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ほぼ『ジライヤ』外伝

恐竜戦隊ジュウレンジャー』感想・第35話

◆第35話「忍者戦士ボーイ」◆ (監督:坂本太郎 脚本:高久進
 戸村流忍法道場でボディガード募集! の張り紙を見て、新たな殺人スキルを覚える事が出来るのでは、と興味を示すボーイ。
 訪れた屋敷では様々な罠と、戸村流忍術13代目当主であり、ごく自然に分身の術を使いこなす少女・亀田ちさと、そして天井裏に忍んでいたドーラニンジャが待ち構えており……ほ、ほら、ニンジャとサムライは、エネミー種族なので。
 ドーラニンジャを追いかけるボーイだが、敵はニンジャバズーカを放って姿をくらまし……
 「ボーイは強いのね。忍法をどこでマスターしたの?!」
 「自己流さ!」
 ……忍法、だったのか(笑)
 バンドーラの狙いは、ちさとの父が研究している不老不死の薬であり、人類に不老不死などもっての他! と妨害工作に放たれるトットバット・ブックバック・グリフォーザ。
 忍者装束に身を包んだボーイがそれを待ち構え……かつて『世界忍者戦ジライヤ』(1988)において、主人公の弟である少年忍者・山地学役だった橋本巧さんの演じるボーイをメインに据え、同作のメインライターであった高久進が脚本を担当する、半ばセルフパロディのごとき一作で、「敵を欺くにはまず味方を欺け、の言葉がある。これも忍法の一つだ」!
 (※なお、『機動刑事ジバン』には、山地学当人が登場する、『ジライヤ』コラボ回・第31話「真夏の夜のニンジャ合戦」(監督:三ツ村鐵治 脚本:高久進)があり)
 不老不死は魔女の特権! と利権の独占を図るバンドーラの命令に不満たらたらのトットバットらは、妙薬の盗み飲みを画策。忍法道場で一味を平然と待ち受けていたちさとは忍者アクションで奮闘を見せるも敗れるが、強奪に成功して一気飲みした薬湯の中身は、頭痛・腹痛その他もろもろを引き起こす劇薬であり、少女を囮に使って毒物を盛る、これはもう完全に、戸隠流の流れを汲んだやり口です。
 作劇としては、「私利私欲の為に身内を裏切り」「少女を容赦無く攻撃した」トットバット達は「毒物を盛られても仕方ない」と卑怯をもって卑怯を制すやり口にエクスキューズが与えられているのが地味に巧妙なのですが、全てのステータスが激しく低下したトットバットらにボーイが刃を向けたところでゲキたちも忍者装束で合流し、忍竜戦隊・ジュウレンジャー
 弱った三人を一網打尽にして地下牢獄に送り込もうとするジュウレンジャーだが、増援のゴーレム忍者軍団が送り込まれ、しばらく忍者刀を手にした殺陣が展開。
 その間に辛くも逃走に成功したバットらはバンドーラ様のお仕置きを受け、改めてドーラニンジャが亀田家へと送り込まれることに。
 亀田家では、ちさと父が研究について語り、「不老不死の薬」は少し大げさで、先祖が野生動物の知恵を元に発見した超強力な栄養剤みたいなものだと説明。恐らく元々は、忍者が急激に身体能力を引き上げる系のヤバい薬物であったと思われますが、成分を調節して適切な投与を行う事でニンゲンの脆弱な体を超え……じゃなかった、健康増進に役立てる事ができそう、といった辺りでしょうか。
 同時に、実は亀田博士とゲキたちは以前から繋がっており、目立つボディガードとして雇われたボーイそのものがバンドーラ一味を誘い出す為の囮であったと明らかにされ、えげつない、戸隠流、えげつない。
 「黙っていて悪かったね。しかし、これが、戸村流忍法のやり方なんだよ」
 にこやかに肯定する亀田父はまず間違いなく、山地哲山の弟子かと思われます。
 だが、床下で全てを聞いていたドーラニンジャが部屋にガスを流し込むと薬草を奪って逃走。しかしそれさえも罠であり、『ジライヤ』の時も秀作の多かった高久先生、ある秘密を巡って敵味方が虚々実々の駆け引きを繰り広げる忍法帖フォーマットがお好きだったのか、超ノリノリ(笑)
 「ぬぅぅ……騙したなジュウレンジャー!」
 「忍法の極意とは、敵の目を欺く事!」
 「おまえには、忍者として最も大切な、その心得がなかったんだ」
 「ドーラニンジャ、敗れたり!」
 ボーイに瓜二つの先輩忍者も言いました。
 「忍法の奥義は相手を騙しても最後に勝つ事にあるんだ! わかったか!」
 そこでさすがにダイノバックラーして恐竜戦隊に戻っての戦いとなり、心理戦に敗れるも近接戦での強さを見せるドーラニンジャは、形勢不利と見るやちさとを人質に取ると、ニンジャバズーカでジュウレンジャーを砲撃。
 ――「俺は命の大切さは知っている。だが、卑怯者のおまえだけは許せない!」
 しかしその時、ボーイの内に眠るニンジャスピリッツに火が付くと、“忍び”とは見えない悪を倒して平和に変えること!
 「タイガー! 分身の術!」
 ちさと直伝の分身の術を発動したタイガーレンジャーは、6体分身によりドーラニンジャを翻弄すると人質の救出に成功し、もはや世界観の脈絡を放棄する勢いですが、東映×忍者なので、仕方がありません。
 今回は割といいとこなしのバンドーラ様がドーラニンジャを巨大化し、守護獣召喚からブラキオンが単体で応援に現れる宣伝キャンペーンで、トドメはゴッドホーン・一刀両断!
 亀田家に伝わっていた妙薬の秘密は守られ、婿になれ、とちさとがボーイに迫ってドタバタ大団円。
 ナレーション「魔女バンドーラ一味の陰謀を、叩き潰せ、ジュウレンジャーーー!!」
 と今回も妙に気合いの入ったナレーションさんが声を張り上げて、つづく。
 個人的には割り切った面白さがあったのですが、
 ・駆け引きの描写を優先して、ボーイのテーマに指定していた「希望」に触れられない
 ・バンドーラ様がやたら小物
 ・子供の悪夢要素が欠けている
 など、『ジュウレンジャー』として見ると問題点が多く(繋げようと思えば繋げそうなのに、それを組み込む技巧が凝らされてもいない)、トットバット達にしてもゲキ達にしても、忍法帖フォーマット優先でキャラクターが歪められた部分が出てしまう事に。
 恐らくは『ジライヤ』を通っているかいないかで端々の納得度に差の出る内容だったかとも思いますが(そして、通っている前提にはちょっと無理がある……)、『ジライヤ』ファンとしては、『ジライヤ』の忍者観を汲んだ忍者活劇として、面白く見てしまえました(笑)