東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
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黒猫が鳴かねば生き残れない

20年ぶりの『龍騎』メモ・第5-6話

(※サブタイトルは本編中に存在しない為、筆者が勝手につけています。あしからずご了承下さい)
◆第5話「金蟹」◆ (監督:長石多可男 脚本:小林靖子

  • 神崎士郎がライダー同士の戦いを求める理由は何か……どうやら蓮はそれを知っているらしい事が示唆。
  • 長石階段にカニのモンスターが出現し、鏡側に映るベルトを省略して変身した龍騎はミラーワールドへ飛び込むが、そこに現れる、第3の仮面ライダー
  • 問答無用で龍騎に襲いかかるライダーは「仮面ライダーシザースだ」とナイトから紹介され、真司より事情に通じているポジションな事もあり、序盤、蓮がドンドン名前を呼んでいくスタイル。
  • 前作アギトが〔カテゴリ名〕は用いるが、その内部の〔個体名〕を劇中からできる限り排除していたのとは、実に対照的。
  • 勿論、「仮面ライダー○○」が多数登場する予定な以上、〔個体名〕を用いないと識別に困るので作品構造からの必然ではあるのですが、『アギト』が、〔個体名〕と思っていたものが〔カテゴリ名〕となっていくように、具体から抽象へと向かっていたのに対して、今作では「仮面ライダー」を細分化する事によって抽象から具体に向かっており、こと「名前」に関して、正反対のロジックが組み込まれている事は見てとれます。
  • その上で、各ライダー達は各々、「仮面ライダー」という運命に縛られている、と言うこともできるでしょうか。
  • なおこの後、カニの人はカニの人で「仮面ライダーナイト」と口にしており……真司が方法をわかっていないだけで、デッキ所有者同士は、ステータス表示とか呼び出せる仕組みなのかもしれません。ロックオンすると頭上にピカピカ、「仮面ライダーシザーズ LV5」とか出ている可能性。
  • このように、ライダー名は割とざっくり、劇中で「誰かが口にする」一方、今のところ「自ら名乗り」は排除が継続。
  • カニモンスターの名称は、冒頭にカードの英字表記をカメラに見せつける形で登場。
  • ライダー同士の戦いについて、おまえが火を付けて回っているのでは? と疑念を示す真司に対して、蓮は「戦い続ける事だけが、神崎士郎へ近づく道だ」と反論。
  • それでも対話による友好の可能性を探る真司がカニの人にべらべら情報を提供してしまった事で、蓮と優衣に危機が迫る事になり、主人公にぐうの音の出ない失点。
  • アンティークショップを探る蓮はまだ新しい壁の塗り跡を発見し、崩すと中から行方不明になった店主のメガネと手がーーー!
  • 現時点では「調査・追跡を含めた日常生活におけるバイク移動」にかなりウェイトが置かれており、ちょうど並行して見ている『エグゼイド』と比べると、良し悪しではなしに、シリーズの積み重ねと十数年の歳月による、見せようとするドラマ性の変化が印象的。
  • 日常の裏側に迫るスリル・サスペンスに軸足が置かれている事もあって、かなり“泥臭い”作りとはいえ、当時としては、敢えてそこを丹念に描いていくところに《平成ライダー》的アプローチがあったのでしょうが、今見るとちょっと胃もたれする面もあり。

◆第6話「泡影」◆ (監督:長石多可男 脚本:小林靖子

  • 「最後に生き残れるライダーは一人。戦わなければ生き残れない!」
  • シザースの正体は悪徳警官と判明し、「仮面ライダー」が決して「正義のヒーロー」ではない事を繰り返し強調する事で定義づけの解体・再構築が行われ、特にシザースの正体は、どうしようもない悪党として描かれる事で、作品の特性を徹底的に押し出してきます。
  • まあさすがにシザースは、怪人と言われても通るデザインになっているのですが、仮面ライダー/怪人、の近縁性の強調においては、改造人間テーゼの本歌取りの面もあるかもしれません。
  • ナイトとシザースはミラーワールドで激突。モンスターを利用し、事故に見せかけて殺害を謀るなどもあったものの、直接的なライダーバトルは、“現実とはルールの違う異世界”で行われる事を一つのエクスキューズとしつつ、ライダー同士の殺し合いがスタート。
  • 普段から自信満々の割にシザースに苦戦するナイト……ナイト……。
  • 必殺ベントの打ち合いに敗れたナイトに首ちょんぱが迫るが、カードデッキが砕けた事で制御を失ったカニシザースは食い殺され、悪党そしてライダーバトルの敗者として凄惨な最期が描かれると共に、ナイトの直接的なキルマークはひとまず回避。デッキにダメージを与えたのはナイトなので、間接的には充分に殺害しておりますが。
  • 残ったカニが弱ったナイトに迫ると、ダブルシールド龍騎が参戦して昇竜キックでカニを粉砕。幾ら極悪人とはいえ中身人間と殺し合いに踏み切るところまではいけないが、モンスターはきっちり排除する事で、主人公の存在感も確保。
  • 「これが戦いなんだ! カードデッキは全部で13。倒すべきライダーはあと11人。……おまえを入れてなっ。……俺は必ず生き残る!」
  • 緑色をした第4のライダー登場で、つづく。

 悪徳警官ライダー・シザース登場!!
 により、今作における「仮面ライダー」は、カードデッキでモンスターと契約さえすればどんな悪人でも変身可能であると共に、「仮面ライダー」の名を冠していようとも、ライダーバトルの敗者は無慈悲に退場となる事が示され、〔人間としての善悪に囚われない仮面ライダー・ライダー同士の命を賭けたバトル・敗者の完全退場〕と今作の基軸を成す要素が手加減無しだと宣言される第5-6話。
 第1-4話において、真司の行動原理の確立、そんな真司を蓮がある程度認めるところまでを描いた後、この前後編で作品のスタイルが実例を持って強烈に打ち出され、まず一区切り、といった構成。
 また今回は秋山回の要素を強く持っていて、黒いコートをはためかせて走るビジュアル的な格好良さはここまでも強調されてきましたが、強い信念を背負ってライダーバトルに臨み、真司に対しては終始きっつい態度で接する一方で、優衣に対して見せるそこはかとない気遣いによりキャラとしての厚みが増して、この回で秋山がぐっと格好良くなるのは、大きなポイント。
 クリフハンガー方式、とまでは行かないも、新たなる仮面ライダー出現、をちらりと見せる手法も作品コンセプトと合致して効果的になり、シザースをさくっと退場させた事により、作品のコンセプトを明示すると同時に、「次はどんなライダーが出てくるのか?」を“興味を引く面白さ”に転換する事に成功したのは、お見事。
 ……ところで丁度タイムリーなのですが、この構造の根幹は「次なる敵は毒霧忍法の使い手、マムシの牛丸!」みたいなアイデアと通じているところがある、と思うところです。