東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
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もはや夏の読書メモ

刺さったり刺さらなかったり

◆『何の印象もない女』原田宗典
 若い頃に読んだ『こんなものを買った』というエッセイが物凄く好きで、それ一作で私の中で不動の地位を得ている作家なのですが……最近ちょっとTwitterで話題に触れて、ふと小説作品を手に取ってみたら、これが結構面白かった短編(掌編)集。
 特に、ある男が商店街の福引きで当てたクーポンで、何もかもが中途半端な“中途半端な街”へと、ほぼ一泊二日の旅行に出かける、「中途半端な街」が傑作。他には「無意味の季節」が面白く、どうもこの作者の、ナンセンス寄りの笑いがツボに来る模様。

◆『人の短篇集』(〃)
 ありふれた人々の、人生のある一場面を切り取った掌編……といった感じで、こちらは全く、ピンと来ず。
 この作者の本を読むなら、個人的には、笑いに寄せたものを探すのがよさそう。

◆『神狩り』山田正紀
 情報工学の若き天才・島津圭助は、とある遺跡で発見された古代文字の調査中に、落盤事故に遭って九死に一生を得る。その事故がきっかけで大学での立場を失った島津は、独力で文字の解読を進める内に、それが人類とは違う論理レベルの存在が扱う言葉ではないか、という推測に辿り着くのだが――。
 著者の代表作にして、日本SFに名を残す傑作……と言われる作品ですが、どうもピンと来ず。
 なにぶんおよそ45年前の作品なので、作品の基本コンセプト――超越的な存在の実在と、それに立ち向かおうとする者達――が、普遍的を通り越して、様々なジャンルで使い倒されている為に当時あったであろう衝撃が感じられない、といった要因もありそうですが……タイトルは耳にする作品だけに、読む前にハードル上げ過ぎたところもあったかも。

◆『亜愛一郎の逃亡』泡坂妻夫
 <亜愛一郎>シリーズ3作目にして完結編。おお、と思うような作品はあまりありませんでしたが、「歯痛の思い出」「双頭の蛸」は、構成に一工夫があって面白かったです。後、今読むとそれほど驚きはないけれど、ある定番アイデアの先駆け的作品、みたいなものも入っていたのかもしれません(実際どうだったのかはわかりませんが)。
 シリーズとしては、二作目『転倒』の、「藁の猫」が傑作でした。1970~80年代初頭の発表作品と考えると、だいぶ読みやすかったですが、時々、妙に“昭和の下品さ”がしつこくなるのは、時代でありましょうか。