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黄金の竜戦士

恐竜戦隊ジュウレンジャー』感想・第45話

◆第45話「バカヤロー少年」◆ (監督:小笠原猛 脚本:高久進
 突然ですが、産業廃棄物の不法投棄に怒りを燃やすジュウレンジャーは、それを邪魔しようとしてトラック運転手と揉めている少年を目撃。
 逃げ出した少年を成り行きから追いかけていると、なんと少年の叫びに応えてドーラユニコーンが召喚され、なんだか凄く、メカ進化獣・ドリルホース(『科学戦隊ダイナマン』第41話登場。頭にドリルの付いた馬の怪人で、強化されて、飛ぶ)を思い出すデザインです。
 「おまえら、ゴミを捨てるな」
 ドーラユニコーンは少年の命令に従って不法投棄を行う業者を痛めつけ、それを止める為にジュウレンジャーが少年と敵対する、ねじれた構造。
 そしてラミィとグリフォーザも参戦すると、前に進み出たユニコーンを攻撃するジュウレンジャーだが、なんとユニコーンを攻撃するとそのダメージが少年に伝わってしまい、間接的に少年を袋だたきするジュウレンジャーという、割と挑戦的なパンチが連続で放たれてきます。
 少年は、地球環境を研究していた父親が病死して以来、自然を汚す人間に激しく過剰な敵意を向けるようになっており、光は陰り、大地は砕かれ、そして海は死んだ。ハールマゲドン!
 少年の母親から事情を聞いたゲキたちは、立派な環境テロリストへの道を歩もうとしていた少年を説得するとユニコーンとの出会いを聞き出すが、直後ユニコーンが大々的に、地球汚染源・消滅!
 「地球にとって人類とはガン細胞だよ光一ぃ!」
 ドーラの力を振るい工場を爆破するユニコーンに立ち向かうゲキたちは、与えたダメージが全て光一を痛めつけている事にようやく気付くと、一時撤収。
 「もしかしたら、光一くんとユニコーンの脳波は繋がっているのかもしれない」
 ……どこから出てきた、脳波(笑)
 そこにラミィが種明かしと挑発に現れ、本当に、脳波でした。
 「光一くん、君の心の中から、怒りや憎しみを消して、楽しかった時の事を思い出すんだ! そうすれば、ドーラユニコーンの脳波から逃れられるかもしれない」
 人間を乗り越えろ! みたいな無茶を言われた少年は素直に目を閉じると夢想無念の境地を目指し、「かもしれない」レベルの自信で少年を置いてユニコーンとの勝負に向かうゲキたちだが、目に見えない所に放置しておけば、仮に痛みにのたうち回っていたとしても気付かないので不慮の事故で片付けられる戦慄の恐竜殺法!!
 再戦を挑んできたゲキたちを前にドーラユニコーンは脳波の同調を始めるが、光一の楽しい思い出が逆に流入してきた事でもがき苦しみ、その反応からユニコーンの角が能力の核だと気付いた赤は、ティラノサウルスが咆哮する映像を挟んで、勇壮な音楽と共に黄金アーマーを装着。
 「アームド・ティラノレンジャー!」
 今に至るスーパー化のはしりとしては、『地球戦隊ファイブマン』終盤のファイブテクターが既にありましたが、強化形態としての自覚的な名乗りといい演出といい、完全に現行戦隊に連なる見せ方。また、黄金の鎧、というカラーリングも後続作品に継承される要素として歴史的に見逃せません。
 獣奏剣を引き抜いた赤は二刀流でユニコーンの角を切断し、なにぶん高久脚本なので、てっきり「かもしれない」で少年を放置したまま勢いで勝利を収めてしまうのかとドキドキしていたら、そんな事はなくてホッとしました(笑)
 結果的には、そのドキドキが「アームド・ティラノレンジャー!」に良い形で裏切られて、割と盛り上がるクライマックスに。
 バンドーラ様は慌ててユニコーンを巨大化し、宙を舞い雷光を放つユニコーンに苦戦する大獣神だったが、召喚したブラキオンを踏み台に天高く跳び上がって放つジャンピング雷光斬りで勝利するのだった。
 欲望の為に環境を破壊する心ない人間はほんの一握りだけで、そうではない多くの人たちの思いが集まればきっと大丈夫、と忘れた頃の環境破壊ネタを綺麗にまとめて大団円とし、実に90年代らしいエピソード。
 受ける側が超古代人類である視点が加われば『ジュウレンジャー』らしさがオリジナリティとして出たところを、極めてオーソドックスな対応に留まったのが勿体ないといえば勿体ないですが、当時の尺では、これ以上の要素を盛り込むのは難しかったでしょうか。
 次回――カジュアル・ジュウレンジャー