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これからがGAMEの始まり

仮面ライダーエグゼイド』感想・第25話

◆第25話「New game 起動!」◆ (監督:中澤祥次郎 脚本:高橋悠也
 武器を手に手にバグスター&戦闘員と戦う茶色の仮面ライダーもどきの集団を愕然と見つめる永夢……という時系列を組み替えたアバンタイトルで、永夢の横に立つパラド。
 「楽しんでるか? エム。……ようこそ。――究極のゲームの世界へ」
 BGMと効果音が途切れ、パラドの言葉だけがこだましていくと画面が切り替わり、



- GAME START -
- GAME START -
- GAME START -


 の文字と共に11話ぶりに通常OPが始まるのが、新展開のスタートとして、痺れる演出(今回はもうここだけで、この後で何があっても大抵の事は許せるレベル)。
 久方ぶりのOP映像は大幅に入れ替わり、注目は、パラドの相棒キャラみたいな位置に腕を組んで立っているグラファイト(笑)
 もしかしてちょっと、面白キャラに進化する可能性……?!
 そして、シルエットで描かれた謎のライダーが斧を手にしてエグゼイドと対峙する姿が“新たなる強敵”の存在を印象づけます。
 果たしてその正体は、鏡灰馬なのか、日向恭太郎なのか、それともまだ見ぬ何者なのか……2クール目までのパターンを踏襲すると、変身すると声が諏訪部順一になる天ヶ崎恋ですが、それは無いと思いたい(笑)
 OP明け、アバンタイトルから少々時間は遡り……
 「……最近、ポッピーの姿が見当たらないなって」
 凄く、軽い、扱いでした!!
 速水校長が満面の笑みでポピ子さんをダークネビュラに手招きする中、CRに次々と救急通報が入ってただならぬ気配を漂わせ、通報のあった工事現場で座り込む少年を診察した永夢は、これまでにない症例の表示に困惑する。
 少年は「敵を追ってた」「他のプレイヤー」など不可解な言葉を呟くと立ち上がり――緑色のガシャットを手に取って起動すると、その姿が、茶色でツルツル頭の仮面ライダーもどきへと変身。
 常人離れした動きを見せるその後を慌てて追った永夢が見たのは、ソルティバグスター&戦闘員と戦う、複数のライダーもどき達。印象としては、『鎧武』のドングリ&黒影や『555』終盤の10円ライダーズを思い出しますが、今作ライダーのデザイン特性に鑑みれば、仮面ライダーボーズ、といったところでありましょうか。
 「なんだ……これ……?」
 一方の飛彩も、変身して市街地で戦う量産型ライダー達の姿を目撃。
 「ゲーム病患者がバグスターと戦っている……一体なにが起きているんだ」
 とにかく変身して割って入ろうとする両者だが、エグゼイドはゲームの邪魔だと後方に投げ捨てられ、そこに現れた新規プレイヤーがゲームに戸惑っていると、ナビゲート役としてポッピーが出現。
 「このゲームは、プレイヤーはライドプレイヤーって呼ばれるヒーローに変身して、現実の世界でバグスターと戦うゲーム! その名もーーー仮面ライダークロニクル』!!」
 ランクに分かれた13体(塩・魔法使い・リボルバー・バイク/自転車/ロボット・戦闘機・サムライ/グラファイト・ポッピー(DJ?)/パラド、で11体なので、後はゾンビと尼ヶ崎? それとも魔王や提督も出てくる……?)のバグスターを倒すと、ラスボスである究極のバグスターと戦える、と説明され、バーチャルではない現実で「変身」した一般市民が、ゲームのアトラクション感覚でバグスターを狩ろうとする、一種の悪夢的情景が展開。
 さすがにボスキャラ扱いの塩男爵は、群がるライドプレイヤーを軽々と蹴散らすと、「レベルだ! もっとレベルを!」とTIPSを残して去って行き、課金か、やはり課金なのか。
 リアルなゲームで勝ちたければ、必要なのはリアルなマネー、と身も蓋もない結論に落ち着きそうになったところで、「通りすがりの仮面ライダー」を倒せば、ガシャットや装備品など、レアドロップのチャンス! とチュートリアルが言い出し、突然、レアエネミーのご指命を受ける仮面ライダー
 「さあ! 一番にラスボスに辿り着くのは誰かなー? 世界一のヒーローを目指してー、Let's ゲーーム!」
 猟犬の群れの中にA5和牛を放り投げるだけ投げてポプ子が姿を消すと、私たちに頭髪をよこせーーー!!とライドボーズ集団がエグゼイド(&ブレイブ)へと襲いかかり、今、仮面ライダーたちの、毛根が、危ない!!
 大我の若白髪問題がここに繋がるとは私も夢にも思っていませんでしたが、中身が檀黎斗ならともかく、さすがにただの民間人にクリティカルストライクするのは気が引ける、とブレイブは炎を煙幕に使って離脱。
 一方のエグゼイドは、こちとらベータテスト版から参加している古参なんだよ! とMAX大変身して最大級の顔型ボディが降臨すると、あ、これ、正気じゃない金と時間を注ぎ込んだ廃人だ……と大半のプレイヤーが一目散に逃亡して結果的に場を治める事に成功し、最後まで残っていた一人(工事現場で診察した少年)がゲーム病の症状を見せた為に、CRへ運び込む事に。
 その頃、デイトレしていた花家先生は幻夢コーポレーションの株価急騰に困惑し、昨年末に大損害出しながら全部売ったのにどうしてくれるの場合によっては年収1億円のウチの子にネガティブキャンペーンさせるぞ臨時株主総会だぁ! と殴り込みを掛け、新社長とご対面。
 「あーら、素敵なアベックですねぇ」
 「「アベック?」」
 顔を見合わせた大我とニコはそそくさと互いに数歩ずつ距離を取り……二人とも、「アベック」、通じるのか(笑)
 はまあさておき、画面手前側で背を向けた二人が左右に動く事で、中央に開いた空間に画面奥から天ヶ崎が入り込んでくるのが冴えた演出で、当初はシナリオ同様にバタバタしていた感のあった演出陣が、2クール目の半ばぐらいから作品を掴めてきた感じがあるのは、好材料
 劇場版などの関係もあって演出陣の出入りが激しくなりがちな時代ですが、第3-4話の坂本浩一監督を除くと、中澤-諸田-山口、のローテが固定に近い形でここまで来ているのは、今作にとっては良い方向に働いている気がします(ちなみに、『鎧武』は前半24話の内に6人、『ドライブ』は7人の監督が参加)。
 天ヶ崎は今回もフラメンコギターの効果音を背負って濃厚かつ軽妙に動き回り、世界中にI LOVE YOU.
 「はぁ?! ゲンムの社長って変な奴ばっか?!」
 さすがにこれは十代の女子に近づけてはいけない生き物だ、と珍しくニコをしっかりと背中にかばう大我、そして飛彩に前後を挟まれる天ヶ崎だが、両者の詰問をさらりとかわすと、ぬぬぬ、こやつ出来るな、という所を見せつけて自社ビルの中へ消えてゆく。
 「何を考えてる?」
 「……檀黎斗はバグスターのデータを集めていた。だとすれば、ポッピーピポパポも、『仮面ライダークロニクル』に必要な存在だったのかもしれない」
 正直、そこに思い至るのは遅すぎでしたが……まあこの問題は、先に気付いても警戒手段が、段ボールに詰めて衛生省に送り返す、ぐらいしか思いつかないのが悩ましいところではあり。
 「だったらどうするってんだ? 今わかってんのは、とにかくあのゲームはヤバいって事だけだ」
 少年をCRに押し込んだ永夢が再びの救急通報に駆けつけると、そこではボーズ達とバグスターのバトルが行われており永夢はエグゼイドに大変身。
 「バグスターは倒されれば倒されるほど、進化する!」
 某ハート様みたいな事を言い出した塩男爵@LV10に苦戦するエグゼイドは、XXしようとしたところで山賊と化したボーズたちに襲われ、ガシャコンソードを奪われると、その一撃を受けて変身解除。
 地面に転がった際に派手にぶちまけられたレアドロップに群がるボーズ達は、これでLVを上げて髪の毛を生やすぜーーーと各種装備を振り回す凶悪な展開で、愕然と座り込む永夢の姿がアバンタイトルに繋がり……姿を現す事の元凶・パラド。
 「『仮面ライダークロニクル』こそが、俺の求めていたゲームだ。その夢をゲンムがかなえてくれた」
 「…………パラド、このゲームを奪う為に……ゲンムを殺したのか」
 「そういう事。さ、愉しませてもらうぜ」
 パラドはパラドクスに変身し、いきなりのLV50が登場。欲にまみれたプレイヤー達はパラドクスに襲いかかるが、相手になる筈もなく……
 「さあ……運命のパズルだ」
 パラドクスの高速マッスル連続蹴りにより撃破された6人のボーズの変身が解けると、敗北したプレイヤーの体に走るノイズ。
 「もしも、戦いに負けて、ゲームオーバーになってしまったら、そのプレイヤーは、消滅しちゃうの!」
 重要事項を後から説明するのは、ポピ子さんの仕様なのか。
 ゲームのナビゲートとしては騙し討ちもいいところなのですが、ポプ子さんは洗脳前からこんな具合だったので、妙な説得力はあります(笑)
 「コンティニューは、出来ませーん。一つだけのライフを、大切にね! 世界一のヒーローを目指して、Let's ゲーーーム!」
 やたら明るいナビゲート役が無邪気に死の宣告を下す如何にもなデスゲーム展開で、悲痛な絶叫を残して、ゲームオーバーとなった6人は消滅。
 「どうだエム? こんなエキサイティングなゲーム、他にないだろ」
 「酷い……なんでこんなことを……」
 「許せないんだよ。この世界で一番偉いと思い込んでいる、人間どもがな。『仮面ライダークロニクル』は人間がバグスターを攻略するゲームじゃない。――バグスターが人間を攻略して、人類を滅亡させるゲームだ」
 これまで自分本位な快楽主義者と見えたパラドが、“種族としての人間への憎悪”を口にして、「バグスターである事」に強いアイデンティティを持っていた事が明確にされ、追加コンテンツ『仮面ライダークロニクル』の導入と共にその真の目的が明かされる事により、前半戦とは「ゲーム」の構造が逆転。
 そして同時に、「ゲームなら死んでも、コンティニューすれば生き返る」筈が、「現実がコンティニューできないゲームになる」パラダイムの変換が発生し、“ゲームから生まれた人間ではない存在”が現実を侵食するもくろみとして、“世界をゲームにしてしまう”――『仮面ライダークロニクル』を起動させる――が納得できる意味を持つ事に。
 《平成ライダー》としては、『仮面ライダー龍騎』を本歌に取り、(潜在的なヒーローテーゼは別として)『ファイズ』『鎧武』など、“仮面ライダーになり得る存在”の門が広く開かれたタイプの系譜に連なっていた事が浮かび上がってきましたが、そこに〔オンライン・体感・デス〕といった「ゲーム」の要素を接合する事で、『エグゼイド』らしい味付けの発展系を形にしてみせたのは、お見事。
 また、“究極のゲームとは何か?”を割とさらっと黎斗に語らせていた事により、突然「こういうものでした!」となる事なく、「その大仕掛けを4クール目ではなく後半戦の開幕から実行してくるインパクト」と「そこに込められた寓意の発現」の双方が効果的になったのは、イベントイベントで転がし、節目節目の大きな転換を好む大森Pの手法が巧くはまりました。
 “誰もがヒーローになりえる世界”はまた“誰もが怪物になりえる世界”であり、個々人の持つささやかな善良さが物事を良い方向に動かしていく事もあれば、ちょっとした欲望が巨大な悪意に転換される事もある、そんな世界の在り方を箱に収めた寓話的機構として『仮面ライダークロニクル』が機能を発揮し、虚構に宿す寓意の力で押し切る手法が大森P作品で実践されていたのは軽い驚きだったのですが……(この先はまだわかりませんが)今作で得た手応えを元に「戦争」を主題に据えようとして、寓話性を自ら破壊して大火傷してしまったのが『ビルド』だったのでしょうか……。
 「…………ふざけるな」
 「ふっ……たっぷり味わえよ。ゲームで攻略される側の気分をな」
 パラドは瞬間退場し、現状、リスクに比べてゲームを続行するメリットがプレイヤー側に限りなく薄いのですが、そこを補ってあくまで「ゲーム」の体裁を維持するのか、それとも別の形に更なるスライドをしてくるのか……「人間の悪意との直面」「新たな種族との関係」は、個人的に大森P作品の鬼門なのですが、巧く転がってくれるのを祈りたいところ。
 バグスターのアジトには、パラド・天ヶ崎・ポッピー・グラファイトが集い、きもち四天王の一員感を出すグラファイトですが、考えてみるとグラファイト、1クール目に黎斗のコマとして利用されていた際にはパラドにさっくり見捨てられていたので、下克上の気持ちを忘れないでいていただければと思います。
 ワンサイドゲームはつまらない、とポピ子に向けて花束を差し出した天ヶ崎の声がまたも変わると、魅入られたように手を伸ばしたポピ子の手の中には新たなガシャットとバグバイザーが……で、つづく。
 とにかくアバン→OPの演出が最高に良かった(2クール目の大半がタイトルだけだった事で「GAME START」を目にするのも久々だった事が、結果として非常に効果を発揮)後半戦の開幕でしたが、目の前で6人の人間を消滅され変身アイテム一式を投げ返されるヒーロー完敗のまま続くのも強烈。
 果たしてこのまま救済処置なく突き進むのか? という視聴者の感じる不透明さが、ライドプレイヤー達の抱える現実味の薄さとシンクロするのも巧妙な仕掛けとなり、次回――衛生省大炎上。