとデンジエンドを放ち、対人用の大技は派手だった一方、総合的な戦闘能力は低め設定だったらしきレッドコンドルは砕け散るのであった。
 光明寺中忍は姿を消し、半平の大殊勲により天神村アジトが木っ端微塵に吹き飛ぶと、ジローはそのまま走り去り、戦いの道はつづく!

◆第10話「サソリブラウン 人間爆発に狂う」◆ (監督:畠山豊彦 脚本:押川国秋)
 「俺はダーク破壊部隊、世界最強のアンドロイド、サソリブラウンだ」
 だいぶシンプルな造形だった前回のレッドコンドルに比べ、巨大な両手と長い尻尾が重量級のサソリブラウン、このボリューム感が“怪獣ぽさ”に繋がっていると言われると成る程ですが、尻尾から放つ殺人光熱エネルギーで登山客を消し炭にし、高笑い。
 「見たか! これぞ世界征服の武器だ!」
 爆発音を感知したジローが、消し炭と化した人体を発見する一方、アジトへ戻ったサソリは、ギルからも賞賛を受ける。
 「ははははは……これぞまさに、地球最後の武器だ!」
 繰り返し激賞される殺人光熱エネルギー、だが…………ダークオリジナルの武器では無かった。
 今回のダークが妙に世界征服に前のめりなのは、当時の作品にままある文芸設定の共有不備かと思われますが、サソリは光熱エネルギー装置の量産の為に、オリジナルの特許権を持つ中堀特殊光熱研究所を襲撃。
 「さあ君たち、早くこいつを追い出したまえ!」
 壁から飛び出したサソリを見た中堀所長は所員にその撃退を命じ、ダーク怪人をちょっと困った酔っ払い扱いする所長、頭のネジが緩んでいるのか或いは、酷いパワハラボスなのか。
 だが既に所員はアンドロイドマンに入れ替えられており、サソリはサソリで、来る必要が無かったのでは(笑)
 中堀所長は娘の前で誘拐されるが、サイドマシーンにまたがったキカイダーがトラックを追うと、『マッハGoGoGo』ばりの走行妨害ギミックでトラックのタイヤをパンクさせ……あ、崖から落ちた。
 崖下で粉々になったトラックを悠然と見下ろすキカイダー、所長を助けたかったのか、単にダークの気配を抹殺したかったのかまるでわからないのですが、一応、下に降りて残骸を確認。
 「……中堀所長の姿はない」
 東映刑事ヒーローばりの雑な仕事だった事を自白し、サソリブラウンが所長を抱えて脱出してくれていて本当に良かった……!!
 ジローに頼まれて中堀娘のガードに向かった半平は、かぼちゃパンツの王子様ルックでフェンシングの剣を振り回し、馬の回あたりから疑問だったのですが、何故、今作のコスプレ担当は、半平なのでしょうか。
 ……いやまあ、他にやる人が居ないとはいえ。
 この後、「ミツ子とマサルを出す」「光明寺とニアミスする」といった作品の約束事が悪い方向に働いて著しくテンポを損ねるのですが、中堀娘をダークから守る為にナチュラルに洞窟に潜むミツ子とマサル、サバイバル能力と精神力の基本値が、そんじょそこらのレギュラーヒロイン&少年とは、桁が違います。
 戦いの舞台はハクリュウ谷へと移り、ジープのボンネットにひらりと飛び乗ったり、逆にジープのボンネットからバック宙で着地を決めたジローは、サソリブラウンと激突。
 ジローに告ぐ! ジローに次ぐ! ダークは君の家じゃないか! 怒らないから帰ってきなさい、田舎のお母さんも泣いているぞ! 的な説得の笛の音が響くが、雷鳴がそれをかき消し、スイッチオン。
 サソリブラウンは巨大な尻尾を振り回して、ここしばらく減少気味だったKAWAII成分を供給するも、ダブルチョップからの必殺コンボを受けると、デンジエンドの直撃により大爆発
 中堀所長は無事に娘と再会を果たし、ジローはゆく、果てしない戦いの道を――。
 過去に別作品(『ジャッカー電撃隊』『キカイダー01』)で見たエピソードから期待感低めの押川脚本でしたが、押川脚本にしてはそこまで酷くなかったというか、無理が出ているところは概ね、番組の都合の感じられる内容。……まあ、破綻度合いが異次元に到達していないというだけで、これといって面白かったわけでもありませんが。
 次回――今作にしては、ちょっと格好いい系の怪人登場?