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飛び出せヒーロー 光のゲーマー

仮面ライダーエグゼイド』感想・第36話

◆第36話「完全無敵のGAMER!」◆ (監督:山口恭平 脚本:高橋悠也
 今回も前振りが入り、本編映像ダイジェストが前回とは違う凝り具合。
 そしてOPの空白を黒九条が埋め、今作におけるOP映像のマイナーチェンジの手早さは、高く評価(後の『ビルド』の時は本当に酷かったので……)。
 幻夢コーポレーションは
 「消滅者の命を取り戻す――それは、全人類の希望」
 と銘打ってクロノス攻略クエストのキャンペーンを打ち、何その、日本のごく一部でしか参加できないレアクエスト。
 ヒーローフィクションとしては大概、そこが露骨に気にならないように工夫をしますが(架空の地名を用いる時は山や谷を適度に散りばめたり、都市型作品では「○○地区」など記号的な名称を用いたり、いっそ犯罪都市ローカルヒーローにしてみたり)、なまじ世界に出るぞ! とやってしまっているだけに、言っている事と実際にやっている事のギャップが大きさが目立ち、嘘がうまくつけていません。
 ……クエスト条件の酷さに目をつぶったとしても、やろうとしている事は社長自ら出陣してプレイヤーを消滅させる事により、その縁者をプレイヤー候補にしようとする地道な手作業なので、せせこましすぎて涙が出ます。
 そして、飛彩の苦悩が象徴する“失った命を取り戻せると知った時、人は奇跡にも悪魔にもすがるであろう”という極限心理と、それを利用しようとする悪意、のテーマ設定そのものは面白いのですが、「奇跡を求める者の頭数が増えれば増えるほど、必然的にマイナスの情報も増加し、困難に立ち向かう前に諦める者も増える」のが自然であると考えられる以上、“奇跡を求めて困難に立ち向かう”というプレイヤー側に求められる意識と、“そんなプレイヤーの数を増やそう”とする正宗の目的の相性が、致命的に悪いという事に。
 裏を返せば、そこで諦めずに立ち向かい続ける者だけが“主人公”になれるのであり……では、誰しもがそんな限られた存在になれるならば? の謳い文句で願望充足の機能を果たすのが『仮面ライダークロニクル』(ライドプレイヤー)の仕掛けとなっているのですが、『クロニクル』開始早々のゲーム的破綻により、その仕掛け(願望充足機能)自体の説得力が破綻しているので、“リターンの保証が全く見えない中で、まんまと踊らされる大衆”の説得力も連鎖的に破綻する、負のドミノ倒し。
 パラド編から正宗編へのスライド前提だったとしても、『クロニクル』は最初の時点で、潜伏期間(“普通に遊べるゲーム”として、大ヒットして世間に浸透、の大きな嘘が説得力を持つ程度の期間)を置いておく方が良かったのではないかな、と改めて。
 また、前回、幻夢コーポレーションにおける会議風景には、カリスマ創業社長への一種の狂信、といったニュアンスもあったかと思うのですが、正宗のやろうとしている事は例えるならば恐らく“宗教の創設”に近く、では宗教にあって現行『クロニクル』に明白に欠けているものはなにかといえば、
 「救済」
 であり、『クロニクル』プレイヤーを増やす、事に説得力を付加しようとするならば正宗/クロノスが最初にやるべきは「審判」ではなく「救済」の実例を示す事であって、ここでも初手で失敗しているな、と。
 基本的に正宗、出所のタイミングが遅すぎた(『クロニクル』発売直後にパラドがゲームの裏面を始めてしまった&消滅者の復活条件はラスボスを倒す事と発表してしまった)ので、やることなすこと後手に回っており、表面上の余裕ほど思惑通りに事が運べている立場には居ないと思うのですが(手駒もリスキーですし)、そこで物語を正宗の思惑優位に見せようとする事でまた、あれこれ無理が出てしまっている感。
 クエスト開始を前に、裏ルートで流通している『クロニクル』が次々と購入されていく映像も入るのですが……『クロニクル』絡みの土台作りが完全に失敗した後なので、あまりにも遅すぎるフォロー。
 縁者が消滅して必死になっている人を除けば、新規プレイヤー拡大の導線が「見るからに無理めなレアクエスト」なのも“そういう世界だから”で納得できる限度を超えており(その判断が付かないカジュアル層狙いだとしても、ちょっと検索すれば、裏販売ルートに辿り着くよりも先に初級バグスターさえまともに倒せないゲームだとわかる筈なので……いやまあ、幻夢社員が総出でネット対策しているのかもですが、それにしても……)、あくまでゲームの体裁を取っているのに、ゲームとしてのディテール描写が雑すぎて、世界観構築の為に見せる情報の取捨が思い切りズレている気がしてなりません。
 こういう時こそ、寸胴クロノスでも前面に出して、表向きの“勝てそう”感ぐらい演出した方が良かったと思うのですが。
 「『仮面ライダークロニクル』が一大ブームを巻き起こす、記念すべき日だ」
 なんだかもう、計算ずくで“空回りする道化”として描いているのではないか、とでも解釈した方が精神衛生上は良くなってきた正宗はクエスト開始の1時間37分前から舞台で待機していたが、そこに乗り込んでくるCRライダーズ。
 しかしそこに、新たなガシャット『タドルレガシー』を手にした飛彩も姿を見せる。
 「そのレベルは、ハンドレット」
 ……凄く大仰に告げる正宗ですが、エグゼイドとパラドクスに+1です。
 まあ、MAXパラドクスはLV50とLV50を足したら何故かLV99になったので、そういった既定の限界を超える存在、という事なのでしょうが。
 「ええぃ、ゲームマスターの私に許可なく、またそんなガシャットを生み出したのかぁ!」
 『タドルレガシー』は飛彩の覚悟を試すガシャットであり、迷いを抱える飛彩は起動できないが、続けて黒九条がワープ出現すると、幻夢側のライダーが、ひとまず(飛彩は魔王ブレイブで)3人並んで変身。
 CRドクターズとの戦いの火ぶたが切って落とされ、手を変え品を変え、盤面の駒の白黒を適宜入れ替える事でライダーバトルの構図を飽きさせないように続けてくるのは、今作の悪くないところではあるのですが。
 「さあ、審判の時だ」
 「無駄だ!」
 エグゼイドは黎斗による新作、黄金のガシャットを起動……しようとするが失敗し、代わりにゲンムが起動すると金色の粒子をまとい、あらゆる攻撃が一切効かないハイパー無敵モードにより、止まった時間の中で動く事に成功するが、馬鹿笑いしている内にタイムアップしてしまい、再びポーズされると、見事にガシャットを奪われて、CR・敗北。
 「「ムテキガシャットを取られたぁ?!」」
 「てめぇがご丁寧にゲーム解説したせいで、無敵時間が切れたんだろうが!」
 起動失敗した永夢に責任転嫁した黎斗は、パラドをリプログラミングした事により、天才ゲーマー・エムの力を失ったからに違いない、と説明。
 永夢と飛彩、切り札の変身に失敗した二人の姿が重ねられるのは面白く、ひたすらループ再生を繰り返す小姫の姿は、凶悪。
 「勇者と魔王の力を手にする為にも、心の迷いを、消せ」
 正宗が飛彩を追い込んでいく一方、ポピ子さんを介してパラドを呼び出した永夢は、クロノス攻略の為の協力を自ら持ちかける。
 「いいぜ。ただし条件がある。クロノスを攻略したら……――俺とおまえの決着をつける」
 「勿論。そのつもりだ」
 そしていよいよクロノス攻略クエストが開幕し、プレイヤーの変身を止めようとするMAXエグゼイドだが、妨害に現れたレーザーTにあっさり敗北。レーザーTは永夢にトドメを刺すべく約束の報酬として無敵ガシャットをクロノスから受け取り、クロノスはたった二人のライドプレイヤーに悠然と歩み寄る。
 ……いや、まあ、クエスト開始時間には10人ぐらいは集まっていたのですが、諸々の都合から戦闘に参加出来たのは2人だけになっており、説得力のある映像化が無理なら完成させる前に考え直さないといけないわけで、ものの見事に大爆死キャンペーンに。
 そして追い詰められた筈の永夢には何故か余裕があり……
 「パラド、おまえは僕に言った」
 ――俺とおまえが組めば、無敵、だ。
 「……今がその時だ」
 永夢は、クロノス攻略法として以前に黎斗が用いたポーズ破りの作戦を伝授して丸め込み、まんまとバグバイザーの中に収納していたパラド(それでいいのかパラド……)を、自らの体内に注入する!
 「クロノス……おまえは俺が、攻略する!」
 瞳を真紅に染めて再びMAX大変身したエグゼイドがクロノスに向けて突撃すると、ポーズ発動寸前、左腕だった筈のレーザーTがクロノスを攻撃した上に無敵ガシャットをエグゼイドへとパスし、クロノス社長、会心の節穴芸。
 「レーザーはわざと悪役を演じてたんだよ」
 「……こざかしい真似を」
 人質取っている飛彩は徹底的に追い込む一方、さしたる活躍とも思えないのに九条にはほいほいガシャットを渡していたのがあまりにも迂闊で話の都合丸出しだった正宗ですが、某スマートブレイン社長に勝るとも劣らない見事な節穴宙返りで着地を決め、ある意味、それこそが社長。
 「あれ~? ノせられちゃった?」
 「勝負だクロノス。天才ゲーマー・エムの力を、見せてやる」
 パラドの力を取りこんだエグゼイドは、ただひたすらプレイヤーが無双する禁断のゲーム『ハイパームテキ』ガシャットを今度こそ起動し、ハイパー大変身が始まる寸前、クロノスの発動したポーズにより時が止まったかに思われたが、ガシャットは起動シークエンスを継続。
 無敵・輝き・流星のごとく、なんだかJAM PROJECTの歌が始まりそうな起動音で、キラキラとした黄金の星と粒子にまみれたハイパームテキエグゼイドが誕生し、《おうぉー おおおおおー おおおーおー おーおーおーーー!》
 凄く、GAROです。
 「ノーコンティニューで、クリアしてやるぜ!」
 星のモチーフは、無敵=スターからでしょうが、頭髪がドレッドヘア風味になるのは放熱索みたいなイメージでしょうか……何かそういうロボットがあったような……明鏡止水ゴッドガンダム……? と思ったら、『フルメタル・パニック!』のレーバテインでした。
 ゴッドガンダムは金ぴかになるけれど、背中に出ているのは光輪だった。
 「俺の無敵時間は、無制限だ!」
 CR黄金エグゼイドはポーズが切れるまでクロノスを殴りつづけ、ポーズが切れると新たなエグゼイドが誕生していてクロノスが劣勢になっている状況を見て、背後で大喜びするギャラリーの図は、九条の存在も効いてとても良かったです(笑)
 「これでフィニッシュだ」
 我が心、最強無敵。されどこの脚は烈風の如く!
 明鏡止水ゴッドエグゼイドが放ったハイパークリティカルスパーキングによる超高速の連続蹴り、そして遅れてくる無数の衝撃波により、大ダメージを受けたクロノスは逃亡。
 まんまとノせられたパラドは永夢から分離し、《天才ゲーマー・エムの力》が謎のパッシブスキルと化しているのは気になりますが、命を救う為に自ら汚れる事を辞さない覚悟を強くした永夢が、“その為なら他人を騙して利用してみせる”ところへ踏み込んだのはヒーローの描写として興味深く、明滅していたパラドの存在感もやや回復。
 臙脂色のジャケットでCRに復帰した貴利矢は、正宗に従うフリをしていたのは、正宗が衛生省から盗み出したプロトガシャットを確保する為だったと明かすと、まんまとせしめてきたプロトガシャット1セットを取り出し……正宗は、20話ほど情報に欠落のある筈の貴利矢に対して、これまでの経緯をくどくど説明したのでしょうか(笑)
 貴利矢も元来、非常に頭の回る人物なので、断片的な情報から自分が今なにをすべきかを的確に導き出したという事なのでしょうが、復活キャンペーン中とはいえ貴利矢が鮮やかに正宗を出し抜くほどに、独り追い詰められまくっている飛彩がだいぶ悲惨。
 そして正宗の発言が貴利矢の口からCRに共有され…… 
 「えーーー!! じゃああいつは、人の命を守る事なんて、これっぽちも考えってないって事?!」
 そ、それはそうでしょうね……。
 むしろこれまでの正宗の言行のどこに、好意的解釈の余地があったのか記憶に無くて困るのですが、とにもかくにもCRが反撃体勢を整える一方、社長自ら販促キャンペーンに乗り出した結果、大炎上で株価の壊滅的急落を招いたクロノスは立ち直る事が出来るのか?!