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三度目のタマゴ

恐竜戦隊ジュウレンジャー』感想・第37話

◆第37話「恐竜が生まれる」◆ (監督:小笠原猛 脚本:杉村升
 「君、そのタマゴを返してくれないかな」
 「なんだよ、これ俺のもんだぞ!」
 「嘘! 見つけたのは私達じゃない。私たちのものよ!」
 17話ぶりに登場した恐竜のタマゴを巡って所有権争いが勃発し、相変わらず、特に交換条件を出さなくても、あるべきものはあるべきところへ帰ると思い込んでいるゲキ、道案内をしてくれた少女との間にさえ交渉が完了していなくて、戦いが終わった後、市井で暮らしてけるのか不安になります。
 そこにバンドーラ一味も乱入して暴力も交えた争奪戦となり、ゲキ的には、こういった事態も考慮して民間人保護のつもりなのがまた、“正義”に拍車をかけてややこしいのですが、仮にゲキの解像度を現代的に上げていくとすると、結構、面倒くさい系ヒーローになりそうだなーとは(笑)
 ゴーレム兵を蹴散らしていくジュウレンジャーだが、『西遊記』にインスパイアされたバンドーラ様が作らせたドンドーラジロウ、じゃなかった、ドーラ金角が登場すると、メイと子供たちをタマゴもろともヒョウタンの中へ吸い込んでしまう。
 幸い、知恵の戦士が『西遊記』について把握しておりヒョウタンに吸い込まれて全滅は避けるジュウレンジャーだが、男衆は芭蕉扇で吹っ飛ばされ、まとめて崖落ち寸前の大ピンチ。
 その時、どういうわけかゲキの耳に、どこからともしれない心臓の鼓動が響くが、何事?! と狼狽している間に4人は崖からダイナミックに転落……するかと思いきや、空間に奇妙な亀裂が入ると、神秘的な空間に並ぶ守護獣の姿を見る。
 「伝説の戦士たちよ、ジュウレンジャーよ」
 「究極大獣神?!」
 「おまえたちに真実を告げる時が来た。我々は、7体にして1体なり。すなわち……」
 不思議空間の映像的ハッタリで誤魔化しているのですが……始まった事は、合体パターンの説明(笑)
 一つわかった事は、サンダースリンガーを手に入れる際に試練として襲ってきたのは、ちょっとおまえら向こうの沼まで行ってこいよ、と送り出した当人と同一意識だったという真実ですが、まあそのぐらいは、神的存在なので、そんなものか感はあり。
 「みな忘れるな。なんの為に、我々もおまえ達も居るのか」
 そこから、「7体にして1体な真実」とは特に繋がりの見えないまま、神と戦士の「使命」について語られて、だいぶ急カーブ。
 「それは、永遠なる命を守る為に」
 「永遠なる命!」
 「全ての命は滅びる。だが、新しい命となって、必ず甦り、永遠に繋がっていく。それが、生けとし生けるものの、最高の喜びなのだ。幸せなのだ。それを絶対に絶やしてはならぬ」
 語られている内容そのものは悪くないのですが、文脈の不足に、いきなりの謎空間が重なって、どうしてこのタイミングだったのかは、困惑が先に立ちます。
 恐竜のタマゴはあと60日で孵化する筈であり、全ての命を守る為に戦えジュウレンジャー! と4人が謎空間を放り出された頃、首尾良くミッション達成したバンドーラ一味は宴の真っ最中。
 そして子供たちは引き続き、タマゴの所有権を巡って醜い言い争いを繰り広げていた。
 「やめて! タマゴは誰のものでもないわ」
 そこにメイが割って入って子供たちに命の尊さを説き、ようやく、轟轟戦隊風味が脱臭されました(笑)
 タマゴの中の鼓動を耳にした子供たちは、それは「物」ではなく「命」なのだと考えを改めるが、ヒョウタンの中に火の付いたマッチ棒が投げ込まれ、かなりえげつない窒息死の危機!
 だがそこに、恐竜テレパシーで心音をサーチしたゲキたちが駆けつけ、バイクから派手な銃撃を浴びせると、4人並んでダイノバックラー!
 多彩な武具を操る金角とグリーフォーザのタッグに苦戦するジュウレンジャーは、守護獣を召喚して質量で押しつぶそうとするが、そうはさせじとバンドーラ様が金角とグリフォーザを巨大化。
 劣勢に立たされるとブライが救援に現れてシーザー召喚から合体ドラゴンミッションし、ヒョウタンの破壊とメイたちの救出に成功。子供たちを守り、地上でゴーレム兵を蹴散らしていたメイが変身してプテラノドンで合流し、この際、手持ち武器として使っていた弓を振り回しながらの変身シーンが割と格好良く、別行動だったメイのちょっとした見せ場に。
 大獣神はゴッドホーンで如意棒をたたっ切るも芭蕉扇に苦しみ、タマゴと子供たちに巨大金角が迫ったその時、究極大獣神が降臨。
 そんな事言われても……感のあった「7体にして1体」を前振りにして、合体変形を全部見せるギミック重視の今作らしい構成で金角を葬り去るとグリフォーザは撤収し、遂にジュウレンジャーは、恐竜のタマゴを海落ちから守り抜く事に成功するのであった。
 紆余曲折あったタマゴはブラキオン預かりに落ち着くと、放送クライマックス頃となるおよそ2ヶ月後に孵化する筈、と非常にメタな伏線が敷かれ、沸き返る仲間たちの輪を、そっと離れてゆくブライ……。
 「……兄さん!」
 「……ゲキ、俺の命はあと僅かだ。だが、代わりに恐竜の赤ちゃんが生まれてくる。命って素晴らしいじゃないか」
 生まれてくる命と、死にゆく命、ブライの生きる意味、そして死の意味が描かれて、これは鮮やかな接続。
 だが、ブライの生と死に、“そんな意味”が与えられていいものなのか……己の生死を見つめ続けた末に達観の境地に辿り着きつつあるブライに対し、ゲキはまだ、割り切れぬ苦い思いを抱えるしかできないのであった……。
 途中「使命」の語りがあまりにも強引でしたが、これまで延々と海上を彷徨い続け、劇中の扱いそのものが迷子になりかけていた恐竜のタマゴが、「ブライの命」と対比される位置に着地したのは、お見事。そこからいったい、どんな結末に辿り着くのか、楽しみです。
 次回――愛ある限り戦いましょう。