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史上最大の劣勢

恐竜戦隊ジュウレンジャー』感想・第49話

◆第49話「神が負けた!!」◆ (監督:東條昭平 脚本:杉村升
 再臨した大サタンをセコンドにつけたトライタロスの猛攻を受け、絶体絶命の危機を目力ビームで辛うじてしのぐ大獣神だったが、既に満身創痍。
 ドラゴンシーザーが場外から乱入するも、アイコンといえるドリル尻尾を無残に切り落とされてしまい、巨大ロボの破壊描写も徹底して作品史上最大の敵の力を見せつけます。
 遂には大サタンビームが炸裂して大獣神もシーザーも大地に倒れ、高笑いするバンドーラ一味。
 「これで地球はあたしのもの。大獣神、トドメを刺してやる! ドラゴンシーザーと一緒に、闇の彼方に消えるがいい!」
 バンドーラ様が放った悪霊パワーを受けた二大ロボは、体を構成するパーツが次々と溶けていくように消滅していき……
 「逃げろ、ジュウレンジャー、私はもう、駄目だ……」
 とにかく悪夢的描写にこだわってきた今作ですが、巨大ロボが闇に蝕まれるように分解・消滅していく映像は、かなりショッキング。
 個人的に巨大ロボの敗北シーンというと、初めての2号ロボの前振りとして派手に破壊されたフラッシュキングと、魔人ロボ・ベロニカにより胸に巨大な風穴を開けられたグレートイカロスが印象深かったのですが、最終回直前の大盤振る舞いもあって、かなりインパクトのある敗北シーンとなりました。
 大獣神はギリギリのところでジュウレンジャーを外へ放り出すと、闇に飲み込まれて消滅。
 「大獣神は必ず甦ってくる! ドラゴンシーザーも! キングブラキオンも!」
 アジトに戻ったゲキは仲間たちを空元気で励まし、前回今回と改めて、ゲキのリーダーシップを強調する作り。
 しかし仲間達の失意は深く……その間にも地球は激烈な総攻撃を受けて人々の悲鳴が木霊し、かなり気合いの入ったカタストロフの描写で、最終決戦にふさわしい気運を盛り上げてきます。
 「おのれ大サタン!」
 命の泉の際の反省を活かして生身でも懸命の救助活動を行うゲキ達だが、大サタンの吐き出す猛毒はあらゆる生命を蝕んでいき、正直、ちょっとそれどころではなくなっているのですが(まあ、“象徴”ではあるのですが)、聡母に呼ばれて病院に向かったゲキとメイが目にしたのは、ブラキオンの大爆発を知って己の生を諦めようとする危篤状態の聡の姿であった。
 「これから、どうなるの、ゲキ……」
 寒風吹きすさび落ち葉が舞い、昆虫魂よろしく恐竜魂も季候の寒冷化に弱かったのか、弱り果てるゲキとメイを襲う、コスモブーメラン!
 黄金夫婦の襲撃を受けて生身での生身での立ち回りとなり、仲間が駆けつけると、ゴーレム兵も呼ばれて集団戦に。ボーイが恐らく吹き替え無しで樹の幹蹴り一回転を披露(演じる橋本巧さんが確か、体操経験があるのでしたっけか)するも、守護獣の力を失い、ダイノバックラーが発動しないゲキたちは爆炎に消え、恐竜と恐竜人類を遂に絶滅させた、と大笑するバンドーラ様。
 「覚えていろ恐竜ども! 悪魔に魂を売り渡し、必ず復讐してやる!」
 前回触れられた魔女バンドーラ誕生の経緯が補強され、数千万年ごしの大望を果たしたバンドーラだが、愛する息子カイは抱擁をひたすらに拒否し、バンドーラにそれは許されない事を徹底して描くのが、“悪”に対する視点として非常にシビアで、“子供を敵視する”“悪夢の形象”として、策謀家の株を落とさなかった事も含め、今作における“悪”を描く事について妥協しなかった点は、作品に一本の太い筋を通しました。
 「俺がいけないんだ……リーダーの俺がしっかりしていないから、こんな事に」
 「おまえ一人のせいじゃない! ……俺たち、みんなの力が足りなかったんだ」
 「……俺たち、神から使命を受け、1億7千万年もの永い眠りから覚め、それなのに…………今まで俺たちがやってきた事は、全て無駄だったのか?! 美しかった地球、生きとし生けるものが命を育み、生きる喜びを分かち合ってきた地球……それが全て無くなり、死の星になってしまうのか?!」
 今作としては(自明の理の一つとして)重きを置いていた部分ではありませんでしたが、リーダー、そしてチームの要素が改めて取り上げられ、合わせて第46話からパスを繋ぐ形で、現代に甦った恐竜勇者たちの在り方を補強。
 そこで弱気を見せるのがジュウレンジャーらしいというか、正義と使命を天然自然のものとして強く胸に抱く一方で、それがストレートな戦闘力と繋がらず、最後の最後まで、何かにつけてヒーローが劣勢になりがちなのも、今作のスタイルを貫いたといえるでしょうか(笑)
 関東守護獣会の後援を失い、シマも、シノギも、全てを大サタン連合に奪われようとするヤマト組は壊滅寸前にまで追い詰められるがその時、亡きブライの形見となった獣奏剣がひとりでに笛の音を響かせると宙に舞い上がり、虚空にブライの姿を映し出す。
 「ゲキ……ゲキ! 俺の弟、ゲキ!」
 「……兄さん!」
 「「「「ブライ!!」」」」
 駆け寄る5人に対して、随分と高いところにブライが浮かんでいるのが、埋めがたい魂の距離を示していて、秀逸。
 「ゲキ、希望を捨ててはいけない。たとえ地球の人々全てが絶望の淵を歩こうと、おまえ達だけは希望を捨ててはいけない!」
 ブライの魂は、今作の示すヒーロー像―― 極道 伝説の戦士とはなんだ?!を高らかに告げると、大獣神らはまだ完全に死んではおらず、バンドーラの作り出した無の世界――魔法界に閉じ込められているのだと、そこに繋がる扉を作り出す。
 情報を提供し、扉を作り出した時点で割と身も蓋もない奇跡でありますが、今作における貢献度を考えた時に、ここで“ブライが出てくる”事そのものが説得力を生むに足るので、ブライの登場ついでに奇跡の一つ二つぐら起きても、高級食玩についてくるおまけのラムネのようなものです。
 ……は、いいとして、どうしてその流れから、え? いきなり扉出てきたけど、兄さん大丈夫? と、ドアの裏表を確認するのだ君たち(笑)
 「おまえ達に残された力はチームワークだ」
 若干の無理筋感は出ましたが、取りこぼしていた定番要素を拾おうとする意欲は窺え、ブライの魂に背中を押された5人は、扉をくぐり無の世界へと挑む事を決断。
 それぞれのキャッチフレーズと共に伝説の武器を掲げるのは格好良かったのですが、そこから、命綱として公園の木にロープを結びつけ、突入班と待機班に3:2で別れる展開は、本当に必要だったのでしょうか?!
 いやこれが第18話ぐらいだったら、頭を使った慎重な姿勢として評価できたかもですが、もはや第49話なので、もう、勢いで良かったのでは(笑)
 ボーイとメイを外に残し、扉をくぐったゲキ・ゴウシ・ダンの3人は、洞窟のような場所で亡霊モンスターの襲撃を受け、今回は全体的に、生身アクションを見せる趣向。
 亡霊モンスターから一方的に攻撃を受け、奈落に落ちていくゲキとダンをゴウシが必死に支えるが、外のロープもその重さを支えきれずに切れてしまい、危うしジュウレンジャーで、つづく。
 高いテンションで怒濤の攻勢が続いていた最終決戦4部作、ラスト3分ほどで息切れを起こして、慎重策でパーティ分割はどうも勢いを殺してしまった気がしてならないのですが、上手く加速をつけてくれる事を祈って、次回――いよいよ最終回!