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時を翔ける希望

恐竜戦隊ジュウレンジャー』感想・第46話

◆第46話「参上!凶悪戦隊」◆ (監督:小笠原猛 脚本:荒川稔久
 高い所に立って人々から歓声を受けたかと思いきや、突然、市街地で無差別な破壊活動を繰り広げるジュウレンジャー
 ドーラミラージュの能力によって幻影をまとって行動する偽ジュウレンジャーは、本物とばったり遭遇すると今度は一般市民の幻影を身にまとい、闘争本能の赴くまま、深く考えずに偽市民(正体はミラージュ+ゴーレム兵×4)に攻撃を加えていたゲキ達は、無力な市民へのいわれなき暴力行為として、その現場をばっちりTVカメラに収録されてしまう。
 「やめろ!」
 「違う! これは……」
 「誤解です! 偽物なんです!」
 メイが慌ててカメラマンに詰め寄り、悪い奴はみんな、そう言うのです。
 脚本は荒川さんですが、なんだか《レスキューポリス》の時の杉村さんみたいなノリで、若干の捏造めいた映像も交えて(リポーターはラミィさんの変装)、現生人類への宣戦布告を大々的に報道されてしまうジュウレンジャー
 「彼らは終わりのない戦いに疲れ、正義を捨てたと、我々に通告してきました」
 ……背景が背景だけに、ちょっとリアリティあって困ります(笑)
 かくしてバンドーラ様の謀略により、素顔での暴力行為を全国のお茶の間にTV放映されたジュウレンジャーは戦隊史上でもまれな社会的危機に陥り、社会的に抹殺したヒーローを人類自身により排除させようという作戦は、なんだか上原正三風味。
 「大丈夫よ。きちんと説明すれば、絶対わかってもらえるわ」
 そこに健気なメイの姿が盛り込まれてヒロイン力を増幅されるが、今回も容赦無くジュウレンジャーを襲う、《投石》。
 「裏切り者! 人殺し!」
 斜め向かいの浦沢時空ならともかく、『ジュウレン』時空においては比較的真っ当な子供達からも遂には罵声と投石を浴びせられた5人は暴徒と化した市民からの逃走を余儀なくされ、手に手に武器を持つ市民に追いかけ回される殺伐とした空気がとても70年代感(笑)
 「酷いよ! こんなのって酷いよ!」
 「私たちの守ってきたものって……なんだったの?!」
 一般大衆の鮮やかな手のひら返しに年下組を中心にショックは大きく……偽ジュウレンジャーに蹂躙される人々、逆にジュウレンジャー狩りを行う人々、にかなりの人数を投入する事で状況の迫真性が増したのに加え、執拗な追跡シーンを描く事で(時空が20年ほど巻き戻りつつも)深刻さが上がり、更にメンバーそれぞれの“終盤でこその芝居”も引き出して、諸要素が巧く結合。
 ゲキは恐竜任侠伝、ゴウシは剣道少女回があったので、メイを軸に据えつつダン・ボーイを加えて焦点を当てたのも、作品全体としての良い目配りになりました。
 失意の逃走を続ける5人は、偶然出会った老婆の家に招かれ、だいぶもっさりとした服に衣装チェンジ。
 老婆の“思い出”の象徴として、少々デザインの古くさい普段着に身を包んだゲキたちは、戸惑いつつも少しずつ老婆と打ち解けていき、老婆が自分たちの事を知らないのではなく、知っていて敢えて匿った事を知る。
 老婆は老婆で、今は離れて暮らす息子夫婦たちの代わりに他人と誕生日を祝いたかったエゴを交えつつ、自らの目で向かい合ったジュウレンジャーを信じてくれるその言葉により人情の暖かみに触れたゲキたちは、自分たちが何の為に戦ってきたのかを取り戻す。
 「行くのかい、もう?」
 「来年も、再来年も、その次の年も、誕生パーティ、やりたいから!」
 良くも悪くも、バンドーラこそ悪であり、その野望に立ち向かう事が正義であるのが自明の理、でやってきたジュウレンジャーですが、その戦う理由、守ろうとするものの本質が何かといえば、それは、来年も再来年もその次の年も誕生日を笑顔で祝える世界ではないかと示したのは、非常に鮮やか。
 そして、老婆が仮初めに求めた“家族のぬくもり”とは、程度の差はあれ“ゲキ達が失ってきたもの”であり、その悲しみを再生産しない為に――そして取り戻す為に――こそ戦うのだ! がヒーローの姿として剛速球。
 『ジュウレンジャー』としてはあまり掘り下げてこなかった(そして作風における取捨としては納得ができる)要素ではありますが、“過去”から来た戦士たちが“未来”の為に立ち上がる姿はブライ編のテーゼとも繋がり、それによりゲキたち5人が改めて“今”に着地するのは、荒川さんらしいヒーローテーゼの構築(という点で今回かなり、今作これまでの参加と違って作品の大きな流れに荒川脚本が踏み込んでいるのですが、もしかすると最終決戦前にプロデューサーサイドからオーダーがあったのかも)。
 「……ありがとう。気をつけてね」
 老婆に見送られ、決意を込めたゲキのまなざしから大爆発シーンに切り替えるのも巧く繋がり、町で大暴れする偽ジュウレンジャーの刃が子供に迫った時、寸前でそれを食い止めたのはゲキ。
 いつもの衣装に身を包み(戦う時は戦闘服! byキャプテン・アメリカ)、5人が掲げる勇者の証。


「「「「「ダイノ・バックラー!!」」」」」

「ティラノレンジャー・ゲキ!」
「マンモスレンジャー・ゴウシ!」
「トリケラレンジャー・ダン!」
「タイガーレンジャー・ボーイ!」
プテラレンジャー・メイ!」

 実はあまりフル名乗りをやらないジュウレンジャーなのですが、ここで入れた判断は、素晴らしいの一言。



「恐竜戦隊!」
「「「「「ジュウレンジャー!!」」」」」

 「ええい、やれぃ!」
 そして大変久しぶりの主題歌バトルに突入し、恐らくは意図的に、曽田戦隊により一つの極みに達した80年代戦隊構文――揃い踏みの瞬間にエピソードの諸要素が一点に集約される事で、クライマックスバトルに“戦う意味”が乗って物語としての飛翔が発生する――で組み立てられており、大変ツボ。
 ……まあ、伝説の武器……ミラージュコピー出来るんだ……とか、この盛り上がりで本物と偽物の区別をつけられないのか……とかは、ご愛敬として(笑)
 若干の混乱はあったものの、メンバーそれぞれのバトルが尺を採って描かれ、遂にミラージュ本体をあぶり出すジュウレンジャー
 黄金バットの杖みたいな武器を振るうミラージュに苦戦する5人だが、事件の真相を知り、手のひらをクルリと返した人々の声援を背に立ち上がると、ハウリングキャ……はせずに、恐竜組体操アタック! で弱らせたところを、今度こそハウリングキャノン!! でトドメを刺し、バンドーラを滅ぼすまで、共に戦わん!
 最後は人々に再び受け入れられるジュウレンジャーが描かれて大団円となり、あまりにも見事に80年代戦隊構文を再現した事により、ある種の二次創作感さえ出てしまいましたが、オマージュも交えつつ、荒川さんの持つ《スーパー戦隊》像を力強く投げ込んだといった印象。
 それを、しっかりキャッチして形にした小笠原監督もお見事でした。
 『ジュウレンジャー』としては、今まで触れてこなかった「正義とは何か」について一気に3段階ぐらい掘り進めた事の良し悪しは感じましたが、ここ4話中3話を任された荒川さんのテクニックが良く出た回であったかな、と。個人的には改めて、80年代戦隊構文の美しさを感じたところです。
 次回――いよいよ迫る最終決戦! そういえばドーラサンタは回避されて良かった!