『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』感想・第20話
◆ドン20話「はなたかえれじい」◆ (監督:山口恭平 脚本:井上敏樹)
初公開! 桃谷ジロウの住居……には、バケツに集めた石が常備してあった(笑)
日課のトレーニングの傍ら、河原に立ち寄ってはなるべく殺傷力の高そうな形を選んで持ち帰ります!
《投石》は、地球人の基本攻撃スキル!
扇風機・ブラウン管TV・ちゃぶ台、と3点セットが並び、イメージとしては掘っ立て小屋、といった風情の都会の侘しい一人暮らしを続けるジロウは、故郷に置いてきた元恋人(十中八九、ジロウの思い込みと思われますが)の写真を見つめながら、深刻なヒロイン不足にもがき苦しんでいた。
ところがそこに当のルミちゃんから東京観光へ行くと電話が入り、登場回における別れの場面の、生ぬるく平板だが完全に突き放しているわけでもないルミちゃんの対応は、幼い頃から何度も繰り返されて慣れっこになっていた為と判明(笑)
「だから、その……別れても、別れてないっていうか、へっへ……」
喫茶どんぶらに一同を集めたジロウは(思い込みで)のろけ、雉野つよしの惚気センサーが(これは、思春期によくある、消しゴムを拾ってくれた隣の席の女子が自分の事を好きだと思う、アレですね……)と冷徹な無反応を示す一方、奥のマスターがやたら険しい視線を向けるのですが、今回最後まで見ても理由がわからず、「別れても別れていない」に、隠された重いトラウマでもあるのでしょうか……。
駄菓子を拾ってくれた幼なじみの女の子がてっきり自分の事を好きだと思っていたら、いきなり結婚式の招待状が届いたりしたとか。
「それで? なんだ、頼みというのは」
「僕にドンブラザーズのリーダーをやらせてください!」
上京してくるルミちゃんの前でいい格好をしたいジロウの申し出に、処刑宣言に対する根深い不信感を抱く鬼と猿は否定的な反応を見せるが……
「……面白い!」
「ちょっとタロウ!」
「きっとみんなの勉強になる。だが、俺は嘘がつけない。おまえのお供のフリはできない。だから……ドンブラザーズを脱退する!!」
斜め上に飛躍したタロウは、正直さを貫く為に自らチーム脱退を宣言し、アバンタイトルから強烈なアッパーカットが放たれてきます(笑)
「え? え?」
「今から桃谷ジロウがリーダーだ」
かくして、ドンブラザーズ改めて暴次郎戦隊ドラゴンファイヤーズが結成され……次回予告から、一体どんな顛末で持ち込むのかと思いきや、まさかの「田舎から母親が上京してくる」フォーマットで、そ、そんなセオリー通りの展開でやるのーーー?!
と、定石がむしろ奇手となる『ドンブラ』マジック。
「新生ドラゴンファイヤーズ! ばんごーーー!!」
リーダーが脱退したらチーム名まで変わってしまいましたが、新リーダーとなったジロウは早速、降りしきる雨をものともせずに全員色違いのトレーナー姿で鍛錬を開始し、スッキリした格好をすると、猿原の背が高くて足が長い。
(嫌すぎる嫌すぎる嫌すぎる嫌すぎる嫌すぎる……)
はるかが呪いの言葉を繰り返しながら階段を駆け上り始めた頃、同じ公園で傘を広げて佇む犬塚は、恒例のいちゃいちゃ回想にふけっていた。
「なぜ会えない……俺は約束通り1年間秘密を守った。それなのに……」
複数の大きな謎を交差させながら進行し、総体としては割と曖昧模糊ながらも、1話完結形式でエピソードごとに綺麗なオチをつける事にこだわりを見せる――それが作品としての“気持ちよさ”になっている――のが一つ特徴といえる今作、その一方で全体に関わる要素はドンブラコと流されてしまう事もままあるのですが、ここで鳥人回のフォローが入り、道しるべを無くした迷い犬は、まだ見ぬ栄光の明日へ向かって階段をひた走る雉野たちの姿を目撃。
「どうですか? 犬塚さんも一緒に」
「よせ。素人には無理だ」
(無理? 俺は戦士だぞ? 何も知らずに脳天気な奴らだ)
猿原の言葉を挑発と受け止めた犬塚はトレーニングに参加するもあっさり音を上げると逃走し、今回の犬塚は、鳥人回のフォローと、互いの正体を認識していない事を改めて確認する為に出てきた、といった感じ。
ランニングを終えたドラゴンファイヤーズは、緊急通報を確認したジロウの号令一下、ヒーローとして人命救助に出動すると暴走トラックを食い止めようとするが……あっさりと跳ね飛ばされる青と桃(笑)
続けて黄がトラックに立ち向かい、リアクション芸人として更なる高みへの道を切り開こうとするはるかだが、衝突寸前にトラックが停車し、発作を起こして運転不能になっていた運転手の救出に成功。
「名乗るほどの者じゃありませんけど! ドラゴンファイヤー! と申します」
その光景を、高いところで腕組みしたマスターが見つめているとはつゆ知らず、桃谷ジロウは意気軒昂。
「というわけで、戦うだけでなくレスキュー活動もする、それがドラゴンファイヤーズの活動方針です!」
つまり「ファイヤー」とは特警ウインスペクターの「ファイヤー」であり、公認ヒーローに成り上がって、もっと存在をアピールしたい、有名になりたいと熱弁するジロウにまずはるか(基本的に「名声」の二文字に弱い)が乗せられ、金や名誉には興味ないがタロウからは出てこないアイデアが一興だ、となにかにつけタロウの鼻を明かしてやりたい猿原が追随。
より強い敵と戦う事を求めて、キックボクシング王者をストリートファイトで叩きのめした半裸の男(なお、キックボクシング王者の方も半裸であり、『ドンブラ』世界における格闘家は、いついかなる時に勝負を求められても良いように半裸がマナーの模様)がヒトツ鬼と成る一幕を挟み――MAY DAY MAY DAY,SOS!
レスキューヒーロー活動として燃えさかる工場から逃げ遅れた人々を避難させようとしていたドラゴンファイヤーズだが、レスキュー装備ではないので酸素不足に陥ったサルが気絶……するも気がつくと工場の外に連れ出されており……キビポイント自動消費した?
なにやら言いたげなマスターが物陰から厳しい視線を送る中、愛するこの星に生まれた君たちを悲しみに染めたくないとドラゴンファイヤーズは数々のレスキュー活動を成し遂げて、すっかりTVで「あのドラゴンファイヤーズ」と世間に認識されるヒーローとなっていき、この星は宇宙船だよ誰だって明日への乗組員。
その頃、ドラゴンファイヤーズの活動を知ったらライバル意識を燃やして特脳ソノブレインとか結成しそうなソノイは、雰囲気を出す為に埠頭に同僚を招集していた。
「なに? ムラサメが脱走したというのか?」
「ああ。さきほど元老院から連絡があった」
ただ連絡事項を伝えるだけなのに、ポケットに両手を突っ込んだポーズで海を見つめ、どうしてそんなに格好付けているのでしょうか(笑)
「どういうことだ。ムラサメは人工生命体の筈。自らの意志を持った……とでもいうのか?」
「わからない。ただ、獣人との出現と、なんらかの因果関係があるのかもしれない」
会話に入っていないソノザが『初恋ヒーロー』(少なくともコミックス4巻まで出ていた事が判明)を熱心に読み込んでいたところ、そこに高級車が通りかかり、降りてくる一人の女性。
「君たち! 映画に出てみない?」
「映画……だと?」
「新……初恋ヒーロー?」
劇場版への導線が接続され……ソノザが『初恋ヒーロー』に触れたの、この為だけで終わったらちょっとショック(笑) ソノザには是非とも鬼頭はるか先生への弟子入りを志願して、今一度、はるかが「マンガ」と向き合うきっかけになってほしいのですが。
ソノーズが真面目に背景情報の提供や劇場版への接続を行ってくれた一方、ジロウ率いるドラゴンファイヤーズは絶好調で、皆の心は『ドンブラ』史上最高に一つになっていた。
イエス! ドンドラ!
「――よくないな」
サイン会や写真集の依頼まで殺到する事態に有頂天になる4人だが、そこに冷や水をかけたのは、これまで事の推移を見守ってきたマスター。
「人間は調子に乗ると、鼻が高くなる。ピノキオみたいに。そうなると戦士といえども、その高い鼻が弱点になる」
だがマスターの忠告は、普段の言行が言行だけに完全スルーを受け……ちょっとイラッ。
一方、強さを求める鬼が嘉挧柔道場(道場主の性格に凄く難がありそう)を襲って五星鬼と確定し、ダイレンといえば龍と餃子ではあるのですが、ジロウ回でゴクウ合わせという事でか、デザインのベースは牛魔王でありましょうか。そこに、孔雀の羽や珠っぽいモチーフが散りばめられているような感じ。
「強い奴はどこだぁぁぁ!!」
「強い奴なら――ここに居る!」
ドンブラザーズを脱退、というか、一人ドンブラザーズをしているタロウが変身して戦っていると、突然クロカイザーが乱入してレーザーギアブレードを振るい……明らかに、ストレスを解消しに来ました。
五星鬼は大ジャンプで逃走し、変身を解く二人。
「あんた……前から聞こうと思っていたが、いったい何者だ?」
……わかってなかった。
「俺はヒーローとして生まれ、ヒーローとして戦い――ヒーローであり続けるもの」
要領を得ないマスターの返答にタロウは何故か満足げに微笑み、何がわかったのかさえわかりませんが、マスターはこの世界における、概念化したエターナルヒーロー存在そのもの、だったりするのでしょうか。
「……ご苦労な事だな。それで、お供たちはどうしている?」
「……人生を勉強しているよ。君が言ったようにね」
タロウもそこまで悪い意味で「きっとみんなの勉強になる」と言ったわけではないと思いたいですが、ドラゴンファイヤーズがその功績を認められ、大臣栄誉賞を受賞する為に着飾った4人は、すっかり鼻をたかーくしていた。
「まさか、本当に、大臣栄誉賞まで貰えるなんて」
「いい風が吹いている。はっはっはは!」
(きっと、ビックリするだろーなー、みっほちゃん!)
(もう、いつ来てもいいよ、ルミちゅわぁぁぁん!!)
世俗の名声に弱いはるか、凡俗の垢にまみれた猿原、微妙にヤンキーを宿す雉野、妄想に耽るジロウ……青雲の志はどこへやら、驕慢の徒と化し天狗となっていた一同は、目の前に現れた呪いの武装をがしっと掴むと、使命を蔑ろにしてチェンジ拒否。
「遂に素顔までさらすつもりか。俺が言ったとおり、鼻が高くなっているぞ」
だがそこにマスターが現れると、トラックの時も、工場火災の時も、タロウがこっそりお供達を助けていた事を説明。
真のリーダー、真のヒーローとは何か、を思い知ったお供たちの鼻はポッキリと折れ、実際に人間が鬼と成る世界なので、このまま放っておいたら危うく天狗道に堕ちるところだったのかもしれません。
正気を取り戻した鬼猿雉はタロウの元へと走り去るが、一人ジロウだけは屈辱にまみれてガックリとその場に膝をつく。
「……馬鹿な……結局、タロウさんが僕たちを! ……僕たちを……! うぁぁぁぁぁぁぁぁ……!!」
ジロウの周囲が漆黒の闇に塗りつぶされる一方、お供たちは五星鬼と戦うドンモモに合流。
ナックル装備した鬼に対して動きを止めてダッシュ跳び蹴りの連係攻撃を決めるが、そこに風を切るムラサメソードが現れてややこしく
なりそうだったところに、続けて現れたのはソノイ。
「おまえの相手は私がしよう。脱走者よ」
前回今回と、(タロウが気づきもしないところで)他のキャラと一当たりしては帰って行く扱いになっているムラサメですが、今回は、しれっと完璧なヒーロー登場を決めるソノイが格好良かったので、満足(笑)
「さすが元老院の、兵器だけの事はある」
「その辺にしておけ。私たちには、映画が、ある」
バロム仮面が紫としばらく打ち合っていると、コンドール仮面が矢を放って水入りとなり、今回のソノーズはドン・ムラサメの背景説明と劇場版の宣伝に徹するのですが、最近少し、鬼退治に興味が薄すぎませんか?(笑)
「ドン・モモタロウ……やはりおまえは邪魔なもの」
紫サメはソノイが引き受けてくれたのも束の間、今度は目つきの悪くなったジロウが酔っ払いのような足取りで高い所に姿を現し……段々、予定外のタロウ復活により覚醒プログラムが誤作動を起こしている感が強くなって参りましたが、赤を排除しようとするあぶないジロウは、手持ち武器を戟から斧形態へと変形させると、新たなギアを取り出して白銀アーマーの戦士・ドントラボルトへと覚醒。
ようやく裏フォームのお披露目となりましたが、スーツのベースカラーは金色ままで、いっそスーツから銀色でも良かったような。
「今は忙しい。今度にしろ」
「ならば邪魔者は俺が倒す!」
ドンモモに襲いかかるもあしらわれた銀トラは、マサカリ担いで山賊ムーヴで五星鬼を攻撃すると、CGエフェクトの格好いいシャイニングタイガークラッシュでこれを撃破。
巨大化した五星鬼に対して大合体したドンブラザーズは、調子に乗ったのを反省していつになく心を一つにすると、二刀流の新型パラダイスで、鬼退治・完了。
ダイレンジャーギアは銀トラに回収されてキバレンジャーの先輩ギアへと姿を変え、体内に殺人スイッチを宿すジロウの謎は、ますます深まるのであった……。
一方その頃、ジロウ達が控え室を飛び出していった授賞式には、長官を偽称したマスターが出席して表彰を受け、その鼻は、天高く伸びていた(笑)
「俺はヒーローとして生まれ、ヒーローとして戦い――ヒーローであり続ける者だ」
オチとしては物凄く面白かったのですが……マスターの存在にちゃんと始末をつけられるのかは、どんどん不安になっていきます(笑)
後日――はるかは書店で、ドラゴンファイヤーズ長官・五色田介人1st写真集を発見して絶叫し、ドンドンいいとこみっけー 得意げに胸張ろうぜブラザー♪
久方ぶりにEDテーマに乗せてのラストで嬉しかったですが、考えてみるとこれ、『ダイレン』第33話「アイドル初体験」(監督:渡辺勝也 脚本:荒川稔久)ネタでしょうか……戦士メンバーの一人がアイドルデビューして写真集まで出したところでメンバー&長官ポジションがその事実に気付いて驚く、という(笑)
なお、騒動の元凶といえるルミちゃんは、なんか面倒くさくなったと東京観光を中止し、ジロウの相手を長年出来るだけあって、こちらはこちらでだいぶ適当でありました。まあ現状、周囲からはちょっと雑な扱いを受けるぐらいが、ジロウにとっては良いバランスな感はあり。
次回――まさかの先代サルブラザー登場。そして、写真集在庫山積み?! ていうかそのネタ引くの?!