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無限コンティニューの果てに

仮面ライダーエグゼイド』感想・第22話

◆第22話「仕組まれたhistory!」◆ (監督:諸田敏 脚本:高橋悠也
 前回の「mystery」を受けたサブタイトルが面白く、黎斗の『仮面ライダークロニクル』宣言がドクター達に大きな波紋を投げかける中、監察医務院(九条友人が再登場)に向かった飛彩は職場に残されていた九条の私物を調べ……え……あの……衛生省は、それさえも、放置なの…………?
 キャラクターの能動的な行動が物語を進展させる事そのものは良いのですが、クリスマス以来(劇中時間で二ヶ月ほど?)、九条の所持品に誰も興味を示していなかったらしき驚愕の事実に、カエルの潰れたような声が出てしまいます(笑)
 特にロックもかけられていないノートPCを調べた飛彩は、その中にバグスター因子を正常化する「リプログラミング」の情報をあっさりと発見し……もはや罠としか思えないレベル。
 「……監察医、おまえは大した男だな」
 飛彩の言い回しは格好いいのですが、パスワードは「aloha」とかだったの九条?! となる一方、黎斗はアジトで究極のゲーム開発の進捗状況を確認中。
 「『仮面ライダークロニクル』の完成まで、必要なバグスターはあと3体……」
 だがそこにようやく衛生省が踏み込み、証拠物件の押収が行われている中で黎斗はゲーム病の発作に苦しみだし、緊急通報で駆けつけた永夢とポピ子が目にしたのは、全身銀色で自転車を乗り回すバグスター。衛生省の職員を追い散らす銀輪バグスターが「チャーリー」は良いネーミングで、XXエグゼイドとの戦いに自転車競技を取りこんだのは面白いアクション。
 飛彩と大我も現着するとパラドも姿を見せてそれぞれ変身し、LV50! LV50! LV2!(辛い)
 提督の発動時にちょっとよろめくような演出が入ってお邪魔キャラとの戦闘が始まる一方、ボクゼイドが自転車にまたがって銀輪バグスターを誘導したところを、マッスル化したオレゼイドがカウンター気味のフルスイングでセンターライナーをかっ飛ばし、筋肉は真理! 野球は格闘技!
 銀輪バグスターがスリープ状態なると檀黎斗が地面に倒れ、それを見たパラドクスは「しらけるぜ」と帰還。永夢らが状況に狼狽する中、衛生省の皆さんは即座に黎斗の身柄を確保する。
 「衛生省? ……って聞いてないんだけど!」
 もはや完全に、衛生省から存在を無視されている勢いのピプ子さん……これは、つまり、あれですね……ゲーム病公表以降、出番の無い日向審議官は省内政治でスケープゴートにされて失脚寸前で、既にピプ子さんの机は、衛生省の地下3Fにある掃除用具置き場の片隅に移動されていますね……。
 アジトに衛生省が踏み込んできてからずっと、わざとらしい気弱ムーヴを繰り返している黎斗(予告バレしてますし(笑))が衛生省職員に連れ去られようとしていると、治療が必要だ、と敢然と割って入る永夢。
 「その男はバイオテロの容疑者だぞ」
 「患者を救うのが、ドクターですから」
 恐らくは1クール目のゲーム泥棒回を意識したやり取りがかわされると、更に飛彩が永夢の側に立って意見した事で永夢が驚くのですが……いや、この場合、先に治療する、ないし治療と並行して尋問を行うのがむしろ当然であって、「バイオテロの容疑者」=「治療の必要が無い」わけでは全く無いと思うのですが、『エグゼイド』世界は本格的に、犯罪者に人権は存在しないのか。
 そもそも対比に置いているゲーム泥棒回からして、法治や人命よりマイルール優先のおかしな理屈が飛び交っていたのですが……「医療物資の限られた場面で貴重な薬を悪人にも使うべきか」といった状況でもなんでもないのでこれといった命題も発生しておらず、日常がいきなりのサバイバル空間。
 つまり我々は生まれた時から闘争を必然としており、『仮面ライダークロニクル』は既に始まっているのさ我夢ぅ! と、私の中の藤宮博也が人類文明に激しく警鐘を鳴らしてきます。
 まあ藤宮はさておいて、主題としてはここ数話の流れを踏まえて飛彩の対応の変化を描きたかったのでしょうが、そもそもゲーム泥棒回が色々と歯車のズレた回だった為に、「あの人は車道を全裸で逆走しなくなった! ビックリだ!」と言われても「最初から車道を全裸で逆走しない方がいいのでは」となって問題の前提が明後日。
 「……この件は上に報告する。最悪の場合、君たちにしかるべき行政区分が下る事になるぞ」
 いかにもな憎まれ役の職員は、永夢たちに脅しをかけると肩をいからせ揃って去って行き…………
 いや!
 それだけ頭数居るんだから!
 最低でも二人ぐらい!!
 監視要員に残していきなよ!!!
 冷徹で四角四面な官僚機構との緊張感ある対立、みたいな意図だったのかもしれませんが……一連の行動のお粗末ぶりがあまりにあまりで、雁首並べてゾロゾロ帰っていく姿に大爆笑。
 なまじ全員がスーツでびしっと揃えているのもおかしみを増して、「笑い」という点では、ここまでの『エグゼイド』で一番笑ったシーンになってしまいました。
 本題はそこではない――どんな相手でも、患者は患者として接しようとする永夢――のでしょうが、ようやく表に出てきた衛生省が失点に失点を重ねすぎて試合の相手として成立しなくなっており、形は違えど序盤と同じく、強引に“対立”の構図を作ろうとして話に致命的な歪みが生じる落とし穴にはまってしまっています。
 敢えて衛生省職員の行動に通る筋を探そうとするならば、黎斗からバグスター事件に関する「情報を引き出す」事よりも、すみやかに「事故死」を願う一派が衛生省に存在する可能性が考えられますが、それにしても、永夢の提案にかこつけてCRに監視及び工作要員を送り込むチャンスを自ら棒に振っているので詰めが緩く、“お役所仕事”への風刺的意図があったとしても粗雑にすぎて、もう少しどうにからなかったものなのか。
 そもそも職員の皆さん、重大バイオテロ容疑者のアジトに踏み込むには驚くほど軽装すぎて、黎斗がZゲンムに変身できる事さえ知らなかった疑惑も浮かび(全員、近接格闘技の達人とかだったのかもしれませんが、銀輪バグスターに一方的に踏まれていたので……)……もしかしなくても、これまでの情報が全く共有されていない。
 この点に関しては今作、ライダーバトルがあくまでウィルス相手の「オペ」である以上、ゲームフィールド以外での仮面ライダーの破壊能力が曖昧な点はあり、これに対して武装を持ってあたると過剰な暴力に見えかねない難しさはあるのですが…………思い返すと戦闘機バグスターが、現実世界で、工場吹っ飛ばしてましたね……。
 そんなわけで恐らく、ゲーム病の情報公開・バイオテロ首謀者との関係など、諸々の巨大スキャンダルに見舞われた衛生省では、日向審議官の失脚寸前にともなって派閥工作と主導権争いが激化。さすがにポピ子が行っているであろう定期報告も途中で握りつぶされ、或いは情報そのものが歪められ、永夢や黎斗の扱いに関しても各派の思惑が入り乱れた末に停滞と混乱を招き、組織そのものが機能不全に陥っているのでしょう!!
 「……ありがとう。……ありがとう、ありがとう」
 「……おまえら、まさか本気でそいつを治す気じゃないよな?」
 涙をこぼして永夢にすがりつく黎斗は、永夢先生に不足しているヒロインポジションさえ担当してみせようとする気概を見せるが、ソロ活動中でハードボイル度の高まっている大我は、裁くのは俺だ、と渋い顔。
 これはこれで「ヒーロー」の一側面として対比の意味はあるのですが、黎斗がゼロ・デイの首謀者でもあったと判明している現在(この情報は花家先生には回ってないかも……)、バグスターウィルス根絶を考えるならできる限りの情報を提供させないといけない存在なわけで。
 それにほら、生かさぬよう殺さぬよう、情報だけ搾り取るなら各種薬物が揃っているCRの方が都合がいいじゃないですか。
 「意外。飛彩が永夢をかばうなんて」
 「……ありがとうございました」
 どうしても、そういう話にしたいようなのですが、今回、最も合理的かつ論理的に立ち回っているのは鏡先生ではないかと思います(それらを全て超える「情念」によって、その場で消しにかかるのも物語として嫌いではないですが)。
 「亡くなった者たちの無念を晴らしたいとおまえは言ったが……その思いは俺も同じだからな」
 飛彩の「変化」が明確に描かれ、CRに運び込んだ黎斗に、永夢は抑えた声で問いかける。
 「……なんで人の命を脅かすような事を……何があなたをそんな風にさせたんですか?」
 「……もはや私の計画は崩れた。正直に話そう。……全てのきっかけは君なんだ……永夢」
 「え?」「どういう意味?」
 16年前、中学生ながらゲンムコーポレーションでゲーム開発に関わり、数々のヒット作を生み出していた黎斗の元に届いた、一通の手紙。そこに書かれた「ぼくのかんがえたさいきょうのゲーム」のアイデアを目にした黎斗は内容に驚愕して嫉妬に狂い……その差出人こそ、「ほうじょうえむ」。
 「そのたった一通の手紙が、私と君の運命を、大きく変えた」
 一方、大我とニコはゲンムコーポレーションを訪れており、まあきっとそうだろうとは思いましたが、前社長をバイオテロの容疑者として確保しようとする一方で、そのお膝元だった会社は、どうして完全放置なのですかね衛生省……今ちょうど新たな細菌兵器の素材が、無免許医さんの手に渡ったところなのですが。
 さすがにこの短期間で中身のウィルスもといゲーム内容までは決まっていなかったようで、ひとまずガシャット本体だけを製造した小星が提案した対ゾンビ対策ゲーム『ボーズ・オブ・テラ』に、花家先生の毛根が、本格的に危ない。
 大我がそれを却下したとこに現れたのは、九条のノートPCを手にした飛彩。
 「中のデータなら俺が持ってる。監察医が遺した形見がな」
 CRでは黎斗の告白が続き……少年永夢にジェラシーファイヤーを燃やした学生黎斗は、くしくも2000年問題直後に発見していたバグスターウィルスを利用して、かつてないゲームを創り出せるのではないか、とその実験の為のサンプルゲームを、永夢に発送。
 「君はそのゲームをプレイして、バグスターウィルスに感染したんだ」
 永夢の記憶からも、黎斗の告白は真実であると(少なくともゲーム発送に関しては)裏付けられ、永夢は6年前ではなく、16年前の時点でバグスターウィルスに感染していた事が判明。
 「私は……時が来るのを待ち続けた」
 そして6年前――成長した永夢の体内でバグスターウィルスもまた成長している事を確認した黎斗は、ネクストゲノム研究所の財前に永夢の手術を依頼し……「なぜ永夢は仮面ライダーに変身できたのか?」という大きな謎の答を劇場版ゲスト悪役に任せてしまうのはどうなのかと思っていたので、ここで真の黒幕は黎斗であったとされるのは、成る程納得。
 九条の「あんたと永夢、16年前に接点があったんだって?」発言も繋がり、黎斗は究極のゲーム作りの為に永夢の肉体と精神を利用して育てていたバグスターウィルスを回収。つまり……
 「お父さん、と呼んでくれていいんですよ、ポッピーさん」
 「ピ、ピヨる……」
 はともかく、全てのバグスターは元を辿れば永夢を宿主にしていた事が明らかになり、バグスターがゲームに紐付けされているのは、黎斗がそうやって加工していたから、と理由付け。
 ……若干、「バグスターウィルス」と「バグスター」の定義づけが把握しきれないところがありますが、2000年問題をきっかけに生まれた新型ウィルスが、黎斗と永夢(被害者ですが)により「バグスター」として実体化可能なまでになった、と理解をしておけば良さそうでしょうか。
 ストレスの度合いでいけば、先の消滅騒動の時以上と思われる告白を聞いた永夢は両目を紅く輝かせるもそれを押さえ込むと、あくまでもドクター(ヒーロー)である事を貫いて“誰かを救うもの”として黎斗に接し、またも水晶の例えを持ち出した黎斗が再び銀輪バグスター化すると、XXエグゼイドになって戦闘開始。
 一方、九条の遺したリプログラミングデータをガシャットにインストール中だったゲンムコーポレーションでは、突然バグスター戦闘員の襲撃を受け、大我から押しつけられたガシャットを手にした飛彩が魔王ブレイブにデュアルアップ。
 そこにちょっと変な動きのZゲンムが乱入すると、大我は未知のリスクを秘めた新型ガシャットを手に参戦。
 「とっておきの決め技をお見舞いしてやる」
 ところがガシャットの起動に失敗すると「不正なプログラムです」エラーによりダメージを負って変身解除してしまい、やはり、罠だったのでは。
 一方、順調に戦いを進めるXXはブラザーダブルキックで銀輪バグスターを撃破するが、ぼろぼろの医療用ガウンで転がり出した黎斗は、すかさずそのデータを回収。
 「ふふふふふふははは……本当に助かったよ……宝生永夢ぅ」
 ゾンビっぽく上半身を起こした黎斗は、全ては計画通りと嘲笑し、衛生省の目をくらませ時間稼ぎをする為に故意にゲーム病に感染した事を説明しながら、意外と鍛えられた上半身を披露。
 「16年前から君は……透き通るように純粋だった。そしてその水晶の輝きが、私の才能を刺激してくれた! 君は最高のモルモットだぁ!! 君の人生は全て! 私の、この、手の上で、転がされているんだよ!! ふぁーははははははは!!」
 怪演、といっていい黎斗ですが、いちいち画面にエフェクトをかけすぎて、ショックシーンをわかりやすくしようとする余り、この表情と言葉に衝撃を感じて下さいが押しつけがましくなりすぎている感じなのが、個人的に好きではない演出。
 もはや黎斗は、この路線の演出をキャラ特性にしていくようではあり、プロフェッサーやブレンが流行ったのも踏まえて、SNS受けを意図して狙っている部分はありそうですが、ちょっと過剰に思えるところです。
 「――へんしぃん」
 黎斗は半裸デンジャラスし――悪役×肌色×ベルトにおいて、某全裸ベルトはあまりに高い壁だなと遠い目になりつつ――見た目は変わっていないように見えますが、今度こそゲンムX?
 「ゾンビといえば、増殖能力がつきものだろぉ」
 ZゲンムXは毒々ゲンムパラダイスを発動し、どんぶらこどんぶらこと無数のZゲンムによる死霊のヒロインムーヴ(腰抱きつき)を受けたXXエグゼイドは、ドライバーが腐敗して変身不能に陥ってしまう!
 「君はもう……変身できない。君の水晶を砕くのは……他でもない、私だ!!」
 ZゲンムXはゾンビワープで姿を消し、膝を付く永夢を見つめる厄介なファン……というか、パラドが執拗にエムにこだわるのも、父を訪ねて3000キロバイトだったの……?
 「へっ、おまえ達のゲームも――いよいよファイナルステージか」
 ゲンムコーポレーション前では魔王ブレイブが変身限界に達しており、そこへ髪型をオールバックにした黎斗(これは良かった)が現れると、飛彩も大我も無視して、ゾンビ社員を引き連れながら、社長室へと帰還。
 「ただいま。ようやく私の計画が実を結ぶ。『仮面ライダークロニクル』の、完成は近い」
 パラドの予言通りに黎斗との決戦の気運が高まっていく中、次回――ナニソレ。